最終更新 3月30日日4:32 加筆修正


だめてん

 第2話 

 1

「起立!」
 ダイサクエル教官が野太い声で叫ぶ。
 ガラガラッと椅子を鳴らして、教室の全員が立ち上がる。慎一もだ。
 ……だいじょうぶか? もしかしてぼくはいま寝てたんじゃないか?
 ……こんなことで減点されるなんて冗談じゃないぞ!?
 ふらりと足元がぐらつくのを感じた。
 なんとか試験に合格しこの研修所に入ってから4週間、過酷な生活だった。ラッパで朝早く叩き起こされ朝礼では聖書を読み座学とアイテム使用訓練を繰り返 す。でてくる食事は『戦時中か!?』とあきれるほどの粗食だ。授業が終わり宿舎の部屋に戻っても休むことはできない。夜中まで自習を続けないとついていけ ないのだ。そのくせ朝礼に1分でも遅れるとペナルティがつくとくる。教官への挨拶が遅れてもペナルティ、所内のいたるところに飾られたキリスト像や天使像 に手を合わせないと、やはりペナルティ。
 同じ部屋の研修生たちは耐えて、たまに息抜きと称して生身だったころの思い出話をしていた。だが生身のころたいして勉強をしていなかった慎一は内心で悲 鳴をあげていた。
 昨日もほとんど寝ていない。
 ……なんで生身の体がないのに眠いんだろう。絶対おかしい。誰か研究してくれ。
「諸君、いままで4週間よくがんばってくれた。君たちははなかなかよい教え子だった。とくにきみ、ミヒャエルエル君」 
 ダイサクエル教官の指が慎一のとなりにいる研修生を指差す。
 ひとりだけ金色の髪。美青年だ。風体は他の研修生と同じ。細い体を包むのは黒ズボンと白ワイシャツ。首から下げた銀の十字架。まだ研修生なので翼も輪も ない。
 慎一と同室だったこの青年は、たしかに抜群に成績が良かった。慎一が「ここはどうなの?」とたずねて教えられる余裕があるのは彼だけだった。
 ミヒャエルエルは顔をくもらせて、
「おれはミヒャエルです! エルエルじゃないです
「じゃあ君は、生前はミヒャという名前だったのか?」
「そんなわけないでしょう! でもかっこ悪いですよミヒャエルエルって。それにミヒャエルってのはもともと天使ミカエルなんですよ。それなのにまたエルを つけて天使っぽくしなくちゃいけないんですか?」
「決まりなんだ。天使は生前の名前にエルをつけて名乗ることに決まっている」
「だってあきらかに筋が通らないでしょう」
「筋の問題じゃない。昔からそう決まっているんだ。メタトロンさまが天界をお創りになられた800年前からずっとそうだ。ミヒャエルエル君は成績はいい が、どうも融通がきかないな。私だって本名が大作でダイサクエルだ。そう名乗れと言われたときは私も面食らった。日本男児としてどうかとも思った。だが、 なに、すぐに慣れる」
「そうやって思考を停止するから、あんたたちはだめなんです」
「なんだと」
 ダイサクエル教官は肩をいからせる。ゲジゲジ眉毛をうごめかせミヒャエルをにらむ。
「礼儀がなってないようだな。残念だ、残念だよ」
「脅しですか?」
 教官をにらみ返し、拳を握り締めるミヒャエル。 
 慎一がミヒャエルの肩をつかんだ。
「おい、やめろよ」
「はなせよシンイチ。君も教官のほうが正しいと思ってるんだろ?」
「そんな問題じゃない。きみは教官とケンカしたくてここにきたの? 違うよね? 天使になりたいんだよね?」
「そうだけど」 
「だったらここでケンカしていいことは何もないよね?」
「……それがオトナの態度って奴か?」
「ちがう。ただ、もったいないじゃないか」
 ミヒャエルの怒気のこもった視線にひるみながらも言葉をさがす慎一。
「……きっと……その……後悔するよ」
「……ふん。一理はあるな」
「だろ? いまは謝ったほうがいい」
 ミヒャエルは硬い表情のまま教官に顔を向ける。
「教官、申し訳ありませんでした。わたしの理解が足りなかったようです」
「うん、分かればいいんだ分かれば。今回の反天界的発現については私の胸にしまっておく。温情に感謝したまえ」
「……ありがとうございます」
 ミヒャエルの端正な顔がひきつっているのがわかった。ただでさえ白い顔が青ざめている。
「おちつけ、おちつけ、な?」
 小声でささやく慎一。ちらりと慎一のほうをみてうなずくミヒャエル。
 教官は笑顔になって、
「よろしい。では最後に諸君らの覚悟を問う」
 声をはりあげた。
「汝らに問う! 心弱き天使は、罪人か!」
