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< バースデイ・ミッション >



 ここはとある街のアパートの一室。
 今、ここで壮大…とも言えないが、壮大な計画が動き出そうとしていた…。

  ♪〜♪〜♪♪〜 (某スパイ映画のテーマ曲)

 ちゃぶ台を挟んで男と女が向かい合って座っていた。

 「さて…今日集まってもらったのは他でもない」

 エージェントナンバー001『相沢 祐一』。
 主に体力を駆使してミッションをこなすエージェント。知識、道具はあまり使わないというエージェントにしては変り種である。

 「あはは〜、祐一さんと佐祐理しかいませんけどね〜」

 エージェントナンバー002『倉田 佐祐理』。
 知能、身体能力、どれをとっても申し分無い実力の持ち主。エージェントとしてはトップレベル。

 「細かい事は気にするな。ところで話しの続きなんだが…」

 「はい、今度の計画の事ですね」

 「そう、今度の一月二十九日は他でも無い我等が川澄舞の誕生日だ。
  去年はとんでもない事になってしまったが、今年は違う。三人が同居するようになって初めての舞の誕生日だ。
  なんとしてもバースデイパーティを成功させるのだ!」

 「はい!」

 「……まあ、要するに今日は誕生日パーティの計画を話し合うだけなんだが…」

 「祐一さんはどうしますか? 誕生日プレゼント…」

 「そうだな…前回は二人でぬいぐるみだったが、今年はどうしよう…」

 「祐一さんがもう考えているなら二人で別々の物をあげても良いんですけど…」

 「それが全く考えてない(キッパリ)」

 「はぇ〜」

 思わず佐祐理が苦笑した。

 「考えていなかったわけでは無いんだが、なかなか良い物が思いつかなくて…」

 「随分と考えていましたからね」

 「ああ、夢でうなされたぞ」

 「では今年も二人で買いましょうか」

 困っている祐一を見て、佐祐理が笑いかける。

 「そうだな…。それが良いだろう」

 「じゃあ、決定ですね〜」

 ぽんと嬉しそうに手を合わせる佐祐理を祐一が制した。

 「って、まだ何をやるか決めてないだろ」

 「あはは〜、そうでした〜」

 暢気な声に祐一は力が抜ける。

 「で、以前はオルゴールとかぬいぐるみだけど、今年はどうする」

 「そこでちょっと考えたのですが…」

 「ん?」

 「今年は手作りのプレゼントなんて如何でしょう?」

 「手作りか…」

 「はい、きっと心の篭ったプレゼントになりますよ」

 「うむ、002君の意見を採用する!」

 「ありがとうございます♪」

 「で、何を作るの?」

 「………」

 「………」

 全ては振り出しに戻った。

 「がはぁ! 全然決まらねぇ!」

 「でも、手作りにするということが決まったので良いじゃないですか」

 「それもそうだが…」

 「思い出に残るような物が良いですね…」

 「思い出ね…」

 しばらく二人は黙りこんで考えていたが、やがて祐一が口を開いた。

 「思い出と言えばアルバム…アルバムと言えば写真…写真なんてどうだろう?」

 「でもそれだと手作りとはあまり言えませんね」

 「はぅ! そうだったぁ!」

 「それなら写真ではなく、絵では如何でしょう?」

 「絵…?」

 「はい、二人で舞に贈る絵を描くんです」

 「なるほど! その手があった! 流石だぞ002!」

 狂喜乱舞した祐一が佐祐理の頭をがしがしと撫でる。

 「きゃぁ〜」

 佐祐理が困ったような嬉しいような顔をした。

 「じゃあ、それだ! それに決定! 丁度今日は舞が出掛けてるから製作にはもってこいだ」

