kouen日記

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演劇集団浜松キッド第26回公演
第49回浜松市芸術祭演劇部門・第58回国民体育大会公開競技スポーツ芸術
パパ・アイ・ラブ・ユー

           ☆ と   き : 平成15年11月16日(日)
           ☆ と こ ろ : クリエート浜松ホール

☆ 作/レイ・クーニー  ☆ 訳/小田島雄志・恒志  ☆ 演出/山田利明

    ☆ キャスト
     ○
 デービッド・モーティマー  … 大 石 英 喜
     ○ ヒューバート・ボニー    … 渡 辺 泰世志
     ○ ジェーン・テート      … 島 田 優 子
     ○ ローズマリー        … 岡 本 真規子
     ○ レズリー          … 畑 木 宏 支
     ○ マイク・コノリー      … 島 津  敬
     ○ サー・ウィロビー・ドレーク … 荒 川 能 宏
     ○ 婦  長          … 大河原 佳 美
     ○ 看護士           … 増 田 雄 介
     ○ 巡査部長          … 袴 田 光 春
     ○ ビ  ル          … 小 池 高 正
     ○ 母  親          … 白 柳 弘 幸

    ☆ スタッフ
     ○ 演出助手 … 小 池 高 正  ○ 舞台監督 … 山 崎 由美子
     ○ 音  響 … 家 本 典 幸  ○ 美  術 … 白 柳 弘 幸
     ○ 小道具  … 大 橋 隆 一  ○ 衣装・メイク…太田修(山田かつら)
     ○ 制  作 … 小 池 高 正・渡 辺 泰世志・大 石 英 喜
               龍  雄香里・榊 原 康 久・岡 田 浩 江 

    ☆ Special Thanks(敬称略)
     雄踏町商工会・雄踏町文化センター・浜北市社会福祉協議会・浜北市中央公民館
     潟Xテージループ・足 立 典 正・足 立 まゆみ・大橋塗料店・岡 田 彩 香
     渡 辺 晶 子・山田家の人々
                           当日お手伝いしてくれた皆さん


☆ 11月15日(土)

 朝6時30分起床。昨夜遅くまで当日パンフレットの原稿をつくっていたので少々ではなく、かなりの寝不足。あと5分〜と言いたいところだが、荷物を全くまとめてないのでやむを得ず起きだす。友だちの結婚式に出席するために埼玉に行くはすでに起きて準備してた。朝食を取って荷物を車に積み込み、いざ出陣と思いきや、「浜松駅まで乗せてって。」とのたまうAの準備が完了せず。ワンボックスを所有するメンバー最北端居住者は自然と輸送担当することになるのだが、端から遅刻してしまう。みんな、ごめん!!

 AM9:30小屋入り(昔芝居は掘建て小屋で行われたことに由来。つまり公演会場に入ること)。すぐに大道具の建て込みをする。今回の大道具はかなり大掛かり。数年前に『パパ・アイ・ラブ・ユー』が公演候補として挙がり、最終的に採用しなかった最大の理由が“大道具が大変”だった。それが今年は『パパ・アイ・ラブ・ユー』を公演すべく大道具を建て込んでいる。キッドの小屋で“電動ドライバー”の音が響いたことなんてこれまで無かったもんなぁ。これ、演劇関係者なら意味判ってもらえると思うけど。でも今我が浜松キッドには白柳さんがいる。プロ劇団で全国各地の小学校等を巡った経験はとてつもなく大きい。凝ったセットを組み立て易く、バラシやすく造る技術はさすが。その白柳さんの指示のもと、メンバーが組織的に動いて多目的スペースがみるみるうちに劇場へと変わっていく。イベント好きにはたまらない瞬間やね。建て込みがメドがついた段階で客席をつくる。今回は階段席、フラットの椅子席の前に座布団を並べて桟敷席を設える。上演時間は2時間。桟敷で観るお客さんには少々辛い時間だ。あとは我々がいい芝居をして、腰やお尻の痛みを忘れさせなければならない。

 昼飯になり楽屋弁当を食う。美味。30分ほど押して
照明・音響きっかけ合わせ。本来は芝居の流れの中で照明や音響を操作するところや、それにあわせての役者の動きを確認する作業なのだが、キッドでは通常の稽古になってしまうきらいがある。まぁアマチュアの場合自前の稽古場を持っている劇団で無い限り、実際に建て込まれた大道具で役者が動けるのは小屋入り後となるからある程度はやむを得ないけれど、時間はかかるし肝心の照明・音響のスタッフが暇そうにしてるのはなんだかなーである。

