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よりによってこんな3人が一緒に暮らしちゃって本当に大丈夫なのか?と思わせるようなお話


「おい、舞。どこだ?」
台所にはいない。ぬかみそ入れにも玄関の下駄箱の中にもいなかった。
「こっちか?」
まだ隣の部屋を探していないことに気付き、戸を開けるとそこにはいつものようにうつぶせになっている舞がいた。
「またか・・・」
髪の毛が舞の頭を中心に広がっていてちょっと不気味だ。
「畳、新しいから」
「畳が新しくていいにおいするからそうやってうつぶせになってニオイをかいでいたというんだな?」
ずりっ。
「痛い、祐一」
「よく考えろよ・・」
”こくり”とうなづこうとしたが、うつぶせのため顔をたたみに擦ったようだ。
「で、何」
あくまでうつぶせのまま用件を尋ねてくる。異様だ。
「いっつも『そう』とか『何』とか、もう少し違った対応は出来ないのか?」
「What's up?」
「やっぱりいつものでいい」
舞にそういうことを望んだ俺がバカだった。
「で、何」
まだうつぶせのままだ。このまま上から押さえつければ舞はあっという間に
こんな俗世からおさらば出来るだろう。とかなんとか考えながら、
「あ、そうそうおやつの時間だぞ」
すっ。
俺が言い終わるか終わらないかの時点ですでに舞は立ち上がっていた。
「おやつは何」
「マムシクッキー」
すっ。
俺が言い終わるか終わらないかの時点ですでに舞はうつぶせになっていた。
「お前って素早い上に器用だよな」
「そう?」
「それはそうとマムシクッキーってのは冗談だ。ホントは佐祐理さん特製の巨大プリンだぞ」
しゅたっ。
すでに舞はいなかった。
「俺って、人間らしいやつより動物っぽいやつを好きになるタイプなのかなぁ・・・」
ちょっとヘコみつつ俺も台所へ向かった。
 
俺は今高校3年で、佐祐理さん、舞はすでに卒業済みだ。
2人が卒業すると同時に俺達は一緒に暮らしはじめた。
ちょうど新築のアパートが見つかったので建設が終わると同時に入居した。
舞は新しい畳のにおいがお気に入りだった。
暇さえあればうつぶせになっている。
さて、台所へ戻ると回覧板を回しに行っていた佐祐理さんはすでに戻ってきていた。
まあ回覧板なんぞ数秒で回してこられるのだから当然ではあるが。
そして俺は目に入ったプリンをみて、自分の遠近感がおかしくなったのかと思った。
簡単に言えば、でかすぎ。
「佐祐理さん・・なんすかこれ・・」
「あははー、やっぱりスケールはおっきい方がいいと思いまして〜」
「なんかギネスにのりそうですよ・・」
確かに3人前くらいの大きなプリンをつくるといってはいたが、どうみても10人前は軽くこえている。
こんな物体が街を歩いていたらきっと大騒動になるだろう。
見れば見るほど新種の生命体に感ぜられてならない。
”なんだコレは?!解析急げ!!”
と必死になっているのがわかってしまうくらい俺の脳は大パニックを起こしていた
「それじゃ、食べましょう」
「あ・・ああ。そうですね・・」
俺は自らの大脳新皮質に”コレはプリンだ。決してちょっと色違いの富士山ではない”と
言い聞かせ、大皿に乗った物体にスプーンを入れた。
ちなみにその物体は一人一人にわけられたのではなく、大きいのが一つ
これまた大きい皿に乗せられている。それを3人で崩して食べようというわけだ。
「・・・・・」(いただきますと心の中で言っているらしい)
まず、プリンの一角を崩して最初に食べはじめたのは舞だった。
続いて俺も食べはじめる。
「お、この富士山おいしい」
「はぇ?」
「・・・・?」
「じゃなくて!このプリンすごくよく出来てますよ。うん。こんなにでかいのにちゃんと出来てるなんて佐祐理さんと結婚する人なんて幸せだろうなぁ、ハッハッハッハッハ」
俺はペラペラとまくしたてて、なんとかうやむやにした。
まずいな、俺は相当混乱していたらしい。
「そうですか、それでは佐祐理も食べますね」
良かった、深く突っ込まれなかった。
「・・・・・」
「って、舞!さっきから上のカラメルの部分ばっかり食ってるんじゃない!!」
「・・・だって、こっちのほうが甘いから」
「んなことは知ってるわ。もっと普通に食べられないのか」
舞はムッとした表情をしたが、
「・・早い者勝ち」
「あっ、オイ!」
すでにカラメル部分はなくなっていた。
「最低だ・・・」
「あ、あはははははははははははは〜・・・・」
「いや・・怖いからやめて、佐祐理さん・・・」
佐祐理さんもさすがに困ったのか、いつもの”あはは〜”が長い上に抑揚が全くなかった。
残ったのは勝ち誇った舞とカラメル部分の全くなくなった巨大な物体であった。
 
