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<こみっくライフ♪>
〜第1ページ〜



「ご苦労様でした〜」

その言葉を受けながら引越しのトラックは去っていった。

「さてと、荷物の整理をしなくちゃな」

そう俺は今引越しをしているのだ。

と言っても場所はいつもの公園の近くだけど。

え?なんで引越しなのかって?

それは俺にもよくわからない。

気がついたら引越しのトラックに乗せられていたのだ。

でも一軒家に住めるのだ別に良いとしよう。

俺の目の前には最近出来たばかりの一軒家がたたずんでいた。

とりあえず中に入って運び込んだ荷物を整理する事にした。

冷蔵庫などの重い荷物はさっきやってもらったからな。

「え〜と、この箱は食器か……」

キッチンへ向かって食器を戸棚の中に入れる。

カチャカチャ

「やべ、調味料とかの箱リビングに置いたままだ」

「……これですか?」

「そうそう、この箱。……って、わ〜!!彩!!」

「……なんでしょうか?」

「何でお前がこんなところにいるんだよ!?」

「……一樹さんのお引越しの手伝いに来ました」

「頼むから今度は普通に出てきてくれ」

コクッ

まだ心臓がドキドキいってやがる。

「……一樹さん、この部屋は使いませんか?」

「えっ、ああ、今のところ使う予定はないけど」

「………」

すると彩は無言で自分の荷物を部屋に入れ始めた。

「彩……一体何をしているのかね……」

「……ここは私の部屋にします」

「そうじゃなくて!なんで俺の家に彩の部屋が必要なんだ!?」

「……今日から私も一緒に住むからです」

「何で彩が俺と一緒に住むんだよ!?」

「……大丈夫です。親には許可をもらってきました」

「いや、そうじゃなくて……」

「……母も私をよろしくと言っていました。空に行った父も一樹さんなら安心だと思います」

ったく、なんて親だ!

ピーンポーン

そんな事をしていると家の中にチャイムが鳴り響いた。

「一体誰だ?」

玄関へ行ってドアを開ける。

ガチャ

「一樹さん、お引越しの手伝いに来ましたよ」

「南さん、ちょうどよかった。彩がこの家に住みつくつもりなんだ。一緒に説得を……」

「う〜ん、この部屋がちょうど良いわね」

「南さん……一体何を?」

「私の部屋に合うちょうど良い部屋探しです」

「って、まさか南さん!?」

「はい、私も一緒に一樹さんと住みます」

「なんでじゃ〜!!だめだって同棲なんて」

「実家の両親がよろしくと申していました」

そう言ってふかぶかと頭を下げる。

「いや、そんな事を言われても……」

「大丈夫ですよ。炊事や洗濯は任せてください」

「はぁ……なんでそっちの方向に話が進むんだ……」

「お兄さ〜ん、この箱はどこに運ぶですか〜?」

「ああ、その箱は二階の……って、千沙ちゃ〜ん!!」

「にゃにゃ〜!!」

ドカッ

千沙ちゃんは思いっきり転んでしまった。

「ふにゃ〜、ひどいです〜お兄さん。いきなり大声で……」

「聞きたくないけど千沙ちゃんは何でここに……」

「お引越しのお手伝いに来ましたです」

やはり……

「でも、自分の荷物を二階まで運ぶのは疲れましたです」

ち、千沙ちゃんまで……

「だめだ、だめだ。こんな所で住む事は千沙ちゃんのお父さんやお母さんが許さないよ」

「お父さんとお母さんが一樹さんには期待してるって言ってましたです」

「何を期待してるんだ〜!!」

その前に俺、千沙ちゃんの親の顔見た事ねえや。

会った事があるのに顔を知らないって一体……

「こんな家で満足してるなんてまだまだアマアマちゃんね〜」

はぁ……あいつも来やがった。

「まったく師匠が来てやったのにお茶も出さないの」

「詠美……一応聞くけど何しに来たんだ……」

「そりゃあ、弟子の家に師匠が住む事は当たり前だからね」

「なんでやねん!!だから、何でお前まで一緒に住むんだよ」

「ちょっとせまいけどこの部屋かしら。一樹、玄関に私の荷物が置いてあるから持ってきて」

「人の話を聞け!その前に勝手に部屋を決めるな」

「なによぉ、したぼく(たぶん下僕のこと)のくせに詠美ちゃん様に逆らう気」

くそ〜、これは誰かの陰謀だ。

はっ、作者か!?作者だな!!

