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          「アイスが溶けちゃう前に・・・」


  (浩平は薄れ行く意識の中、みさき先輩への最後の一言を呟いた・・「ごめんな先輩、約束守れなくて・・・」
 「はい、浩平くん」
  (ふふふ・・・・今日はありがとね)
 「・・・どうしたの、浩平君?」
 (楽しいよ、浩平くん)
 「早く食べないと、アイスクリーム溶けちゃうよ?」
  (約束したよね、浩平くん)
 「・・どうしたの・・・・?」
  (ずっと一緒だよって、いつも居てくれるって)
 「・・どうして・・何も話してくれないの・・・」
  (約束してくれたよね・・・・)
 「浩平君・・・・」
  (ねぇ?・・・・)
 「冗談・・だよね・・・?」
  (ねぇ、声を聞かせてよ・・・・)
 「こ、浩平君・・・・」
  (冗談だよって、言ってよ・・・・)
 「やだ・・・やだよぉ・・・・」
  (私の大好きな人の声、聞かせてよ・・)
 「浩平君・・・・? こ、浩平君・・・・・ 浩平くん!!?」
  (みさきって、呼んでよ・・・・)
 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!」
  (ほらぁ・・・・アイス溶けちゃうよ・・・・・)





  (人って、どのくらい涙を流しつづけられるものなのかなぁ?)
 何も映さない私の目から、幾重も幾重も涙があふれつづけた・・・・・
 あの人が居なくなってから私は泣いている日が多くなった。
 恐くて恐くて、自分の世界に閉じこもっていた私を新しい世界へ連れて行ってくれた人。そして・・大好きだった人・・・・
   「ずっと、先輩の側にいる!」
 って言ってくれたのに・・どうして・・・・?



 学校へ行ってみた。 ・・・・・・行かなければ良かった・・・
 浩平君のクラスメートも先生も仲良しの雪ちゃんも、そろえて同じ言葉を言うの・・・
   「誰、その人?」  って・・・・・・
 あれは夢だったの? 新しい世界を見たがってる私が作り出した幻だったの?
 ・・・・ううん、そんな事無い。 
 だってあの人のぬくもりを覚えてるもの、あの人の声を覚えてるもの、あの人と過ごした風を覚えてるもの・・・
 それに・・・それに私の大切な宝物・・・・ 「あけめしておめでとう」の年賀状があるもの!!
 あの人が・・・・浩平が居た! 生きていたと言うのが分かるもの!!!
 だけど・・・だけど、今はいない・・・・・・ あの人がいない・・・・・・浩平君がいない・・・・
 もう嫌だ・・・・ ここに居たくない・・・、この世界から逃げ出したい・・・・・
 だって、そうすればあの人の居る世界へ行くことが出来るのかもしれないんだもの。
 ・・・・・・・私・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死にたい・・・・



 ・・・・・・・・・・・・・
 「・・・・みさき」
 ・・・・・・・・・・・・・
 「ねぇ、みさき?」
 ・・・・・・・・・・誰・・・?
 「みさき・・・みさき聞こえる?」
 ・・・・・・・・・・お母さ・・ん・・?
 「あのね、みさき・・・何か悲しい事があったのは判るわ・・・・・」
 ・・・・・・・・・・嫌、思い出したくない・・
 「みさきの受けた悲しみは、お母さんにも分からない・・・・そう、みさきにしか分からないわ」
 ・・・・・・・・・・だったら、ほっといて・・・・・・私・・・私はもぅすぐこの世界から逃げるんだから・・・
 「でもね、その悲しみから逃げちゃダメ。いえ、受け入れて見るの」
 ・・・・・・・・・・えっ?
 「だってあなたは生きてるんですもの・・生きてるから悲しい事も嬉しい事も、嫌な事も楽しい事も感じられるんじゃないの?
 それがたとえ目が見えない事でも・・・」
 ・・・・・・・・・・そうだけど・・
 「だから・・・今すぐ元気になってとは言えない・・・・だけど、だけど笑ってちょうだい・・・みさきの笑顔を見たい人が必ず居るはずよ」
 ・・・・・・・・・・あっ
 「もう一度、あの卒業式の時の日に見せてくれた笑顔をお母さんに・・・もぅ一度見せてちょうだい・・・・お願い・・・・・よ・・・」
 ・・・・・・・・・・そうだった。あの人は約束してくれたんだ・・、私の側に居るって・・・、ずっと居てくれるって。
 そう、そうだよ! 私が忘れてしまったら・・・本当にあの人の事を、浩平君の事を忘れてしまったら居なくなってしまうんだよ!
 光を感じられない私の心に、希望の光を輝かせてくれた、あの人を!!


 浩平君? 私、馬鹿だから言葉どうり受け取っちゃうよ。
    側に居るって、帰ってくるって!!
 だからその時の為に私ずっと笑顔でいるね。
 可弱い女の子を待たすなんて、いじわるだよぉ・・・・。 お詫びに絶対にアイスおごってもらうからね。
 でもね・・・
 その前にもう一人笑顔を見せたい人が居るんだ。 それはね・・

 「お母さん・・・・・・・」
 「えっ?」
  お母さんの心、見えたよ・・・
 「お母さんありがとう・・・・私、私もう大丈夫だよ」
 「うっ・・・・・・み、みさき・・・・・みさき・・・」
  ゴメンね、お母さん・・・
 「ねぇ、お母さん? 私、笑顔かなぁ・・・・あの時の笑顔かなぁ? 1番輝いていた時の笑顔かなぁ?」
 「うん・・うん・・・・みさき・・・良い笑顔よ・・・・本当にね」
  はやく帰ってきてね・・
 「ありがとうお母さん・・・・・あのねお母さん。 私ね、髪形を変えようと思うんだ。新しい私になれるように・・・」
  待ってるよ、浩平君・・・・アイスが溶けちゃう前に・・・・・

-----エピローグ(輝く季節へ)へ続く-------

   <後書き>
 どもども、セラくんです。自分のお気に入り「ONE」の中の、「みさき先輩」のサイドストーリーです。
 いやぁ、みさきシナリオは最高です。もぅ、泣ける泣ける!
 見た目はお嬢様でも、とっても元気なみさき先輩。盲目と言うハンデを苦にしない言動は、
 本当に「普通で、いいと思うよ?」と言うセリフにこめられていると思います。

 だけど、本当は強がっているだけではないかな? とも思いました。
 学校と言う自分だけの世界から抜け出させてくれた主人公が居なくなってしまえば、やはり凄くショックだと・・・
 一応、エンディングからエピローグの間の話と考えてます。

 「こんなのみさき先輩じゃない!」と言われてもしかたないですねぇ 。だけど、これが自分のみさき先輩です。

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