イメージ 富士の湧水を訪ねる三島せせらぎの散策

楽寿園せりの瀬
└ 楽寿園せりの瀬
古より、私たち日本人に、その美しい姿を
見せ続け、日本の象徴として世界の人々
から愛されてやまない“霊峰富士”。
今回は、我々日本人の心の故郷ともいえる
富士の湧水を訪ねて、せせらぎの街三島と
柿田川湧水群を歩いてみることにしました。

江戸の昔から宿場町として栄えた三島市は、
三嶋大社を中心に東西に東海道、南北に
甲州道と下田街道が交差し、「三嶋暦」を
代表とする数々の文化が花開いた、歴史的
にも重要な場所といえます。
また、遠く富士山に降った雨水や雪解け水が、
延々35キロにも及ぶ溶岩トンネルを潜り抜け、
街のあちらこちらから湧き出している様子を、
かつての旅人は「箱根西麓にある水の都」と
賞賛したそうです。

そんな、歴史深く自然豊かな宿場町三島と、
お隣清水町にある柿田川公園に、これから
皆様をご案内したいと思います。
拙いページではありますが、どうぞ最後まで
お付き合い下さい。
蓮沼川
└ 蓮沼川

神池
└ 神池
総門
└ 総門
“自然と文化が織りなすまち三島”を散策するにあたって、まず最初に訪れておきたいのが
ここ三嶋大社です。
三嶋大社は、昔は三嶋明神と称され、起源は定かではありませんが、伊豆一円からの信仰を
集めることで、三島市を宗教的な中心地としてだけではなく、産業や文化の中心地としても
大きく発展させることに繋がりました。

さらに、三島市を発展させたもうひとつの大きな要因として、市街地を抜ける3本の主要街道
(東海道・甲州道・下田街道)の存在が挙げられます。
これにより三島市は、東西文化の交差点として各地から得た文化や風習、三嶋暦を代表とする
独自の文化を全国に伝えるための情報発信地としても重要な役割を果たしていました。
三島の歴史は、この三嶋大社と3本の主要街道から成る歴史といっても過言ではないでしょう。


● 三嶋暦
現在の太陽暦が日本で使われ始めたのが明治6年(1873年)、それより前まで使用されて
いた太陰太陽暦(旧暦)の一種。
1年を365日、1時間を60分と計算する太陽暦に対して、旧暦では1ヶ月を月の満ち欠けで
計算していたため、季節によって1ヶ月の日数に差が出たり、年によっては1年が13ヶ月も
あったりと、現在使用している太陽暦に比べて、かなり時間に誤差が生じていたようです。
しかしながら、四季折々の変化を暦から感じることができる旧暦のほうが、太陽暦に比べて
人と自然が上手く付き合うには適していたのかもしれません。
普段私たちが使用しているカレンダーの中にも立春や秋分をはじめ「雨水」「清明」「穀雨」
「小満」「大暑」「小雪」「大寒」のような聞きなれない言葉をよく目にすることがありますよね。
これが太陰太陽暦(旧暦)と呼ばれているものです。

三嶋暦は起源こそ定かではありませんが、鎌倉時代には幕府の後押しもあり、東国武士の
間で徐々に普及していきました。
室町時代に入ると、西の京暦、東の三嶋暦と並び称されるほどになり、江戸時代には
幕府の公式暦として認定されたことから、関東・東海地方で広く使われるようになりました。
しかし、江戸後期に入り幕府作成の大和暦にその座を譲った後は、伊豆や相模などの
一部の地域のみで使用されるだけとなってしまいました。
この三嶋暦は、大社東の大宮町にある「河合家」が先祖代々伝承し、明治初期の頃まで
発行され続けました。
現在の河合家は、歴史ある建物を市が譲り受け、「三嶋暦師の館」として一般に開放されて
います。
館内では、ボランティアガイドによる歴史の紹介や三嶋茶碗の展示、レプリカの版木を使った
印刷体験など日本の伝統文化に触れることができますので、ぜひ立ち寄ってみてください。

三嶋暦師の館
開館時間: 9:30〜16:30(20名以上の団体は予約必要)
休館日: 毎週月曜日(祝日の場合はその翌日)・12月27日〜1月1日
入館料: 無料
駐車場: なし
アクセス: 三嶋大社より徒歩約5分