 慎一は叫んだ。ミヒャエルも、他の研修生も叫んだ。まったく同じ言葉を唱和した。あらかじめ正しい答えが決められている。実際には「問い」ではなく「宣 誓」だ。 
「然り! 神の剣たる我らに、弱さは不要!」
「ふたたび汝らに問う! 勝ち得ぬ戦いに挑むものは愚者か!」
「否! 必要とあらばいかなる戦いにも挑むべき!」
「最後に汝らに問う! 汝らは何者であるか!」
「我らは剣! 神敵を退ける天界の武器! 我らは花! 不幸なる者にたむけられる一輪の花! 我らは星! 天に輝きて迷い人を導くしるべ! 我らは神の栄 光をたたえ神の代行者メタトロンさまに従う下僕!」
「よろしい! 諸君らはたったいまから第10階位天使デミエンジェルだ。『仮翼』と『ハーローリング』を授ける」
 教官は人が入れるほど大きなトランクを掲げ、開けて見せた。中には白い翼と輪が詰められていた。
 整列して教官から受け取り始める研修生。
 慎一はミヒャエルのすぐ後ろの並んだ。
「さっきはありがとうよ」
 ミヒャエルはばつが悪そうに笑った。
「いいんだよ。ミヒャエルさんにはわりと世話になったし」
「君はいい奴だな。天使にむいてるよ。がんばろうな」
 ミヒャエルは翼と輪をもらい、さきほどの反抗がウソのように教科書どおりの十字を切って退出した。
 ……ミレイが言ってたのは彼みたいな人のことかも。彼のような人が潰れるのかもしれない。
 慎一は軽く頭をさげ、手をあわせて祈った。
 神のためではなく、たった4週間とはいえ友達だった、ミヒャエルエルの未来のために。
 
 2

「おかしいなあ……」
 慎一は周囲を見回す。
 あたりには建物が浮かんでいる。小さな店と小さなビル。間隔は数十メートル開いている。
 店の看板やビル名をチェック。
 ……フドウ酒店。ちがう。第2サカイビル。違う。
 研修所で渡された地図をポケットから出して開く。新聞ほどあるものを何枚も開く。
 「白黒反転した銀河系」のようなものが描かれていた。ビッチリ点が打ってある奇妙な地図。あらゆる建物が宙に浮き、道のない天界では、おもだった建物を 点で表現する以外地図のかきようがないのだ。横から見た地図と上から見た地図の2枚を照らし合わせて現在位置を把握する。
 把握するはずなのだが把握できない。
 天界にすんでいるほかの連中はどうしているのかと不思議に思う。研修所では「地図の読み方」は教わらなかった。教えるまでもないこととされているらし い。天使になったら超絶的な方向感覚でも身につくのかと思ったが、こうして翼と輪をうけとった今でもやはり迷っている。ちなみに研修所に行くときも迷っ た。まるで進歩がない。
「テンカ医院のちかく……ちかくねえ……」
 それらしい医院などなにもない。
 腕時計を確認した。支度金で買ったばかりのアナログ時計は8時40分を指していた。
 あと20分で奉仕天使局にたどり着かないといけない。
 仕事の初日で遅刻したらなんといわれるか。
 ……誰かに訊こう。配達関係の人がいたら一番いいんだけど。いない。酒屋や本屋で知っているだろうか?
 目の前に喫茶店があった。純喫茶カガミ。看板の書体がやけに古い。数十年前に天界へ来た人が、生前のセンスそのままでやっている店のようだった。
 ……ここの人は知ってるかな? ためしにきいてみるか。
 ガラス戸を開けた。 
 店内には軽快な音楽が流れていた。その音楽がジャズの古典であることは知らなかったが、研修所では無理やり賛美歌を毎日毎日聞かされていたので「あ、普 通の音楽だ」というだけでほっとした。カウンター席もテーブル席もわりと埋まっている。
「いらっしゃいませー」
 エプロンをつけたお姉さんが声をかけてくる。
「すいません、ちょっと道をお尋ねしたいだけなんです」
「あ、どちらまで行かれるんですか?」
「ええと、このへんでヒドリ町奉仕天使局というのは……」
「ここはヒノリ町ですよ?」
「え?」
 地図をバサリとあわててひろげる。
 ヒノリ町とヒドリ町はまるっきり別のところだった。
「げえ……」
 まだ慎一は飛行速度に自信がない。建物や人にぶつからないように飛ぼうとすると、目測で40キロも出せないようだ。
「間に合わない! ああもう!」 
 取り乱して叫んだ。
 お姉さんが不思議そうに尋ねる。
「え? 天使だから天界アイテムを使えばすぐでしょう?」
「あ!」
 ……そうだった。自分が天使だという自覚がなかった。
「ありがとう!」
