1999年2月第4週 iMac の好調に思うこと


 今回は、うちのマシンの近況からちょっと離れて、APPLE の話をしたい。
 DOS/V 日記といいながら APPLE の話題というのも脱線しているのは単なる愛嬌。

リンゴのマークは Mac のロゴじゃない!!

 最近は Machintosh 、通称 Mac の方が APPLE より、名前の通りがいい。
 下手すると、あのかじりかけのリンゴのマークは Mac のロゴだと思っている人の方が多いくらいかも知れない。でも、リンゴのロゴ=APPLE のロゴであって、Mac のロゴではない
 そもそも、APPLE が創業した時、イブがかじった禁断の果実(知恵の象徴でもある)からとったもので、APPLE のポリシーをあらわしているのだ。

Machintosh の衝撃(単なるおぢさん的昔話)

 Mac は登場からしばらく、私にとっては存在しない PC だった。親のすねをかじってる身分にとっては高嶺の花だったからである。
 先輩が社会人になって SE/30(モトローラ製68030搭載)を購入するのについていったとき、100万円近くしたのにはノケゾリってしまった
 実際のところは、80万とか90万だったのかも知れないけど、学生だった私から見れば同じようなもの。当時、PC9801 の最新モデル(VXだったかなぁ)が 30万そこそこだったのだ。
 それでも先輩の弁によるとかなり安い買い物だいう。今の感覚だと、SGIのワークステーションを個人で買うようなもんだよ。
 なにより衝撃だったのは、その洗練されたユーザーインターフェース。GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)は今でこそ珍しくないが、Mac は、今の Windows98 ができることを当時すでに実現していた。

 それから何年かして、何の因果か、Mac での開発の仕事に携わることになったけど、やはり最初の印象通り、その洗練されたコンセプトは、当時の PC にはないものだった。

 APPLE の定めたユーザーインターフェース・ガイドラインは目からウロコだ。ユーザーがマニュアルなしに複数のアプリケーションを使いこなせるよう、「使い勝手」を統一する方法が明示されている
 ToolBox と呼ばれるライブラリ群。Mac は開発者に対してハードウェアを解放しない
 いずれも、今の Windows 系 OS では当たり前のことだが、当時主流だった MS-DOS に比べて夢のような(開発者にとっては悪夢だけど)世界だ。

 また、開発のために張り巡らされた LocalTalk を使って、フライトシミュレータで空中戦をやったりもした。社員がそんな不謹慎なことばっかりやってるから、私が当時いた会社は潰れてしまったのかも知れない。
 そして今、Internet を使ったゲームが普及し始めている。きっと、ここ1、2年で大ブレークすると思う。

 APPLE は常にずっと未来を見せてくれる PC だった。

なぜ私は DOS/V ユーザーなのか

 じゃあなぜ私は DOS/V ユーザーなのか
 DOS/V ユーザーになる前、私は NEC PC98 ユーザーだった。Mac で飯を食っているにも関わらず。
 PC9821As2 を購入する際にかなり悩んだ。DOS/V vs PC98 vs Mac の三つ巴だ。
 結局、選んだのは PC98 だ。理由はいくつかある。
 すでに PC98 用のソフトを何本も持っており、他のマシンを使用すると全ての資産を捨ててしまうことになる。
 APPLE 用のソフトは高かった。しかも、日本語ワープロではどう考えても一太郎に太刀打ちできる製品がなかった。
 DOS/V は都市圏で普及し始めていたが、地方では周辺機器の入手が困難で、手に入ったとしても高価で、オマケに情報も少ない。三重苦である。
 こうして、PC98 を使い続けることになった。

 DOS/V マシンに移行したときは、DOS/V を導入する障害は全くなくなっていた。
 Windows が普及したおかげでソフトウェア資産はそのまま利用できたし、地方ですら DOS/V のパーツの入手には苦労しない。秋葉原のショップが支店を出したことで、価格も秋葉原と比べて遜色ない。

 この時点で、私にとって APPLE はもうどうでも良い存在になっていた。
 ユーザーインターフェースの面では、Mac との違いは昔ほど大きいものではない。少なくとも、私には許容できる範囲のものだ。
 Mac の世界は閉じている。自作 Machintosh なんて聞いたことあるかい?CPU をアップグレードするのだって半端な金額じゃない。そこには何の競争もないのだ。

 この時、Mac の進化は足踏み状態だった。CPU パワーでこそ Pentium を凌駕していたものの、全ての局面で DOS/V マシンを超えるのは膨大な投資が必要だった。

iMac に対するかなり個人的な見解(APPLEへの図々しい期待)

 iMac によって APPLE は復活を果たしたというのが、大方の見方である。
 でも、ちょっと違うんじゃない?
 いや、ぜーんぜん違うんじゃない?
 確かに iMac はデザインセンスが良くて(個人的には好みじゃないけど)、カラフルかも知れない。
 周辺機器のインターフェースを USB に絞ったというのも、ユーザーの使い勝手を考えても、コストの面でも納得がいく。
暫定 CEO のスティーブ・ジョブス氏の、生活空間で使える PC というのは、コンセプトとして正しいと思う。
 でも、それがリンゴのロゴに対する解答なら、あまりに悲しすぎる。
 例えば、SONY の VAIO は昨年最大のヒットである。しかし、その最大の特徴であるデザイン−マグネシウム合金ボディは、他のメーカーがこぞって真似をして、みんな VAIO もどきになってしまった。
 iMac のあのカラフルなボディだって、他社が真似るのは分けないだろう。APPLE の APPLE たる所以は、デザインを含めて、常に新しいコンセプト(しかも我々が考えもつかない)を提供し続けることにある。iMac はその意味で充分な製品ではない

 少なくとも私は、APPLE に Microsoft のような妥協的製品は出してほしくない。
 もし、「生活空間」で使えるというなら、キーボードやマウスが標準でついてるっていうのはどういうこと?「パソコンだからそれが当たり前」では、APPLE の存在意義はない。
 日本のゲーム機メーカーは、充分にはほど遠いものの、ある程度の答えは出している。Microsoft は次期のコンシューマ向け OS では音声認識を標準装備すると発表している。
 コンシューマ向けをターゲットとするなら、APPLE としてどのような答えを出すのだろう。

 先日、深夜のニュース番組で木村太郎氏がスティーブ・ジョブス氏へのインタビューを行っていた。
 ジョブス氏は、PC はまだまだ発展途上であるといい、APPLE は投資効果を集中して新しい製品を開発すると約束していた。そのために、Newton(APPLE版モバイルPC)プロジェクトを切り捨てたのだと
(でも、インターネットに15分で繋がる程度のために Newton を切り捨てるなよな)

 それだけの心意気があるなら、APPLE に期待したい。

 10年前のAPPLE がそうであったように、10年後の PC の夢を我々に見せてほしい。


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