西北ネパールの山 (静岡山岳会会報No.37に加筆したものです)

地球上に未知な山域は無いと言われて久しいですがそれでもまだ知られていない部分も残っている。 1972年東京山旅クラブ西北ネパール登山隊に参加した、パトラシ・ヒマールのカンデ・ヒュンチュリ(6627m)頂上から中国(チベット)国境方面にあった二つの山が脳裏に残っていた。一つは長谷川伝次郎の「カイラス」状の山ともう一つは「マッターホーン」状の山だった。


カンティ・ヒマール、タクラ・コーラ源流部から大西保氏撮影提供。


カンティ・ヒマール南面タクラ・コーラ源流部から大西保氏撮影提供。


カンデ・ヒュンチュリ頂上より

登山終了後BCから柴田勇氏とカンジロバ・ヒマールの北、ムグカルナリ河の上流ラングー・コーラ(ナムラン・ルンバ)を遡行、冬の奥トルボを横断しカリガンダキのカクベニに出、ポカラまで2ヶ月余りかかった。

「カイラス」状の山がカンティ・ヒマール主峰(6859m)と、それから二十数年過ぎた冬のある日に吉永定雄氏から教えていただいた。その後「マッターホーン」状の山はダフェ・サイルのチベット側に張り出した尾根上の山、パチュン・ハム(6529m)であると、長い間気になっていた山名がわかり興味が増した。

ネパールの中西部、アンナプルナ・ヒマール(主峰8091m)とダウラギリ・ヒマール(主峰8167m)の間を流れる川、カリガンダキから西北のネパール―中国(チベット)国境付近(特にトルボ)は長期間政治的理由で足を踏み入れる事が出来ずごく少数の人が入域できただけでその地を研究する人達の憧れの地だった。一時期はカンジロバ主峰が7000mを超えていると言われたり(1970年大阪市立大初登 6882m)さらに西にあるナラカンカールも幻の山と言われた。

ネパール・ヒマラヤの6000m以上の山は東ネパール637峰、中央ネパール436峰、西ネパール210峰と西ネパールが極端に少ない。手付かずの(写真すらない)山が相当数あり辺境の山々を想いうかべる楽しみもある。東ネパールの高峰群に比べ高度は低いが、それを求める者にとってお誂え向きである。7000mm越えの山は極西ネパール(グランス・ヒマール)に3座あるのみで8000m峰はもちろん無い。6000m以上の山はネパール側にゴータム 2峰、パルチュン・ハムガ 23峰、カンティ 35峰、ゴラク 9峰、チャングラ 36峰、チャンディ 18峰、ナラカンカール14峰と各山群にある。

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