| 2010年度(平成22年度)予算について |
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三島市の2010年度予算が、2月議会で可決成立しました。 みなさんのもとには「広報みしま」(4月1日号)で市からのその概要のお知らせが届いていると思います。ご覧になりましたか? また、市のホームページでは「予算案の大要」がUPされていますので参考になるかもしれません。ここ(直リンク) 三島市の2010年度の予算額は、「344億3千万円」で昨年度に比べると7.3%の増予算」と示されていますね。詳細については広報や予算案の大要のとおりですが、これで詳しくはよくわからないと思います。 でも、ご覧になれる範囲で、どのように思われましたか。 その評価はいろいろだと思います。たとえば、「こども医療費の無料化が中学3年生まで拡大するのは有難い」とか、「サッカー場(南二日町)にシャワールームが備えられるのは嬉しい」とか。その反対の声もあるかもしれませんね。 支出について言うなら、344億3千万円はいろいろな事業の積み上げなので、それこそ膨大なものになります。そのひとつひとつの事業の評価はまちまちで、いろんな評価があり得ると思います。 ここで私が書きたいことは、この予算全般を見渡したときに、これははたしてどういう予算であるのか・・・ということなのです。「財政的に見て」「持続可能性という点からして」「政策的に見て」という観点から見たときに、この予算への見方のひとつとして参考にして頂けたらと思うのです。 それで、私はこの予算については次の3つの言い方ができ、その問題を含んでいると思います。 1.「身の丈」を上回る予算であること。 2.こどもたち(未来の納税者)にあまりにも負担を強いる予算であること。 3.公共施設の耐震補強のほか、これと言った重点施策に乏しいこと。 3つの点について以下、ひとつずつ考えてみたいと思います。 1.「身の丈」を上回る予算であること。 言い方を変えれば「収入が減っているにもかかわらず大きな予算となっている」ということです。収入の基本となるものはなんと言っても「市税」であり、主なものは個人市民税、法人市民税、固定資産税の3つがあります。 このところの傾向として、08年(H20)秋の「リーマンショック」以来、まず法人市民税が減り、そしてそれに呼応して個人市民税が減っています。不況はまず企業の法人利益にマイナス作用するので、法人市民税にはすぐに影響することに対し、個人市民税は前年の個人所得に対し課税されるので、法人市民税よりも遅れて影響がでます。この傾向はすでに09年度に顕著となっていましたが、10年(H22)にはますます顕著となります。 【過去3年間の税収の推移】→こんなに減っています
収入の基本である税収がこのように減っているにもかかわらず予算規模は大きくなっています。 【過去3年間の予算規模(当初予算)の推移】→税収と反比例する状況
まさに基本税収とは反比例する実態であることがわかります。 でも、ここで考えなければならないのが、その年度の「特別の事情」です。たとえば10年度の予算額のうち、「こども手当」の支出額は約20億円(ザっとの額ですが)。この20億円は、財源は国からのお金が入るので、こういう「特別の事情」を考慮して考えなければなりません。単に予算規模の大きい小さいだけを意識すると何か訳がわからなくなってしまいます。 この「特別の事情」は毎年度大なり小なりありますが、09年度〜10年度にかけて、また、10年度には大きなものがあり、こういったことを排除した「平年ベース」で捉えてみることが必要だと思うのです。 この場合「特別の事情」というものは・・・ @公共施設の耐震補強事業〜赤紫色の部分 A経済対策〜クリーム色の部分 Bこども手当〜水色の部分 とすると、平年ベースは青色となります。以下のグラフです。 ![]() 「平年ベース」としては、09年度に比べ10年度はやや減っています。 これなら税収の減少に対してそれに比例するからいいんじゃないの? と言うと、実はそうではありません。 09年度、10年度ともに、収入の基本である税収の不足を借金で補っていて、その補い方が10年度は際だって大きくなってしまいました。