 PM5:30夕食。そんなに腹は減っていなかったが、今回の楽屋弁当は価格に比べ豪華、そして美味。なんじゃかじゃで全部平らげる。食べ終わる頃に一騒動、公演時の役割分担についての意見の相違が原因だ。どんなイベントでもこの手のことはありがち。小屋入りして本番を明日に控え、みんな平常より興奮気味になっているから、ちょっとした行き違いが騒動に発展する。こうしたことを防ぐためにも事前に決められることは決めておいて、当日あ〜でもこ〜でもないと議論する羽目になる種は摘んでおくべきなのだ。ただでさえ今回は裏方(スタッフのこと)が少なく、役者が裏方仕事を2役3役とこなしている。すでにいっぱいいっぱいで気持ちに余裕が無い人もいるのだから突然別の役割を言われても、それは無理な話しである。他にもやれる人がいたのだから無理強いしてもねぇ。もっとも事前に決めておかなかったことについては制作担当である僕にも責任の一旦がある。反省。

PM7:00ちょい過ぎから
ゲネプロ(略さず言うとゲネラル・プロ−ぺ。もっと略して言うとゲネ、またはゲーペー。おとらくドイツ語でオペラ用語が語源らしい。お客さんがいない以外、音響・照明・衣装など全て本番と同じに行うリハーサルを言う。知識提供TALOH氏)。大道具を使って照明を浴び、衣装を着けて、僕も含めて役者一同気持ちがのってきた感じである。芝居のテンポも上々。僕個人としては正直キッドは芝居のスピード、テンポは今ひとつと考えているのだが、今年は決して悪くない。我ながら今回の公演はかなり期待が持てる。

 このゲネになって“レズリー”役の畑木が大化けしてぐ〜んと良くなった。「パンクで情緒不安定な少年」役なのだが、衣装をつけて気持ちがこもったか? 初舞台から3年目、いずれも主役級を演じる幸運の持ち主なのだが、全て小屋入りしてから大化け。つまり彼は本番に強いのだが、良い意味で“ズルい”役者とも言えるのだ(別の意味では「稽古からやれよ。」とも言えるが)。
 “巡査部長”役の光春さん。時代劇風の重厚な演技と張りのある声は光春さんならでは。ラスト前のモノローグ(独白。一人で長い台詞を言うこと)はかなり苦しんでいたが、おもしろい一方で引き締まるシーンになって僕は好きだ。
 “看護士”役の
増田クンは今回初舞台。全体がアップテンポの芝居の中でホッとさせるひと時をつくり出している。本人は意識してやってる訳ではなかろうが、なかなかおもしろい存在だなぁ。

 もちろんみんな台詞のトチリがまだまだ少なくないし、何より舞台上の時計のスイッチを入れ忘れて止まったままという致命的なミスがあった。いまだ緊張感が足りないか? でもゲネの段階でミスが出るのは、ある意味理想的。ミスしやすい点を強く認識できるからね。

 PM9:10ゲネプロ終了。閉館時間の関係で着替えだけして小屋をでる。簡単に明日の打ち合わせをして解散。雰囲気は良い。このまま明日を乗り切りたいものだ。
 


☆ 11月16日(日)

 天気予報ではあまり良くないと聞いていたが、起床してみれば雲は多いものの雨が降る様子はない。幸先良くて気分爽快。今日も道すがらメンバーをひろいながらの小屋入りである。途中コンビニで中日新聞を購入。金曜の稽古時に知り合いの記者に無理を言って取材をしてもらったのだ。写真入りでけっこー大きく扱ってくれている。Kさん、ありがとね〜。この記事を観て多くの人に観にきて欲しいな。

 小屋入りして役者はすぐに着替え、小道具チェック、そしてメイクに入る。今回メイクは久々に山田かつら太田さんにお願いする。過去『ソープ・オペラ』『法王庁の避妊法』『キネマの天地』等でメイクとともに衣装の手配をお願いした太田さんは、東京でプロのメイクとして仕事をしている。メイク技術が皆無なうえに汗っかきな僕にとってはとってもありがたい存在。たいしてお礼もできないのだが、いつも無理を聞いて気持ち良く協力してくれる。“プロの遊び”というところか。いつものごとく「鼻が高く見えるようにしてください。」とお願いする。

 AM10:00、最後の
ゲネプロ。僕は客席からの見え方と自分への照明の当たり方を意識して望む。客席には子育て中の女優陣が子供を連れて観に来ていて、まるで子ども劇場のよう。が、稽古中とは違う“視線”があるのはいい。本番時のお客さんの反応の一端がつかめるからね。
 “マイク”役の
島津は女装とアラジン風の赤い衣装が実に似合っている。本人は僕と正反対(ToT)でかなり細身な身体をしているのだが、女性の衣装がピッタリなのだ。これは思わぬ発見かも。稽古中かなり苦しんだ役創りも本番直前にしてかなり目指すものに近づいていて、島津ならではの“マイク”になった。ちなみに本番を観に来た我が母が「ああいう研修医ってホントにいるんだよね〜。」と言っていた。長い間入院してた人が言うんだから、もしかしたら島津が一番実際の医療スタッフのイメージに近い演技をしていたのかもしれない。ちょっと悔しい。でも、ああいう研修医がいるって大丈夫なのか、病院は?
 “サー・ウィロビー”役の
荒川さんは共演できるだけでも嬉しい役者である。『凄い金魚』以来の舞台だから何年ぶり? キッドの中で僕は荒川さんを目標としてがんばってきたのだが、まだまだ足元にも及ばんなぁ。正直“サー・ウィロビー”役ではもったいない。もっと主役級で荒川さんの演技を観たいと思ったよ。
 敵わないといえば“ビル”役の
小池さん。その演技のおもしろさは実際に観た方には充分理解してもらえると思う。今回も車椅子の老人役なのだが、芝居が展開されている後ろで何やらおもしろいことをやっている。一緒に舞台に出ていると、小池さんの芝居が観られないことがホントに残念に思えるのだ。

