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<こみっくライフ♪>
〜第2ページ〜



「……っと、そんな事があったんだ」

「ふ〜ん、そんな事があったんだ」

今俺は瑞希と一緒に大学のベンチで昨日の事を話していた。

「昨日行ってみたら部屋が空家になっててビックリしたよ」

「そりゃ、唐突な展開だったからな」

「それで上手くやってるの?」

「まぁ、一応は事故もなくなんとかやってる」

「そぉ……」

「良かったらお前も一緒に住むか?」

「な、なに馬鹿なこと言ってるのよ!!」

「ははは、冗談に決まってるだろ」

「べ、別に私は初めから冗談だって分かってたけど……」

「案外、本気に受け取ってたりして?」

「馬鹿!!もう私は行く!」

「日曜なのになんで大学なんかに来てるんだよ?」

「ちょっと調べ物」

「あっそ……」

「家には女の子がいっぱいで満足よね〜」

「何だよ!?」

瑞希は逃げるように立ち去ってしまった。

「はぁ……原稿の続きもあるしそろそろ帰るか……」

俺が立ち上がろうとしたその時!

ダッ

木の上から何者かが飛び降りてきた。

スタッ

「ふはははは!!元気にしているかねマイブラザー!!」

「さて後14ページ頑張るか……」

「むむ、吾が輩が来てやったのにナイスシカト!!」

「何だよ、大志……」

「貴様、最近数人の女と同居を始めたらしいな」

「ああ、そうだよ。それがどうかしたのか……」

「その中にはあの南女史や大庭詠美も含まれているとか!」

「ああ……」

「ふっ、貴様がハーレムなどという趣味を持っていたとは……」

「そんな趣味はない!!」

「しか〜し!実際のところは浮かれているだろ!」

ビシッ

「うっ!」

図星だった。

「そんな気持ちでエクセレントなマンガなど描けるわけはな〜い!!」

ビビシッ

「はうっ!」

ガガ〜ン!

「その証拠に筆の進みが遅くなったと聞くが?」

「ううっ!」

大志の奴、痛いところを……

「その程度のレベルじゃオタクの帝王にはなれんぞ!!」

「いや、別に帝王にはなりたくない」

「何を言うか、大馬鹿者!!その邪な考えが駄目なのだ!!」

相変わらず熱い奴だ……

「う〜む……はっ、そうかわかったぞ!」

「一体何が……?」

「貴様の筆の進みが遅くならないように吾が輩も同居してやろう」

「やめろぉぉ〜!!」

「はっはっは、遠慮は要らんぞマイダーリン」

「ダーリンはやめろ!!」

「吾が輩と貴様が同居する事は大宇宙の法則に従っての運命だ、気にする事はない」

「そんな運命なんてくそ食らえだ!!」

「ええ〜い、抵抗するなんて往生際が悪いぞ同士一樹!!」

くそ〜、こうなったら……

「とりゃ!」

シュッ

「はっ、あれは『あさひちゃんトレーディングカード』のプレゼント応募カード!!」

大志は風に舞うトレカを追って消えていった。

「ふぅ、何とか助かった」

あさひちゃんにもらったあのカードが役に立った。

後であさひちゃんに謝っておかないと……

せっかくあさひちゃんが俺の為にくれたのにな……

くそっ、奴のせいで!