この、税収不足を補うための借金は「臨時財政対策債」と言われ、普通の借金と違い、「何にでも使うことができる」財源なのです。(一般財源と言います) ![]() 10年度にあっては、臨時財政対策債を18億3千万借りてなんとかお金を回していこうというのです。 普通、自治体の借金は、道路建設とか、下水道とか、学校とか、公民館とか、そういう市民が使うことができる施設や設備をつくるために認められ、当然、そのことにしか使うことができません。(特定財源と言います) 家計での借金、住宅ローンは住宅に使われ、車のローンは車にしか使えない(特定財源)のと同じです。 ところが、この「臨時財政対策債」は、このような普通の借金とは別に、特例として認められ(特例地方債と言います)、一般財源として認められているのです。 ここであらためて、自治体の借金について考えてみます。 たとえば、公民館建設。このために○○億円という借金をして公民館を建設したとします。その償還は20年かかります。(期限はその借金の種類によって異なりますが)。償還しきるまでの20年間には、こどもが大人になっていくのですからこの過程で新たな納税者が次々と出現し、この償還金を税で負担することになります。でも、その公民館が建設されたことによる「利益」を、その人(新たな納税者)は受けるのですから、税で負担することには合理性があります。原則的にこういう考え方で、自治体の借金は成り立ちます。(静岡空港などは、とんでもない話ですが) ところが、「臨時財政対策債」(特例地方債)は、特定の施設建設のための借金ではなく、人件費などの「経常経費」(家計における生活費のようなものですね)に充てることになるので、後年度の納税者にとっての利益はまったくありません。これは不合理です。 同じ借金でも、このように性格がまるで違うのです。それが「臨時財政対策債」なのです。「こどもたちに言われ無き負担を強いるものである」と、私は主張しています。 ですので、10年度の予算は、支出の財源不足を補うため、借金への依存を強めた身の丈を上回る予算だ。ということが言えます。 2.こどもたち(未来の納税者)にあまりにも負担を強いる予算であること。 「臨時財政対策債」への依存を強めていることは「1」に書きました。 ここでは、少し詳しく「臨時財政対策」に触れたいと思います。 「財源不足を補う」という性質をもっているのですが、厳密に言うと、2つの部分で構成されます。 2つとは以下のとおりです。 (1)単に「財源不足を補う」という部分。 (2)これまで借りた「臨時財政対策債」の返済に充てる部分。 特に、(2)のこれまで借りた「臨時財政対策債」の返済に充てる部分・・・ここに私はとっても違和感があります。「借金を借金で返す」ということなのですから。 家計で考えると、生活費の不足で借金する。その返済を、これまた借金で賄う。「借金を借金で返す」この循環です。 こんなことは許されない・・・というのが私の主張です。 ちなみに、以下は(1)の、単に「財源不足を補う」という部分と、(2)のこれまで借りた「臨時財政対策債」の返済に充てる部分についての推移です。国が定める地方財政計画・地方財政対策に基づいています。 【臨時財政対策債の全国発行額の推移】 臨時財政対策債の制度は01年から始まりました。
では、三島市ではどのように対応されたのでしょうか。 【三島市における臨時財政対策債の発行額の推移】
*「これまでの返済に充てるため」の額は、この年度の臨時財政対策債の返済額(元利償還額)をあらわしました。 これでは、こどもたちにしわ寄せしているにすぎない実態です。 3.公共施設の耐震補強のほか、これと言った重点施策に乏しいこと。 さて、ここで本題に入る前に、三島市の財政の体質と言いますか、税収の体質と言いますか、そのことについて改めて考えたいと思います。 何かというと、「経常一般財源」の住民ひとりあたりの金額の違い・・です。 「経常一般財源」とは何か。これは、財源(収入:お金)のうちでも、もっとも基本となる財源のことで、「経常」とは「臨時」の対立概念。ですので、財源のうち「手堅い財源」です。家計で言えば生計中心者が得る給与収入のようなものです。 それで、その内容はというと主なものは、個人市民税・法人市民税・固定資産税と、それから普通地方交付税です。 【経常一般財源の住民ひとりあたりの金額(県内市】 静岡県発行:市町財政の状況(H20年度版)
