1.浄化に対する止水と流水の相異

富士市から沼津市に通勤している男性から
(1999年12月27日)

・・・・略・・・・
 沼津の河川、および狩野川河口の水質は悪化の一途をたどっている
とのことで、将来的にそこに住む生物への影響が心配されます。何か
と質問をすることがこれからあるかも知れませんので、その時はよろ
しくお願いします。
 今年初め、狩野川河口の最河口に10平方メートルほどの池が出現し
ましたが、オオカナダモが発生し、水質的にかなり良好な状態を保っ
ているようにも見えますが、もちろん化学的に分析したわけではあり
ません。魚も泳ぎ、トンボもかなり飛び、卵を産んでいました。ある
意味で自然の浄化作用と言えるかも知れません。オオカナダモが燐の
除去に少なからず力を持っているということを貴ホームページの模型
河川で知ることができました。
 ところで、川と池、すなわち流れのある水と停止した水の中での、
これら植物の水質への浄化効果の違いなどはあるのでしょうか。何か
しら実験結果があれば教えて下さい。

メールが遅くなりすいませんでした。(1999年12月31日)

  流れのある水と停止した水とで水中植物による浄化の違いがある
かとのご質問ですが、私どもで実験したことはございません。
植物や土を入れずに水槽と模型河川とで比較したことはあります。
学校の池の水(1リットルあたり0.1gのデンプンを添加)で22
時間の実験をしました。水槽の水ではデンプンはあまり減少しま
せん。同じ水槽でもエアーポンプで空気を送ったものは少し減少
しました。酸素が与えられて水中の細菌が活発にはたらいたもの
と考えられます。使い込んだ模型河川では6時間でデンプンが半
分以下になり、12時間でほとんど無くなりました。水路にデン
プンを分解する細菌が繁殖していたと考えられます。そして作っ
たばかりの模型河川では全く減少しませんでした。作ったばかり
で初めて使ったのですから水路には細菌はほとんど付着しておら
ずこれが流れのある水と停止した水との比較になると思います。
流れのある水では水中の細菌による浄化は小さいことになります。

 また、「溜めた水は腐るが動いている水は腐らない。」という
話を聞いたことがあります。これは溜めた水には酸素が供給され
ず、嫌気性細菌による腐敗が生じ、動いている水では好気性細菌
による分解(浄化)作用が生じると説明できます。

 実際は池の底や岸、河の底や岸には動植物・菌類があるわけで
すから同一には考えられません。
 私どもでオオカナダモによる浄化の実験をビーカーまたはフラ
スコで実施したことがありますが、うまく育たずすぐに止めてし
まいました。その時は適切な生育条件を検討せず、「河川の浄化
を研究しているのだから模型の河川を作ろう」ということになり
ました。それからビーカーでの実験はほとんど実施していません。
 流れている水の方が常に新しい水が植物体に接し、燐などの吸
収が速いような気がしますが、実験してみなければどういう結果
になるかわかりません。

      もし静止した水で浄化が見られれば、生活排水処理装置もこれ
までと違った形式のものが考えられます。

 お返事が長くなり、また答えになっておらず、すいません。
私どもにも大変興味があることです。
 お願いがあります。ホームページ「河川の浄化をめざして」の
「12.メールより」にメールの一部を掲載してもよろしいでしょ
うか。どなたか比較実験をされた方がいらっしゃるかもしれませ
ん。

 それでは良いお年をお迎え下さい。来年も宜しくお願い致しま
す。

(1999年1月10日)

・・・・略・・・・
 主に水の汚濁浄化に寄与しているのは細菌、および藻などの植物
ということは分かりました。細菌が働く為には酸素が必要であり、
そのためにも水流、あるいは藻の働きが必要だという構図も見えて
きました。
 水流のある川に比べ池は、その浄化作用において不利かどうかの
比較は難しい、あるいはある意味でベースが違うので、それぞれの
浄化の仕組みの違いを考えるべきかもしれないということも分かり
ました。
 池の浄化においては、植物(藻類を含む)と菌類をベースとして
魚や野鳥、は虫類、両生類、昆虫などの存在が大きくかかわってく
ることは間違いありませんね。
 最近テレビで、沼の芦刈り(ヨシズなどを作るため)が沼の浄化
に寄与していたというのを耳に挟みました。アシが泥中の無機物を
吸い取り、それを人間が運び去るというわけです。かつて、人間は
自然に関わる事において、自然環境の保護に知らず知らず関与して
いたというのです。
 川、池、沼など、それぞれの様態によって、自然の自浄作用が機
能しているのだと思いますが、今や人はその自浄作用を阻害する方
向に向かって来てしまったようです。
・・・・略・・・・


その後メールを交換し、いくつかのホームページでオオカナダモによる
水質浄化の仕組みを知ることが出来ました。
しかし、静止した水と流れている水とで藻類が水質を浄化する作用に
どのような違いがあるのかを調べることは出来ませんでした。

どなたかご存じの方がいらっしゃいましたらお知らせください。

unno@thn.ne.jp