住基ネットへの自己情報提供を拒否したい!!
10人の勇者の思いは認められず(審査会答申出される)

住基ネットなんぞに自分の情報を流されてたまるか・・と
10人の勇者たちが市の個人情報保護条例に基づいて住基ネットへの自己情報の提供中止を求めていました。
そのことが審査会にかけられ、この程審査会の答申がだされました。(7月29日)

審査会は
住基ネットは全国の市区町村を網羅するコンピュータネットワークであることから、各種のセキュリティー対策が講じられているにしても、市民の本人確認情報が漏えいしたり、不正利用される危険性は皆無とはいえず、申立人らが主張する懸念は当審査会委員が懸念するところでもある。

としながらも、住基ネットへの接続は妥当として、勇者(異議申立人)たちの主張を退けました。
尚、提訴する場合の期限は90日間です。



審査会の答申(全文)

1.審査会の結論
 異議申立人らが三島市長に対し住民基本台帳ネットワークシステムに係る本人確認情報の外部提供の中止をしたことについて、実施期間が異議申立人らの請求を拒否した決定は妥当である。

2.意義申し立ておよび審査の経緯
(1)10人の意義申立人(以下)「申立人ら」という。申立人らの氏名については、別紙のとおり)は、平成14年8月16日または9月11日に三島市個人情報保護条例(以下)「条例」という。)17条に基づき、実施期間である三島市長(以下「実施機関」という。)に対して、住民基本台帳ネットワークシステム(以下、「住基ネット」という)に係る本人確認情報の外部提供の中止の請求をした。実施機関は、住民基本台帳法第30条の5第1項に本人確認情報を外部提供しなければならない旨の規定があり、住基ネットに係る本人確認情報の外部提供は条例第9条ただし書1号の規定に該当するものとして、申立人らの請求を拒否する決定(以下「本件処分」という。)を、同年9月12日付け及び10月7日付けで行った。
 これに対し、申立人らは、同年10月29日または11月29日に、本件処分の取り消しおよび自己情報の住基ネットへの外部提供の中止を求めて、意義申立てを行い、同年11月25日付けおよび12月3日付けで三島市長より条例に基づき、当審査会に諮問されるところとなった[諮問第1〜10号]。
(2)当審査会の審査においては、実施機関側が平成14年12月4日に理由説明書を提出し、これに対し、申立人らが同年12月24日に意見書を提出した。
 その後、当審査会は、平成15年2月26日に実施機関に対する意見聴取を行い、同年4月15日に9人の申立人(補佐人2人同席)による口頭意見陳述を行った。
 また、実施機関より、平成15年4月1日に理由説明書(補充)の提出があり、これに対し、申立人らから同年5月10日に意見書(補充)の程九つがあった。

3.審査会の判断
 申立人らと実施機関との間における本件の争点に監視、当審査会は以下のとおり判断する。
(1)住民基本台帳ネットワークシステムの稼働について
 申立人らは、住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成11年法律第133号。以下「一部改正法」という。)の附則1条2項に規定する「所要の措置」が講じられていることを住基ネット稼働の前提条件と解して、いまだに「所要の措置」が講じられていないことから、住基ネットの「稼働それ自体に違法性がある」と主張する。申立人らのいう「所要の措置」とは、「行政機関についての完全な個人情報保護への立法措置を中心とした諸法制の整備である」。
 それに対し、実施機関は、「個人情報保護法が成立していないことを根拠に住基ネットに接続しないことは許されず、施行日を延期するためには施行日を延期するための立法措置を、住基ネットそのものを取りやめるためにはそのための立法措置が必要となる」と主張する。
 ところで、一部改正法附則1条2項は、「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講じるもの」と規定している。この規定は、一部改正法案の国会審議の中で個人情報保護への危惧から追加規定されたものであり、一部改正法の施行(住基ネットの稼働)に当たって、政府に対して個人情報保護のために必要な万全の措置を努力義務として課するものである。この間、政府が万全の措置を講じてきたかについては異論のあるところであるが、当審査会は、不確定な概念である「所要の措置」の規定は、努力義務規定であり、一部改正法の施行の法律要件になりえないと解する。したがって、一部改正法は、平成13年制令430号で定められた平成14年8月5日から施行されていることになり、実施機関の子なった住基ネットとのオンライン結合(本人確認情報の県知事への通知)は、一部改正法による改正後の住民基本台帳法(以下)「住基法」という。)30条の5の規定にその法的根拠を求めることができる。
(2)住基ネットとのオンライン結合の条例上の手続きについて
 条例11条2項によれば、「実施機関は、新たにオンライン結合による外部提供を開始しようとするときは、あらかじめ、審議会の意見を聞かなければならない」と定められている。
 申立人らは、本人確認情報の外部提供に係るオンライン結合について、「条例第11条第2項による手続きが正当に完了しているものとは言えず、三島市個人情報保護条例第11条第1項に違反し、このことは同条例第1条に違反することは明らかです」と主張する。その理由として、三島市個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)の答申について、「適当である旨の答申を得ている」との三島市の認識は、「この答申が附則第1条第2項による前提を欠いたものであることを見過ごしている」こと、また、「三島市住民基本台帳ネットワークシステムセキュリティー対策要綱」および「住民基本台帳ネットワークシステム三島市緊急時対応計画書」は、審議会答申によって策定されたものではなく、総務省告示334号に基づいて策定されたものであることを挙げて、それらの措置をもって、審議会が答申したオンライン結合の条件を満たしているとはいえないと主張する。
 それに対し、実施機関は、審議会より「適当である旨の答申」を得ていること、そのてその際、「審議会から、システムが運用されるまでに個人情報を保護するためにこうずべき必要な措置について検討するよう要望がだされた」ので、それを受けて、住基法36条の21項に規定する措置として、「三島市住民基本台帳ネットワークセイキュリティー対策要綱」および「住民基本台帳ネットワークシステム三島市緊急時対応計画書」を策定して、個人情報の保護を図ってきたことを主張する。
 当審査会の調査によれば、平成13年12月27日付けで三島市長は、「個人情報のオンライン結合による外部提供」について、審議会に諮問し、同審議会は平成14年1月8日付けで答申書を三島市長に提出している。答申書は、「諮問のあった個人情報のオンライン結合による外部提供について、諮問の内容を適当と認めたので答申します。なお、システムが運用されるまでに、個人情報を保護するために講ずるべき必要な措置について検討するよう、要望します。」という内容である。すなわち、審議会の答申は、三島市が住基ネットとオンライン結合することを適当と認めたうえで、個人情報を保護するために講じるべき必要な措置について検討すべきことを求めたものであり、申立人らが主張するようなオンライン結合の条件を示したもの、すなわち、「杉並区のような独自条例(『住基プライバシー条例』)による三島市独自の対応を期待したもの」とはいえない。したがって、当審査会は、三島市が住基ネットにオンライン結合するにおいて、条例の定める手続きは履行されたものと判断する。

