kouen日記

kouen日記ぷろぐらむに戻る

 

演劇集団浜松キッド第27回公演
第50回浜松市芸術祭 はままつ演劇・人形劇フェスティバル2004
お仕事じゃない!

           ☆ と   き : 平成16年11月14日(日)
           ☆ と こ ろ : クリエート浜松 ホール

☆ 作/今石千秋(劇団ZIPANGU Stage)   ☆ 演出/山田利明

    ☆ キャスト
     ○
 『小説青山』編集長   榊原不二雄 … 大 石 英 喜
     ○ 『小説青山』副編集長  副島理律子 … 岡 本 真規子
     ○ 『小説青山』編集者   田中 正樹 … 島 津  敬
     ○ 『小説青山』編集者   西園寺麗華 … 大河原 佳 美
     ○ 『小説青山』アルバイト 牧村 瑞穂 … 澤 木 千 果
     ○ 不二雄の妻       榊原 幸枝 … 島 田 優 子
     ○ 新人作家        矢島  悟 … 増 田 雄 介
     ○ 青文社専務       青山 和人 … 小 池 高 正
     ○ 幸枝の兄        高橋 克也 … 渡 辺 泰世志
     ○ 冒険小説家       風間 達平 … 袴 田 光 春
     ○ 麗華の恋人       ヒ デ 様 … 畑 木 宏 

  
    ☆ スタッフ
     ○ 舞台監督 … 荒 川 能 宏
     ○ 音  響 … 家本典幸・白柳弘幸・大橋隆一
     ○ 照  明 … 潟Xテージループ
     ○ 大道具  … 白柳弘幸・袴田光春・増田雄介・畑木宏支
     ○ 小道具  … 大橋隆一・島津 敬
     ○ メイク  … 太 田  修 (山田かつら)
     ○ 衣  装 … 大河原佳美・島田優子・岡本真規子・澤木千果
     ○ 制  作 … 小池高正・渡辺泰世志・大石英喜・石切山晶子
              龍ゆかり・山崎由美子・林田小都喜

    ☆ Special Thanks(敬称略)
     劇団ZIPANGU Stage・劇団ファルスシアター・潟Xテージループ
     山田家の皆さん・岡田家の皆さん・荒川弘美・足立典正、まゆみ
     当日お手伝いしてくれた皆さん


☆ 11月15日(土)  仕込み

 午後5時まで稽古をして夕食を取り、6時30分に小屋入り。午後3時開演で行われていたプロジェクト熱(ルア)が公演が終わり、バラシ(舞台セットや照明、音響装置を取り壊して会場を元の状態に戻すこと)を経て浜松キッドに会場が渡されるのが午後7時。渡されたらすぐに建て込みに入ることができるようにスタンバイしたのだが、どうものバラシが遅れているようで午後7時建て込み開始は無理そう。やっばいなぁ。スケジュールが遅れるのも困るのだが、それ以上に不必要なトラブルが起きやしないかとヒヤヒヤしたのだ。幸い1時間遅れでのバラシが終了して、午後8時には搬入、建て込みに入る。安堵。

 例年と同じように大道具担当
白柳さんが建て込み易いセットを作ってくれたのと、時間が少ないという危機感をみんなが持ったのか、建て込みはとてもスムーズ。パネルを並べ、繋ぎ合わせていく。移動させる際に呼吸が合わずにパネルが1枚破損。何故だ? 白柳さん慌てて応急修理。その間別働隊は黒幕の設えと机、椅子のセッティングをする。同時に女性陣は楽屋のセッティング。あらかじめ役割分担をしておいたので混乱なく、各々が役割をこなしていく。
 午後9時30分の貸館終了時刻までには建て込みと照明の吊り込み、PAのセッティング、大半の黒幕を設えることができた。これはスタートの遅れをかなり挽回できたかな。

 明日の動きを打ち合わせた上で解散。残念ながら僕には帰宅後まだ仕事が残っている。公演時にお客さんに配布する当日パンフレットの原稿作りだ。役者のコメントは揃っていたし、稽古場風景の写真も整っていたのだが、
巻頭挨拶文と役者紹介がこの日の解散時にフロッピーで手渡されたのだ。文の長さの調整や誤字をチェックし、原稿が完成したのは日付が変わった午前1時。う〜む、こういった、事前にどうとでもできうる仕事は事前に済ませて、当日や前日は少しでも余裕を持ちたいものだ。

 さてさて、いよいよ明日本番。気持ちのいいファイナルを迎えたい。


☆ 11月16日(日)