 「はい♪」

 こうして二人のミッションがようやくスタートした。


  ・・・・


 「とは言ったものの…」

 あれから二人は絵画用の道具を揃えて再びアパートの部屋へと戻ってきた。

 「俺は全く絵が描けないぞ…」

 「あはは〜、大丈夫ですよ。心が篭っていれば舞も喜んでくれます」

 「そうだな…舞なら喜んでくれるか」

 「はい♪」

 「それじゃあ、描くとするか。…で、どんな絵を描くんだ?」

 「三人が一緒にいる絵を描こうと思うんですけど…」

 「ふむ、まあ、妥当なところだな」

 「祐一さん、では早速描いてもらえませんか?」

 「いきなり俺かよ…」

 「佐祐理も手伝いますから」

 「んじゃあ、いっちょ舞でも描いてやるか!」

 祐一はキャンバスに向くと、鉛筆を持って描き始める。

 「え〜と…舞の顔は…こう…こう…」

 数分後

 「それから上半身が…こうで…」

 更に数分後

 「そして足が…」

 またまた数分後

 「出来た! …って、なんじゃこりゃぁぁぁ!」

 出来たのはピカソのような、何とも言えない…と言うよりは人間ではない物ができた。
 天才と馬鹿は紙一重とは良く言ったものだ…。

 「なんで腕が頭から生えとんねん!」

 ビシッ

 思わず自分にもツッコミを入れたくなるくらいだ。

 「あ、あはは…」

 後で見ていた佐祐理も苦笑いを浮かべる。

 「絵に関しての才能ゼロだな。こりゃ…」

 「だ、大丈夫ですよ。少し手直しをすれば良くなります」

 「佐祐理さん…本当にそれ心から言ってる…?」

 「はい」

 「少し棒読みに聞こえたぞ…」

 「さぁ、続きをやりましょうか」

 「無視かよ」

 そんな事はさて置いて、今度は佐祐理が鉛筆を握った。

 「では、祐一さんの絵を修正して行きますね」

 「おう、頼んだ」

 佐祐理は祐一の描いた部分を消して行く。

 シャッシャッ

 「お? おお、お〜」

 滑らかに鉛筆を動かしながらキャンバスに命を吹き込んで行った。

 「流石だ…上手すぎる…」

 「あはは〜、そんな事無いですよ〜」

 なんて事を言いながらも次々と舞の体を描いていく。

 「佐祐理より上手な方は沢山いますよ〜。佐祐理なんてその方達に比べたら子供のようなものです」

 「……これが天才というものか…」

 祐一は改めて自分との差を痛感した。

 やがて舞を描き終えた佐祐理は、続いて自分と祐一を描き始める。

 「もしかして俺…やる事無し…?」

 事実、祐一のあの腕では手伝えることなど何も無いのが現状だ。

 「それでは…色を塗って頂けますか?」

 「色か…色なら塗るだけだしな…それでも出来の良さは保障しないけどそれでも良いかな…?」

 申し訳無さそうに言う祐一を、佐祐理は優しく微笑み返した。

 「二人で作ることに意義があるんですから気にしないで下さい。大丈夫ですよ。きっと上手に出来ます」

 「佐祐理さん…」

 改めてその優しさに触れて、感謝の気持ちでいっぱいになる。

 「ありがとう…」

 「いいえ♪」

 二人が和やかな雰囲気になっていたその時!

 ガチャ

 「…ただいま…」

 「「!?」」

 突然にも舞が帰宅したのだ。

 「ま、舞!」

 ズサァァァァ!

 舞が居間に入るよりも早く、祐一と佐祐理が滑り込むように飛び出してきた。

 「あ、あはは〜、おかえり、舞」

 「ど、どうしたんだ? 帰ってくるのが早いじゃないか」

 「…用事が早く終わった…」

 舞は二人の異様な行動を不審に思いながら、居間に入ろうと――

 ズサァァァ!

