kouen日記


活劇団シアターLABO/1 第11回公演
『 クロウホーガン 〜 unplugged 〜 』

平成16年3月14日(日) 午後5時00分
         17日(水) 午後8時30分
         19日(金) 午後8時30分
                20日(土) 午後1時00分・5時00分
                21日(日) 午後1時00分・5時00分
(全7回公演)

ギャラリーヤサカ(静岡県浜松市領家町カレー処ヤサカ敷地内)

SCRIPT&DESIGN : TALOH WORKS

出     演

源“九郎判官”義経 : めぐ (LABO/1)
静御前 : 北澤さおり (迷子の遊園地)
源 頼朝 : 中西祥子 (プロジェクト熱)
北条政子 : 熊村佳美 (迷子の遊園地)
武蔵坊弁慶 : 渡辺泰世志 (演劇集団浜松キッド)
平 知盛 : 太郎 (LABO/1)

ス タ ッ フ

舞台監督 : 小粥幸弘 (LABO/1)
制作進行 : 藤田ヒロシ (迷子の遊園地)
演出補 : 松本俊一 (プロジェクト熱)
振付 : 永井誉子 (TAKAKOダンシングカンパニー)

制作協力 : 迷子の遊園地 ・ プロジェクト熱

○ 3月13日(土) 仕込み


 金曜日あたりから体調が悪くなってきた。身体だるく、節々痛く、鼻水垂れる。微熱もあり、典型的な風邪の症状。今回に限らず公演前になって稽古が追い込みになると、疲れも重なって風邪をひいたりしたこともあったが、まさかそれが本番直前にくるとは。“体調管理も稽古の内”。どんなにがんばって稽古したとて体調を崩してベストの演技ができなかったら何の意味も無い。本当に恥ずかしい限りである。

 前日の仕込みと場当たりも共演者やスタッフに協力してもらい、休みながらこなす。しかし夜の場当たり途中から悪寒を感じ始める。帰宅時には激しさを増す。すぐに布団にもぐりこむが寝つかれない。12時近くになると体温は38.6℃まで鰻昇り。
 とにかくキツイ。頭に浮かぶは初日のことばかり。。このままでは舞台に立てない。舞台に穴が空く。絶対にあってはならないことだ。アマチュアの場合、役者もスタッフもこの日のために仕事の調整をし、プライベートの時間を割いて準備してきたのだ。そのみんなの頑張りが僕のために全て無駄になってしまう。許されない。みんなに顔向けできない。そんなことになったら2度と芝居はできない。「俺の役者人生も終わりか…。」そんなことが頭を過ぎる。

 友人の結婚式から帰宅したが解熱剤と家中のアイスノンから保冷剤をかき集めてくれて身体を冷やす。普通ならば「所詮趣味。明日は休め!」と言われるところだろうが、そこは元アマチュア女優、事の重大さは理解してくれるので限られた時間内で最大限の協力をしてくれる。ありがたい。気持ちが落ち着いてきて眠りにつく。熱が下がってくれることを祈るのみだ。


     ○ 3月14日(土) 初演

 で、初日の朝が開ける。目が覚めて体温を測ると36.7℃。下がった。ホッとして準備を始めるが、動くとすぐに37℃台に上がる。まぁ身体のだるさは変わらないが、幸い咳は出ないこともあって、熱さえ下がれば頭が比較的クリアになる。これはいけるかも!と楽観。TALOHさん他に連絡し、小屋入りを昼にしてもらって身体を休める。とにかく最悪の事態は避けられそう。あとは気力でどれだけベストに近づけるかだ。

 今回の芝居はカレー処ヤサカ敷地内にあるギャラリーヤサカが会場。昔は工場だった建物は、今は絵画や工芸品等が展示されたり、ミニコンサートが開かれる芸術の拠点になっている。演劇は同じ敷地内にスペースCOAがあることもあり、ギャラリーで公演が開かれるのは初めてなんだそうだ。階段式の客席を設えると、これが実にいい感じの舞台スペースになった。ここに役者として立てるのは光栄の至りだ。

 12時小屋入り。今日この小屋に来ることができただけで嬉しくなってくる。共演者とスタッフに謝罪の気持ちを込めてあいさつしてまわり、柔軟、発声をして本番に備える。風邪薬飲んでユンケル飲んで塩水でうがいして、できる範囲で最大のメンテナンス。