 叫んで店を飛び出す。
 ゆっくり飛ぶ。急ぐ必要はない。
 もう研修中じゃない。半人前とはいえ天使だ。
 手を伸ばして背中に回す。小さい翼がそこにあった。手のひらほどしかない「仮翼」、下級天使用の翼だが、その羽根一枚一枚には神秘の力をもつアイテムが 封印されている。
 空を速く飛ぶアイテムくらい、あるはずだ。
 背中なのでよく見えない。手当たり次第に10本ほどつかんだ。
 目の前で手を開いてみる。
 熟練した天使は羽根の位置と中身を完璧におぼえているそうだがもちろん慎一にはできない。羽根にはアイテムの概要の書かれたシールが貼ってある。親切に 研修所で貼ってくれた。はずだ。
 ところが。手の中の羽根をいくら見ても、
「暖房」「水筒」「扇風機」「テレビ」「本箱」「笛」「虫眼鏡」「飴」
「ただの日用品だ!」
 空を飛ぶとか、超高速とか、瞬間移動とかそんな言葉はどこにもない。
「下級天使の翼にはろくなアイテムが入ってないのか……」
 背中から翼をはずして、一枚一枚かきわけるようにして羽根をチェックする。
「天界獣 ま1号」
 と書かれた羽根を見つけた。
「これだ!」
 天使たちは獣に乗って空を飛ぶこともある。馬のように使役される家畜、天界獣だ。
 微妙にかっこ悪い名前が気になるが、まあいい。
 羽根を右手の指でつかんで額にかざす。
 アニメの主人公のように高らかに叫ぶ。
「いでよ、天界獣、ま1号!」
 思念を流しこまれた羽根は金色の光球となって空中に浮かび上がり、膨れ上がる。
「でかいぞ!」
 慎一が期待の声を上げる。
 光の球が消えた。
「ま、まぐろー!?」
 全長4メートル以上ありそうな超巨大マグロが出現した。
 狭い額に真っ赤な十字架が描かれている。
 マグロはただちに宙を泳ぎだす。
 口をパクパク、慎一のまわりをグルグル泳いで早口でしゃべり出す。
「めでてーや! こいつはめでてーや! やっと出られた! だんな! ありがてえや!」
「ま、まぐろが喋ったー!」
「オヤ、よく見りゃだんなっていうにはまだ若いぜ。若! 若と呼ばせていただきやすぜ!」
「あ……あ、どうも……。天使のシンイチです。いやシンイチエルです、新人です」
 思わず頭を下げてしまう。
「こりゃ申しおくれやした! あっしは天界マグロのグロ吉でございやす」
「なんで変な江戸弁なの!?」
「そりゃ若、マグロっつったら江戸前と決まってますぜ」
「どういう理屈だか分からないけど……えっと、ぼくは天界獣を出したんだよ。乗り物が欲しくて」
「あっしがまさに天界獣ですぜ」
「魚じゃないか! っていうか天使がなんで魚に乗るんだ」
「冗談言っちゃいけませんぜ若、魚っていやぁまさにキリストの象徴ですぜ、魚ほど天使にふさわしい乗り物はありやしませんぜ! それなのに天使の旦那や ぼっちゃん嬢ちゃんはどうもあっしを使ってくれないんでさぁ。そこへいくと若! さすが若! お眼が高い!」
「いや、運んでくれるんならべつに君でも……乗り物、できる?」
「もちろんでさぁ。あっしの韋駄天ぶりは天界いちと言われたもんですぜ。ささっ、お乗りくだせえ」
 そういいながらも慎一の周囲を高速でまわりつづける。
「乗れないんだけど! 止まってよ」
「そいつはできねえ相談です若、あっしは江戸っ子、せっかちなもんで止まるってことができねえ。寝てる間もずっと泳いでるんで。まったく江戸っ子は損な性 分で」
「それは単にマグロだからでしょ!?」
「野暮なことはいいっこなしですぜ若! そらよっ」
「うわっ」
 巨大マグロが突っこんできた。タイミングを合わせて飛び乗った。背びれをつかむ。
「いきやすぜ!」
 マグロは急加速。たちまち店が、家が背後に吹っ飛んでいく。次々に現れる建物を体をひねってかわしてゆく。
 すべるような、軽やかで迷いのない動きだ。体感速度は100キロを軽く超えている。
「すごい! マグロさんすごいな」
「水くせえですぜ若、あっしのことは親しみをこめてグロ吉、グロちゃんとお呼びくだせえ」
「いや、ぜんぜん親しみのもてない名前なんだけど……グロって……」
「あっしの名前がグロいって言うんかよ。そいつぁしどいです、若。こんなにさわやかな笑顔をしてやがるってのに」
「え、笑顔……!?」
 しがみついたままグロ吉の顔を覗きこんだ。
 眼が完全なまん丸だった。
 その中の瞳もまん丸だった。
 口がパクパク動いていた。
「これが笑顔……?」
