怪しい日記 西暦2004年11月
11月27日
 もう、さんざんです。
 カバンを落っことしたら車にひかれ、中のデジカメが無惨に潰されました。
 次にiBookが壊れました。CD−ROMドライブのトレイが閉まらなくなったのです。
 そしてバイクからもオイルがボトボタ漏れはじめ、とどめに私自身まで風邪をひきました。
 私がいったい何をしたのか。

 本の紹介。

 「このライトノベルがすごい! 2005」宝島社
 ネット版の「このライトノベルがすごい!」とは全然別物であるにも関わらず、なんだか印象が似ています。
 書評者のメンツがかぶっているってこもあるんですが、まあそれ以前に「雰囲気」が似てる。
 ファンだから、この本を読んでほしいから、という暖かい空気があります。
 おすすめ作品紹介、心を動かされたセリフ紹介、いずれも「ナマの声」って感じが出ていて、ガイド的にはなかなかよくできてます。
 思わず買いたくなった本が何冊も。
 ただ私としては「ライトノベル完全読本」のほうが好みです。
 なんでかっていうと、「このライトノベルがすごい!」には、「ここでしか読めない!」という記事がないんです。
 
 水口敬文「憐 Ren 刻のナイフと空色のミライ」角川スニーカー文庫
 新人さんです。
 まず表紙イラストにひかれました。
 寂しげで、それでいて「覚悟を決めた」ような女の子。   
 ナイフを突き出して歩道橋をあがってくる姿。
 心に焼きつくイラストでした。
 読んでみて「ああ、いいものを読んだ」とためいき。
 表紙イラストににじんでいた「さびしさ」と「覚悟」の意味がよく分かり、応援したくなりました。
 なおかつ「うん、SFだ!」という満足感も得られました。スニーカー編集部ってSF好きですねえ。いや選考員が好きなのか。
 重い物を背負ったツンツン少女と、まきこまれ少年の、古典的なSFジュブナイルです。
 古典的、という部分がポイント。
 こういう女の子に男言葉でののしられてー、とか思ったことは、みんなには内緒です。
 
 川崎康宏「Alice」電撃文庫
 やっとギャグの波長が合いましたよ!
 ギャグに定評のある作家さんなんですが、いままでずっと、私にはピンとこなくて。
 ボケがシュールすぎてポカーンなのですよ。
 とくに「進め! 双角小隊」なんかは、主人公のキティ・アン隊長がなんだかすごい子だったと記憶してます。
 天然ボケの眼鏡っ子なのはいいんですが、ボケのレベルが「ここまでいくと恐いよ! 違う意味でキティだよ!」
 しかし今回のアリスは違います。
 ププププッと噴き出すこと数回。
 近未来犯罪都市を舞台に、強くて可愛い探偵の女の子が陰謀にまきこまれ、バトルまたバトル! バイクアクションに銃撃戦! 微妙にSF。
 という話で、いちおう話はまじめなのに、でてくるのは「どっかずれてる奴」「かなりずれてる奴」「誰とも会話が成立しないくらいずれてる奴」の3種類。
 地の文まで含めて、ボケにツッコミを入れる奴が誰もおらず、止めるどころか上塗り。
 「どこへいくんだー!」と恐くなって、読者である私が「違うだろ!」と突っ込んでしまいました。
 負けです。
 まあ口絵のクマを見た瞬間に負けていたのかもしれませんが。
 あと、バイクアクションがかっこよかったのも、なんだか敗北感。
 「あさりよしとお」の漫画に似てるかもしれん、とか思いましたよ。
11月23日
 昨日は会社の同僚を誘って飲みにいきました。
 横浜の「にんにく屋」で2時間ほど、にんにく揚げやピザなどをつつきながらビールを開けました。
 うちの会社(バイク便です)にはエロゲー好きなどのオタクも2人ほどいるのですが、今回一緒にいった人たちは全くオタクではなく、「趣味はパチンコと風俗とツーリング」みたいな人たちです。私とは全く接点がないわけですが、だからこそ、喋っているとわりと楽しかったです。私の知らない世界について知るのは楽しいものです。
 彼らがオタクに敵意をもっておらず、むしろ「自分達の知らない面白さを知っている存在」として好意的に接してくれたのが印象的。
「こっちの世界も楽しいよ? スポーツやろうよ? 風俗いこうよ?」みたいな感じで熱い説得を受けましたが。
 えーい、またですか。もういいってばさ。
 コスプレというものはオタク以外の人にとってはエロでしかないんだな、と思い知ったのも発見でした。
 
