2002年12月1日 日本三景
私のいきつけのバー『T』のマスターは雑学の宝庫です。
それでも、7年も常連を続けていれば、マスターの話のネタも繰り返しがあることはわかってきます。
今日はそんな雑学のお話。
その日は、昔行った修学旅行の話から日本の名勝の話になりました。
「じゃあさぁ、日本三大名園、全部いえる?」
グラスを拭きながら、マスターが話を振ります。
「んとね、兼六園、後楽園、偕楽園」
「じゃあ、どこにあるか知ってる?」
「兼六園が金沢で、後楽園が岡山でしょ。偕楽園が水戸。楽勝じゃん。兼六園と後楽園は行ったことあるしね」
ここら辺で、若い娘が隣にいると、後楽園は東京じゃないかとボケをかましてくれたりして、バーの会話も弾むというもの。しかし、その日のお客は私一人。カウンターの中はマスターとマスターの奥さんです。
「じゃ、日本三景はわかる?」
「それくらいわかりますよ。安芸の宮島、天橋立、松島でしょ」
「さすがだね。どこにあるか知ってる?」
「安芸の宮島が広島。天橋立が福井」
そのとき、マスターがしたり顔で「天橋立は京都」と訂正しました。
「そんなわけないじゃん。俺、6年も関西に住んでたんだよ。しかも3年間は京都にいたんだから。天橋立が京都なわけないじゃん」私は苦笑いしながら答えました。
「住んでたのは京都市内でしょう。実は、京都に海があるの知らないんじゃない?」
確かに、京都府が海に面しているのを知らない人は結構多く、「海のない県を全部言えるか」クイズでは京都を入れてしまう人もいるようですが。
「友人の実家が舞鶴で、遊びに行ったことがあるよ。そのときに天橋立を見に行ったけど、あそこは福井。ぜったい福井!!」
「そこまで言うなら、何か賭ける?」
「いいですよ。じゃあ、マスターの言うとおりだったら、バランタインの17年をマスターにおごりますよ」
「じゃあ、聞いてみるよ」
って、マスター、誰に聞くねん...と見ていると、マスターは何を思ったか、電話をかけてるじゃありませんか」
「天橋立観光協会の電話番号を教えてください」
おいおい、104かよ。
「はいはい...天橋立観光協会はない?じゃあ、天橋立旅館とか、天橋立の名前がついてるところだったらどこでもいいから」
おいおい、番号案内がそんなわけのわかんない問い合わせに答えるわけないじゃん。
「ああそう、XXX-XX-XXXXね」
って、104のお姉ちゃん、答えてるよ〜。
「天橋立××旅館の電話番号聞いたからここにかければわかるよ」
「マスター、よしなさいって。もう遅い時間なんだから」とさすがに見かねた奥さんがいなしましたが、マスターは聞く耳を持ちません。
「あー、そちら天橋立××旅館さんですか。あのー、そちらの住所をお聞きしたいんですが、京都府ですよね。ああ、そう、ありがとうございました」ガチャッ。
「ほらぁ、やっぱり京都じゃないですか」
そういう問題かい?呆然としながら、私はマスターにウィスキーをおごるといって、マスターの奥さんにウィスキーをダブルで作っていただきました。
夜も11時を回った時間にかかってきた怪しい電話にまともに応対していただいた、天橋立××旅館の方、申し訳ありませんでした。
天橋立観光で泊まるときは使わせていただきます...。
おしまい