「これが泣き顔。これが怒ってる顔でさぁ」
 眼がまん丸のまま1ミリも動いていない。口は機械的にパクパク。
「おんなじだよ!」
「その微妙な違いが分かるのが江戸っ子ってもんです、まだまだ若もまぐろ使いには遠いですなあ」
「そんなもん目指した覚えはないよ!」
「……ところで若」
「ん?」
「あっしはどこにいきゃあいいんですか?」
「知らないで猛ダッシュしてるの!?」
「江戸……」
「わかったよ! ヒドリ町天使奉仕局! 知ってる?」
「シドリ町ですかい、知ってまさぁ」
「ヒドリ町だよ」
「シドリってちゃんと言ってやすよ」
 そのとき、後ろからサイレンが響く。
「なんだ!?」
「やっかいなのが来たようですぜ」
 振り向いた。数十メートル後ろに巨大ツバメが追いかけてきていた。ツバメの頭には真っ赤な回転灯が光っている。
 人間がまたがっている。黒いライダースーツに身を包み、白いジェットタイプのヘルメットにサングラス。メガホンを持っている。
「し、白バイ!?」
「天界軍交通機動隊だ! そこのロケットツナ、とまりなさい!」
 ツバメに乗った男はメガホンで叫ぶ。
「そこの脂がのっているお前、そうお前だ! スピード違反だ、止まりなさい! ウィンカーを出して左によって止まれ!」
「ウィンカーだぁ? ねぇ物はだせやしねぇってんだ。下界の気分が抜けてねえんとちがうか」
 グロ吉はいたって冷静に悪態をつく。
「捕まったらどうなるの」
「罰金と取り調べでさぁ」
「かんべんして、間に合わなくなるよ。なんとか振り切って!」 
「そう来なくっちゃ。天界いちの足を見ててくだせぇ」
 グロ吉の全身が震えた。加速した。
 しかしツバメもあわせて加速。まったく距離が開かない。
「とまれぇー!」
「ついてくるよ! 天界いちじゃなかったのか」
「参りやしたね、よく見りゃあの天界獣はマッハスワローですぜ、レースにも使われるベラボーに速い代物でさあ。ちぃとばかり分が悪いってもんです」
「きみより速いの?」
「一長一短ってところですかねい。あっしら天界マグロと天界ツバメは最速の座を巡る宿命のライバルなんでさ。あとは乗り手の腕ですが、やっこさん腕のほう も相当なもんです」
 ツバメ男はじわじわと距離をつめてくる。スピーカーを通じて威勢のいい声で叫ぶ。
「相手が悪かったな! いままでは逃げ切れたかもしれんが、このマシンはマッハスワロー954RR! 900RRの血統を受け継ぎ、200天界ノット以上 の速度域では無類のダッシュを誇るマシンだ! しかも洗練された空力デザインによって高い旋回性を兼ね備える! 型落ちのロケットツナなど俺の獲物にすぎ ん!」
 慎一は呆れる。
「なにあの人、ひとりごとで性能の説明してるの?」
「走り屋マンガの読みすぎじゃありやせんか?」
「ロケットツナってなに?」
「あたしら天界マグロのことをお上はロケットツナって呼んでるでさぁ。あっしの一族は正式にはロケットツナ900SSっていうそうで」
「バイクの名前みたい」
 片手でツバメの首根っこを押さえながらもう片手でメガホンを持ち、ツバメ男は叫び続ける。
「なに? 俺が誰かだと!? 俺は荒鷲……『スピードの向こう側の領域』を見た男! そうさ……俺は魅せられちまったのさ……あの夏の日の、サーキットの 幻影に!」
 変なポエムの世界に入っていた。
「間違いなくマンガの読みすぎだー!」
「変な奴ですが、速いのは確かですぜ。どうしやしょう」
 慎一は風圧に目を細めつつ周囲を見回した。
 左手に、空が黒い一角がある。
 岩みたいなものがぎっしり密集している、ように見えた。
 SFアニメに出てくる「小惑星帯」を連想した。
「グロ吉くん! あれは何!?」
「ああ、ありゃビンボな連中がたくさん住んでる住宅地ですぜ、安アパートと長屋と下宿だらけの町でさ」
「あそこで振り切ろう!」
「がってん承知!」
 グロ吉は体を反転させた。しがみついてなんとか耐える慎一。
「荒っぽくいきやす! 舌ぁ噛み切らねぇようねがいやす!」
「なんか昔のSFアニメっていうかスペースオペラみたいになってきたなあ」
 住宅群の中に飛びこんだ。
 一瞬ごとに世界が上下逆転。視界のなかで瓦屋根木造のアパートが、家が、通行人が次から次へと吹っ飛んでいき、上下左右にGがかかる。マグロの体にしが みついているのがやっとだ。何もできない。
「とどめの一発! いきやすぜ!」
 目の前には小ぶりな一軒屋! 回避せずに突っ込んでいく!
