箱根山のあり方についての提案 |
2009年4月24日
箱根山共有地検討特別委員会 委員長 細井要 様 副委員長 馬場妙子 様 提 案
栗原一郎
1.箱根山共有地検討特別委員会の結論とその後の対応について 本特別委員会の結論は、箱根山組合議員としての任期である2009年9月までに出される見込みである。この結論を基に、三島市行政との連携、森林ボランティアなどのNPO団体、森林所有者及び団体、そして広く市民が参加するなかで「100年の森づくり構想」を目指すことが必要と考える。 2.箱根山組合管理地全体について (1)森林のもつ公益的機能の維持・向上に向けて 森林のもつ公益的機能の維持・向上については論を待たないが、とりわけ、大場川流域の地域において箱根山のもつ保水機能・治水機能は重要との観点を最重視すべきである。 (2)施業の長伐期化及び、混交林・複相林化を目指す 全国的な流れにも従い、国庫補助金を有効に活用し少ない自主財源で最大の効果を目指すことが重要である。長伐期化及び、混交林・複相林化は、国の動向にも合致する。三島市森林整備計画との整合も必要。かつて本計画においては、「資源の循環利用林」も一定面積がゾーニングされていたが、「森の力再生事業」を導入などのために、このゾーンが廃止された経緯にある。しかし、このかつての「資源の循環利用林」は経済林として育成していくエリアとして考えらる。(資料あり) (3)間伐においても、優良材の搬出を目指す 森の力再生事業などとも連携し、低コスト化を図り所有者の負担の無い形か、所有者に材の売却益が多少なりとも還元できる方法を模索する。 (4)収益分収林について 多くの面積を占める収益分収林であるが、所有者の「山離れ」が深刻な状況にあることが推察され、今後、複数の所有者による共業体により間伐事業を進める必要もあることから、主体性の欠如が大きな支障となってしまう。ことについては所有者の主体性を回復する方向と、分収林契約を解除する方向とを意識し、それぞれに応じた戦略のもとに取り組む必要性がある。漫然と経過することは避けるべきである。 (5)管理における連携と協働を進める 箱根山組合と各行政機関との連携を重視する。とりわけ、三島市・函南町の区域なので、それぞれの森林政策とは密接な関係性をもっている。そして、NPO団体や、民間企業とも協働する関係を広め、強めていく必要性がある。 (6)環境重視のエリア設定と、このためのワークショップの推進 三島市による「生物基礎調査」などにおいても箱根には「接待茶屋」の森など重要なエリアがあり、希少種を含め多様な植生を維持している。生物多様性の維持という観点からのこうしたエリアについての環境保全及び育成は重要な課題である。三島市・函南町とも連携するなかで、保全策を含めどのような森づくりをしていくかの個別的な計画に基づく取組が必要である。 (7)レクリーションや観光として森林機能の発掘など 箱根山から見る富士は日本一美しい。重ねて駿河湾への眺望も合わせるとこの地域において潜在する価値は極めて高い筈である。大規模な観光開発ではなく、ミニ・グリーンツーリズムに対応できるような眺望スポットや散策路の整備が期待される。平安鎌倉古道などの現有する資源の再評価や、箱根から山田川周辺につなげるルートなど、新たに遊歩道を開設する必要もある。周辺の住民はもとより、観光客に癒しやレクリーションなど静かなブームを提起できるのではないか。また、「森林セラピー」のエリアとしても活用可能性が伺えるのではないか。 (8)教育の場としての活用 現に活用されている「箱根の里」を起点として、植生・樹種などの自然観察、ネイチャーゲームなど、さらに教育の場としての箱根山を構想できるのではないか。 3.旧県営林(182ha)への対応について これまで県による育林や三島市森林整備計画との整合を図りながら、直轄地であるがゆえに適切な管理計画及び施業計画を定め、遂行していく必要があると考える。なお、このエリアに対する箱根山組合による適切な管理・施業等が、直轄地以外のエリアについても手本となるような取組となることを目指すことも重要である。 (1)現況等把握の必要性 @保安林台帳に示された指定施業要件(資料あり)の遵守 当エリアの殆どは水源涵養保安林であり、13の区域が指定されている。(資料あり)指定施業要件は共通しており、間伐率は「35%」、植栽指定された樹種及び本数(皆伐されたと仮定してのhaあたり))は以下の通りである。 