ケルンテン公国軍における兵器の命名法則

 軍隊と言うものは多種多様にして大量の物資を必要とする。そして、それらを円滑に管理するために、ある一定の規則に沿った命名が行われる事が多い。当然ながらケルンテン公国軍でも兵器に対して法則性を持った命名が行われていたと思われる。今回はそのケルンテン公国軍における命名法則について推察してみた。

歩兵用火器の命名法則
     まずは、最も基本と言える歩兵用火器について見てみたい。大まかな例だと
      M09
      M10W
      M17
      M25
      M27
      M29
      M32
      M35
      M35
      M35P
      M36A
      M37P
    と言った火器があげられる。
     この例から歩兵用火器は
      接頭語 & 採用年(下2桁) & 接尾語
    と言う法則で命名されている事が見て取れる。
     まず先頭の「M」であるが、これは軍用である事を示す接頭語である。この「M」は火砲や車両では用いられない接頭語であるが、銃の場合だと猟銃や警察用拳銃等も存在するため、それらとの識別に用いられた接頭語であると思われる。
     最後の接尾語であるが、これはその火器の性質を表すものであると思われる。例えばM10Wの場合、「W」は水冷式である事を表し、M35PとM37Pの「P」は対装甲火器であることを表している。ただし、この法則から外れるものも存在する。M36Aであるが、これはM36からフルオート機能を除いた改良型である。この場合、「A」は改良型であることを示しているが、さらに改良が加えられた場合は「B」となるのか「A1」となるのかは類例が存在しないため不明である。

装甲戦闘猟兵用火器の命名法則
     続いて、ケルンテン公国軍最大の特色とも言える装甲戦闘猟兵用火器について見てみたい。例としては
      JM16(G)
      JM26(Gr)
      JM35(MP)
      JM35(P)
      JM36(G)
    と言った火器類があげられる。
     装甲戦闘猟兵用火器の命名法則は中欧民族研究室の刊行した研究誌『CREATOR』によると
      接頭語 & 採用年(下2桁) & 接尾語
    となっている。
     まず接頭語であるが、「J」は装甲戦闘猟兵(イェーガー)用である事を表し、「M」は軍用である事を表している。つまり、基本的には
      J & 歩兵用火器名称
    となっている。この命名法則は、火砲の配備を制限するマインファルケン条約を逃れるため、あくまで歩兵用火器の亜種であるとするために決められからである。
     例を挙げるならば、JM16(G)を文字通りに受け取ると、装甲戦闘猟兵配備前に正式採用された装甲戦闘猟兵用小銃という些か不可解な名称になる。これはM16歩兵用小銃の装甲戦闘猟兵版とされているためで、実質的な採用は1918年であった。
     接尾語についてであるが、全ての装甲戦闘猟兵用火器に付与され、歩兵用火器よりも詳細に区分けが行われている。これは、短期間の間に多種の装甲戦闘猟兵用火器が採用されたため、混同を避けるための措置であると思われる。また、装甲戦闘猟兵用火器の接尾語は必ず”( )”で囲う事になっている。これは他では見られない独特の命名規約である。接尾語の意味については下表にまとめて表記しておく。
      接尾語意味
      小銃
      Gr手榴弾
      MP機関短銃
      拳銃

火砲の命名法則
     火砲についてだが、残念ながら名称に関する記録がほとんど残っていない。少ない例をあげると
      FH27
      FH30
    がある。
      接頭語 & 採用年(下2桁)
    と言う命名法則が推察されるが、サンプルが少なすぎるために何とも言えない。
     接頭語についてだが、どちらも野戦榴弾砲であるため「FH」となっている。他にも歩兵砲、対装甲砲、高射砲と言った火砲がケルンテン公国軍に採用されていた事は確実であるが、残念ながらその正式名称が記載さた信頼できる資料は発見されていない。