「ぶつかっ……」
 開いてる窓から飛びこんだ。ちゃぶ台をかこんでいる何人かの人間が見えた。「きゃ!」という悲鳴が聞こえたような気がした。視界を白いものが覆った。
「?」
 布が顔面にはりついたようだ。
「こ、このフィット感は……ぱ、ぱんつだー!」
 広げてみたら女の子のパンツだった。しかも縞ぱん。
「ど、どうしようパンツもってきちゃったよー!」
「それどころじゃありませんぜ、若! うしろを!」
「え?」
 いつの間にかグロ吉は密集住宅地を走り抜けていた。
 振り向くと、たった10メートルそこそこ後ろにツバメがいた。
「ぜんぜん振り切ってない!
 乗り手は首にからみついたブラジャーをバタバタさせたままニヤリと笑った。
 メガホンを口に当て、ポエムを再開。
「俺をとめることは 世界の誰にだって そうさ俺たちは 誰も奪えない心の翼持つ戦士……オーイエー!」
「違う意味で振り切ってる!」
「燃えてきやした。ここまでついてこれる奴がいるとは。腕が鳴りやす」
 『きみ腕ないじゃん』と言おうとしたが、怒られそうなので黙っていることにした。
 
「なかなかやるな! ライバルには敬意を表するぜ! シーチキン野郎にここまでの底力があるとはな!」
 そのとたんグロ吉の背中の筋肉が、いや全身の筋肉が痙攣。
「しーちきん……っていいやがったな!?」
 明らかに憤怒の声だった。
「ど、どうしちゃったのさ!?」
「あっしはマグロの中のマグロ、本マグロでい! ビンナガふぜいと一緒にされたとあっちゃ黙っちゃいられねえ!」
「そこなの!? そこに怒るの!?」
 グロ吉は体を痙攣させたまま、反転。
 眼下に見える大きな建物に、まっしぐらに突撃する。
 大きな建物はマッチ箱ほどにしか見えなかったがどんどん大きくなる。
 学校のようだった。体育館までくっついている。
 さらに接近。減速の気配もない。
「え? また中を通るの?」
「あの手はもう通じやしねえです。こうなりゃひとつ、きたねぇ手でいきますぜ!」
「もしかしてぶつかる寸前までいくの? チキンレースってやつ?」
「チキン!? いまチキンっていいやしたね!?」
「いや違うから! 気にしすぎだから!」
 まだ突撃。距離300メートル。200……100。
「ぶつかる! やだ、まだなにもしてないのに! 美弥、告白して、ぎゃあ!」
 灰色の壁が迫る。
 その瞬間、
「ふんっ!」
 ぶりゅぶりゅぶりゅ!
 下品な音が炸裂。
「ぐあ! 眼が! 眼がああ!」
 背後でツバメ男の絶叫。
 次の瞬間、強引に体を振って下に針路変更。慎一の体が浮き上がる。「わっわっ、とおお!」渾身の力でおさえこむ。 
 学校の真下をくぐりぬけた。
「ぎゃ!」
 ごすっ。悲鳴とともに鈍い音がひびいた。
 ツバメのほうはよけられなかったらしい。
 ふりむくと、もう追ってこない。
「なにをやったの? ……なんか、くさいけど……まさか……」
「ウンコをひっかけて目潰しでさあ。これがほんとのスカト……」
「いや、言わなくていいから!」
「この手は使いたくなかったんですがねえ」
「まあ、助かったよ。ありがとう」
「じゃあ体を洗いに行きやしょう。ちょいと銭湯へよらせていただきやすぜ」
「え!? そんな時間ないよ! ……あ、もう5分しかない!」
「江戸っ子に臭いぷんぷんのまま町を歩けってんですかい!」
「いや、気持ちは分かるけど……」
「それより若、レースやるのはどうです?」
「は? いきなりなんの話?」
「なにね、いまのおっかけっこであっしの血にも火がついちまったのよ。若もいっしょにきてくだせえ、若は素人同然なのに肝がすわってやがる。きっといい乗 り手になりますぜ。さっ、風呂入ってそのあとはレース場を探して……」
「ちょっと! ぼくは今日が仕事はじめてなの! いきなりバックレるなんてできるわけないの!」
「天使なんかより、あっしの相棒としてレースで活躍するほうが若にふさわしいですぜ! 善は急げだ!」
「ど、どうすりゃいいんだ……」
 そこで慎一は、胸ポケットに入れたメモ帳のことを思い出した。
 天界で生活する上でとくに役立ちそうな知識をメモっておいたのだ。
 ポケットをボタンどめしておいたおかげでメモ帳は無事だった。いそいでページをめくる。