とにかく大志の魔の手を逃れたんだ、今のうちに退散するか。

俺はダッシュで大学を後にした。

   ・
   ・
   ・
「はぁはぁ……」

商店街まで全力疾走してきた。

ここまで来ればさすがの大志でも……

「おや、あれは……」

その時、見知った二人の後姿を見付けた。

「お〜い、彩〜、千沙ちゃ〜ん」

「……一樹さん?」

「あ、お兄さんです〜♪」

手を振りながら二人に近づく。

「二人ともこんな所で何やってるんだ?」

「……夕飯の買い物です」

「今日は千沙と彩お姉さんが当番なんです」

「そんなの決めてたか?」

「……昨日、一樹さんには迷惑は掛けられないと言う事でみんなで決めました」

「そうだったのか……」

みんなもそれなりに気を使ってくれてたのか。

でも気の使いすぎが昨日だけど……

「お兄さんは大学の帰りですか?」

「ん、ああ、まぁそんなところだ」

「……早く帰りましょう。夕飯の仕度もありますし」

「にゃにゃ〜、御飯、御飯〜♪」

「……今日はハンバーグですよ」

「にゃにゃ!千沙、ハンバーグは初めてです〜♪」

「あ、その前に画材を買いにちょっと店に寄って行くから」

「……画材?マンガのですか?」

「ああ、そうだよ」

「……何をお探しですか?」

「え?インクと他にも色々と……」

「じゃあ、私が選んであげます」

「別に良いよ、先に帰ってれば?」

「いいえ、一樹さんの御役に立ちます」

その時の彩はいつもより気迫がすごかった。

「にゃ〜、千沙も御役に立つです〜」

「千沙ちゃんまでそんな事しなくて良いよ」

「そうはいかないです。御役に立つです」

「……はぁ」

仕方ない……

とりあえず二人と一緒に画材屋へと向かった。

数分後……

「それでこれが……」

「なぁ、彩……」

「……はい?」

「もういいよ……」

「……何がですか?」

「インク、沢山ありすぎて何がなんだかわからなくなってきた」

彩は棚に並べられたすべてのインクを一つ一つ説明していた。

「俺は今まで使ってたやつで良いから」

「そうはいきません。一樹さんには良いマンガを描いて欲しいんです」

「いや、気持ちだけで十分嬉しいから」

「駄目です」

彩〜、積極的過ぎるよ〜。(泣)

ガシャ〜ン

「にゃにゃにゃ〜!!」

はぁ〜、あっちはあっちで……

「にゃ〜、お兄さん、棚の商品全部落としちゃいました〜」

「わかったよ、今手伝うから」

俺が行こうとすると……

クイッ

「ん?」

「……まだ説明が終わってません」

「あのな、彩。今はそれどころじゃないんだよ」

ガ〜ン

「……そう……そうなんですね、一樹さん……私なんか……」

「そ、そんなわけじゃ……」

「にゃ〜にゃ〜、お兄さ〜ん」

あ〜あ、千沙ちゃんが泣き始めちゃった……

「待ってろ千沙ちゃん。今行くから」

「やっぱり私なんか……シクシク」

「だぁ〜、泣くな!」

「にゃ〜にゃ〜!」

「千沙ちゃんも泣き止んでくれ〜(泣)」

「ヒソヒソ……何あれ?」

「女の子泣かして……」

「一体どういう関係……?」

あ〜、お客さんの白い目が俺に注がれてる〜。

「ヒック……一樹さん」

「にゃ〜、お兄さ〜ん」

俺に日常と言う物はないのか……

   ・
   ・
 その夜

「はぁ、今日も大変な一日だった……」

彩が泣くわ、千沙ちゃんが泣くわ、他の人に誤解されるわで……

まぁ、なんとか事態は解決できたけど。

「午後十時か……」

さてと、残りのページを描かないとな。

ペンを持って作業に取り掛かる。

と……

「頑張っているかね、マイフレンド」

「ああ、見ての通り頑張ってるよ……って、ぎゃぁぁぁ〜!!」

「どうした、マイブラザー?」

「何でお前が俺の部屋にいるんだ〜!?」

「ふははは、それは貴様の調子がどれほどか見に来たのだ」

「来なくて良い!!」

「遠慮はいらん、大いに喜んでくれ」

「この状況で喜べるか……」

「それはそうとさっさと仕事に取り掛かったらどうかね、マイブラザー」

「ああ、そうするよ!」

もうやけくそだった。

ガチャ

「……一樹さん、ちょっと良いですか……って……」

「ん?」

「か、一樹さんにそんな趣味が〜!」

ダッ

「わぁ〜、ちょっと待て〜!!そんな趣味はない!!」

走り出した彩を慌てて引きとめる。

「安心しろ彩。俺はそんな危険な趣味はない」

「……本当ですか?」

「ああ、本当だ。あったとしてもこいつとは絶対にない」

「むっ、聞き捨てならないな今の言葉は。我らは同じ風呂に入った仲じゃないか」

「……やっぱり」

「彩、騙されるんじゃない!! こら大志、お前なんかと風呂に入った覚えはない!!」

「貴様の潜在的な部分では覚えているはずだ」

「覚えてない、覚えてない……」

するとまた……

ガチャ

「にゃ〜、お兄さん……にゃ?」

「ん?」

「にゃ〜、お兄さんが変なお兄さんと一緒にいるです〜!!」

「NO〜!!誤解だ、千沙ちゃん!!」

「何を言う!?吾が輩と貴様が一緒にいるのは当たり前の事じゃないか」

「いつから当たり前になったんだよ!」

「ふっ、それはこの宇宙の根源ができるさらに前からだ」

「無茶苦茶な事を……」

「そんな事より早くマンガを描くのだ」

「だったら早く帰ってくれ……」

「そうはいかん、吾が輩が監視しておかないと何時またサボるか分からないからな」

「……一樹さんはあなたの私物じゃありません」

「同士一樹は吾が輩のベストフレンド、ア〜ンド、利用物だ」

「こら〜、貴様〜!!」

「にゃ〜、お兄さんは千沙のお兄さんです〜」

「……いいえ、私の」

「何を言う、吾が輩のベストブラザーに手を出すな」

ガシッ

三人が俺の手足を持って引っ張り出した。

「痛だだだだ!!やめろ〜!!」

「にゃ〜!!」

「……やめません」

「貴様の為だ、我慢しろ」

「ぐわぁぁぁ〜!!」

その時、俺の体が変な音を立てた……


   〜つ・づ・く

written by 砕

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