 午後1時から最終ゲネプロ。最大の心配は熱のせいでふらつくこと。今回の芝居は所作と言うか身体の動き、格好つけて言えば様式が重要視されている。止まっているべきシーンでふらついては芝居の出来が左右されてしまう。とはいえ、ふらついたりグラグラしないようにと過剰に意識すると硬くなってしまい、返ってグラグラ動いてしまう結果になることもあるので難しい。正直自分ではちゃんと止まっていたつもりだが、そこは絶賛発熱中だから実際は…。でも今は無事ゲネを通せたことを喜びたい。さんざん稽古を観てきた舞台監督のおがじーが「俺、初めて感動した。」と言う。役者をノセるためのお世辞半分としても、舞台に立たないスタッフが充実感を得てくれるのは嬉しいものだ。

 本番までの間2時間程時間が空く。できれば一眠りしたいところだが、楽屋となった場所はふだん人気がないようで埃っぽいことこの上なく、とても横になれるような状態ではない。他の役者たちは小屋の客席で横になったようだが、大扉がが開けられスタッフが準備に行き交う小屋では今の体調ではちとキツイ。やむなく楽屋でグランドコートに丸まり、壁にもたれてウトウトする。僅かでも体調が回復することを願いながら。

 本番1時間前。役者、裏方、当日スタッフを含めて舞台上で円陣を組み、LABO/1恒例の気合入れ「演劇は気合だー!」三唱。1回やってみたかったので感激しきり。楽屋に戻って衣装に着替える。浜松キッドの公演を始めとして、これまで芝居に関わるたびに誰かしらメイクをやってくれる人がいたが、今回は自分でやらねばならない。が、どうしていいのか分からん。これまでやってこなかったツケ。みんながメイクするのをジッと観察して、とりあえず眉毛と目尻などにカキカキする。こんなんでええんかいな?
 楽屋の窓から小屋の様子が見える。客入りはそこそこ。制作進行の藤田クンが「○分前で〜す。」と告げにくるたびに小芝居していく。…暇なんか?

 午後5時、いよいよ本番。小屋入り直前、舞台上に吊るされたロウソクが消えたことを教えられる。その時はただ消えてしまっただけかと思ったのだが、後で聞けば実は受け皿の中に溶けて液体になったロウが沸騰して爆発するように火が飛び散ったらしい。本番中だったら火の点いたロウが役者の頭の上に降り注いだことになる。ゾッとしたが、観ていたお客さんはさぞ怖かっただろうなぁ。装置を作ったおがじー藤田クンはえらく悔しそうだった。

 さていよいよ本番。ぎっしりと満員となった客席の中央を、役者が持つ棒で床を叩いて奏でるリズムに合わせて入場だ。僕は棒を持たず、左手に巻物を持っての入場。舞台中央で巻物を広げ、源平争乱の流れを口上。

 「…最高権力者、後白河法皇も可愛がる京のアイドル源義経、人呼んで『クロウホーガン』…。」

 有名な安宅の関での勧進帳のイメージであるから巻物には何も書いてない。必死に暗記した、台本冒頭2ページの長台詞、幕開け直後の僕の第一の見せ場である。僕にとってはこれからノッていけるかの大切なバロメーターとなるシーン。正直100%自信を持てるところまでは行き着けなかった。案の定稽古中何度か間違えた部分を2度読んでしまう失敗! シマッタ!と思うも知らぬ顔で最後まで読み上げる。顔を上げ、巻物を裏返す。ここで初めてお客さんは勧進帳をやっていたことを知る訳だが、何と客席の一部から拍手が起こった! 嬉しい!!(^o^) 大袈裟に言えば、がんばったことでお客さんに感動を与えることができたんだからね。こりゃ幸先がいい。巻物をさらに広げると『クロウホーガン』の題字が表れる。よっしゃ! 体調はともかく、気持ちはノッていけそうだ。