 「へ、へえ、そうだったのか」

 −−したが祐一によってそれは妨げられた。

 「もうちょっと外でゆっくりしてきても良かったんだぞ?」

 「…外は…寒い」

 「そ、そうだな。確かに寒いな。あははは」

 「……祐一…今日はおかしい」

 「そんなことねえってばよ。俺はいつもこんなもんだということがありそうじゃないかということさ」

 「祐一さん、日本語が滅茶苦茶ですよ」

 「これが俺の標準語だ」

 「…やっぱり変…」

 明らかに舞は二人の様子がおかしいことに気が付いている。…まぁ、そんな事は傍から見ても分かることだが。

 「…祐一…佐祐理…」

 「な、何だ?」

 「なに? 舞」

 「…寒いから…入らせて…」

 「そうか寒かったか。そりゃぁ、寒かったろうな」

 「…じゃあ、そこを退いて…」

 「寒いならすぐにストーブを持ってきてやろう。ここでゆっくり温まると良い」

 「…ここじゃなくて部屋の方が…」

 「お〜、部屋ね…部屋は〜…」

 祐一が佐祐理の方を見た。

 「そ、掃除中なの」

 「そうだ掃除中なんだよ。舞」

 「ちょっと間だけ待っててくれるかな」

 「…掃除?」

 「そう、掃除」

 「…私も手伝う」

 「いや、別に手伝わなくても良いから!」

 「舞はここで待ってて!」

 もはや二人は必死だった。

 「…嫌われた…」

 舞がしょんぼりする。

 「いや、別に嫌ってるわけでは…」

 「そうだよ。佐祐理達が舞を嫌いになるわけ無いよ」

 「…祐一と佐祐理に嫌われた……私は孤独…」

 更に舞がしょんぼりする。

 「だから嫌ってるわけではないっての」

 「佐祐理達は舞の事が大好きだよ」

 「…そして祐一と佐祐理はラブラブ…」

 「なんでそっちの方へ話が進むんだよ…」

 「とにかく、舞は何も心配することは無いからね。だから機嫌を直して…」

 「…うん…」

 暗い表情だった舞の顔に少し笑顔が戻った気がする。

 「それじゃあ佐祐理と一緒に何処かに出掛けようか」

 「え?」

 「…祐一は…一緒じゃないの?」

 「祐一さんはちょっとやる事があるから」

 「ちょ、ちょっと佐祐理さん…」

 「邪魔をしないように佐祐理達は外に出てようね」

 佐祐理は舞の背中を押しながら、祐一に向かってウィンクをした。

 「ではちょっと外へ出掛けてきますね」

 ドアの外へ出る佐祐理に向かって祐一が小声で話し掛けた。

 「佐祐理さん、まさか俺一人で…?」

 「はい」

 佐祐理は何か困った事でもあったのか、という顔つきで笑った。

 「はいって…俺は佐祐理さんが色の指定だとか、色の作り方とかを教えてくれないと何も出来ないって」

 「大丈夫ですよ。祐一さんには出来ますから」

 「確かに色を塗るだけだけど…」

 「祐一さん、何を塗るかは祐一さんの心の中にもう決まっているはずです」

 「俺の…心の中?」

 「はい。祐一さんが思う三人のイメージをそのまま色にすれば良いんです」

 「俺が思う三人のイメージ…」

 その時、何かが祐一の脳裏を過ぎった。

 「佐祐理は祐一さんを信じています。きっと素晴らしい絵を描いてくれると…」

 「佐祐理さん…」

 佐祐理の笑顔に励まされ、祐一は少しずつやる気を出していった。

 「佐祐理…? 祐一…?」

 その光景を舞が不思議そうに見ていた。

 「あ、何でもないよ。舞」

 二人は祐一を残して部屋を出た。

 「祐一さん、それでは行って参ります」

 「…行ってきます」

 「ああ」

 「遅くならないうちには帰って参りますので」

 「分かったよ」

 「…祐一…私のプリン食べちゃ駄目…」

 「分かってるよ。食べたらどんな目にあうか分からないからな」

 祐一が苦笑する。

 「舞、行こう」

 「(コク)」

 バタン

 扉が閉まった音がしばらく部屋の中に余韻として残っていた。

 「…ふぅぅ…」

 祐一は息を吸うと深く吐き出す。

 「よっしゃ!」

 パン!