【経常一般財源の住民ひとりあたりの金額(県内町)】 静岡県発行:市町財政の状況(H20年度版)
三島市における住民ひとりあたりの経常一般財源の額は16万5千円(H20)でした。これは表で明らかのように、県内の市町の中で最も少ない金額です。良いか悪いかの評価は別として、これがひとつの事実であると捉えなければなりません。 「なぜそうなのか」・・・簡単には言えませんが、たとえば御前崎市が36万4千円で多いのは、浜岡原子力発電所の存在による固定資産税が大きい。また、川根本町の44万3千円は普通地方交付税が大きく影響していると思われます。 三島市では、固定資産税が少ないことや、法人市民税が少ないこと、それに加えてこの年度は普通地方交付税が「ゼロ」であったことなどの要因が考えられます。 さらに分析をする必要があります。いま、三島市との類似都市」(全国34市ある)による比較検討を行ってます。 さて私は、三島市が福祉や教育が行き届いた暮らしやすい魅力的なまちにしていくことを求め続けています。この思いは多くのみなさんの思いでもあると考えます。そのためには、一定の充実した財源が必要となりますし、また、別の側面としては市民のみなさんのと行政との「協働」も必要です。 それから、このページのテーマである「借金依存体質」から抜け出す・・という意味においても同様です。 そのときに、「住民ひとりあたりの経常一般財源の額は県内で最も少ない」という現実を見た上で、この体質を少しずつでも改善していくための施策が合目的的に継続的に意志をもって展開される必要があります。市の予算は常にこの意志に基づいてつくられることが求められますが、残念ながらそうした意志や継続性には難点があり、「広く市民ニーズに応えた」ということに留まります。ですので総花的ではありますが、全体を貫く意志・意図が見えません。(部分的にはありますが)少ない財源で精一杯市民ニーズに応えようとする姿勢はあるのですが、ここに、三島市の予算の限界性があると私は考えています。 最後まで読んでくれてありがとうございます 少し補足をしておきたいと思います。 ◎住民ひとりあたりの税収の違いについて・・・ 実は自治体にも「個性」があります。 「1」で、その市の収入の基本的なものは税収であり、その内容は個人市民税・法人市民税・固定資産税であることを書きました。これらを「住民ひとりあたりどれくらいか」を考えると、各市町によって多少の違いがでてきます。(税率などが同じとしても) 個人市民税についてはその市町の産業構造や就業人口、年齢構成などよって違いがもたらされ、また、同様に法人市民税も同様です。固定資産税については、その市町に存在する課税対象のあり方による違いがでます。土地の種類(宅地、農地などの地目の違い)や面積、土地利用の形態、建築物の数や年数のあり方、また、企業や工場などの償却資産の数やあり方などによって違ってきます。 ・・・結果として、得られる個人市民税・法人市民税・固定資産税はその市町の実態によって違いがあるし、さらにこれを「住民ひとりあたり」に計算してみると当然、多少の違いがあることになります。これは、その市町の「個性」でしょうか。 ◎普通地方交付税額について 地方交付税のしくみとして「その自治体において基本的な支出(基準財政需要額)と基本的な収入(基準財政収入額との差額」が普通地方交付税として、国から得られることになるので、税収が少なければその分が普通地方交付税で補われることになり、基本的な行政を行ううえで、財源の不均衡は生じないように一応考えられています。 でも、これはすべて机上の計算上の話。実際はというと、住民ひとりあたりの財源の違いが生じます。 ◎ただしかし、住民ひとりあたりの経常一般財源は単純に比較できない面があることを付け加えておきます。「スケールメリット」と言われるのですが、同じ「1億円」でも人口の少ない自治体にとっての「1億円」と、人口の多い自治体にとっての「1億円」では、その支出効果に違いが生じるのが一般的。この点も加味して考える必要もあります。 で、あるとしても、「三島市は少ない」ということが言えるでしょう。 |