「ふう・・・よく食べられたな・・俺達」
「佐祐理もお腹いっぱいです」
「・・・げふ」
ぱしっ。←はたいた
「もっと普通に女らしくできねーのか、お前は」
「舞だって充分女らしいですよ〜」
佐祐理さんは何の根拠があってそういうのかよくわからない。
「・・・どのへんがですか」
「電波」
「佐祐理さんって時々理解しがたい言動をしますよね」
「そうですかぁ?」
もしかすると俺の方が”一般”から逸脱してしまっているのだろうか。
この2人と暮らしていると何が”普通”なのかわからなくなる。
もっとも”普通”なんてものは存在しないんだけど。
お、ちょっと哲学?←大バカ
「・・・祐一も、電波欲しい?」←別のパソゲーのネタ
「別のパソゲーの話を持ち込むつもりはない。しかも製作した会社すら違うし」
「あはは〜、そうですね。わからない人もいるでしょうしねー」
「と、いうことで却下だ」
「じゃあオフレコで」
パシッ。←はたいた
「だからそういうよくわからない発言は却下だ!」
「それじゃ、舞。祐一さんが眠りについたころこっそりと毒電波を・・・」
にやそ。←佐祐理さんの笑み
「OK・・佐祐理」
バシッ、バシッ。←2人をはたいた。
「佐祐理さん・・舞に何を吹き込んだんですか?」
「いえ、たいしたことじゃないですから〜。今日はゆっくり眠って下さいね〜♪」
俺の中で今日は徹夜することに決定した。

「あ、そろそろ夕飯のこと考えないと。今日は佐祐理の番でしたよね」
「う・・・もうそんな時間なのか・・さっきのプリンがまだ結構残ってるんだけど」
「・・・胃が拒否してる」
「実は佐祐理もなんですよ〜」
とは言っても食べないと夜中に腹が減ってしまうだろう。
「うーん、それじゃあ今日は簡単にお茶漬けでもしましょうか」
「お、いいね。それなら食べられそうだ」
「・・・胃も賛成してる」
佐祐理さんはそれを聞くと戸棚を開けてなにやら探しはじめた。
「・・・・あー、お茶漬けのりをきらしちゃってますね。ちょっと買ってきます」
佐祐理さんは部屋へ入っていった。当然、出掛ける用意をするためだ。
ふいにお茶をすすっていた舞がこっちを向いた。
「祐一、おじゃる○ビデオ予約して」
なんか、伏せ字になっていないとか言われそうだがれっきとした伏せ字だ。
あまり細かいことは気にしてはいけない。
「わかった」
つまり、佐祐理さんと一緒に行くということだ。
新聞のテレビ欄を見て、Gコード予約を済ませる。これってバーコードと同じ原理なのだろうか。よくわからない。
「ん、予約できたぞ。舞は準備しないのか?」
「私は、このままでいい」
「ダメだ。少なくとも髪の毛はなおしとけ」
舞の髪は畳にうつぶせになったときに変なクセがついてしまっていたようだ。
「それじゃ行ってきますね」
「っと、舞も一緒に行くってさ」
「じゃあ一緒に行こうか、舞」
それじゃあ俺は家でぼーっとしてようかな、とか考えていたが
「祐一も一緒に」
「俺もか・・・?イヤ、俺は遠慮して・・・」
俺が言い終える前に舞は割って入った。
「昔、ずーっと一緒にいてやるって言ってたのにアレはウソだったの?それとも自分の発言に責任を持てないような腐った根性をした男なの、祐一。そういえば確かあのとき・・」
「わかったわかった一緒に行くからお前がそんなにたくさんしゃべると怖い!!」
「ふぇ〜・・舞もしゃべろうとすれば出来るんだね」
佐祐理さんが感心するんだからよっぽどなんだろう。
「・・・・・」
「それじゃあ行くか・・」
疲れた。