 芝居の出来はというと、やはり身体がふらついてしまった。現状の範囲内ではベストを尽くせたものの残念至極。2日間のインターバルで体調を復活させたい。


○ 3月17日(水) 2演

 中2日はさんでの公演2日目。昨夜の稽古も休ませてもらったおかげで平熱近くまで下がったが、鼻がつまり、咳が出るようになった。ふらつくことは無いだろうが、“演じる”ということに関しては日曜日の方が良かったかもしれない。我ながら面倒な身体である。小屋入り前に薬局に寄って咳止めを購入。塩水でのうがいとともに万全を期す。

 さて、今回の公演は初体験が多い。7回と言う公演回数の多さもそうだが、途中で休演日が入ることや、仕事を終えた後の平日夜公演というのも初めての体験である。仕事を切り上げ、夜7時前に小屋入り。柔軟と発声をする。TALOHさんは仕事のトラブルで7時半過ぎになるとのこと。これまでは本番前にゲネプロが必ずあり、そこで気分を高めていたのだが、今日はそんな時間はない。アマチュアゆえ急に残業が入り、小屋入りが遅れる可能性だってある。気持ちの持っていき方が難しい。

 今日はが受付係で手伝ってくれる。やれ、ありがたや。

 TALOHさんの小屋入りを待って「演劇は気合だー!」三唱。楽屋で咳止めを限界ギリギリまで飲む。藤田クンが「○分前で〜す。」と告げにくるたびに小芝居していく。…暇なんか?

 浜松のアマチュアでは平日夜公演はあまり例がない。客の出足が心配されたが楽屋の窓から見る限りは好調。後で聞いたら日曜と同じ人数だったという。平日夜でも都合さえ合えば芝居を観ようとする人が思ったより多そうである。けっこー驚き。

 午後8時30分開演。1時間ちょっとという上演時間もあるが、公共施設では考えられない開演時間の設定である。しかし今回のお客さんの入りを考えると、演劇を「観る」のと「やる」ことの環境拡大を狙って公共施設も閉館時間を柔軟に対応してもいいのではないか?と思うな。いろいろな関係で難しいことは解るけど。

 勧進帳の後は全員でクィーン『We Will Rock You』の曲に『平家物語』冒頭の有名な一節、「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり…」を乗せて唄う。今宵の勧進帳と歌は間違わずにできたものの、気管支の調子が悪く、声をはることができない。本番中に咳が出ないかということも合わせて不安の種である。

 今回の舞台では自分の出番でないシーンでも舞台袖などに引っ込まず、それぞれ決まった位置にジッと座っている。また一人2・3役を演じているのだが、本役以外の時にはサングラスをかけて演じ分けている。ちなみに僕は本役が武蔵坊弁慶なのだが、それ以外に日本歴史上“最大の狸親父”後白河法皇、その他大勢の御家人などを演じる。僕にとっては初めての試みでおもしろい。ただし体調不良である今の自分には辛いシステム。通常の舞台ならば袖に引っ込んだ際に隠れて咳をしようがメイクを直そうが何とかなるもんだが、今回はそうはいかないのだ。

 源義経役のめぐ、源頼朝役の祥子ちゃんと、メインの男役を女性が演じることが注目される。女性が男役を演じることは僕自身は正直違和感を感じるのだが、まぁ個人的な考えはさておき2人の男役は実に格好良かった。
 めぐ
は文語体の台詞で見得を切ったかと思えば、頼朝に「お兄ちゃ〜ん。」と猫なで声(?)で甘えたりと役創りが大変だっただろう。“義経”と言えば“弁慶”と言うことで今回最も絡みが多かった。O.G.スプリングスティーン・プロデュース『白昼の参画』以来の共演。主従でありながら親友であり、逆の立場で親子のような2人の関係を感じさせる演技に挑戦したが、どうだったかな? 観に来てくれた方には是非聞いてみたい。