 PM0:15昼食。本番直前は決まっておにぎりである。気を使ったのは水分補給。“浜松一小劇場が似合う役者(?)”を自負するだけあって、発汗量は他の役者の追随を許さない僕は、汗は抑えたいが脱水症状になるのも困る(病み上がりだし)。せめて顔の汗を控えるようにできないものか、誰か知っていたら教えてくれ〜。
 食事が終わった役者から
太田さんにメイクを直してもらう。いや、“婦長”役の大河原さんのみは、演出山田さんの「もっとブスにして。」という指示のもと、元とは似ても似つかない凄いメイクになっていた。もっとも返ってキュートなイメージになったと思ったのは僕だけだろうか? “婦長”役は大河原さんの魅力満載のハマリ役。
 一方“ローズマリー”役の
岡本さんは逆に役創りが大変そうだった。まだ20代なのに50代のエリート医師の夫人を演じるんだから。しかし太田さんに髪をまとめてもらったら、すっかり“セレブ”の様相になったのにはびっくりしたけどね。

 PM1:00
舞台最終チェック。自分自身が使う小道具・衣装を自ら確認する。無くて困るのは自分自身だしね。我が“母親”役の白柳さんは何と舞台監督兼任でとても大変そう。そのアクティブな働きと、“母親”になった時の上品な演技は対極的。本番を観て、声はともかくとして容姿では本当は男性だと気付かなかった人もいるのでは? 裏方の人数不足を心配してAが朝早くの電車に乗って埼玉から帰って来てくれたのだ。ありがたい。家族の協力あって芝居に打ち込める。感謝である。
 PM1:30
開場。ぞくぞくとお客さんが入場してくる。予想に反して満員。子ども連れからお年寄りまで客層もいろいろ。さぁ準備は完了! いよいよ開演!!

 エリートコースまっしぐらの医者のところに、何年も前の不倫の結果の息子が突然訪ねてきた。今さら息子がいるなんて、人に知られる訳にはいかない。かくして無理に無理を重ねた隠蔽工作が始まるが…。

 開演直後はお客さんが固い感じだったが、芝居が進むにつれて少しずつ馴染んできた様子。そして1幕途中からはホントによく笑ってくれた。コメディ劇団を目指すと言いながら、ここ数年公演でお客さんの“大爆笑”が無かった(少なくとも僕はそう感じていた)からとても嬉しかった。そしてそのお客さんの笑いに僕も含めて役者たちも逆にのせられて、どんどんいい芝居になっていった。舞台上で演じながらこんなに楽しかったことがあったかなぁ。
 2幕で、
加藤健一事務所の公演では僕と同じ“ヒュ−バート”役を演じた加藤健一がタップダンスをするシーンがあるのだが、当然僕はタップなんてできない。ろくろく身についていないものを観せてもシラケるだけなので、NHKの子ども番組で野村萬斎がやっている「ややこしや〜。」をやったら子ども達が大ウケしてくれたので正直ホッとしたよ。

 “ジェーン”役の
島田さんも実年齢と演じた役がかけ離れていたが、それを問題にしなくてもいいくらいに楽しい、テンポの良い演技を見せてくれた。とても初の本公演出演とは思えない堂々としたものだったよ。ラストで僕が演じる“ヒューバート”が“ジェーン”にプロポーズしてOKをもらうシーンでは客席の一部から拍手が聞こえてきた。お客さんが受け入れてくれた訳でとっても嬉しかったよね。
 そして主役“デービィッド”役を演じた
大石さん。稽古中から小屋入り、そして本番と言葉ではなく芝居に取り組む姿勢で我々を引っ張ってくれた。一緒に初舞台を踏んで9年あまり。なんの気負いもなく絡める役者ってなかなかいないもの。芝居ができて嬉しかったよ。

 稽古中はかなり心配したが、結果的には僕自身のキッドでの芝居の中でも代表作とも言える作品になったと思う。もちろん課題も少なからずあった。一部間を外してしまったところもあったし、登場するキャラ一人一人との人間関係を充分理解し表現できていたかと言うとちと自信が無い。それに厳しい見方をすれば、1,000円というお金をいただいてお客さんに観てもらう以上、今日の出来が最低線であるとも言える。さりとて反省すべき点は反省して次への糧にしたうえで、今回こんななにいい芝居になったことを素直に喜びたい。共演した役者、山田さんを始めとする裏方の皆さん、そして一緒に楽しい時間を過ごしてくださったお客さまに心から感謝します!
 やっぱり僕はこういうライト・コメディが好きなんだなぁ。


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