 顔を強く叩くと気合を入れてキャンパスに向かう。

 「やってやるぜ!」

 自分が思う三人のイメージから色を作っていく。

 「赤と黄色を少し…白も必要か…」

 混ぜ合わせた色を慎重に線画に塗る。

 「ここで失敗したら元も子もないからな…」

 手先は器用なほどではないが、何故かこの時はいつも以上に集中して作業が出来た。
 舞の為、佐祐理の為、そして自分の為。三人の為に祐一は塗り続けた。
 いつも小学校や中学校の美術の時間に、面倒だからという理由で適当に描いていたとは思えないくらいだ。
 人が絵を描く本当の理由、今まで考えた事も無いような事だが、今なら少しは分かるような気がする。
 自分の思いを伝える為に、自分の感動を残す為に、今こうして絵を描いていた。

 「俺でもこんなことが出来るなんて思わなかったぜ…」

 絵の出来は途中まで良い感じだった。
 しかし慎重にやっている代わりに時間はどんどん浪費されていった。

 「もうこんな時間か…早くしないと…」

 今まで昼間だったはずが既に夕焼けが窓から覗いていた。
 しかし祐一は慌てずに今まで通り慎重に色を塗り続ける。それは時間ではない、絵への執着であった。


  ・・・・


 それから何時間が経過しただろうか…。

 「出来た…」

 静かな部屋にぽつりと呟く。

 「やっと完成した…」

 その完成した絵には自分でも感動を覚えるくらいだ。

 「後はこれを舞に…って、一体何処に行ったんだ…?」

 窓からは日の光は見えずに、暗闇と人工の光だけがぼんやりと映っていた。

 「ったく」

 祐一は完成した絵を持つと上着を着て、ドアを開けた。

 ガチャ

 「雪か…」

 久しぶりに出た外の世界、それは暗闇に浮かぶように降り積もる雪景色だった。

 一旦、出掛かった体を部屋の中に戻し、絵を紙などで丁寧に包んでいく。

 「お嬢さん方二人にも困ったもんだ。こんな時間になっても帰ってこないで…」

 愚痴をこぼしながらもその顔には笑顔があった。

 「きついお仕置きが必要だな」

 そして祐一は再び外へと飛び出した。

   ・
   ・
   ・

 その頃…舞と佐祐理は自分達が通っていた母校の敷地内に立っていた。

 「舞、覚えてる? 佐祐理達…ここで出会ったんだよ…」

 校門から中へ少し入った場所、そこの地面を佐祐理が目を細めて眺めていた。

 「…犬さん…お腹ぺこぺこ…」

 「あはは、そうだったね」

 あれは今でも鮮明に思い出せる。一生忘れる事の無い素敵な思い出…。

 「あの時…舞に出会えて本当に良かったと思ってるよ」

 「…私も…佐祐理に会えて良かった」

 「佐祐理と出会ってくれてありがとう。舞」

 「…ありがとう…」

 「それとも、舞は祐一さんに会えた方が嬉しかったかな?」

 ビシッ

 言い切るのが早いか、佐祐理の頭に舞のチョップが炸裂していた。

 「はぇ〜、痛いよ。舞」

 「………」

 ビシッ

 答える代わりに再びチョップが炸裂した。

 「はぇ〜」

 頭をさすりながら佐祐理が微笑む。

 「…もう帰った方が良い…祐一が…待ってる」

 「あ、もうこんな時間…ちょっと長くいすぎたね」

 どちらともつかず二人が歩き出そうとしたその時…。

 「舞! 佐祐理さん!」

 「祐一さん?」

 「…祐一…」

 校門の前に息を切らせた祐一が立っていた。

 「ふぇ〜、祐一さんです…」

 「おう祐一さんだ。まったく二人ともこんな所にいたのか…わざわざ電車に乗って来なくても…」

 「あはは、すいません」

 「…祐一…疲れてる…」

 「そりゃそうだ。駅から走ってきたんだからな」

 「でも良くここが分かりましたね?」

 「なんとなく…な。ここにいるような気がして」

 「やっぱり舞と祐一さんは運命の赤い糸で結ばれているんですね〜♪」