スギ:1800本、ヒノキ:1800本、マツ:2400本、クヌギ1800本、コナラ1800本、その他広葉樹:1800本。 *この指定施業要件は近年改正されており、「保安林だからスギ・ヒノキしか植えられない」という認識は現状としては誤りである。間伐率及び植栽指定などの要件を遵守する必要性がある。なお、保安林の樹種については法規定は無い。 A森林調査簿を参考としたさらなる現況把握と評価の必要性 ア)県が2008年にとりまとめた森林調査簿(資料あり)によると概ね以下のことが記載されている。 ID、林班、小班、面積、樹種、再拡、地位、植栽年、林齢、材積(立米)、成長量(立米)、土壌型、生産力、立木本数(/ha)、枝打高、制限林、施業計画・実績。 イ)全体面積182ヘクタールは105の林班に区分されている。総材積は27,253立米とされる。面積に対する材積や密度(立木本数)などについて、伊豆一円や県東部の中の豊かな森林との比較などを通じ、どのような評価ができるのかを検討すべきである。・・経済林としてどのような価値をも持ち得るかなど評価も。 ウ)林班は林班により、樹種、植栽年及び林齢、立木の密度や材積率の違いや林班図との照合で分布等が把握できる。 [樹種等について]
*各樹種とも、指定施業要件に示されたヘクタールあたりの本数からするとかなり多く、密度は高く、水源涵養保安林として基本的機能も損なわれているのではないか。 *間伐を早急に進めていくべきではないか。 [林齢について]
エ)その他、「地位」「材積」「生産力」などの森林のもつ性格や機能などの把握し、及び一定の踏査を踏まえた、実態の把握が重要と考える。 オ)踏査の結果も踏まえ、これを林班図にプロットするなどの作業とともに、把握できた現況について、どのような評価ができるのか検討をしていき、下記に掲げる(2)の管理・育林についての考え方や方針に繋げ、遂行していく。 (2)管理・育林の考え方 (1)に掲げたさらなる現況把握により、当エリア内にあっても、ヒノキやスギの生育に適したエリアと、適さないエリアに区分できるのではないか。適したエリアにおいては「経済林」としての機能を維持する。適さないエリアにおいては指定施業要件との整合の範囲内で自然植生にかなった他の樹種を積極的に補植していく。この場合、国の補助事業である「複相林型保安林整備推進事業」等の活用も検討する。(資料あり) また、全体として治水・保水・災害対策を重視した管理を行う。当エリアは尾根部と谷部とが細かく入り組み、全体として尾根部であることによる風の影響等でヒノキの生育が好ましくない箇所については、自然の植生を活かした樹種(在来種)の補植。谷部については土砂災害を防ぐため、大径木となるケヤキ等を意識して補植・育成を図る必要があると考える。 (3)間伐等について 県が定めていた施業計画をも踏まえ、(1)の考え方や方針に基づき、必要度の高いエリアを優先して計画的に取り組む。間伐材については極力搬出し、材を市場へ出す。また、市場へ出さないものであっても、製材してウッドクラフト材などのために市民に提供しても良いのではないか。このための路網整備やストックヤード等が一定程度必要であろう。 路網については、安易に取り組むのではなく、技術や知識・経験を必要とするので、他市等の例に学び研究が必要である。 間伐を事業者等に委託して行う場合、搬出に要する費用が必要となるが、低コスト化によるコストと収益性などを見極める必要がある。 (4)多様な主体による管理・森づくり 近年、国有林の管理を市民活動団体や企業などに委ねる例が全国的にも見受けられ、この場合の委ね方も多様であると推察される。県営林で東部農林所管内においては現伊豆の国市、田中山が市民活動団体に委ねられ、その在りようは別紙(資料あり)のとおりである。 当エリアにおいても、部分的に森林ボランティアなどのNPO団体、企業などに管理を委ね、多様な主体による森づくりが図られることが望ましいと考える。 (5)ハイキングコースの設定 接待茶屋付近より「やまなみ林道」付近までのエリアは、小さな尾根と谷が入り組み、ハイカーや軽登山愛好者にとって、細かなアップダウンで楽しい山歩きができる。このことは、周辺の山域(天城山・愛鷹山・丹沢周辺など)には無い要素である。ヒノキばかりで植生に変化が無いことと、眺望が悪いことがマイナス要素である。自然植生を活かし、季節の変化を味わえるようなハイキングコースを設定する意義は高いと見られる。 |