趣味の部屋

     俳 句  そのニ

    母と居て

     母と居て遥かに日脚の伸びる山    大き鍋母好物の栗きんとん

      葛ざくら母の笑顔を見て足れり      蝉時雨聞こえぬ母に添ふ散歩

      半夏生母は一途に毛糸編む      浮き草や母の繰言さかわらず

      母すでに童女となりぬシャボン玉     籐椅子に深々母の寝息かな

      シャクナゲを愛でる小さき母の背な    福寿草陽の溢れたる母の部屋

      野菊咲く母の手をとり不動道       草虱採りつ採られつ母と往く

      母の背に山の陽溜まり石蕗の花     秋日和一つ日傘に母とあり

 

    老々介護

      老母へ繰言こぼすボケの花    老々の介護に仰ぐ桃の花

    マンサクに一息入れし老介護   介護して明易しかや老いの身に

    春愁や介護懈怠のしじまあり   幾たびの母を厠へ夜半の冬

    母介護五感するどき寒夜かな   短夜のひとり介護の厳しさよ

    母の意に叶わぬ介護寒の水    老介護厳しさに耐え寒牡丹

    木の葉髪いとほしむがに朝な梳き 先見えぬ介護明け暮れ鳥雲に

    介護もて句作に遊ぶおぼろかな

 

   母は施設へ

   花の坂母を預けて振り返り    母を預けほろほろ泣きて散る桜

    母如何に夕永き刻もてあまし   母は施設に独りの永き日を余す

    青嵐茶山に母を捨つるがに    家恋しと母の口ぐせ花しょうぶ

    老母に逢ふて切なき花みかん   花みかん匂ふ施設の母に詫び

    老母を預けて沁みいる花みかん  母を預け罪を悔いる若葉冷え 

    梅漬けて日毎小さき母訪はな   さくらんぼ狩り母を忘れる小半時

    七夕や施設の母を遠見して    垣間見る小さくなりぬ母の夏

   「 帰りたい!」と母より暑中ハガキ着く

    秋めくや家恋ふ母の小さき声   秋の野を逸り施設の母を訪ふ

    母お在す施設は遥か野路の秋   秋の暮れ母も手を振り別れけり

    チヽチヽと母恋ふ吾れにちちろ虫 稲穂垂れ施設介護のありがたき

 

   母昇天

   渾沌の母は花野を駆け巡る   

           母昇天煌々たる月に導かれ

         母の通夜祭り囃子と望の月

   母の骨拾ひて素風背を抜けり   母生れし日は敬老の日に野辺送り

    葬り了へて母に詫び入る夜長かな 母逝けり花野に吾れを残しまヽ

    母逝きて独りとなりぬ月あかり  夢に見て花野に母の車椅子

           十六夜の母よ父に逢へましたか?   

                             


                               

 

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