 歌の後コーラス部分と呼ばれるところまで、しばらくの間座ってジッとしているのだが、だんだん咳が出そうになる。咳、くしゃみなど、人間の生理現象ってのは役者にとってやっかいなもの。欲求は集中力とかでかなり抑えることはできるが、出そうになったものは押さえが利かない。ことに静かなシーンでは目立つし芝居をぶち壊してしまう。とにかく全員で大声で台詞を交わし、床を叩くコーラス部分まで我慢。残り1〜2分は息を止めて耐える。やっとコーラス部分までたどり着き、騒がしい中で後ろ向きになり目立たぬように咳をする。ホッと一息。
 されど後半の後白河法皇で立ち上がって台詞を言うところで結局咳き込んでしまった。アンケートに「弁慶役の方が途中で咳をしていましたが、大丈夫ですか?」とあった。観ていたお客さんはあそこで素に戻っちゃったんだろうなぁ。今回の7日間、いや、これまでに踏んだ舞台の中でもっとも悔しい日になった。今日来てくれたお客さんには心からお詫びを言いたい。

○ 3月19日(金) 3演

 休演日の昨日は徹底的に体調管理に努め、やっと平熱になり咳も落ち着く。振り返ってみれば初日と2日目の舞台は自分の中では熱と咳の心配ばかりで芝居の出来は二の次だったような気がする。改めて共演者、スタッフ、何より2日間のお客さんにお詫び申し上げたい。

 今夜も平日夜公演。仕事の調整をして残業がないようにし、ヤサカへ直行。階段状の局咳の上で柔軟をみっちりとやる。みんな早く集まることができたので役者揃って発声練習。ゲネプロが無いので発声で一緒の時間を作り、気持ちを合わせるのだ。これが思いのほか効果的だったなぁ。

 スタッフは準備に余念がない。今回は演出のTALOHさんシアターLABO/1主宰)もそうだが、演出補助の俊さんプロジェクト熱主宰)、舞台監督のおがじーシアターLABO/1隊長)、制作進行の藤田クン迷子の遊園地)と浜松演劇界第一線を走る劇団の主宰者クラスがスタッフを務めてくれている。ありがたいやら申し訳ないやら…。

 7時半になって恒例の「演劇は気合だー!」三唱。楽屋で準備に入る。藤田クンが「○分前で〜す。」と告げにくるたびに小芝居していく。…暇なんか? 
 念のため咳止めを飲み、塩水うがいをかかさない。メイクの方は徐々に慣れてきて、あれやこれやと試行錯誤を始めたのでだんだん濃くなっていく(^^)。演出のTALOHさんがストップかけるまではいいか? 役者たちもいい意味で緊張感が抜けてきていて楽屋でもリラックスいた雰囲気である。終わった舞台は取り返しがつかないが、その分これからの舞台にベストを尽くし良い舞台にしよう。

 今回の舞台は“unplugged”というサブタイトルがついている。「アンプラグトって何じゃい?」と僕自身も最初思ったが、聞いてみると直意は「プラグが抜かれた状態」とかで、音楽用語で「電気器具を使わないこと」らしい。“アコースティック”と言えば分かりやすいか。よ〜するに音響も照明も電気系は使わず、音響はアカペラの歌に身体や棒で床を叩いて音を出して表現し、照明はおがじー藤田クンの力作で平安朝風に作られた燭台の上のロウソクである。これが壁に一面に設えられた白布と相まってとても美しい空間になっている。この舞台に立つことができるのはホントに幸せである。

 頼朝役の祥子ちゃんは恵まれた体格(^^)から勇ましい役が多い。その舞台は見ていて本当に「カッコいい!!」と思わず叫んでしまう程。特に後半義経に対して鎌倉入りを許さない理由、鎌倉で平家を憎んでいるのは自分のみで、源氏軍に名を借りた北条軍の真の敵は平家ではないと説くシーンは迫力満点だった。
 本当は実に可愛らしい女の子。浜松アマチュア演劇界で是非共演したい役者さんの一人で、今回それが叶って嬉しい限り。じっくり共演してみたい女優さんである。
 北条政子役の熊村は役者のキャリアは短いが芝居心はメンバーの中でピカイチ。頼朝と交わす夫婦の会話はこれまでの頼朝・政子像とは異なるものでとてもおもしろかった。巧い役者同士が絡むとこうも芝居がおもしろいように転がっていくものか、つくづく感心するし同時に自分も早くその域に達してみたいものである。

 体調もそこそこ復活し、自分の演技にも余裕が出てきた。オープニングの勧進帳の後、巻物を舞台隅においてサングラスをかけて歌に参加するのだが、サングラスを手に取った途端レンズの部分が外れてしまった! おそらく2日前までだったらパニックになってただろうが、今日はこの状況でも自分も驚くほど落ち着いていて、キリキリまで努力して、駄目なら客席手前に控える藤田クンに投げてしばらく無しでも知らん顔で演技を続けることも考えていた。何とか自分の歌うパートまでには元通りはまって事なきを得たが、一つ危機を超えることができて自分に余裕があることを認識でき、安心感をもって舞台に望めた。やっと役者として芝居を楽しめるようになったね。ホッ!

