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それは7年前・・・
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雨に濡れる町・・そして雨に打たれる小さな幼き身体・・・
1匹の猫が古びたダンボール箱の中に粗末な布切れに包まれ震えていた・・・
そこが彼女の住まい・・・そして世界・・・
時折あげる弱弱しい鳴き声を聴く者など無く、徐々に鳴き声も小さく途絶えていく・・・
ふと顔を上げ見上げると、更に強まった雨粒が容赦なく降り注ぐ・・・
絶望・・恨み・・憎しみ・・
幼い心に、そんな初めての感情を抱き始め、最後になるかもしれない鳴き声をあげた・・
突然、目の前に人の顔が視界の中に広がる・・・
不思議そうに覗き込むその子供の瞳・・・
一人と一匹の二つの瞳が見詰め合った・・・
「捨て猫か? お前なんて名前なんだ?」
『・・・・?』
とりあえず1つ鳴き声を上げる。
「お腹すいてるのか? う〜ん、今は食い物持ってないからなぁ・・・・しょうがない」
『・・・・!?』
その少年はそう言うかと小さな手を差し伸べ抱き上げる。
『・・・・・・』
暖かかった・・・憎んでいたはずの人の手がとても暖かかった・・・
「それじゃ行こうか」
ニャ〜
心からの鳴き声を1つ上げて私は抱かれる少年の胸に体を預ける・・・
捨てられるのは、もぅ嫌なの・・・・嫌・・・
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そして7年後・・・
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「えっと、新人の相沢祐一です。中途入社ですが宜しくお願いします・・・こんなもんかな?」
ビルの玄関扉に薄く映る自分の姿を見ながら少し曲がったネクタイを直す1人の青年
「ふぅ〜、さて俺の職場は・・・っと、13階の『華音総合警備』か・・・」
ビル内のフロア案内板で確認するとエレベーターへと進む・・・その頃、屋上では・・
キョロキョロ・・・ ビルの縁から小さな顔を覗かせる、まだ幼い表情を残す一人の女の子
「うぐぅ、化け猫って言うから怖かったけど、見た目は普通だね。ボク怖いの嫌だから安心かな」
「ふふふっ、昔みたいな時代が懐かしいよ。さて、キミの名前でも教えてもらおうかな?」
チャキッ・・・背中の羽付きリュックからボーガンを取り出し構える。
「ボクは月宮あゆ・・華音総合警備社長! 化け物退治がお仕事だよ、よろしく」
「ふふっ、初めまして・・・そして、さよなら」
ボンッ
側にあった監視カメラが爆発し、あゆの体が宙に舞った・・・
< カノン・ブリーダーズ >
北の大地に場を構える「華音総合警備」は
人類社会の裏側に暗躍する魑魅魍魎を撃退撃退すべく設立された民間企業である。
社会に安寧と秩序、そして食い物の安全を守るため、彼女らは今日も出勤する!
☆「・・・私は、紅の流れ星だから」☆
華音総合警備社員の相沢祐一は、とある通勤電車の中にいた・・・
『祐一くん、彼女と協力して退治して! 彼女の名前は「川澄 舞」・・頑張ってね♪』
「はっ? 誰だって・・・!?」
サクッ! 背後から襲おうと側にいた化け猫に割り箸が刺さる!!
「・・・お兄さん、割り箸の予備・・・持ってない?」
そこに現れたのは白いスーツに白いウエスタンハットを被った見るからに恥ずかしいカッコし、手には牛丼を持った女がいた。
「これ持ってて・・・・・食ったら・・・殺すよ」
そう殺気迫る雰囲気で呟くと、懐から出したルガーP08を乱射する。
・・・
☆「私、カッターと爆弾の扱いは得意なんですよ♪」☆
華音総合警備社員の相沢祐一は、とある遊園地の観覧車の中にいた・・・
「栞ちゃん? 美坂栞ちゃん!?」
「ふにゅうぅぅ〜・・・アイスはバニラが1番です。カレーなんて食べる人は嫌いですぅ〜」
追い詰められた状態の中、目をキラキラさせひとり場違いな雰囲気をかもし出すボブカットの女の子・・・
「ぐはぁ! 現実逃避モードに入ってるよぉ!!」
ドカッ! ドカッ!! 観覧車を壊しにかかる化け猫
「こうなったら! ちょっとゴメン」
ゴソゴソ・・・ 『ふみゅみゅ〜ん』となる栞の胸もとのポケットを探る。
「・・・意外と胸無いな・・ じゃなくてココら辺に・・・・・違う・・これも違う・・・あった!」
どうやってこれだけの物がポケットに入れてあったのか、数多くの中から目的の物を探し当てる。
「この手榴弾で・・・奴をふっ飛ばす!! とりゃぁー!!」
投げた爆弾の行方は・・・
・・・
☆「どぉも♪ 祐一さんの同僚で倉田佐祐理と申しますぅ♪」☆
華音総合警備社員の相沢祐一は、とある地下の下水道の中にいた・・・
『佐祐理さぁん、社長が怒ってまーす!』
「あははっー、契約がある以上、何壊そうが、何人死のうが知ったこっちゃないですよ〜♪」
顔は笑っていたが、目は笑ってなかった・・・