「でもなんか、この3人でスーパーに買い物ってなんか妙ですよね」
「そうですかぁ?合コンの準備かなんかだと思われるだけだと思いますけど」
「・・・・・」
まあそれもそうか。
「祐一さんはお茶漬けのりの他に何か買いたい物ありますか?」
「いや特にないけど」
「舞は?」
「・・・・・・・」
「舞、さっきから全然しゃべらないけどどうかしたのか?」
「・・・・」
「どうかしたの?舞」
「・・・さっき、しゃべりすぎたから・・・その、リバウンド・・・」
器用な奴。
「まあいいや。さっさと買って帰ろうぜ」
「・・・・・リバウンド」
 
 
「ん、なんだ、舞」
スーパーを出てアパートのほうへ行こうとすると、服のすそをひっぱられた。
「・・・・帰っちゃうの?」
「そりゃまあ、特に用事もないし。ねぇ、佐祐理さん」
「そうですねぇ」
ちなみに荷物を持っているのは俺だ。とはいっても総額587円の買い物だから
荷物と呼べるかどうかも疑問だが。
「クマさん・・・」
「何?クマ?このへんはクマの出没地域なのか」
ざくっ。
「だからさぁ、つっこみチョップはいいけどつっこみソードはやめてくれないか?」
舞は最近つっこみチョップに飽きて、剣技を生かそうとつっこみに剣を使うようになった。
剣は捨てろと言ったのに・・・。
おかげで俺は出血多量の日々が続いている。
俺は血をだーらだらと流しながら、
「それで、クマがなんですと?」
「UFOキャッチャーに新しいクマさんが入ったの」
「そうかそうか。それはめでたい。じゃあ帰ろう」
ざこっ。
「やっていけばいいんだろ?」
「あはは〜、祐一さんすごい血ですねぇ〜」
佐祐理さんって物事に動じない人なんだなぁ・・・と切に思う。
「やれやれ。お子様相手は疲れる・・・」
「・・何か言った?」
剣の切っ先がきらめく。
「何でもないっ!」
「あはは〜。じゃあ今日はいっぱいぬいぐるみ取って帰りましょう♪」
「金は・・」
「当然祐一持ち」
「最低だ・・・・」
妙な3人組は街の一角にあるゲームセンターへと足を運んだのだった。
 
なんだかんだいっても毎日が楽しい。
舞も佐祐理さんもいるから。
細かいことは考えないで、今はただ毎日が楽しいことを感謝しよう。
そして明日も楽しくあるように願おう・・・。
「祐一、なんかいい終わらせ方にしようとか考えてない?」
「うるさいっ!!」
「あはは〜」
「祐一の負け」
「・・・・・・」
 
終わり。

コメント:
アイ・舞・みぃ〜♪初めまして、ビビンバ吉田という者です。
ここのアイ・舞・みぃ〜♪同好会に入った記念として送らせてもらいました。
とはいっても思いつきでだーっと書いちゃったんですけど。
Kanonではやっぱり舞先輩が一番好きです。だって、銃刀法違反ですよ。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
俺は名雪派だ 栞派だ 北川派だ 論外

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