 今日は友人とあって、買い物につきあいました。
 友人はパソコンをよく知らない人です。
 ふたりで町田のヨドバシカメラとソフマップをうろうろ。
「このパソコンはテレビを録画できるんですよ」
「これはソーテックでうんぬん」
「レッツノートなんかは割とよいかと。軽くて個性的でカッコイイ。バッテリーももつ。ちょっと高いけど」
「エクセルとワードを別売りで買うとしたらいくら」
 とか説明をくわえつつ。
 私だって玄人にはほど遠いのですが、いろいろ説明しているとなんか自分が頭良くなったような気が。つくづく安っぽい脳ミソです。
 iMacG5に「かわいいー!」と興味を示していたので「いけるか?」と思いましたが、やはり使い勝手が全く変わってしまうのは不安なようで、購入には至りませんでした。それにしてもヨドバシカメラのMacコーナーはそこだけ客がひとりもおらず、実に不安。
 結局、買ったのはソフマップのバーガーパソコン。
 安く上がった、と喜んでました。
 スペック的に不足はないはずですが、あとはソフトが入ってないことが我慢できるか、ですね。
 使い方を確認した限りでは、大丈夫だと思うんだけどなー。
 その後はファミレスでだべりました。
 私の小説を見せたり、電車男やハウルの話をしたり。
 女性からみた電車男はこんな感じ、という話がきけたのは収穫でした。
 そんなこんなで、お開きにした時は、すっかり晩飯どき。
 やばいやばい年末までに書くべき物が2本もあるのに。
11月16日
 本の紹介。

  かのよしのり「鉄砲撃って100!」光人社
 鉄砲大好きの元自衛官が何十年にも渡って世界中の銃を撃ちまくった「射撃レポート」です。
 火縄銃から始まって拳銃、ボルトアクション小銃、自動小銃、各種機関銃、散弾銃、果てはロケットランチャーまで、実に幅が広いです。銃ひとつひとつにつき歴史や特徴を解説するので、予備知識がない人でもスラスラ読むことができます。
 銃好きにはもちろん、銃の出てくる小説や漫画をかきたい人にもおすすめ。いや必読。
 「火縄銃の反動は現代の銃と違って一瞬遅れてやってくる」
 「旧日本軍の38式歩兵銃は反動も小さく、初心者でも簡単に撃てる」
 「ソ連のドラグノフ狙撃銃はひょろ長いせいで銃身が先の方にありすぎて持った感じに違和感がある。狙撃銃というわりには精度も悪い」
 「RPG−7はバズーカより重いのだが、バランスが良いせいか持ってみるとバズーカの半分くらいの重さに感じる」
 「AK47は100メートル離れて撃つと20センチの円内に弾が散らばる。これはM16の3倍精度が悪いということ」
 「女性は立射するとよく当たる。骨盤の構造に原因がある」
 などなど、実際に触っている人間ならではのウンチクがもりだくさん。
 
 銃の資料をいま必要としているので、とても興味深く読めました。
 ただ、筆者の主観も混じっているはずなので、うのみにするのは禁物ですね。
 たとえば、
 この本では、自衛隊の64式小銃が「銃を知らない人間の設計」「命中精度がいいなど嘘っぱち」「よく壊れる」「安全装置が非実戦的」「こんなの銃じゃない」などとさんざんに評価されているのですが、きょう知人のガンマニアに確認したところ「64式はよく当たったよ?」と、実体験をもとに首を傾げられてしまいました。
 バイクや車であっても、「私の駄作はあなたの傑作」というのはよくあることです。
11月10日
 こないだ友人たちとやった飲み会で、このようなことを言われました。

「増田の小説ってさー、とにかく世界が狭すぎて単純すぎんだよねー。
 1のあとにはかならず2がきてその次は3で10までそのままだから、1を見た瞬間『あ、10だな』って分かっちゃうんだよ。
 なんつーの? このテーブルくらいのイッツアスモールワールドで、すげえ単純な物理法則で100年先のことまで分かっちゃう! だれでもラプラス! みたいな」

「いきなり100メートルにしろとは言わないけど、せめて半径5メートルくらいの世界は描いてほしいよね」

「あと、作者の願望とか怨念とかをそのまんま書いてるのが激しくうざいよね。本人は隠してるつもりなんだけど全然隠れてない。塹壕掘ってるんだけど頭だけ突っ込んで、尻は丸見え! いやむしろ犬神家の一族みたい天高く突きたってる。おれが戦場でそんな奴に遭ったら撃つよ? 撃つなと言われても撃つよ? 軍法会議にかけられても無罪だよ、きっと分かってくれるよだって犬神家だよ!?」