○ 3月20日(土) 4演・5演


 今日・明日は1日2回公演日。これも初体験。キッドでゲネプロ2回に本番と1日3回演じてヘロヘロになったことがあったが、本番を複数回演じるのとはその緊張感が比べ物にならない。病み上がりと言うこともあるがペース配分しつつも手を抜かない舞台になるように気をつけよう。

 10時小屋入り。柔軟・発声のあと、動きを再確認をすべく抜き稽古をする。地下の牢の出入り口を僕と熊村が表現するのだが、これがなかなか演出のTALOHさんから100点満点を貰えない。座っている位置から静かに立ち上がり、中央に進んで手を合わせて扉を表す。頼朝役の祥子ちゃんが開けようとすると重々しく、「オロロ〜ン」と擬音を発して(ゆえに2人は“オロロン隊”と称される)開いていく。頼朝が中に入ったら静かに元の位置に座る。この一連の動きには“生き生き”した感じは出してはいけないのだ。だって「扉」なんだから。生き物のような動きをしちゃマズイでしょ? さらには扉の開き方に重々しさが出ない。そこいらを指摘されるもなかなか難しいものである。
 表現が難しいと言えば、めぐ演じる義経とTALOHさん演じる平知盛が対峙するシーンでは、他の4人が中腰で舞台スペースをワサワサと動き回る。壇ノ浦の波と、時の流れを表しているのだが、これがじつに体力勝負なのだ。かと言って途中でキツそうな顔をしたり、ハァハァ息を荒げたりする訳にはいかない。何せ“波”なんだから。1人でどうのこうのではなく、4人の動きがイメージにはまってこそ初めて波に見えてくるのだが、果たして…? このシーン何が辛いって動き回った後定位置に戻って座るのだが、僕の定位置の前には照明用のロウソクがあるので息を整えるために深呼吸すると炎は揺らめいてしまうこと。息を吐く方向にえらく気を使ったなぁ。

 YYアドベンチャースタッフ鉄兵ちゃんが駐車場係を手伝ってくれる。演劇やってないのに無理にお願いした結果。やれありがたや。

 恒例の「演劇は気合だー!」三唱。楽屋で準備に入る。藤田クンが「○分前で〜す。」と告げにくるたびに小芝居していく。…暇なんか?
 昨日の失敗を得て、サングラスのレンズを留めている部分に接着剤を塗って外れないようにする。咳止めと塩水うがいと今回の自分の恒例行事をしてメイク。さらにパワーアップ(?)したがTALOHさんは何も言わず。ホンマにこれでええん?

 静御前役のさおりん。ラストの義経とのシーンは綺麗だったなぁ。迷子の遊園地の役者さんなのだが、迷子の舞台を観たことがないので、さおりんの芝居も観たことがなかった(ゴメン)。今回共演できるということで興味津々、期待に違わずおもしろい役者さんだった。僕とは直接絡みが無かった(義経と弁慶のシーンで周りでウロチョロしてたが)のはとっても残念。

 体調もそこそこ復活し、自分の演技とお客さんの反応を確認する余裕ができてきた。自分の出番じゃないシーンで、僕の座る位置が下手(客席から向かって左側)の一番前でお客さんがよく見えるのだ。「あの男の人、芝居に入り込んでる。」「あっ、あのおばさんアクビした!。」「あの女の子可愛い(関係ないか)。」ってな感じ。小屋の構造上いくら防いでも外の光は漏れてしまうので夜に比べてお客さんの注意力が散漫になりやすいけど、アクビだけならまだいいが最前列でウツらウツら舟をこいでいるのを見るとショック受けるよな〜。よっしゃ! 自分の演技で眠気覚ましちゃる!