「……ワガママな天界獣を従わせる方法! あったー! えーと……『耳元で神の御名を唱えよ』おお簡単だ!」
 さっそくグロ吉の巨大な目玉に顔を寄せて、主の名を唱えようと……
「……って、マグロの耳どこ!?」
「というわけであっしにその手は通じないんでさぁ」
「……きみが封印といてもらえないわけがなんとなくわかったよ……」
「若もあきらめてあっしとレースやりましょう、ぶっ飛ばすのは面白いもんですぜ? あっしなんか、さっきから血が熱くなってしょうがねえ」
「サボったらクビだよ!」
「若、一度や二度仕事をなくすくらいなんです、失敗は男のコヤシってもんでさあ」
「かっこいいけど今の状況は絶対そんなんじゃないよ!」
「なに言ってるんですかい……男は誰も……ロンリーソルジャー……始まるのさ……俺たちのミッドナイトレジェンドが……」
「ポエム伝染してるー!」
 と、急にグロ吉のスピードが落ちた。
「……どうしたの? 言うこと聞いてくれるの?」
「腹が減って力が出なくなりやした……ちょいとばかり頑張りすぎたようですなあ」
「マグロって何たべるの? 熱帯魚のエサとかでいいのかな?」
「江戸っ子をなんだと思ってやがるんですか! あんなパサパサしたもんで力がでるもんですかい。あっしらマグロはイカ、エビ、サンマ、イワシを食うもんで さ。スシくいねえ」
「それほんと? ネタじゃなくて!?」
「ネタってのはなんですかい!?」
 名案を思いついた慎一、グロ吉の顔面横にささやく。
「……スシっていえばさ。実はさ、ぼくが働く局には凄腕の料理人がいるらしいんだよ。元板前だって。南極でスシ握ったとか、鮮度にこだわるあまり自分で漁 船乗っちゃうとか……」
 もちろん口からでまかせだ。「ヒドリ町の局にいけ」という辞令を一枚もらったきりで、同僚の経歴や特技などまったく知らない。
 しかしグロ吉は食いついてきた。
「板前!?」
「そうだよ。すごいんだよ、なんか神の手をもってるとか、この人の料理を食べると感動して心中に宇宙が広がるとか、大使館で料理作ってて国際問題を料理で 感動させて解決したとか、勝負に勝つとカカカーッて笑うとか、いろいろ伝説的な料理人で……」
 オタクのはしくれとして、知っている限りの料理漫画からネタをもってきてホラを吹きまくる慎一。
 さすがにグロ吉にいぶかしげな声で、
「……ちょいとそりゃ尾ヒレがつきすぎってもんで……」
 慎一は一気にたたみかけた。
「話半分でもすごいでしょ!? そもそもきみ、お金持ってないでしょ!? 食い逃げするの? 江戸っ子が? するわけないよね? 曲がったことはしないん だよね?」
「お、おう、そいつぁもちろん」
「でもぼくの職場にいけば料理人にスシをつくってもらえるんだよ!」
 真ん丸いマグロの目をじっと見つめて、気色悪いのを我慢して、必死に訴えた。
 ……どうかグロ吉の頭が悪くありますように! 神様!
「そいつぁぜし喰いさせて欲しいぜ。さっそく行こうってんだ!」
 ……ありがとう、神様!
 グロ吉は急反転した。また加速。ロケットツナと呼ばれるにふさわしい勢い。家と家の間をすり抜け、通行人に悲鳴を上げさせ、飛んでいく。
 腕時計を見た。
 あと4分。果たして間に合うか。グロ吉の食欲が奇跡を起こしてくれることに期待するしかなかった。
 前方に小さい病院が見えた。看板には「テンカ医院」。
 すこし離れたところにクリーム色のプレハブ。
「ここだ! あれだ! あの隣のプレハブ!」
「がってん!」
 やけに小さくてチャチな建物なのが気になるが、プレハブの壁には大きな十字架も描かれている、まちがいない、これだ。
「急げ! あと1分! いったまえ! いったまえ! い・わ・し! い・わ・し!」
「う……」
 グロ吉はうめいた。体から急に力が抜けた。
「ど、どうしたのさ!」
「もう限界だぜ……は、腹が減って……」
 白目をむいた。怖かった。
「えー!? 早いよ! 30秒早いよ!」
 すでに目標、ヒドリ町分局は目の前。距離100メートル。
 そしてスピード全開のまま。まっしぐらにグロ吉は突き進む。
「とまって! とまって! うわああ!」
 グロ吉の頭を抱え、殴った。頭突きをかけた。髪がマグロ臭くなった。
 しかしグロ吉は眼を覚まさない!