たたり石
└ たたり石
それではこれから、時間を旧暦の時代に
戻して、ゆっくりとしたペースで、大社内を
散策してみることにしましょう。

旧東海道に面した鳥居を抜けて中に入ると、
すぐに私たちの目に飛び込んで来るのが、
道をふさぐように立ちはだかった巨石です。
これは「たたり石」と言って、昔は大社前の
旧東海道の中央に置かれていて、通行の
流れを整理する目的のものだったようです。
たたり石の“たたり”は、呪いなどの“祟り”ではなく、本来は“整理”を意味することの
ようでしたが、後に東海道の往来が頻繁になるに伴い、これを移動しようとする度に
災いが起きたようで、当時の人々から祟り石と恐れられていた時期もあったとのこと。

大正3年に行なわれた道路拡張工事に伴い、このたたり石も掘り出され、大社内に
移されました。
現在では交通安全の霊石として、人々からの厚い信仰を受けています。

さらに参道を進み、錦鯉が気持ちよく泳ぐ
神池の横を過ぎると、三嶋大社総門へと辿る
ことが出来ますが、今回は少し回り道をして
境内にある「福太郎本舗」に寄ってみることに
しました。

ここでは、名物の福太郎餅が売られていて、
お茶と一緒に休憩がてらその場でいただく
ことも可能です。
よもぎの香りが口の中いっぱいに広がる逸品
ですので、三嶋大社に出かけられた際には、
ぜひ寄ってみてください。
第22回全国菓子大博覧会で、菓子博大賞も
受賞しているようです。
福太郎本舗
└ 福太郎本舗

境内
└ 厳粛な雰囲気の境内
富士の湧水
└ 静かなひととき・・・
神馬舎
└ 神馬舎
キンモクセイ
└ 天然記念物のキンモクセイ
さて、福太郎本舗でひとときの休息をとった後、再び境内の散策をしてみることにしました。
総門を抜け少し歩くと、道筋の右側に小さな祠が見えて来ました。
これは「神馬舎」といい、子供の成長や健脚を祈る神様として崇められています。
現在の神馬舎は、戦後に建てられたものですが、中に収められている神馬は、慶応4年
7月10日に完成した旧舎から移されて来ました。
誰が彫られたのかは知りませんが、馬体の曲線や優しい表情が見事に表現されていて、
芸術作品としてもかなり素晴らしいものと容易に察することができます。
ここの神馬は、毎朝神様を背中に乗せて、険しい箱根峠を登ったと伝えられています。

神馬舎を後に、神門を抜けると目の前に美しい舞殿、そして大きなキンモクセイの御神木が
目に留まります。
このキンモクセイは、樹齢が1200年以上ともいわれ、ウスギモクセイの雄木としては貴重な
ものだそうです。
国の天然記念物に指定され、根回りは3m、高さ1mのところで大枝が二手に別れていて、
見事なまでに枝が垂れている様が、参拝者の目を釘付けにしているようでした。
キンモクセイは、9月上旬から10月上旬にかけて開花し、黄色い可憐な花を咲かせることは
知られていますが、このキンモクセイはとくに香りが良いとされ、時には2里先の山里にまで、
その芳香が届いたという伝説が残っているほどです。
【昭和9年5月1日 国指定天然記念物指定】

さらに舞殿を抜け奥に進むと、ひときは目立つ本殿が見えてきます。
本殿ともなると参拝者も多く、その大きさと繊細なまでの宮大工の技術は、日本の伝統美を
感じずにはいられないほど見事なものでした。
せっかくなので、私自身も「無病息災」「家内安全」を祈願し、その場を後にすることにしました。

舞殿
└ 美しい舞殿
本殿
└ 重厚な佇まいの本殿
三嶋大社は、宗教的な中心地であると同時に、近隣住民にとっての憩いの場でもあります。
境内には、平和を象徴するハトが多く羽を休め、鹿の飼育もされていることから地元幼稚園の
遠足にも利用されているようでした。
また、大社内の宝物館には、鎌倉幕府創建者である源頼朝の妻、北条政子が奉納したと
されている国宝「梅蒔絵手箱」をはじめ、源頼家直筆の国指定文化財「般若心境」などの
貴重な資料が展示されていますので、興味のある方は寄ってみるのもよいかもしれません。