だから一軒家に……

そう言えば朝の記憶がない!!

あの時か!?あの時に監禁されたのか!!

「あの〜、すいませ〜ん」

突然玄関のほうから声が聞こえてきた。

もう、どうにでもなれ……

「はいはい、今出ますよ〜。……どわぁ〜!!」

玄関にはダンボール箱が壁のように詰まれていた。

「詠美!!これは一体なんだ!!」

「私の荷物に決まってるでしょ。そんな事より早く持ってきて」

ったく、こんなに持って来やがって。

ダンボール箱を一つずつ崩していく。

「あっ、郁美ちゃん」

「ふぅ〜、やっと一樹さんに会えた」

「郁美ちゃん……」

「一樹さん、お手伝いに来ましたよ。それと、不束者ですがよろしくお願いします」

ぺこりと頭を下げて家に上がってきた。

「ちょっと待って。俺と一緒に住むつもりなんだろうけどまだお兄さんに許可をもらってないだろ」

「許可ならもらってますよ」

「はっ?」

「お兄ちゃ〜ん」

するとドアから大男が現れた。

「あっ、雄蔵さん!」

「郁美が世話になるな」

「いや、雄蔵さんはそれで良いんですか!?」

「まさか俺の妹が嫌なのか?」

太い腕でむなぐらを掴まれた。

「いえいえ!滅相もございません!!」

「郁美をよろしく頼むぞ」

「はい!まかせてください!」

「じゃあ、俺は帰るぞ」

バタン

「うお〜!!成り行き上あんな事を言ってしまった〜!!」

ガンガンガン

壁に頭を打ちつけまくる。

「一樹さん、空いてる部屋ってありますか?」

「はぁ……どうぞ二階の部屋を使ってくれ……」

もういいや……

話の都合上こうなる事になってたんだろうな〜……

「でも、どうせなら一樹さんと一緒の部屋に……な〜んて、てへっ☆」

「ははは……はぁ……」

一軒の家に五人の女に一人の男……

世間に知られたらどんな事言われるか……

「……整理終わりました」

「ああ、ありがとう」

「ふふふふ、詠美ちゃん様の部屋完成〜」

いつの間にあの量の荷物を!?

「皆さん、引越し蕎麦出来ましたよ〜」

「にゃにゃにゃ〜!お皿が〜!」

俺の、俺の家が〜!!



その日の夜

「ふぅ〜、気分を落ち着かせるには風呂が一番だな〜」

結構広い風呂でゆっくりくつろげそうだ。

「一樹さん」

扉の外から南さんの声が聞こえてきた。

「あっ、南さん何?」

「お背中流しましょうか?」

「ぶっ、い、いいよ別に」

「遠慮しないでください」

「いや、遠慮じゃなくてその……風呂に入るって事は……」

「大丈夫です。ちゃんと水着を着ますから」

「南さんは大丈夫でも俺は大丈夫じゃない!」

「お兄さん、千沙がお背中流してあげますです」

「わ〜!!千沙ちゃんまでそんな事しなくていいよ!!」

「でも、お父さんが一樹さんの背中でも流してやれって……」

一体何を考えてるんだあのオヤジは!?