装甲戦闘猟兵の命名法則
     ここからは乗り物の命名法則について見てみたい。まずはケルンテン公国軍最大の特色である装甲戦闘猟兵から見てみよう。
      Ba−003S
      Gu−208B
      Gu−208E
      Gu−208F
      Ze−514B
    以上が内戦期間中に主に使用された装甲戦闘猟兵である。ここからは
      接頭語(設計者) & − & 基本設計番号 & 接尾語(連番or枝番)
    といった命名法則が見て取れる。
     接頭語の設計者については、いまさら説明の必要もない気もするが、Gu、Ba、Zeがそれぞれ十二博士のヴィルヘルム・グービッツ、グスタフ・バウアー、ザムエル・ツェルター氏の設計であることを表している。
     次にハイフネーション(−)であるが、これは他には見られない命名法則である。やはり装甲戦闘猟兵は特別であると言う事の現れであろうか。
     基本設計番号であるが、これは基本的に連番を表しているものと思われる。しかしながら、たかだか十数年の内に500以上もの基本設計の変更が行われるとは考えにくいため、
      基本設計番号 = 何らかの種別を示す番号 & 連番
    で示されていると考えるのが自然であろう。この場合、連番が1桁と言うのは考えづらいため、
      基本設計番号 = 種別(1桁) & 連番(2桁)
    であると推察される。例から更に推察すると、「0」は軽量級、「2」は中量級、「5」は重量級を表しているものと思われるが、重量級が「4」ではない事が些か不可解ではある。中量級が主力となると考えられマージンを大きく取ったか、重量級の開発が芳しくなかったため「4」番台が全て埋まってしまったのかもしれない(その場合、約1月に1回の基本設計変更が行われた事になる)。もしかすると、設計者を表しているのかもしれないが。そうすると接頭語の存在意義がなくなる上、最低でも6人の十三博士が王立兵器工廠で開発を行っていた事になる。さすがにこれは間違いであろう。

    2001/09/18 ADD
     王立兵器工廠で開発を行っていた十三博士全員の氏名が判明しました。

      グスタフ・バウアー
      ザムエル・ツェルター
      ヴィルヘルム・グービッツ
      ユルゲン・ポント
      ニコライ・ローテンベルガー
    の5名です。以上より種別(1桁)が開発者を表していたとする可能性は、ほぼ無くなったとして良いでしょう。

     連番についてであるが、Gu−208Eが1925年ロールアウト、Ba−003(S?)が1932年ロールアウトであるため、設計者もしくは種別毎の連番であろう。
     最後の接尾語であるが、これはGu−208系統のE→Fという例を見てもわかる様に、装甲板や発電装置などの変更毎にカウントアップされていくアルファベットによる連番である。ただ、Ba−003Sに関しては、その開発期間の短さから19番目の改良型であると考えにくく、偵察型と言う用途を示す枝番であろう。
     また、装甲戦闘猟兵については接尾語ごとに愛称が付けられている。
      Ba−003Sシュピーゲル
      Gu−208Bバヘッテ
      Gu−208Eエカテリーナ
      Gu−208Fフェオドラ
      Ze−514Bボック
    見てわかる通り、それぞれが接尾語を頭文字とする単語である。この愛称は設計者の趣味で付けられていた様で、それぞれ
      バウアー家具
      グービッツ女性
      ツェルター(角のある)獣
    の名称を愛称としてつけていた。

戦闘車両の命名法則
     ケルンテン公国軍においては、どうしても装甲戦闘猟兵を優先してしまったためか、戦闘車両の種類はあまり多くない。その少ない中から例を挙げてみると
      S35
      P37D
      P37G
      P37F
    がある。ここでも、
      接頭語 & 採用年(下2桁) & 接尾語
    という法則が見て取れる。
     まず接頭語であるが、これは車両の種別を表している。「P」であれば戦車を、「S」であれば装甲車である事を示している。これはそれぞれPanzer、Sonderの頭文字からとったものであろう。
     接尾語であるが、これはその車両の性格を表している。「D」ならディーゼルエンジン搭載、「G」ならガソリンエンジン搭載、「F」なら対空と言う風である。
     戦闘車両にも愛称が付けられている。
      S35アンティローペ
      P37Dイーゲル
      P37Gイーゲル
      P37Fフラックイーゲル
    これから見てわかる様に、戦闘車両には四脚の動物が愛称としてつけられていた。またP37Fに関してはただ単純に、原型となった「イーゲル」に対空砲と言う意味の「フラック」をつけただけである。

