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温泉

温泉

ゆめが生まれた翌年、俺は相変わらず1人でバイク野宿旅を続けていた。このころはちょうど中部地域をやっつけている真っ最中で、毎年諏訪湖を中心にそこから北・西・東へと制覇地域を広げていた。
同時に温泉にもはまっていて、各地の源泉を探しては、長期間シートにつぶされて痛む尻を慰めていた。上高地乗鞍スーパー林道から一般道へ降りたときにたまたま下方に見えた露天風呂があまりに素敵だったので、ふらっと寄ったのが白骨温泉『泡ノ湯』だった。

白骨温泉は、
昔は白船と書かれ「シラフネ」と呼ばれていた。浴槽の内側が石灰分の結晶で白くなることから名付けられたと言われている。 ところが、大正2年、中里介山の長編小説「大菩薩峠」で白骨と書かれたことから「白骨温泉」と呼ばれるようになった。
泉質は、単純硫化水素泉

白骨温泉といえば入浴剤投入問題で話題になったが、この泡ノ湯はそのようなことも行っておらなかったようで、開湯500年来変わらない良質の温泉だ。

多くのカップルが仲むつまじげに入浴している(混浴だ♪)中、1人中途半端に腕と顔だけ日焼けしたなりで入湯し、ほっと一息ついた。
思えば結婚以来3年、プロポーズ時の約束(毎年人生修行と称して、夏に2週間程度野宿に行くこと)とはいえ毎年のように旅に出させてくれるママには、本当に感謝せねばなるまい。素直にそう思った。もちろん、俺が不在中、彼女は彼女でいろいろと楽しんではいるのだが、それでも結婚したらバイクを禁止させられたとか、ツーリングにでられなくなったという話はよく聞く。うちは子どもまで出来たのにまだ続けられるというのは、非常に幸運だ。
もっとも、旅に出るのを大いに歓迎されるようになったら、それはそれで複雑な心境だろうなあとは思う。
”亭主元気で留守がいい”か…

いつもの癖でいじくっていた結婚指輪を見ると、それはそれは美しいエメラルドグリーンに変色している。俺は化学にはあまり詳しくない(何しろ高校が美術系だったから、化学という授業がなかったのだ)ので、どういう化学反応なのか…。ま、仕組みがどうであれ、現実にとても美しいエメラルドグリーンに輝いていることには違いない。このまま元に戻らなければいいのにと思ったくらいだ。

この時、ふと思った。
ママにも見せたいな。。
いつもいつも俺ばっかりがいろいろな場所を旅したんでは申し訳ないし、たまには良いだろう。混浴ならゆめも一緒に入れるし。


まだゆめが筋ジスなどという忌々しい難病だとは夢にも思っていなかった頃の話しだ。