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 最近の健康志向の高まりから、お客様との話の中でも、食品の安全性への関心度の高まりを感じることがあります。その中でも農薬問題は、とりわけ関心度の高い問題なのではないでしょうか。出版物やネット上には農薬についてのさまざまな情報が飛び交っています。

 その部分を正確にお伝えすることは、食べ物を生産している私たちの責任であるとも考えています。限られた農地、労働力の中で、お客様に安心して食べていただける農産物をいかに作り出すか。そのために、今私たちにできる最大限のことはなんなのかということについて、三軒屋のスタンスをしっかり整理していく必要があると思い、このページをつくりました。

 いろんな考え方があるとは思いますが、現実を踏まえ誠実な気持ちで整理してみました。ご意見などがありましたら、今後の我が家の農業経営にとって貴重なご意見として参考にさせていただきますので、ドシドシこちらまでお送りください。 → 三軒屋へメール
あるお客様との話の中で
先日、剣道仲間の鈴木さんとの間でこんなやりとりがありました。

 「佐藤さんのおうちでは無農薬野菜は作ってないのですか?」

 「すみません。うちは無農薬栽培はしてないんです。無農薬では量が取れなかったり、見た目の点で一般的に通用する商品にならならなくて・・・。」

 「そうなんですか・・・。実は、ご近所の奥様仲間で無農薬野菜の関心度が高いんですよ・・・。値段が多少高くても買いたいという方が結構いるんです。」

 鈴木さんの残念そうな表情が印象的でした。現在、三軒屋で栽培しているイチゴや水稲、梅・・・、これらはみんな無農薬ではありません。鈴木さんにお答えしたように、作物を侵す病気や害虫に対して薬を使って防除をしないと、作物の生育は著しく悪くなってしまい、収穫量が少なくなったり、見た目が悪くなって商品としての価値が下がってしまいます。

 作物の種類にもよると思うのですが、収穫量が大きく減ってしまうので、多少高めの値段設定ができたとしてもカバーできないというのが一般的なのではないでしょうか。

 そうは言っても、最近では有機栽培や無農薬栽培に取り組んでおられる生産者の方も増えてきたように思います。以前の職務の中で、そのような取組をされている生産者の方と何度かお話をする機会があったのですが、皆さん無農薬栽培でも収穫量の減少を最小限にとどめるための別の技術を駆使していらっしゃいます。

 害虫や病気の温床となる畑の周囲の雑草をこまめに取り除いたり、時には作物についている害虫を手でとったり(業界用語で「テデトール」)・・・。気の遠くなるような作業を積み重ねて、無農薬農作物はできているのです。ですので、労賃まで考えると、「収穫量が半分で、値段が2倍だからツーペイ」といった単純な話ではないようです。ある程度採算面を抜きにして考えていかないとできないことなのかもしれません。

 「三軒屋では無農薬栽培はできませ〜ん。」と言ってしまうと話が終わってしまいますが、なぜ農薬を使用しなければ農業経営が成り立たないのかについて、しっかり整理をし、お客様に正確にお伝えする責任があると考えさせられました。
農薬の使用基準について
農薬の使用方法について 農薬には、その使用基準が法律で厳しく定められています。それは、農薬を使用して栽培した作物を人が一生涯毎日食べ続けても一切健康に影響がないという濃度と散布方法を想定して設定されています。

 農薬の使用方法の一例を挙げてみたいと思います。農薬のパッケージにはこんな記載がされています。

作物名        レタス
適用病害虫     オオダバコガ、ハスモンヨトウ
希釈倍率      2000倍
使用方法      散布
使用時期      収穫7日前まで
本剤の使用回数  2回以内
散布液量      150〜300リットル/10a
総使用回数     2回以内

 この農薬の場合、2000倍に希釈して10a当たり150〜300リットルの量を トータルで2回以内の散布におさめ、散布してから7日以上おいて収穫したものであれば、その農産物を一生涯毎日食べ続けても人体には一切影響が出ない、ということになります。

 生産者は、この使用基準を守って農薬を使用することが法律で義務付けられており、この厳しい使用基準を守って使用している限り、作物の中に人の健康を損なう農薬は残留しないということになります。

 一生涯毎日食べ続けても一切健康に影響がないと書きましたが、どういうことなのか、もう少しだけ踏み込んで書いてみたいと思います。


@ADI(1日許容摂取量)
 マウスやラットに毎日いろんな濃度の農薬を混ぜた食べ物を与え、臓器や生殖機能に異変が生じていないかを調べます。その結果、この量であれば毎日食べ続けても異変が生じないという農薬量(動物の体重1キログラム・1日当たり)が導き出されます。

 この数値を人間に当てはめるために安全率(1/00)を掛けます。この数値がADI(Acceptable Daily Intake)と呼ばれます。単位はmg/kg/dayです。動物実験の結果を100倍薄めた量を設定して安全性を確保しているのです。

 そして、このADIに日本人の平均体重53.3kgを掛けることにより、日本人が一日に摂取しても許容される量が決定されます。

A登録保留基準と残留農薬基準
 日々の食生活で、人間が1日に食べている食品の量を厚生労働省が調査しています。そして、この1日の食生活の中で摂取される残留農薬が1日に摂取しても許容される量(ADI×53.3kg)の8割を下回るように設定されているのが、農薬の「登録保留基準」というものです。

 一定の方法で使用した農薬の残留量を各作物ごとに調べ、それをさらに大まかな数値(外数で、かなりおおまかな数値)を基準値として設定します。大まかというのは、例えば、試験である作物に残留している量が0.97ppmと出た場合、安全面を見て2ppmにするなど、予想外にたくさん残留してしまうことを想定して基準値を定めます。