航空機の命名法則
     最後に航空機の命名法則を推察してみる。
      Se12
      Se29
      Se32
      S&M1
      Da5
    この中でSe29は海軍機で他は陸軍機であるが、どうやら航空機に関しての命名法は両軍で統一していた様だ。
     命名法則は大まかに見て
      接頭語 & 数字
    である。
     接頭語に関してであるが、これはメーカー(設計所)を示している。Seならゼーヴェリンク、S&Mならシュペーア&モーデル、Daならドライ・アーと言う意味である。中でもシュペーア&モーデルがSMやSmではなくてS&Mとなっている点が面白い。
     さて数字部分であるが、どうやら設計所ごとに異なっている様だ。各資料を見てみたところ、どうやら
      ゼーヴェリンク不明
      シュペーア&モーデル軍採用連番
      ドライ・アー社内計画連番
    と言った法則でつけられている様だ。
     ゼーヴェリンク社製機体の番号についての資料は現在発見されていない。が、Se32は1934年度の計画で開発が始まったものであり、採用は1935年であることからして、採用年や計画年を表す数字でない事は確かである。また1937年段階で1社の軍採用機が32機もあるとは考えにくい。これらから消去法ではあるが、ゼーヴェリンク社の機体に割り振られた番号も社内計画連番に類するものだと考えるのが妥当であろう。
     また、シュペーア&モーデルの場合は初めて計画した軍用機がそのまま初採用となっているため、もしかするとこちらも社内計画連番であるかもしれない。とすると
      接頭語(設計所) & 社内計画連番 
    と大きく2種類に分けられる事になる。
     また、ドライ・アーに限ってであるが 
      接頭語(設計所) & 社内計画連番 
    の後ろに更に
      メジャー・バージョン(アルファベット1文字) & / & 細部仕様
    と言う識別がつくとする資料も存在する。もっともこれは、単に他の設計所の記録が見つかっていないだけの可能性もある。
     航空機に関しても、やはり愛称がつけられている。
      Se29コルモラン
      Se32ファルケ
      S&M1グライフ
      Da5シュテルン
      Da7メイブ
    ゼーヴェリンクの機体は鳥で統一されている。シュペーア&モーデルの場合、空想上の怪獣「グリフォン」であるが、これはライオンと鷲を掛け合わせた姿をしていて翼を使って空を飛ぶこともでき、ある意味「鳥」とも言えよう(空想だが)。また硅緑内戦中に多数開発されたシュペーア&モーデルの計画機は全て鳥の名前がつけられている。この事からも、ケルンテンの航空機には鳥の名前が愛称としてつけられていたと言えよう。
     ただし、これには例外がある。ドライ・アー社だ。同社の機体にはシュテルンやメイブと言った、鳥(もしくは飛ぶ)とは全く関係のない愛称がつけられている。同社機体の愛称は全て開発時につけられており、それがそのまま採用された様だ。
     ふと考えてみると、シュペーア&モーデル社の計画機である鳥たちも、全て開発時に付けられた愛称だ(そもそも、これらの計画機は「正式」には採用されていない)。もしかすると、コルモランやファルケも開発時の愛称であった可能性もある。それどころか、装甲戦闘猟兵の場合も設計者が趣味で愛称をつけているため、むしろ開発時にコルモランやファルケも開発時の愛称であると考える方が自然かもしれない。となると、航空機に関する愛称は特に命名法則があった訳ではなく、開発関係者が独自につけていた(その場合、鳥を意識していた。シュペーア氏は明確に鳥を意識していた事が記録に残っている)。そしてその愛称が採用後も引き続いて使われた。ただそれだけの事であるかもしれない。




 以上、ケルンテン公国軍の命名法則について大まかに見てみた。今回上げた例の他にもSi−01CやJukIと言った兵器もあるが、これらについては開発計画時の名称については多くの資料があるが、正式名称に関しては資料が残されていない。しかしながら、今回推察した命名法則に当てはめてみた場合

    Si−01C(装甲戦闘猟兵用)JM38(MG)
    JukI(装甲戦闘猟兵用)JM38(G)
という正式名称であったと推測できるであろう。

参考資料




リアル参考資料




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