 午前6時少し前に起床。寝不足なのだが比較的頭はすっきりしてる。昨夜寝る前に作った当日パンフレットの原稿を持ち、7時に家を出る。島田さん畑木と浜北在住を拾いつつ、小屋に向かう。本番当日は役者は誰しも朝からハイテンション。本番への期待や不安を話し合う。みんな思い出に残る、いい日になるといいね。

 小屋入りしてまずは仕込みの残り作業。黒幕の残りと客席のセッティング。埃がたつ作業をする時はマスクが必需品。特に役者は喉を保護するためにも必ずマスクをしなければならない。その様子を見た会場係員が「みんな風邪?。」 僕も含めて体調不良者は多いが違うって(^^;)。
 
1時間経たずに作業が終了したのだが、照明と音響の調整が手間取ってきっかけ合わせ(芝居の流れの中で照明や音響を操作するところや、それにあわせての役者の動きを確認する作業)に入れない。思わぬ余裕時間ができたメンバーは身体を休めたり、忘れた物を買出しに出たり。僕はってぇと演出山田さんの指示で、雑誌の編集室が舞台であるセットに張り出す「締切厳守!」などの掲示物を作成、結局パソコンに立ち向かってた。
 1時間遅れで音響・照明きっかけ合わせ。ただでさえ押しているのだが、
キッドきっかけ合わせが通常の稽古になってしまう悪い癖がある。案の定さらに時間は押して、昼飯やメイクの時間は十分に取れぬまま、ゲネプロ(お客さんがいない以外、音響・照明・衣装など全て本番と同じに行うリハーサル)に。ドタバタしてみんな動揺しているせいか、台詞や動きの弱い部分で相変わらずミスを連発。また昨年の『パパ・アイ・ラブ・ユー』公演時のゲネプロでは観に来ていた関係者(当日スタッフや休団中のメンバーとその子ども等)から笑いが起きていたが、今回はとても静か。終わった後「おもしろいよ〜。」とは言ってもらったが…???
 さらにはゲネプロ終了後のダメ出しも長い(・・)。終わった時には開場15分前。すでにロビーにはお客さんが集まり始めていると言う。こりゃ大変だ! 小道具類のチェック、舞台上の準備、舞台袖のチェック。楽屋ではゲネプロ前にメイクができなかった役者が
太田さん(元フジテレビメイク室。毎年キッドの公演に協力してくれるのはまさに“プロの遊び”)の前に列をつくる。慌しい。困ったのはトイレ。楽屋専用のトイレがないクリエート浜松は、できればお客さんが集まり始める前に役者は済ませておきたかったところ。仕方がなく、楽屋をウロウロしていた男性スタッフに偵察に行ってもらい、お客さんの姿が途切れた瞬間に隠れるようにトイレを済ます(^^;)。もっと余裕が欲しいなぁ。

 午後4時30分開場。開場から開演までの30分間は役者って手持ち無沙汰になるのだが、今回はバタバタしていたせいかあっと言う間に時間が過ぎる。いつもはストレッチをして時間を潰し、両手を合わせて口に当て、目を閉じて集中をするのだが、今日はストレッチ抜き。とにかく集中することを心がける。客の入りは良いようだ。
 開演少し前、
キッド恒例の掌に「人」という字を3回書き、ゴックンと飲み込む儀式。さらに僕の開演前の儀式、共演者やスタッフと握手して周る。長い間稽古ごくろうさま、そしていい舞台にしましょうという決意表明である。
 これも
キッド恒例の、小道具担当大橋さんお手製の被り物を用いた前説。前説とは文字通り開演「前」の「説明」で、基本は「開演前にお手洗いをお済ませください。」とか「携帯電話の電源はお切りください。」など、観劇上の注意事項をお客様に伝えることだが、キッドでは併せてしゃべりやギャグ(小噺や駄洒落が多い)でお客様の固い雰囲気を和らげる効果を狙っている。以前はギャグがスベッてかえってお客さんをひかしてしまったことがあったが、今年は概ね好評のよう。さぁ、いよいよ本番!

 
小説アオヤマ編集部。校了(締切)の日のため、編集部員が慌しく動き回っている。ところが印刷に回した原稿を一人の部員のミスで紛失してしまう。もう一度原稿を復活させようとするが、停電時のドタバタでパソコンが故障。さらに雑誌の目玉が新人賞受賞作家発表であるにも関わらず、その作家は小説の内容を全て忘れてしまったという。さらに社長の息子である専務は販売部数が伸びない小説アオヤマを廃刊すべく、今日が校了の次回発行号の内容で判断すると言い出す。慌てる編集部。そこにベテラン冒険小説家、産休中の部員(編集長の妻)、その兄まで現れて編集部は大混乱! さてさてどうなりますか…。

 幕開けからお客さんのウケがいい。それにノセられたのか、僕も含めて役者たちのミスが少ない。本番が一番出来のいい出来になったんじゃないかな? 前説のおかげもあるが、開場前のバタバタのために緊張せずに済んだのかも。バタバタした慌しさが結果本番でいい方向に作用したと思うのは僕だけか?