「あ、なんかさっきから増田の顔面がピクピクしてる」

「増田、増田、北京ダックに当たり散らしてもダメダメ」

 悔しかったので、新作を書くことにしました。
 12月25日、クリスマスに合わせてこのサイトで公開します。
  クリスマス特別企画です。
 
 1、クリスマスを題材にした短編。
 2、主人公はいじめられっこではない。
 3、主人公の一人称は「ぼく」ではない。
 4、内面グルグルは控えめに。
 
 このへんの縛りをつけて書いてみます。
 (夢に見るくらいウゼエウゼエ言われたので、さすがにへこんでます。)
 ギャフンといわせてやるですよ。
 ご期待下さい。
11月8日
 こないだの土曜、友人たちと飲みにいきました。
 六本木で北京ダックを食べつつ「イルジオン」批評に耳を傾け、喫茶店で「お前の恋愛観は自己満足すぎてキモーイ、キャハハハ」「女が恐いと素直に言えばいいのに」みたいな感じのツッコミを四方八方から受け、その後はカラオケ屋にいって、次回作に関するディスカッションを一晩続けました。
 おお、なんかすごい企画ができちゃいました。
 ぼくひとりの頭では絶対出てこない考え。ありがとうみんな。
 がんばって形にします。
 
 サイトの紹介。
 福住兵器工厰
 銃や戦車のデータ集サイトです。写真やイラストもあり。
 「銃弾はどのへんに当たるのか?」などのコラムも面白いです。
 軍オタ知識の入り口としていい感じ。
11月4日
 今日はバイク便のお仕事で千葉県の館山というところにいきました。
 高速道路を降りてからが長いのなんの。
 千葉県がこんなに広いとは。
 あと、やたら神社を見かけたんですが、千葉の人は信心深いんでしょうか。
 
 アメリカの選挙はブッシュが勝ってしまいました。
 絶妙なタイミングでビンラディンが犯行声明を出したせいでしょうか。
 じつはあんたブッシュ応援してるでしょ、とかいいたくなりました。
 まあ、実際そうなのかもしれません。
 アメリカが戦争すればするほど、反米の過激派は増えていくでしょうから、ビンラディンにとっては利益になります。
 はっきりいっちゃうと、完全に踊らされてるわけですな。

 戦争といえば、こんな本を読みました。
 兵藤二十八「学校で教えない現代戦争学」並木書房
 兵藤二十八という軍事研究家は、「日本は核兵器を持つべきだ!」にはじまる過激な発言で知られますが、別に軍国主義者や民族主義者というわけではなくて、論理的に「日本国民の安全を守るためにはどうすればいいか!?」と考えたらそうなっちゃった、という人です。
 飛躍した論理だとは思いますが。
 この本は「あー、日本はもっと実際の戦争に対処する能力を身につけなきゃ恐いよー!」という嘆きを原動力に、反戦論者をぶった切り、返す刀で旧日本軍も切り伏せたコラム集です。お前ら非現実性は同レベルじゃい! みたいな。
 軍事トリビア本でもあります。

 「戦時中、日本陸軍は『犬用嗜好剤』を持ち歩いていた」
 「フランスでは、いまだに第一次大戦の不発弾で人が死ぬ」
 「戦後すぐの日本警察は、170種類もの雑多な拳銃を使っていた」
 「昭和7年の日本陸軍には憲兵が2000人しかいなかった。フランスの20分の1、ドイツの5分の1」
 「早くも1907年のハーグ条約で、都市や村落を砲撃爆撃することは禁止されている」

 このへんのウンチクがたくさん入っていて、面白いことは面白いのですが、「自動小銃と短機関銃の違い」とか当たり前のこともいちいち書いてあるので、妙にアンバランスな気がします。どのくらい知ってる人を対象にしてるんでしょうか。
 まあ、平和を希求するためにこそ戦争を研究しよう、という根本的主張には強く共感します。

 この本に限らず、軍事系の読み物や資料をまた集めはじめました。
 確かに持っていたはずの名著、上田信「コンバット・バイブル」シリーズが部屋中探しても見つかりません。
 どこかにやってしまいました。とほほ。また買いましょう。
11月2日
 人類の命運を決定する戦い、アメリカ大統領選挙。
 もうすぐ結果が出ます。
 しかし、ムーア監督をはじめとする多くの人々が、あれだけブッシュ大統領の欺瞞と無能ぶりを暴いたというのに、アメリカ国民の半分はブッシュを支持している。なんとも不思議なことです。
 「飲酒運転で逮捕された」などの素行はともかく、「太平洋戦争を知らない」ような人に世界最強の軍事力を預けて恐くないんでしょうか。大統領は威勢さえ良ければいいってことでしょうか。
 まあわれわれ東京都民だってレイシストの石原慎太郎を知事に選んだので大差ないんですが、東京都知事と米国大統領では権力のレベルが違いすぎます。当然、人類に与える損害も違ってくるわけです。
 どうか米国人が賢明な選択をしてくれますように。
 勝てるはずのない戦い、戦略の誤った戦いは、やめるのも勇気であることを理解してくれますように。
 うわー、日本人にだけは言われたくない台詞。 
 


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