(3)住民基本台帳ネットワークシステムの法的拘束性について
 住基法30条の51項は、「市町村長は、・・・(中略)・・・当該住民票の記載等に係る本人確認情報・・・(中略)・・・を都道府県知事に通知するものとする。」と規定する。
 申立人らは、この規定は、「三島市において直ちにすべての市民の住民票データをオンライン結合による住民基本台帳ネットワークへの接続を義務づけるものではない」と主張する。また、住基法36条の2第1項は、「市町村長は、住民基本台帳亦は戸籍の附票に関する事務の処理にあたっては、住民票亦は戸籍の附票に記載されている事項の漏えい、滅失及びき損の防止その他の住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない」と規定するが、この規定を根拠に、「本人確認情報を含む住民記録がこのような危険性から免れるため、住基ネットにつながないという判断こそが必要です」と主張する。
 一方、実施機関は、住基法30条の5第1項の規定は、全住民の本人確認情報を都道府県知事に通知することを義務づけるものであって、住民の選択制や任意性を一切認めていないと主張し、住基法36条の2第1項の規定は、「あくまでも、本人確認情報の県知事への通知を前提にしたもので、その上での安全確保である」と主張する。
 審査会は、住基法30条の5第1項の規定は、市町村長に対して本人確認情報を都道府県知事に通知することを一律的に義務づけるものであり、同時に、住基法36条の2第1項及び同法3条1項の規定は、市町村長に対して住民記録情報の適正な管理を義務づけるものであると解する。すなわち、市町村長には、通知義務(住基ネットへの接続義務)と適正管理義務が並立的に課せられているのである。したがって、住基ネットの稼働にかかわり、市民の個人情報の漏洩、滅失、き損などのおそれについて、明白かつ差し迫った危険があると認められる場合には、適正管理義務を履行するために、住基ネットにオンライン接続をしなかったり、接続後に一時的に停止することができるものと解する。
 当審査会の調査によれば、住基ネットへのオンライン接続に当たって、三島市は「三島市住民基本台帳ネットワークセイキュリティー対策要綱」(平成14年8月26日制定)および「住民基本台帳ネットワークシステム三島市緊急時対応計画書−障害対応編・不正行為対応編」(平成14年8月30日策定。以下「緊急時対応計画書」という。)を作るなどそて、適正管理義務を履行するための「必要な措置」を講じてきた。緊急時対応計画書においては、「本人確認情報の漏えい等、市民の個人情報の保護に重大な教委を及ぼす可能性が高いときは、・・・(中略)・・・市独自の判断で、システムの停止、コミュニケーションサーバの住基ネットワークからの切離し等の緊急措置を講じるものとする。」と定めている。当審査会としては、これまでのところ、住基ネットの稼働にかかわり、三島市民の個人情報の漏洩、滅失、き損などのおそれが明白かつ先迫った危険として具体的に顕在化しているとまでは言えないことから、三島市長には、住基法30条の5第1項の規定しより三島市民の住民票の記載に係る本人確認情報を静岡県知事に通知すべき義務があったものと判断する。