 ただし、これは僕に限ってのことであるが、やはり「心」の余裕は無かったな。舞台上にいる時間が長かったが、終演後になって本番中にお客さんの様子を感じることが無かったことに気がついてビックリした。初舞台の
『青木さん家の奥さん』の時でさえ、「あ、あそこに可愛い娘がいる。」と観察(?)する余裕があった。入場者172人の大入り満員(感謝です)の客席を感じることができなかったのは残念至極で、公演を“楽しむ”要素のかなりをロスしてしまった。

 これもあくまで僕に限ってのことだけど、今回の芝居はモチベーションの維持がとても難しかった。子どもの出産を控え、一度は出演しないことを決意。しかし男優が一人足りず、止む無く土日を中心に稽古に出られないことが多くても良ければということで出演することになった。が、仕事の状況に加え、ほぼ毎週里帰りしている
の実家に通うことは想像以上にキツかった。アマチュア役者として仕事はもちろん、どうしても調整つかない(つけるべきではない)プライベートなことがある際に芝居に関わることが可能なのか。人にもよるだろうが、元々天才肌ではなく特別本番に強いわけではない、稽古を積み重ねて役創りしていくタイプ(と思っている)僕にはかなり困難だった。

 さらには芝居を始めて以来初めての経験。これまで与えられた役は幸せなことに、“どうしてやらせて欲しい”役か“どっちでもいい”役で、今回は初めて正直言って“できればやりたくない”役だった。もっとも“高橋克也”以外の役では負担が大きくて難しかったであろうことも確かだが。「
なべちゃんにピッタリ!」と言われ、確かに自分でもそう思ったが、それが逆に役創りを困難なものにしてしまった気がする。いつもは稽古が進むにつれ「こんなこと、あんなことをやってやろう。」というアイディアが沸き起こってきてそれが稽古を楽しくさせるのだが、今回は一向に沸いてこなかった。キッドは個性を重視する芝居創りをしているが、少なくとも僕にとっては、一人の人間としての個性と役者としての個性は別物なのではないか、そんなことを考えさせられた稽古期間だった。

 僕にとって“芝居”とは稽古から本番までを指す。単に人前で何かをするとかええカッコしたくてやっている訳ではない。今回本番でそれなりの充実感を味わったのに“芝居”全体の満足度が低いのは、稽古期間中に溜まってしまったフラストレーションのためだろうなぁ。終演後のカーテンコール、通常のものは良かったが、一旦緞帳が降りた後、本番中に急遽決まった再び緞帳を開けて客席に出て行くものは、僕にはかなりの苦痛なものになってしまった。あ、これはホントに僕一人の芝居を終えての感想です。

 客出し。いつもは自分の顔見知りを中心に挨拶するのだが、今回はご来場くださった全てのお客さんに感謝をしたい気分。敢えてホール出口ではなく、1階に降りるエスカレーター付近で頭を下げる。以前は出演祝いの花束やお菓子をいただいたものだが、今回いただいたのは「赤ちゃんに。」とベビー用洋服(^^;)。嬉しいような、何だかな〜。セット前で記念写真を撮り、スタッフはバラシ、役者は着替え、メイク落としに入る。手早く荷物をまとめてバラシに入る。準備段階とは反対にえらく順調で、午後9時には小屋から撤収完了。午後10時頃から
山田さん宅にて簡単な打ち上げ(家の人には実際迷惑じゃなかったか?)をして解散。畑木島田さんはかなり満足度が高いよう。公演の話しに花が咲いた帰路であった。

 公演が終了して数日経つが、様々な方から感想を聞かせていただいた。概ね好評である一方、厳しいご意見も賜った。楽しんでいただいた方が多いことは嬉しくてホッとするが、厳しいご意見はどれもごもっともなものばかり。芝居について、アマチュア演劇について、そして僕自身の演劇活動について、いろいろ考えさせられました。そういう考えるきっかけになったと言う意味では、実はかなり有意義な公演だったのかもしれないな。それはそれで関われたことに感謝である。

kouen日記ぷろぐらむに戻る