 砲弾のように、魚雷のように、突っこんでいく。
「みーやこさぁぁぁん!」
 
 3

 奉仕天使局ヒドリ町分局。
 ミレイ局長は鍵をあけて事務所に入った。
 トン、と床にブーツをそろえて着地するとギシリと鳴った。
 鉄骨がむき出しになった、質素というより貧乏臭い事務所。
 たった3つの机と、セロテープのはがし跡だらけの本箱がひとつ。あとはコンロと流し。
 ただそれだけの狭い事務所だ。
 ミレイはさっそく自分の机に向かった。彼女に机の上には整然と整えられたファイルが並んでいる。
 迷彩野戦服の胸ポケットから缶コーヒーを出してチビチビと飲みつつ、ファイルのひとつを開いた。
 と、そこでドアが、トントンとノックされた。
 ミレイは一瞬けげんそうな顔。
 ドアが開いて、しずしず、という擬音で表現するほかないゆったりとした歩き方で一人の女性が入ってきた。
 まず眼に映るのは真っ赤な袴。股が分かれていない「行灯袴」だ。上半身はいわゆる白衣(はくえ)。彼女は巫女服をきているのだ。
 それなのに背中には天使の翼。頭の上には白い輪。
 長い黒髪を揺らし、小脇に紙の袋を抱えて歩いてきた。
 整った顔に微笑を浮かべて頭を下げた。しっとりした落ち着いた声であいさつ。
「おはようございます、ミレイ局長」
「うん、おはようマユリ」
 彼女はマユリ。この分局の二人しかいない職員のひとり。
「お団子を買ってきたんです。局長もひとついかがですか?」
「ああ。もらうよ。甘いのか?」
「いいえ。甘さひかえめ、『桔梗屋』の餡団子です」
「そうか……」
「甘いほうが良いですか? ダメですよ局長、サッカリンのような毒々しい甘さは……子供舌になってしまいます。餡団子は小豆の微妙な風味を味わうもので す。そもそも……」
「わ、わかった。そのへんにしといてくれ」
 和菓子や料理に関してマユリはうるさい。ジャンクフードや戦闘糧食を食べなれた「質より量!」のミレイにはちょっとついていけない。
「そ、それよりお茶を入れてくれると助かる」
「はい、ただいま」
 マユリは床の上を足袋でしずしず歩き、コンロにヤカンをかけてお湯をわかしはじめた。
 なんで飛ばないのかとミレイはたずねたことがある。答えは「こちらのほうが私らしい」というものだった。確かに絵にはなっている。
「そういえば局長、今日は確か新人さんが来るんでしたよね」
「ああ。男だよ。少年。天界じたいに慣れてないから、しっかり教えてやってくれ」
「どんな方です?」
「うーん……一途なところもあるが、ちょっと頼りない感じだな。名前はシンイチ」
「まあ楽しみ……いたいけなオトコノコを自分色に染めていく、これほどの楽しみはありません」
「誤解を招く発言だな……」
「新人さんの教育はわたしにまかせてください。局長の軍隊式だとこわれてしまいます」
「マユリのシゴキ方だって相当なものだと思うが……『にっこり笑って地獄送りのマユリ』とか……」
「それはずっと前のお話でしょう? 九骸零真流を教えていたころの……いまのわたしは優しく、手取り足取り……」
 そのとき事務所のドアが開いた。
「おはようございます」
 頭にターバンを巻いた浅黒い巨漢が入ってきた。服こそ西洋スーツだが、どう見てもアラブ人だ。
「あらあら、ラシードさん」
「おはよう」
 ラシードはこのあたりで弁当を売り歩いている男だ。この事務所にもよく来る。
「どうしたんですか、こんな朝早くから?」
「実は」ラシードは肩からかけたクーラーボックスを持ち上げ、開けて見せた。
 中には氷が詰められ、氷の中にはカップに入った小さいものがずらり並ぶ。
「じつはデザートとしてヨーグルトをはじめたんです。朝食代わりにもどうかと」
「いただきます、ね、ミレイ局長」
 マユリは音もなく歩いて玄関まで行き、袖からガマグチを出してお金を払う。
「4ついただきます」
「え?」「4つですか?」
 ミレイとラシードがけげんそうな顔。仮に新人の分を買うにしても3つのはず。
「4つ目はラシードさんにおごっちゃいます。いっしょにたべていきましょう」
「え、いやあ悪いですよ」
「いいですよ、いつもおいしい物を持ってきてくださってるんですから」
「そうですか……じゃあお言葉に甘えて」
「はい、じゃあお茶入れますね。ごめんなさいお茶は日本茶と紅茶しかないんです……」
 マユリは3人分のお茶を入れる。
 ラシードはカップ入りヨーグルトをくばった。
「そこにお座りになってください」
 使うものがいない3つめの机をゆびさす。
「では、いただきます」
 3人でお茶を飲み、ヨーグルトを食べ、まったりと言葉を交わす。
「ああ、おいしい。ラシードさん、ヨーグルトづくりにも大変な才能がおありなんですね」
 マユリは微笑みながら言う。
「それほどでもありません、先祖伝来の作り方を守ってるだけです」
「そういえば……ヨーグルトってもともとはアラブの食べ物でしたね」