 昼の部が終わり、客出し、舞台上の準備が終わると、夜(夕方?)公演開始までもう2時間を切っている。1ステージ終わってホッとしてる余裕はない。すぐに舞台上の小道具をチェックし、芝居冒頭の気持ちとモチベーションに持っていかなければならない。これが想像していたよりも難しかった。まるで陸上競技の大会でアップとクールダウンを繰り返す選手のようである。
 この時間を利用して記念写真の撮影会。様々なシーンをフィルムに焼き付けていく。ちなみにこのページの舞台写真はこの時に鉄兵ちゃんに撮ってもらったものである。

 開演1時間前、恒例の「演劇は気合だー!」三唱。楽屋で準備に入る。藤田クンが「○分前で〜す。」と告げにくるたびに小芝居していく。…暇なんか?

 午後5時、今日2回目の本番。されど言うまでも無くお客さんにとっては初めての『クロウホーガン』。特にこの回は知人・友人、さらには意外な方も観に来てくれた。いつもはコメディをやっている僕の武蔵坊弁慶を、みんなはどう観てくれただろうか? この日の夜公演は自分の中では自信が持てる出来だったのだが…。笑いが多いコメディとは異なるが、TALOHさんの世界を存分に楽しんでもらえたら嬉しい。

 午後6時過ぎに閉演。着替えて明日の打ち合わせをして7時半には解散(早っ!!)。明日に備えて帰りがけに熱々のにんにくラーメンをすする。店員の兄ちゃんがジロジロと顔を見る。あ、メイク落としてなかった(^^;)。
 帰宅後「今日はどうだった〜?。」と聞いてくるを無視して早めの就寝。疲れもあってか、あっという間に夢の中…。明日は悔いの残らぬ舞台にしたいな。

○ 3月21日(日) 6演・千秋楽

 今日が最後、楽日なのだが、1週間にわたって全7回公演などやってるとヤサカの小屋と楽屋にいることが至極自然なことに思えてくる。10時に小屋入りしたのだが、メンバー一同楽日の緊張感はあまり感じず、ほとんどが昨日逝去したいかりや長介の話し。柔軟、発声の後、TALOHさんの音頭取りで長さんの冥福を祈りつつ恒例の「演劇は気合だー!」三唱。調子に乗って(悪い癖)僕は「エンヤ〜コラヤ〜♪」と全員集合オープニング踊りを踊る。合掌。

 “いつものように”楽屋で着替えとメイク。これが最後!と気合を入れてメイクをしてTALOHさんを見るが、ジッと見詰め合っても何も言わず。ホンマにこれでええんか?
 藤田クンが「○分前で〜す。」と告げにくるたびに小芝居していく。…暇なんか? まぁイベント事の当日スタッフ、特にそのリーダー格の人間が暇にしてるのは準備万端、不備がなく、トラブルも無いわけで理想的なんだけどね。

 史実では「見るべき物は見つ…。」という名言を残して壇ノ浦の波間に消えた平知盛。今回の芝居では弟である義経を討つための刺客として、頼朝自ら知盛の命を救うことになっている。その知盛を演じるのが演出でもあるTALOHさん。原作、脚本に演出、役者、衣装制作その他諸々と、二足どころかムカデ並みのわらじを履く活躍で間違いなく一番大変だっただろう。弁慶よりも立派な(^^)体格で迫力の演技を見せてくれた。身長があると舞台栄えするから羨ましい。M−Uプロデュース『赤鬼』以来の共演。今回はほとんど絡みが無かったので残念。もう一度がっぷり四つで一緒に芝居したいな。

 そのTALOHさんが今回の公演の中でこだわっていたものの一つが『腰越状』の朗読。鎌倉入りを許されない義経が、頼朝に宛てた書状、つまり手紙である。平家討伐時に自分が如何に活躍したかを伝えると同時に、「お兄ちゃんに会いた〜い。」と伝える、ほとんどラヴレターのような内容なのだが、演劇でその全文が読まれたのはおそらく初めてとのこと。それを受けて頼朝が、実は鎌倉では自分は一人ぼっちなのだと吐露するシーンは良かったなぁ。
 日曜日の昼公演、思ってたよりもお客さんが少ない。土日とあればやはり日曜は家でゆっくりしたいのかな? これも意外な結果。“公演”に慣れたせいではないだろうが、それぞれに些細なミスが目立つ公演になった。僕も中腰でワサワサ動くシーンで足がもつれて転びそうになるし、台詞も思いっきり噛む。残念至極で悔しい。7回もやってればいい時悪い時の波がどうしたってでてきてしまう、が、お客さんにとってはまさに“一期一会”。できるだけ高いレベルで波が少ないようにしたいものではあるが…。

