1.『a sense of センス』                      
  
 センスとか、感性っていう言葉やニュアンスに僕はコンプレックスを感じる。    
 開き直って単純に考えれば、他人の才能や魅力に嫉妬しているだけのみっともない話な
のだが、自分の感性は謙虚に気になるものだ。                   
  
 つまり、こういう話である。                          
  
 僕ははっきりいってファッション・センスがない方の人間だと思う。いや、ない。ピー
コのファッション・チェックに感心するくらいだし、何処に何を着ていくか考えるだけで
疲れるほどの無神経さと自分の引き出しの無さである。               
 まして、ブランドがどうとか、デザインがどうとか、世の中には腐るほどの情報が溢れ
ているのに、それに頼るのを潔しとしないのが、またいけない。           
 コーディネートのコピーなんて、まっぴらごめんだ。雑誌を参考にして踊らされるくら
いなら、毎日同じユニクロ・シャツでも来てた方がマシに違いないと思っている。   
  
 さて・・・                                  
  
 突然、僕は自分の身に付けているものが気になって気になって仕方がなくなる。   
 恋をしたのだ。                                
 彼女の身に付けているものは、怖いくらい彼女に似合っていた。彼女そのものである。
 感動したのか、ただの見栄か。僕は何かに憑かれたように自己表現の手段を探し始める
ことになる。モードからカジュアル、ストリートまであらゆるファッション用語も理解し
た。ブランド専属のデザイナーの名前まで知り付くし、TPOのコーディネートはもちろ
ん、オリジナリティの意味まで考える。                      
  
 ある日、鏡に映った自分の姿を見た僕は・・・自分をどんなふうに感じるだろう。  
  
 現実はもっとつまらない。                           
  
 僕が本当にコンプレックスを感じているのは、自分のセンスにさえ鈍くなっていること
に対してである。                                
 筆箱に入れたビックリマン・シールでさえ大事だった子どもの頃に比べて、いつしか心
に引っ掛かる物事を、固まってしまった価値観で失っているのかもしれない。     
 それは大人になって洗練された趣味、嗜好にこだわっているスマートさではなく、ビッ
クリするほど、感情や刺激に無神経になってしまったのだ。自分では判断できないくらい
にオートマチックになった。                           
  
 Vivienne Westwood って何?                 
 ブランド?ふーん。                              
 個性的だね。                                 
  
 え?何が?何処が?他と違う?オーブ?パンク?マティス?            
  
 そんなのは勘。                                
感性だよ。                                 
  
 刺激ってのが求められることがある。新しくてエキセントリックな感性で創造されるモ
ノが受け入れられる環境がある。そして、エクスキューズがある。          
  
 コラムの sense の定義は自分が幸せになるためのセンスである。      
 それは言い訳を盾としない自分への問いかけだろう。               
  
 僕は自分が大好きなのだ。                           
Vivienne Westwoodもね・・・ふふふ。