「ええ、正確にはトルコです」
 ラシードは誇らしげに笑った。
「すごいですね」
「ははは」
 たったこれだけの他愛ないやりとりで事務所の中に暖かい空気が満ちた。
 ミレイは無言でマグカップを傾け、マユリとラシードの会話を見守っていた。
 マユリほどではないが、その表情は柔らかい。
「ところで、お仕事の方は最近どうですか、みなさん」
「人手が足りなくてこまってます。ねえ局長」
「う、うん。ああ」
 いきなり話を振られたミレイはそれだけ答える。
「もう、もう少し親しみのもてる風にしゃべってくださいよ、局長」
「いやあ、いいんですよ。わたしのほうは、やっと「売り上げも伸びてきて、ほっと一安心、これでクニにちゃんと仕送りができます」
「イスラム自治州に?」
「はい。クニでは私の仕送りを待っている家族が大勢います」
「そうですか……」
 マユリはカップを置き、表情を引き締めた。誰かを思いやって、それでいて哀れんではいない絶妙な表情。
 イスラム自治州とは名前の通り、イスラム教徒たちが集まっている場所だ。
 天界はキリスト教に支配されているが、死んで天界にきても「どうしても信仰を捨てたくない!」という異教徒もいる。そういった人たちのために「自治州」 が作られている。イスラム自治州は最大の自治州だが、天界の平均と比べずいぶんと貧しい場所だという。だから多くの男が自治州外へ出稼ぎに来ている。ラ シードのように。
「これからも売りに来てください、必ず買います」
「ありがとうございます。みなさん、とても親切な方たちで助かります。『イスラムといえばアッラーアクバルと叫んで首を斬る人たち』みたいにいわれる事も あるのに」
「そんなのはごく一部だってわかってますよ、ラシードさん。イスラムといってもいろいろですよね。キリスト教だって、わたしみたいに、巫女服をきた天使が いるんですから」
 ミレイはさすがに「きみは特殊だ」と突っこまずにいられなかった。
「そうですよね……出稼ぎにきてよかった。あとは売れ行きがあがりさえすれば」
「大丈夫です。おいしいですよ、ヨーグルト」
「自信を持っていいですか?」
「ええ。もちろん! 自分の作ったものでしょう? 子供みたいなものでしょう?」
「そうだ……このヨーグルトはわたしの子供だ……」
 感激屋なのか、ラシードの黒い瞳が潤みはじめた。
 ミレイがふと、腕時計をみて首をかしげる。
「……来ないな」
「誰がですか?」
「新人だよ」
「ああ……そうですね。もう9時。おかしいです。ミレイ局長が怖くて逃げちゃったんじゃありません?」
「そんなことはありえない。彼には、この局に私がいるなんて教えてない」
「じゃあどうしてでしょう?」
「さあな」
 と、そのときミレイは長年の経験により危険を察知した。
「みんな! 伏せろーっ!」
 叫んだ。
 とっさにマユリは机の下に飛びこむ。
 ミレイはラシードの腕をつかんで二人して床に伏せた。
 事務所の薄い壁をブチ破って砲弾が飛び込んできた。
 いや、砲弾ではなかった。
 黒光りする全長4メートルのマグロ!
 マグロは何度も何度も天井や机や壁にぶつかり、事務所内を跳ね回った。マグロの背から誰かが振り落とされた。
 やがて空中で止まった。
「な、なんだ、いったい……」
 起き上がったミレイ、さすがに呆然。
 事務所内はメチャクチャだった。
 マグカップは割れて飛び散り、書類も散乱、そしていたるところに白い粘液と氷の欠片が浮いて……
 「マグロから振り落とされた誰か」を見て、ミレイは息を呑んだ。
 背中に小さい翼をつけた少年。
 学生服姿の少年。
 失神しているらしい。
「し、シンイチ……」
「あら、この方が? ずいぶん思い切った登場の仕方ですね。やっぱり若い方は発想が柔軟というか……」
「いや、そこは感心するところじゃないだろ!」
 ガタガタガタ……
 不思議な音がした。
「?」
 ミレイは振り向いた。
 そして見た。
 ラシードが、真っ青な顔でガタガタ震えていた。
 全身をわななかせ、とりわけ足を痙攣させ、靴で床を叩いていた。
 もちろん恐怖のためではないだろう、彼の眼は血走って見開かれ、部屋中に飛び散って漂うヨーグルトを見つめている。
 「自分の子供」の無残な姿を。
「……ラシードさん、まあ、なんだ……争いは何も生まない」
 棒読み口調でミレイは言った。いわずにはいられなかった。
「ラシードさん……日本には……日本には」
 マユリが緊迫した口調で言う。
「そうそう、日本には和の心があるとか」
「日本にはマグロのかぶと焼きという料理があって……」
「火に油を注ぐなよ!」
「ほほ肉がおいしいんです」
 ラシード、マユリの一言をきいた瞬間、どこからともなく巨大な剣を取り出して、
「アッラーアクバル!」


                                     次に進む 
 

 トップに戻る