「……一樹さん、お背中……」

「流さなくてもいい!!彩までそんな事を」

「……そんな事……嫌なんですか?」

やべ、なんか嫌な雰囲気に……

「……ひっく、一樹さん……」

「あ〜あ、一樹が泣かした〜」

いつからいたのか、詠美が茶化してきた。

「いや、あの、その、ごめんな彩」

「……じゃあ、お背中……」

「それは、その、ちょっと……」

「しょうがないな〜、ここは代表としてこの詠美ちゃん様が……」

「しなくていい!!大体なんでお前なんだ!?」

「私はあんたの師匠なのよ。口の聞き方に気をつけなさいよね!」

「ええ〜い、お前を師匠に持った覚えはな〜い!!」

「ふみゅ〜ん、したぼくのくせに〜、したぼくのくせに〜」

「詠美さん、おとなしく下がった方が良いですよ」

「郁美ちゃんありがとう。ふぅ、やっと俺に味方する者が……」

「一樹さんのお背中は皆さんの代わりに私が流します」

「おいおい、郁美ちゃんも同じだろ!?」

「手術の時に一緒に居てくれた事やずっと看病してくれた事のお礼がしたいんです」

「こんな事でお礼をしなくてもいいから!」

「看病のお礼って何?」

「いや、それは郁美ちゃんが心臓病で……」

「あんた、看病とか言って一体何をしたの!?」

「何もしてない!!」

「ひどいです一樹さん。一樹さんはあの日……ぽっ」

「えっ!?まさか一樹……」

「こらこら、そこで嘘を言いふらさないでくれ郁美ちゃん」

「そういえば、数日間家にいませんでしたけどどこにいたんですか?」

「それは、その、外国に……」

「……愛の逃避行……ひっく、一樹さん、私は遊びだったんですか?」

「愛の逃避行じゃない!それに誤解されるような事を言うな〜!!」

「一樹、あの晩の事はどう説明するの!?」

「いつだよ!?俺はそんな事してない!!ったく、こうなったら……」

内側からドアのかぎを閉めた。

「ふぅ、これでやっとゆっくり入れる……」

俺は湯船に体を沈めた。

「にゃ〜、閉められてしまいましたです」

「これだと入れませんね〜……」

「まったく弟子が師匠にする事か」

「大丈夫です。ここは私に任せてください!」

すると郁美ちゃんは何かを取り出した。

カチャカチャ

カチャカチャって何の音だ?

カチャ☆

「にゃぁ、開きました〜」

「すごいですね〜。郁美ちゃんどこで鍵開けなんて覚えたの?」

「入院中、暇なんで練習してたらマスターしちゃいました」

「さすがは私が見込んだ弟子ね」

「……愛の力は鍵をも超える」

げっ、もしかして……

ガチャ

「「「一樹さ〜ん」」」

扉が開いて全員がなだれ込んできた。

「わぁ〜!!」

俺は慌ててタオルで隠す。

「いい加減にしてくれ〜!!」



それから数時間後

「ふぁ〜、今日の原稿はこれくらいにしておいてもう寝るか」

みんなももう寝てる事だし。

俺は二階の自分の部屋へ向かった。

「ふぁ〜、おやふみ……」

俺がベッドにもぐりこんだその時、何かが体に触れた。

「あれ、何だこれ?」

手で触ってみる。

「……くすぐったいです一樹さん」

「だ〜!!彩、何で俺のベッドにいるんだよ!?」

「……ここは私の部屋ですよ」

「彩の部屋は一階だろ」

「………」

「………」

「……間違えました」

一体どうやったら間違えるんだ……

「じゃあ、自分の部屋に戻ってくれ」

「……眠いから歩きたくありません」

「そんな事言ってないで早く自分の部屋に戻ってくれよ」

「……眠いです」

「……はぁ……わかった、俺は床で寝るから」

新しい毛布を引っ張り出すと床で横になった。

「お休み、彩」

「……おやすみなさい一樹さん」

「おやすみなさい、一樹さん」

「ああ、お休み……って、わ〜!!」

気がつくと俺の隣に郁美ちゃんが横になっていた。

「ふにゃ〜、お兄さん夜は静かにですよ」

「ぎゃ〜!!千沙ちゃんまで」

「どうしたんですか?」

「どうしたもこうしたもなんで俺の隣に郁美ちゃんと千沙ちゃんが寝てるんだ〜!?」

「そういう細かい事は気にしないでください」

気にするよ……

ガチャ

「一樹〜、あんたの部屋で寝かせなさいよ〜」

詠美が枕を持って入ってきた。

「お前まで一体なんだよ」

「いや、別に怖くなって一人じゃ心細いってわけじゃないわよ」

「じゃあ自分の部屋で寝ろ!」

「ふみゅ〜ん、だから怖くなったって言うか、その〜……そう!弟子の部屋がどんなもんだかチェックしに来たのよ」

「チェックなんかしなくてもいいって……」

「どうしたんですか一樹さん?」

「南さん助けてくれ。こいつらが俺の部屋に入り込んで困ってたんだ」

「あら楽しそう、私も一緒に寝ようかしら」

「はい?」

そう言うと南さんまで俺の部屋で寝始めた。

俺の……俺の自由な生活を返してくれ〜!!


  つ・づ・く

〜written by 砕〜

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