 ビシッビシッ

 「はぇ〜」

 佐祐理の頭に二人のチョップがヒットした。

 「それより佐祐理さん、完成したぜ」

 紙に包まれた絵を佐祐理に見せる。

 「ご苦労様です祐一さん。きっと祐一さんなら出来ると信じていましたよ」

 「本当はもっと早く完成させるつもりだったんだけど…」

 「いいえ、気にしないで下さい」

 「…祐一…それ何…?」

 「さて…遂にこの時が来たか。佐祐理さん」

 「はい、そうですね」

 「…?」

 紙を取り外し、絵を裏返しにしたままそれを舞に差し出した。

 「「舞、誕生日おめでとう!」」

 辺りに静寂が流れる。

 「…誕生日…?」

 「そうだ。今日は舞の誕生日だろ?」

 「…誕生日…」

 「舞、おめでとう♪」

 二人に祝福され、始めは分からなかった舞も笑顔を見せる。他人からは分からないような笑顔だが、二人には明るすぎる程の笑顔だった。

 「…佐祐理…祐一…ありがとう」

 絵を受け取り舞が答えた。

 「それは誕生日プレゼントの絵だよ。祐一さんと佐祐理が描いたの」

 「おう、俺が色を塗ったんだぜ」

 「…絵…」

 絵を裏返し、その全てを初めてその目に映した。

 「…この絵…」

 そこには木漏れ日の差す小道を三人で歩いている姿。楽しそうに談笑している三人の姿が描かれていた。

 「…ありがとう」

 その楽しさが伝わってくるような絵を見ながら、舞は呟いた。

 「舞と祐一さんと佐祐理はいつでも一緒だよ、っていうところを描いてみたんだけど…どうかな?」

 「…嬉しい…佐祐理…嬉しい」

 「描いたのは佐祐理さんだけど色を塗ったのは俺なんだぞ? どうだ、なかなか上手いだろ」

 その時、舞の頬を一筋の涙が流れた。

 「な、なんだよ泣くなよ。なんか悪いことでもしたか?」

 心配そうに覗き込む祐一に舞は首を振った。

 「…違う…嬉しくて…嬉しくて…」

 「舞…」

 そっと祐一が舞と佐祐理の肩を抱いた。

 「俺達はこれからも一緒なんだ。その絵は今の俺達と、これからの俺達を描いたものなんだよ」

 「祐一さんの言うとおりだよ。佐祐理達はこれからもずっと、ずっと、一緒だよ…」

 「祐一…佐祐理…」

 「さぁ、帰ろうぜ」

 祐一が先立って歩き始める。

 「あ、でも祐一さん。電車の時間が…」

 最終電車の時間は既に過ぎていた。

 「そんなこともあろうかと、俺が秋子さんに電話しておいたよ。今日は泊めて下さい、ってね」

 「宜しいんですか…?」

 「ああ、一秒で『了承』だったよ。名雪も嬉しそうだったぜ」

 「ありがとうございます祐一さん、では…お言葉に甘えて…」

 「おう、遠慮なく泊まってくれ」

 「…祐一の家じゃない…」

 「うっ、それもそうだが…舞も泊まるだろ? まさか外で野宿なんてしないよな」

 「…外は寒い…」

 「そうだろう。だから今日は泊まっていけ」

 「…うん…」

 「じゃあさっさと行こうぜ。秋子さんが温かいスープを作っておいてくれるってさ」

 「…スープ…おいしい」

 「すまん、俺が遅れたせいでパーティーが出来なくて」

 「あはは、ではまた明日パーティーをしましょう。舞の誕生日パーティーを♪」

 「そうだな」

 「…ケーキ食べたい…」

 「任せろ。ケーキも俺が作ってやるよ」

 「…祐一…無理しない方が…」

 「むっ、なんだと…」

 「あはは〜、佐祐理と一緒に作りましょう」

 三人は談笑しながら雪の降る夜道を歩いていった。

 まるであの絵のように…。

 バースデイ…それはただの誕生を祝う日ではなく、新たな思いを生み出す為にも存在するのかもしれない…


   Fin


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