 この安全面を見て大きく設定した基準値に、人間が一日に食べる各作物の量を掛け合わせて1日の推定摂取量の合計を算出します。

 この推定の摂取量の合計が、1日に摂取しても許容される量(ADI×53.3kg)の8割以下(本当は、これに大気中や水から摂取される残留量も加味されているようです)になるように、それぞれの作物ごとに残留量を設定したものが、農薬の「登録保留基準」ということになります。

 「登録保留基準」は、日本人の食生活を前提に定められていますが、「残留農薬基準」はさらに国際的な情勢も考慮して設定されているそうです。

農薬の使用基準の決め方 作物への残留性のほかに、水生動植物や昆虫、鳥類など、自然界に与える影響などを加味して、最終的にひとつの農薬の使用方法が決定されることになります。

 明らかにの毒性のない濃度を割り出す作業から、安全率に安全率を重ね、さらに環境への影響も考慮した上で、晴れてひとつの農薬が世に出ることになります。



<参考> 農薬ネット http://www.nouyaku.net/tishiki/tishiki.html
      農林水産省 http://www.maff.go.jp/nouyaku/
農薬使用に反対する消費者の方のご意見
 最近では、訳あり商品の代名詞として「有機農産物」や「特別栽培農産物」などをよく見かけるようになりました。

 「有機農産物」とは、簡単に言うと化学処理された肥料・農薬を使用せずに栽培した農産物で、第三者機関によって有機農産物の認証を受けた農産物のことです。JAS法によって定められています。

 「特別栽培農産物」は、化学肥料・化学合成農薬の双方を慣行栽培の5割以上減らして栽培した農産物のことで、「無農薬栽培農産物」、「無化学肥料農産物」「減農薬栽培農産物」、「減化学肥料農産物」に細分されています。農林水産省がガイドラインによって定めています。

 いずれも、まがい物を排除して消費者に安心感を与えるための制度といえると思います。ところが、その制度の詳細がなかなか一般社会に浸透していないようにも感じる時があります。そして、両者には意味合いに少し違いがあるのではないでしょうか。

 例えば、「有機農産物」では、化学合成の農薬や肥料は使用してはいけませんが、天然由来の農薬や肥料は使用しても良いことになっています。除虫菊から抽出した殺虫成分を主成分とした農薬や石灰と硫黄の合成剤などは正規に登録の取れた立派な農薬ですが、使用可能となっています。必ずしも「有機農産物」イコール「無農薬」ということではありません。

 一方で「無農薬栽培農産物」は、農薬という農薬は一切使用してはいけないことになっていますが、「減農薬栽培農産物」や「減化学肥料農産物」は慣行栽培に比べて5割以上削減して栽培した農産物となっています。「では、慣行栽培ってどのくらいなの?」と尋ねられたことがありますが、「地域によって異なるので一概に言えません」というのが答えです。実際は、都道府県レベルで作物ごとに慣行栽培での使用量(農薬の場合は使用薬剤数、肥料の場合は総量)をおおむね定めています。

 これらを踏まえた上で少し考えてみると、「有機農産物」は化学合成物質を自然界に放出しない主旨の制度であり、「特別栽培農産物」は慣行栽培での使用量が全国一律ではないという問題点もありますが、絶対量の削減という意味合いになると思います。

 商品としての聞こえはすばらしく良いのですが、制度の内容が実にややこしいので、生産者でもあまり詳しいところまで承知しておらず、お客様にしっかり説明できる方も少ないかもしれません。商品を選択する消費者の皆様もこれらのことをよく理解したうえで、賢くお買い物をしていただきたいと思っています。
三軒屋のスタンス
 世の中にはどんな事柄にも良い面と悪い面があると思います。日常生活でなくてはならない自動車ひとつとっても便利で豊かな生活を提供してくれる反面、排気ガスによる環境破壊の一面もあります。農薬も世の中の悪玉として捉えられがちですが、農産物を大量にかつリーズナブルな価格でお客様にお届けし、生活を豊かにしてくれる大切なアイテムであるとも言えると思うのです。

 「農薬の毒性が怖いから、この世の中から農薬をなくしてしまえ!」という議論は、「環境に良くないから自動車をなくしてしまえ!」という議論と同じくらい極端な考え方かもしれません。大切なことは、良い面をより大きく、悪い面をより小さくしていく努力ではないでしょうか。そして、その悪い面を少しでも小さくしようとする取組が、農薬メーカーや国の厳しい試験や審査であり、使用する我々の適切な使用だと思います。

 最近は以前に比べ、農薬の適正使用に関して生産者の意識も格段に高まっていると思います。しかし、そんな中でもひょっとしたら隠れて悪いことをしている生産者もいるかもしれませんし、いないかもしれません。スーパーに並んでいる農作物にもよく生産者の名前がついていますが、その商品は絶対に安心・安全な農作物かもしれませんが、そうではないかもしれません。その人自身をよく知らないから結局真偽は分からないのです。

 私たち三軒屋は直売に力を入れています。お客様とお話をするチャンスがたくさんあるからです。そして、お客様とお話ができたなら、お互いをもっと良く知り合い、信頼関係を築きたい・・・そう思っています。その信頼関係こそがお客様にとっての一番の安心材料だと思うからです。お客様に私たちを知っていただくこと、これこそが究極のトレーサビリティシステムだと思います。

 農薬使用にあたっての三軒屋の基本スタンスです。

@国や県の安全基準を信じ、その基準から反れることなく誠実に使用すること
A作物の状態をよく観察し、必要な時に必要な分だけの処置を行うこと
B使用した事実は隠すことなくお客様に伝えること

 「三軒屋のイチゴは、一生涯毎日食べ続けても健康にはまったく悪影響はありません。」と胸を張っていうことができます。どうか安心して召し上がっていただきたいと思います。