 最終公演までの間、改めて柔軟、発声、塩水うがい、メイク直しを行う。「これが最後!」と気合を入れてメイクを直したら、いよいよ歌舞伎チックになってしまった(^^)。もちろんホントの歌舞伎のようにカラーではないが。公演回数が多いと、初日と楽日では演技が多少変化したりするが、今回の公演で僕が一番変わってったのはメイクかも(おいおいっ)。藤田クンが「○分前で〜す。」と告げにくるたびに小芝居していく。…やっぱり暇なんだ。

 おがじーの前説。当然僕ら出演者は聞くことはできなかったが、舞台に出て行った時に客席にはとっても心地よい緊張感に包まれていた。きっと楽しく、いい感じな前説だったのだろう。是非我々の前でも一回やっておくれ!

 奥州平泉で最後の時を迎えた義経。自害する時間を稼ぐべく、義経がこもる社の前で一人敵に立ち向かい、身体中に矢や槍が刺さりながらも立ったまま絶命した“弁慶の立ち往生”。この有名なシーンがクライマックスにやってくる。オープニングの勧進帳と並んで僕の見せ場だ。勧進帳もそうだが僕の出演するシーンは比較的史実や有名なエピソードなので、万が一「話しが難しかった。」というお客さんも分かりやすく芝居に入り込みやすいのではないか、と秘かに考えていた。特に立ち往生のシーンは義経や弁慶を主人公とした物語では必ずと言っていいほどクライマックスでおおいに盛り上がる特に有名なエピソードである。舞台奥に向かって演じる、つまり“背中で演技”をする訳で、僕にとって初めてで最大のチャレンジでもある。奥州藤原軍(に扮したTALOHさん祥子ちゃん熊村)舞台手前でめぐ扮する義経、さおりん扮する静がいて、2人を守るべく仁王立ち。身体中に槍が刺さった後、痛みに耐えながらぽつりと歌を歌う。

 「京の五条の橋の上…、大の男の弁慶が…、長い薙刀振りかざし…、牛若めがけて切りかかる…♪」

 長い年月を共に過ごした主従が、その最後の時に敢えて相手を幼名で呼ぶ。好きだなーこういうの。いくら思い入れを込めようが時間をかけようが、全て僕次第。義経と弁慶の2人の関係がどんなものだったか、僕なりの表現をしたがいかがだったでしょうか…?

 義経が自決し、静が義経を想い舞う。めぐの歌が綺麗。そしてエンディング。お客さんはどう感じてくれただろうか? 思い出に残る芝居になってくれたら嬉しい。
 僕個人は終了時の拍手もそうだが、お客さんが残していってくれるアンケートの“提出率”がバロメーターになっている。今回の芝居は全7回で提出率は7〜8割、良い意味で異常な高さである。書かれた内容は良くも悪くも(実際はお客さんも気を使ってか良いことの方が多い)、「アンケートを残していこう。」と思わせる舞台だったということが言える。とりあえず「ホッ…。」だ。

 着替えてバラシ開始。あっという間に元のギャラリーに戻る。終わってみればあっと言う間だった。今日で終わりという感じがなかなかしてこないが、間違いなく明日からは『クロウホーガン』の台本を手にすることはない。「もう少し時間があればもっと良くなったかも?」という気持ちと、「やり遂げた!」という充実感が入り混じる。
 簡単な打ち上げでそれぞれの健闘を称えあう。打ち上げ恒例(?)の俊さんの熱いトークを聞きながら実感。このメンバーに囲まれて芝居ができたことに感謝するとともに、誇りに思う
 観に来てくださった全てのお客さんに感謝! そして当日スタッフを含めて関わった全てのみんなありがとね! お疲れ様! TALOHさん、素敵な脚本をありがとう! 是非機会を作ってまた一緒に芝居やろうね!