真冬の、失恋・傷心・野宿旅

  H3年、大学3年の12月、暮れも押し迫ったクリスマスイブ。失恋傷心野宿旅は始まる。

「実は好きな人ができたの。もう付き合ってて、二股しちゃおうと思ったけど、あなたがあんまり私を好きだから、これ以上嘘つけない」

 春は3月、2年近く付き合った彼女はそんな言葉を残して去っていった・・・。
「女なんて!!!」
制作に打ち込んだ3年の夏。人恋しい秋には、しかし野宿旅を決めていた。行くならクリスマス。恋人たちの季節を、厳しい自然の中でせせら笑ってやる!
行程(かなりおおざっぱ。)
川崎港よりサンフラワー号で九州は日向港へ〜海岸沿いに南下=岬〜巡り〜♪〜桜島〜牛深〜長崎〜諫早〜大牟田〜小倉〜太宰府〜唯一雪深かった湯布院〜大分から大阪港へ
新兵器
○今回から新たに加わった秘密兵器。その名も「ブルーシート」。そのまんまだけど、テントを持っていない僕にとって、このブルーシートがテント代わり。バイクと荷物で上手に三角形を作って、その中で寝るのさ。
旅日記
○12月22日川崎出発
 師走のあわただしい町を通り抜け、午後4時川崎港へ。港は意外と小さい、狭い。6時半の乗船まで汚い待合室でテレビを見て時間をつぶした。チェ○ッシュの特番をやっていた。妙に印象に残っている。実は仲が悪かったんだってさ。
 初めてのフェリー。船内の駐輪スペースは騒音のるつぼだった。何台ものバイク。すべて帰省らしい。こんな時期に野宿しに行く馬鹿者は、僕くらいのもの。
 星空の元、、横浜ベイブリッジをくぐり、浜松の沖合を通過し、四国の灯台を見た。夕飯は船内食堂は値段が高いので、カップ麺(チャンポン味)だ。なにせ行く先は九州だから。
 翌日の午後6時、日向港入港。
 目的地に散っていくバイクメン達。僕は・・・今夜の宿探し。とりあえず、南下し始める。夕日が沈んだ空は、でもなんだか希望に燃えていたよ。
 宮崎市は青島の手前で市営駐車場を見つけた。今夜はここね。
 深夜の爆音・怪しい足音・・・暴走族の連中だ。
 「なんだこりゃ、ゴミか?人がはいってんのか?」「お〜〜い!ホントに寝てるぞ!!」
 いきなりブルーシートの隙間をめくられ(といってもほとんどめくれないが、タイヤのホイールの隙間から見えてしまう。)のぞき込まれた。失礼な奴らだ。
 
○2日目
 翌朝から本格的に走行開始。バイク雑誌なんか見てると、「ただ走り回るだけなら走行会と変わらない」なんて書いてあるけど、いいじゃん、走行会。知らない道を走る。僕はむしろそこにあこがれてるのよ。ただひたすらに見たい、その先の景色を。走りたい、いろんな道を。このころからそう思っていた。
 早朝の青島は、なんだか・・・・さわやか〜〜〜
 今日は都井岬、佐多岬。岬巡りよ。
 途中で猿なんか見ながら、冬にしては非常に暖かな海岸線を行く。行き交う車は少ない。暖かな風を切って走る。左手には太平洋。日常の何もかもを忘れて走る。人生で一番の幸せを感じた。
 佐多岬では海中船に乗ろうと思ったが、まあ、やめて、灯台でイカの丸焼きを食す。うまい。
 最南端の証明書をゲット。
 さて、一気に鹿児島まで来てしまった。途中降り始めた雨が冷たい。まだまだ野宿(バイクすらも)初心者。野宿する場所が見つからない。時刻は既に午後11時・・・。桜島でやっと土産物屋の軒先にエンジンを止めた。
 深夜、夢うつつで見た怪しい赤い光・・・。揺れながら近づいてくる・・・
 まさか・・・・ついに見てしまったのか、俺?・・・人魂???
 警察官でした。職務質問された。暴走族よりはまし。でもさ、寝てる人たたき起こして職務質問はないじゃない?

○3日目
 桜島から鹿児島市へ渡る通勤時間帯のフェリーは、お父さんや学生さんで混んでた。ここから先どうしようかちょっと迷ったけど、串木野市経由で、その先島をとびとび長崎へ行くことにした。今日は雨が多かったがよく走った。天気も快晴。島が多いのでやたらとフェリーに乗った。待ち時間も優雅でのんびり。よかったなあ・・。
 長崎ではまた雨が・・・結構濡れたので、本日はビジネスホテルへ。

○4日目・5日目
 町中の走行はすかん。山には入りたいな。諫早から海岸沿いに佐賀市へ。そこから北上山中を通って福岡へ。北九州まで行っては見たものの観光目的ではないので特に寄るところもない。ホント、タダは知るだけ。この辺が「走行会は・・・」といわれる所以であろうか。
 雨が多い。お馬鹿なことにカッパを2枚も3枚も重ねる。風圧で雨が浸透して濡れてきてる・・・訳じゃない。湿気が結露してんのよ。気づくのが遅いというか、無駄使いだね。
 ここらあたり、どこへ泊まったか定かでない。記録を取っていないってのは不便なものね。

○6日目
 太宰府へ寄って湯布院へ。寄ってというような距離じゃないが・・・。湯布院の手前でひどい雪。九州は雪より雨の方が多かったが、さすがにこの辺は雪だ。 湯布院では温泉でもと思ったが、カッパを脱いでおいておくところがないし、また着るのも面倒なので、そのまま大分港へ。大分は快晴。
 午後3時のフェリーに乗る。

○7日目
 早朝大阪港へ。そのまま帰っても良いんだけど、ちょっと三重県は津市の方を回ってみる。なんでかなあ、湯布院では確かに雪に降られたけど、それ以上の大雪だよ、ここは。北九州よりも大雪。おかげで身体は凍る、膝も凍る。手足の感覚が無くなる・・・フルフェイスヘルメットから見る景色は、まるでバーチャルリアリティーみたいだ。信号で止まるたびに身体から氷の固まりが落ちる・・・。
 やっとの思いでたどり着いた名古屋市近郊。浜松まではもう少し。給油で寄ったガススタンドの兄ちゃんが、タンクバックの地図を見て面食らってた。
「九州からですか?!」

○その後
 この当時は本当に知識が無くて、バイク用のカッパというものも持ってなかった。防寒にはダウンジャケットだった。雨が降ると着てるものが妙に濡れるので、もしや風圧で雨が侵入しているのかと思い、何枚もカッパを着込んだ。しかし、これは大きな間違いで、じつは風通しの悪い安物のカッパのせいで汗が外へ逃げずに蒸れ、着物が濡れていたのだと後になって気づいた。ゆめパパのお馬鹿さん(プーさんのクリストファーロビン風に)。
 どうも膝の具合が悪い。2年前、大学入学して1週間でバイク事故(原付でガードレールにつっこみ、左足に刺さる。両もも打撲。膝が曲がらない。)で怪我して以来、足は調子悪いが、今回は違う。長く座ってられない。立ってられない。膝がとてもだる痛い。
 どうやら冷えが原因で、筋肉を痛めたらしい。以来10年。未だに膝はダメ。もう治るまい。
 初めてのバイク旅行で、一生涯の障害を負ってしまった。