ア.分析の意義 人間は,毎日約10gの食塩(NaCl)を必要とし,同時に汗や尿となってそれだけの 塩化物イオンが排泄されます。また,化学工場では多量の食塩を用いて種種の化学 薬品を作り,それが種種の産業で使用され,結局工場排水となって排出されます。 イ.原理 試料水を硝酸銀溶液で適定すると,塩化物イオンは銀イオンと反応して塩化銀の白 色沈殿を生じます。終点の判定には,クロム酸カリウムを添加しておき, 過剰の銀 イオンが赤かっ色のクロム酸銀の沈殿を生成することを利用します。 Cl−+Ag+ → AgCl CrO42−+2Ag+ → Ag2CrO4 ウ.試薬 ・0.0282N塩化ナトリウム(NaCl)標準溶液 ・0.0282N硝酸銀適定液 硝酸銀3.4gを上皿天秤にとり,純粋100mlに溶かし,褐色瓶に保存する。 ・5%クロム酸カリウム指示薬 エ.操作 a.蒸留水20mlをピペットでとり,三角フラスコの中に入れる。 b.クロム酸カリウム1mlをピペットでとり,三角フラスコの中に入れる。 c.硝酸銀溶液をビュレットで一滴ずつ入れてある程度色がついたらやめる。 d.採ってきた水で1.2.3.の操作を行い,3でできた蒸留水と同じ色にする。 e.着色に使用した硝酸銀適定液の量を測定する。 オ.計算 Cl−ml/l=35.45×fAgNO3×(x−b) f=0.0282N硝酸銀適定液の力価 x=適定値 b=蒸留水でのブランク Mohr法は比較的高濃度のCl−を測定する方法です。文献では、「10ppm以下の値 になると多少のバラツキば見られる」と書かれていました。水質が良くなり、Cl−の 濃度が低い河川もありますが、私達化学部では操作のd.に注意しながら先輩と同じ Mohr法で測定しています。 <Mohr法の精度> 精度を確認するため、20,10,5 ppmの塩化ナトリウム水溶液を調整し、Mohr 法で2回測定しました。 滴定値で0.05mlの誤差が生じ、バラツキはあるものの、ほぼ近い値が得られました。 (日本分析化学会北海道支部 水の分析−第4版− 化学同人) |