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――『 蘇える約束 』――



「あゆ!しっかりしろっ!」
「裕一くん…」

いたいよ…
いたいよ裕一くん…
目がかすんできたよ――

「しっかりしろっ!傷は浅いぞ」

あいかわらず、うそがヘタだね。
でも、いいんだ。
だって、ボク…裕一くんに会えて…

「あゆっ!あゆっ!」

そんな大声で叫ばなくても…ちゃんと聞こえ…

「ゆう…いちくん」

ごめんね。
キミを泣かせるつもりなんて…
ほんとは、いつだって笑って…

「約束…だよ」









<GAME OVER>


 *


『おお あゆよ しんでしまうとは なにごとだ』




「ボ、ボクだって せいいっぱいがんばったんだよっ!」

うぐっ、なんだよ。
ひのきの棒と布の服だけで、どうやって魔王を倒せって言うんだよ!
お金だってほんのちょっぴりだしっ!…これじゃあたいやき3つ買っただけでおしまいだよ。

「だいたいなにっ!自分の娘が魔王に囚われたっていうのに、他人まかせで自分は・・」
「こらこら、いいかげんにしろ。すんません王様」
「うぐっ!裕一くん!放してよ!」
「…スポンサーさまに失礼…」

くそっ!
だいたい、トロの血をひく勇者さまがなんでこんなオヤジにぃ〜。

「あははー。じゃ、また行ってきますねー」
「がんばるぉー…くー」
「こら、名雪起きろっ!」



 *


「ふぇー。装備が足りませんねぇ」
「戦士の剣は舞のだし、睡魔の杖は勇者は装備できないだろ、佐祐理さんの装備は高価すぎてよけい危険だし…」
「…裕一は武道家だから武器もってない…」
「うぐぅ…じゃあ、またボクだけひのきの棒?」

そ、そんなぁ
あんまりだよ。

「だいたい、おまえがいつまでたってもLvあがらないから悪いんだろうがっ!」
「…すぐ死ぬし…」
「魔法も覚えてくれないし」

うぐぅ…呪文が長すぎるんだよぉ。
短縮ダイヤルみたいなのがあれば、ボクだって…

「おかげで佐祐理たち、こんなに強くなっちゃいました」
「おまえ…ほんとうに勇者なのか?」
「最近自信ないよぉ」

うぐぅ…だって…

「ボクがいつも先頭だから、すぐ死んじゃうんじゃないか!――もうあんな痛いのやだよ!」
「しょうがないだろ。“勇者は先頭”ってローカルルールがあるんだから」
「でも…」
「はいはい。約束どおり、あとでタイヤキ買ってやるから」
「うぐぅ、割に合わないよ」
 
  *

ちゃりらりら〜ん♪

『まこと が 3匹あらわれた』

「あぅー!」
「あぅー!」
「あぅー!」

わあっ!まだ心の準備がっ!

「あゆっ!指示をだせ!」
「う、うん」

『あゆのしじ――<ゆういち>にげる・ <まい>はげます・ <さゆり>はげます・ <なゆき>はげます』

「じゃあ裕一くんとボクは愛の逃避行。みんながんばって」

ぼかっ! どかっ! ぶすっ!

『まいのこうげき  かいしんのいちげき あゆはむしのいき になった』
『なゆきのこうげき かいふくじゅもんをとなえた あゆの ダメージかいふく』
『さゆりのこうげき まほうをつかった  あゆは さる になった』
『まいのこうげき――』
『なゆきのこうげき――』
『さゆりのこうげき――』
(以降、くりかえし100回)

 ・
 ・
「うぐぅ〜」

いたた、軽い冗談なのに。

「まじめにやれっ!」
「う、うん」

『あゆのしじ <なゆき> じゅもん』

「いくんだぉー。スリープの呪文……くー」
「寝るなぁっ!」

こ、この役立たずめ。
こうなったら!

『あゆのしじ <さゆり>かみかぜ <まい>とっこう』

「………」
「………」

さあいけ!カプセル怪獣たち!自爆呪文だよ!キミたちの犠牲は無駄に――うぐぐっ

「あははー!さあ、勇者さま」
「…英霊となって私たちを見守って…」

へ?
わぁぁ!なにするんだよぉ!

「…自爆呪文って、この構えだっけ?」
「あははー、これで経験値もらえますよー。よかったですね」

そ、そんな!
裕一くん、とめてぇ〜!

「Zzzzz」

うわあ!古典的な!
じゃなくてさっきの名雪さんの呪文でぇ〜!?

「どうせ生き返るから大丈夫大丈夫☆」
「…約束する」

「うぐぅぅぅぅ〜〜〜〜〜!」


どかぁぁぁん!


『あゆは じばくじゅもんをつかった まことを 1ぴき たおした
  ――けいけんち 4を てにいれた』



 *



『おお あゆよ しんでしまうとは なにごとだ』



  (Continue?)

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