三嶋大社宝物館
開館時間: 9:00〜16:30(入館は16:00まで)
休館日: 展示品入れ替えによる休館
拝観料: 大人500円 大学・高校400円 中学・小学300円
駐車場: 三嶋大社駐車場兼用(大型バス15台・普通車約150台収容)
駐車料: 大型バス1000円(1時間)
      普通車200円(1時間)

<アクセス>
東名沼津ICより車で約20分。
JR三島駅より徒歩約15分。

白滝公園
└ 白滝公園
大社西側にある門を抜け、桜川の流れを
見ながら水上プロムナードを三島駅方面に
少し歩いてみることにしました。
5分ほど向かうと、途中に白滝公園という
静かな公園があります。

この白滝公園は、さらに上流の菰池と共に
桜川の源流となっていて、富士からの水が
滾々と湧き出ている、せせらぎポイントの
ひとつでもあります。
ベビーカーを押しながら、のんびりと散歩を
楽しむ主婦の姿や、地元会社員の方々が
思い思いの場所で、お弁当を広げている
姿が印象的に映りました。
さながら、都会のオアシスといった感じで
しょうか?
こんな光景からも、三島という土地は昔から
人に優しく住みやすい町だったということを、
改めて感じさせてくれます。

また、この白滝公園には、川の上にそそり
建つ白瀧観音堂や小さな滝など、清らかな
桜川の流れと相まって、趣のある風景を
心の中に残してくれます。
三島散策の際には、外すことの出来ない
場所のひとつといえるでしょう。
しばらく休憩をとった後に、富士の湧水を
訪ねて、さらに5分ほど歩いた場所にある
楽寿園へと足を進めてみることにしました。
白滝公園
└ 桜川水源(白滝公園)

楽寿館と小浜池
└ 楽寿館と小浜池
楽寿園小浜池
└ 楽寿園小浜池
大きな正門をくぐると、外界の喧騒とは異なる静かな空間が迎えてくれました。
楽寿園は、国の天然記念物にも指定され、約2万坪にも及ぶ園内には自然の森や富士の
湧き水をたたえるいくつもの美しい池が存在し、人のみならず周辺に生息する野鳥たちの
楽園にもなっています。
セキレイやカワセミも時折姿を見せることから、バードウォッチングなど自然散策や森林浴にも
最適な場所といえそうです。
また園内には、郷土資料館や大型遊具がある乗り物広場、レッサーパンダをはじめとする
可愛らしい動物たちがいる広場など、子供から大人まで家族揃って楽しむことができます。

ここ楽寿園は、明治23年に小松宮彰仁親王の別宅として造られましたが、昭和27年からは
三島市が運営する自然公園として現在に至っています。
小浜池の畔に佇む楽寿館には、皇居奥宮殿の装飾絵画を描いた野口幽谷をはじめとする
帝室技芸員や大家の作品が、天井や襖、杉戸などに多く残されていることから、邸内全体に
高貴かつ優美な雰囲気を漂わせ、明治時代の空気そのままを感じることができます。
楽寿館は、1日2回(午前と午後に各1回)決められた時間で一般公開もされているようです。
四季折々に違った表情を見せる自然公園楽寿園、日頃から時間に追われて毎日を忙しく
過ごしている方には、ぜひオススメしたい場所のひとつです。

次のページでは、楽寿園小浜池を水源とする三島市の繁華街に蘇った美しい清流、
源兵衛川沿いの遊歩道を散策してみたいと思います。

三島市立公園「楽寿園」
開園時間: 9:00〜17:00(4月〜10月) 9:00〜16:30(11月〜3月)
休園日: 毎週水曜日(祝日の場合は翌日)12月27日〜1月2日
入園料: 大人300円 小人50円
駐車場: 普通車・大型バス有
駐車料: 普通車200円(2時間以後30分毎に50円)・団体バス無料

<アクセス>
東名沼津ICより車で約20分。
JR三島駅より徒歩2分。

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