ユーリ、あの日、一緒に走ったよね
手を握って、息を弾ませながら

私が「生きてるって感じがした」って言ったら、あなた恐い顔をして
「死にそうになったんだぞ、分かってるのか!」と怒った。

でも、そのあと「君が大事なんだ、君だけは死なせたくない…」って言ってくれて…
あの時、始めて私に見せてくれたあなたの愛情を、私ずっと大切に思っていた。

いつかあなたと幸せになりたい。
それが夢だと分かっていても、もしかしたら、もしかしたら…そう心のどこかで思うようになったのはあれからだった。

裏切られても、心の奥底ではもう1人の私が、じっとその事を信じていた。

だから、あのフェンスで誓ったとき、嬉しかった…
あなたのキスが、まるでウエディングの誓いのキスのように感じられて。

あの時、一瞬、未来が見えたのよ、私の隣に笑顔のあなたがいる未来が。

だから、私、微笑んだでしょう…
もう、それだけで十分だった。
十分幸せだったの。

あなたの手で逝くのなら、本望だった。
なのに…



理得、あの日、震える手で、大切な宝物を触るように触れた柔らかな頬が、俺の堰を外してしまった。
愛という感情が、他の全ての感情を押し流してしまった。
目の前の愛する人を抱きしめたい…あったのはただそれだけだった。

逃れられない道を歩く俺と、自由な道を歩く君の、どこで道が重なってしまったのだろう。
あのエレベーターの中で、君の手を取った時だろうか…

ロウソクの灯りを一緒に見た事を覚えてる?
君は俺のことを何も知らず、無邪気にロウソクの炎を綺麗だと言った。

あの一言で俺は救われて、いつしか君を特別な目で見ていた。
その君を巻き込みたくはなかったのに…大切な君だから幸せになって欲しかったのに…
なのに、俺は…

本当は、ずっと守りたかったんだ、理得、君のことを。
この手で守ってやりたかった…


掌に残されたライターの重みが辛かった。
でも、あなたが残してくれた命をつなぐ事…それが新しい力になったの。
私には私の残された役目があったのだと思えることが出来たし…

ユーリ、すぐに会えるよね。
そしたら今度こそずっと一緒だよ。

私達の繋がりは、きっとこの子が継いでくれる。
この子が私達の分まで幸せになってくれる…そう信じています。


理得、手を広げて待っているから…
そうしたら、今度こそずっとこの手の中で一緒だ。

ずっと一緒にいよう…