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<黄色のリボン>

(注意)
AIR発売前に書いたSSです。あくまでも作者のフィクションですので、ゲーム本編とはいっさい関係ない事をご了承ください。



 「その黄色のリボンって・・・何なんだ?」
 「えっ?」

月が綺麗な夜に2人、砂浜に座って月夜を見上げていた私に急に声を掛けられる。
見上げていた視線を私に声を掛けると、彼・・・住人くんの方に向ける。
切れ長で冷たい瞳・・・だけど何か優しく見通すかのような雰囲気を持つ瞳が私を見ていた。

 「あははっ、これ? やっぱ目立つよねぇ!」
明るく振舞うように、ちょっと普段とは違うトーンで言い返す。
だけど、相変わらず表情を変えずに、ずっと見続ける彼。
 「あは・・はは・・・・・・・ねぇ・・そんなに聞きたい?」
 「聞きたい」

おぃ!

まさにそう言うツッコミが入るかのように思う。
(普通、こう言う言い回しをすると遠慮するもんでしょぉ!)
口元と目元を引きつらせながら、無理して笑顔を作る。

 「・・・ったくぅ、まぁそんなところがキミらしいだけどね」
ふぅ〜と一息つくと、砂浜に退いては返る波を見ながらポツリと話し始める。

 「昔・・・うん、昔の話。 近所に好きな人が居てね・・まだ子供の私だったけど、凄く好きだったんだ」
 「・・・・・」
 「わたしにはお姉ちゃんしかいなかったから、私のお兄ちゃんだと思って良く遊んでもらったの」
見つめていた海から視線を外し、
 「だけど今日みたいに暑い日に、家まで遊びに行ったときにね・・・」
膝を抱え、その間に顔を隠すように呟く・・

 「怖くないよって・・お兄ちゃんはわたしを・・・・」
 「・・・・・・」
 「いつものお兄ちゃんに見えなくて凄く怖くて・・嫌だったけど無理やりに・・・」
 「・・・・・・」
 「何だか凄く裏切られた感じがして、生きてるのが嫌になって・・・だから私は」
 「・・・・・・」
 「気がつくと1人、部屋のベッドに座ってカッターナイフを握っていたの・・・そして」
 「・・・・・・」
 「だけど・・・だけど! ・・・・だからリボンをしてるの。あの頃の私を見たくないからね」
そう言い、膝を抱えて俯いていた顔を上げ、彼のほうを向く。

ポカッ☆

 「い、痛ぁぁ〜〜いぃ!!」
不意に額に痛みが走る。
両手で額を押さえ、ちかちかする目をパタパタと瞬きすると目の前には・・・

 「アホなことを言ってないで、本当のことを話せ」
デコピンをし終わった指先を見せながら、声を掛ける彼の姿が見えた。
 「あれ? やっぱりバレちゃった?」
 「ったく、冗談も言っていいときと悪いときがあるんだ、覚えとけ!」
 「あははっ・・ゴメンねぇ」
とペロリと舌を出して謝る。

    ・
    ・
しばらく海を眺め、ちょっと赤くなった額を撫でる。
さてと。 と一言入れてから話し始める。

 「ねぇ、幸せの黄色いハンカチって知ってる?」
 「あぁ、そんなタイトルの映画があったな」
 「うん、それと同じかな? 私にも幸せがやって来ますように♪ ってね」
右手を上げ、巻かれたリボンを満月に向けて手を振るように揺らす。
 「それと目印」
 「目印?」
 「うん、あの月から迎えに来てくれる幸せの王子様が、ちゃんと私を見つけてくれますように・・・ってね」
 「アホくさ・・」
そう言い、砂浜に起こしていた上半身を寝かす。
 「あぁ、ひどぉ〜い!! 乙女の夢を壊すようなこと言わないでよぉ!」
そう言うと、同じように砂浜に大の字になるように仰向けに寝転ぶ。
寄せる波・・・引く波・・・しばらく波音だけが響く。

 「・・・・嫌なこともあったけど、誰でも幸せになる権利はあるんだよ。本当の幸せを見つけられたのなら」
ポツリと独り言のように呟く。
 「・・・・・・」
聞こえたのか聞こえなかったのか分からないように、目を閉じている彼・・
 「だから・・・だからキミにはちゃんと覚えていて欲しいんだ、この黄色いリボンをした女の子を・・・、そして必ず見つけてね」
パッとその場から立ち上がる。
それに続くかのように彼も腰を上げ、佳乃を正面から見据え、お互いの瞳を見つめる。
自然と佳乃の肩を両手で添えると、佳乃の目蓋が閉じられた。
 「・・・・・佳乃」
そう呟き、目をつぶると佳乃の唇を目指し顔を寄せる。

パチッ☆

 「ぐはぁ!!」
柔らかな唇の感触の代わりに額に痛みを感じ、触れていた肩から手を離すと額を押さえる。
 「やぁ〜い!引っかかったぁ!! さっきの仕返しだよぉ」
彼からパッと離れVサインを向けると、そこから走って行く。
 「・・・ったく、待てぇ!」
 「あははっ、嫌だよぉ! 捕まえてみなさいよぉ!」

月明かりを受けながら2つの影と足跡が砂浜につけられていった。
ときおり、満月と同じ色をしたリボンが大きく揺れながら・・・・


   ・・・(if)END・・・



 ★ヘッポコな言い訳第3弾(^^;
さてさて、1番の謎でもある右手に巻かれた黄色いリボン・・
いろんな説が流れて(?)ますが、やはりあれは何かを隠すために巻いてあるのかも?
とは思いました。 それが前半の件ですね。
でも、それだとあまりにもお約束すぎるので、もぅ1つ考えた「幸せの黄色いハンカチ」説をいれてみました。
これもまた何となくこじつけがましいですけどね。(^^;
 「月から迎えに来る王子様」
とか言うのは、かなり適当・・・でも何かのキーワードになれば良いかなと思ってます。
でも、AIRのポスターとかマウスパッドの絵柄には、佳乃ちゃんはリボン巻いてないんですよね・・謎?

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