(4)自己情報コントロール権の権利性について
 申立人らは、憲法13条の保障するプライバシー権とは、「自己に関する情報の流れをコントロールする権利」であり、条例は、自己情報コントロール権を保障する目的でさだめられたものであることから、申立人らの意に反して本人確認情報を住基ネットに外部提供したことは、基本的人権の侵害であり、条例1条の定める目的にも違反すると主張する。そして、住基ネットとオンライン結合するにしても、それぞれの市民の意志を尊重した
希望選択制」にすべきであると主張する。
 実施機関は、条例1条は、「この条例の目的を明らかにしたものであり、本市の個人情報保護制度の基本的な考えを示したものである。したがって、本件について、この条文のみを根拠に外部提供中止の結論を直接導き出すことはできない」と主張する。
 当審査会は、自己情報コントロール権としてのプライバシー権は、憲法13条の「幸福追求権」の一部を厚生するものと理解する。しかし、憲法上の具体的請求権として認められる自己情報コントロール権は、「人の道徳的自立の存在に関わる情報」(人)の精神家庭にかかわる情報ないし身体状況等にかかわる情報のkとであり、佐藤幸治教授のいう「プライバシー外延情報)」についての自己情報コントロール権は、憲法上の抽象的権利として認められるものであり、それは法律・条例による立法化をまって、その範囲内で具体的権利になるものと解する。
 住基ネットに係る本人確認情報とは、氏名、生年月日、性別、住所、住民票コードおよびこれらの変更情報であるが、以上のことから、実施機関が、住基法30条の51項および条例9条1項ただし書き1号の規定を根拠として、申立人らに係る本人確認情報を住基ネットに外部提供したことをもって、直ちにプライバシー権の侵害とはいえない。また、憲法上の自己情報コントロール権は、住基ネットに係る本人確認情報の外部提供について、市民各自による選択制を具体的権利として一律的に保障したものとはいえないと、当審査会は判断する。

(5)以上により、本件処分を取り消すべき理由がなく、「1 審査会の結論」のように判断する。

4 審査会からの要望
 当審査会は、前記の「3 審査会の判断」のとおり、現行法令および条例の法解釈からすると本件申立てには理由がないと判断した。
 しかしながら、住基ネットは全国の市区町村を網羅するコンピュータネットワークであることから、各種のセキュリティー対策が講じられているにしても、市民の本人確認情報が漏えいしたり、不正利用される危険性は皆無とはいえず、申立人らが主張する懸念は当審査会委員が懸念するところでもある。当審査会は、憲法上のプライバシー権の法的保障内容がなお一義的でないことから、申立人らに係る本人確認情報を住基ネットに外部提供したことをもって直ちにはプライバシー権の侵害とはいえないと判断したが、本人確認情報が現実に漏えいしたり、不正利用された場合には、プライバシー権の侵害の問題が生じるものと考える。そこで当審査会は、住民基本台帳管理業務が自治事務であること、そして三島市が個人情報保護のための条例を制定していることに鑑み、実施機関に対して、以下のことを意見として申し添える。
(1)万全のセキュリティー対策を継続的に維持するために、定期的に自己点検に、適宜、その内容を審議会に報告して意見を求めるとともに、セキュリティー対策について専門的知識を有する者の意見を求めるなどして、個人情報保護のために必要な適正管理義務を履行すること。
(2)住基ネットに関する市民の不安を解消するために、個人情報保護および住基ネットの運用に関する情報を市民に提供し、市としての説明責任を果たすこと。

5 審査会処理経過
(1)一括審査について
 本件は、平成14年11月25日付けおよび12月3日付けで実施機関より当審査会に諮問されたものであるが」、10件の諮問に係る異議申立書、意見書および意見書(補充)の趣旨が同じ内容であるため、申立人らによる口頭意見陳述については本人の了解を得た上で、その他の審査および答申についても、一括して行うこととした。

(2)処理経過
平成14年11月25日 審査諮問書の受理(諮問第1〜9号関係)
同年12月3日 審査諮問書の受理(諮問第10号関係)
同年12月4日     実施機関からの理由説明書の受理(諮問第1〜10号関係)
同年12月24日    異議申立人からの意見書の受理(諮問第1〜10号関係)
平成15年1月29日  諮問の審査(平成14年度第1回審査会)
同年2月26日     実施機関からの意見聴取(平成14年度第2回審査会)
同年4月1日      実施機関からの理由説明書(補充)の受理(諮問第1〜10号関係)
同年4月15日     異議申立人によれう口頭意見陳述(平成15年度第1回審査会)
同年5月10日     異議申立人からにお意見書(補充)の受理諮問第1〜10号関係)
同年5月20日     諮問の審査(平成15年度第2回審査会)
同年7月3日 諮問の審査(平成15年度第3回審査会)
同年7月29日     諮問の審査および答申書の確定(平成15年度第4回審査会)

三島市個人情報保護審査会