「俺、辞めますからね! 修理費用分ぐらいは働いたはずです!」
休暇なのに捕まった祐一が不満の声をあげる。電話を切った佐祐理は真顔のまま言い放つ
「お馬鹿さんですねぇ、ウチみたいに条件のいい所は他にないですよぉ」
「笑顔のままで、よく言えますね・・そんな事を」
その笑顔の影に言い知れぬ脅迫感を感じ、それ以上は言えない祐一だった・・・
・・・
☆「・・・捨てられるのはもぅ嫌なの」☆
華音総合警備社員の相沢祐一は、とある銭湯の前にいた・・・
「そんな訳で、おまえ今日から”真琴”って名前な」
「真琴?」
「俺の昔の好きだった女の子の名前さ」
とてとて・・と横に並ぶと、祐一の付けてくれた「名前」を繰り返す。
「まぁ他にも、殺村凶子とか、ピロシキなんてのもあるがな・・・どれが良い?」
「・・・真琴」
そりゃそうだ・・・と思いながら夕暮れの帰り道を二人で歩く。
とてとて・・・とてとて・・・
「ところで後ろの連中は何だ、おまえの仲間か? ・・おっかないから帰ってくんないかな」
なぜか二人の後をたくさんの猫達が着いて来ていた・・・
・・・
☆「運転手は運転がお仕事だお〜!!」☆
華音総合警備社員の相沢祐一は、とある地下室にいた・・・
「名雪? 名雪って俺が入社して以来、1度も見かけたことの無い・・・?」
「そう、その名雪さんだよ。彼女、運転が専門なの」
ぐにっ・・ 地下の薄暗い中を歩いてるうちに何か柔らかいものを踏んだ感触がする。
「うー・・重たいだぉ〜・・・」
「!! み、水瀬名雪・・・さん?」
地下の地べたに寝転んでいた体を起こし寝ぼけ眼で呟く。
「そうだよぉ〜、私がなゆ・・・・くー・・けろぴ〜・・」
「・・・・ね、寝てる」
糸目になり、立ったままフラフラと寝てる名雪に祐一とあゆは顔を合わせるしかなかった・・・
・・・
☆「・・・私、厚生省衛生二課の人事担当の香里と申します」☆
バンッ! バンッ!
新アビオニクス社内は阿鼻叫喚の渦となっていた。
「おいっ、彼は人間だ! 化け猫じゃない! ここの社員だ!! 死んでるぞ!! おまえがーー」
「不幸な事故ですね、残念だわ」
掴みかかっていた課長は、その他人事のような覚めた物言いに驚愕の表情を浮かべる。
「所員の被害は2%まで許可されてるから問題ないわ」
「許可!? 誰の許可だ!!」
「・・・・聞きたいの?」
背筋が凍りつくような冷たい瞳を向けられた課長は震える手を離すしかなかった・・・
・・・
☆「私達の他に何かが居たの・・」☆
同時刻・・綾金ラボラトリー内では化け猫駆除に厚生省のハウンドが投入されていた。
「天野! 応答しろ、天野っ!!」
一人残された美汐がマシンガンのマガジンの残弾を確認しながら通信に答える。
「はい、隊長・・」
「おまえ1人で状況に対処しろ、出来るか!」
「・・・美汐、了解」
空になったマシンガンを捨て、SIG/SAUER P228を取り出し、闇の向こうへと銃を構えた・・・
・・・
☆「本物の化け猫ですよ」☆
闇の中に姿が浮かび上がる・・・
「相沢・・・祐一さんでしたよね。探しましたよ」
「誰だ!」
目の前に一人の女性の姿が現れる。
「名乗りたいんですが私には名前が無いんです・・・通り名でよければ仲間からは・・・”秋子”・・と呼ばれてます」
そう名乗った彼女は、戸惑う祐一を尻目に言葉を続ける。
「近い将来”本物の化け猫”が行動起こします。それの目撃者になってもらいたいんです・・・あなたに」
「おまえら勝手に・・・!?」
その言葉が言い終わる前に彼女の姿は消え去っていた・・・
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無理やり化け猫との攻防に巻き込まれた祐一は、最大のピンチに陥っていた。
「さよなら・・・」
押さえつけられ動けないでいる祐一にエレベーターが迫る!!
「俺は辞めるんだー! こんな会社辞めるんだっ! 月宮ぁぁ!!」
「ハァイ♪」
あゆの気転により化け猫を御札のテリトリー内へと導く!
「き、貴様ぁっ!!」
「消去(デリート)!!!」
タンッ! バシュゥッッー!! Enterキーと共にまばゆい光が広がり化け猫が封印されていった。
「・・・・・・」
「どぉ? 楽しい職場だよね♪」
あまりの非常識な出来事に言葉を無くす祐一に、ニッコリと笑ったあゆが話し掛ける。
「・・・辞表書くから机を」
「うぐぅ、これ開放(ロード)しちゃうよ? キミを恨んでると思うし」
「・・・・・・」
化け猫を封印したというFDを目の前にチラつかせるあゆに、それ以上逆らうことは出来なかった・・・
〜 What's NEXT STAGE ・・・? 〜
<あとがき>
何となく読み返したアワーズのジオ・ブリーダーズが原型です。
おぉ! 結構キャスティングも合ってる気が!! (^^;
っと言うわけで、セラくんの「たとえばKanonほにゃらら・シリーズ」でした。
次は何にしようかなぁ〜? (ぉ
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