ACT17

タイタニック・クロニクル(3)

クロニクル色分け:タイタニック一般船員船客などタイタニック外部


氷山衝突から沈没まで


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

23:41 衝突時話し込んでいた二等補助機関士ヘスケスと火夫長バレットが、第6ボイラー室で閉まろうとする防水扉から辛うじて脱出。他の者は非常はしごをはいのぼり、舷側の喫水線上に逃れる。
新婚の若夫婦、ジョージ・A・ハーダー夫妻は衝突の衝撃を不審に感じ、舷窓から外を見たところ氷の壁が過ぎ去るのを確認した。
ジェームズ・B・マグゴッホ氏の船室では開けてあった舷窓から、氷の破片がキャビンに入り込んでくる。
非番だったライトラーは異変を察知する。素足のままボートデッキまで出るものの、今一度戻り、呼び出しがあるまでベットで横になる。
カリフォルニアン号三等航海士グローグスはタイタニック号が急に停船して灯火を全て消したのを確認。夜になり、灯火を消したのだとの判断だが、これはカリフォルニアン号から丁度タイタニック号が真後ろに見えたからである。
23:50 衝突から10分間でキール(竜骨)より4.2mまで浸水。
船首船室には海水が奔流をなして入り込んでくる。
火夫長チャールズ・ヘンドリックソン、火夫室とボイラー室をつなぐ通路の螺旋階段の足で渦を巻き出すのを目撃。
電灯係のサミュエル・ヘミング、錨の鎖を入れてある船首の格納所から空気が奔出している音を聞く。
三等船客カール・ジョンソン氏、騒ぎで起き出すと海水がドアの下や足下を濡らしだしていた。
23:55 第四コンパートメントの郵便室(G・Fデッキ)では書留郵便のサック200個を避難させようとしたが、海水は膝まで浸し、その後5分でGデッキは海水で満たされてしまう。郵便係員は郵便物を放棄する。
ハロルド・ブライド無線技師、2時まで非番にもかかわらず、通信室に顔を出す。

 4月15日

0:00 スミス船長はトーマス・アンドリュースとともに被害状況点検のために船内を一巡。船長に被害状況を聞かれたアンドリュースは、沈没までに1時間ないし1時間半と割り出す。
タイタニック号の舳先がゆっくりと沈みはじめる。船首のDデッキまで浸水。
スミス船長は無線でCQD遭難呼び出しを発信するよう指示。
ボイラー室は機能停止。轟音をたてて煙突から蒸気の煙が噴出する。
0:05 キールの上9.8mの高さにあるスカッシュコートが浸水。
スミス船長、各航海士に以下のように指示を出す。
航海士長ワイルド:救命ボートのカバーを外しボートを降ろす用意
一等航海士マードック:船客の召集
六等航海士ムーディー:ボートへの割り当てリスト作成
四等航海士ボックスホール:二等航海士ライトラーと三等航海士ピットマンを起こす
0:10〜
1:50
約10〜19海里離れた海上でカリフォルニアン号の乗組員数人がタイタニック号の明かりを認めるが遭難と気付かない。二隻の距離は徐々に広がり視界から消えるようになる。
0:10 各航海士に指示を出したスミス船長はボートデッキ左舷を18m歩き無線室に入る。そして、無線技師二人に遭難信号発信の準備をするよう命令。
四等航海士ボックスホール、二等航海士ライトラーの船室に「氷山に衝突した、郵便室まで浸水している」と怒鳴り込む。
一等船客に対してスチュワードが一室一室丁寧に避難の知らせを始める。
二等船客には一人のスチュワードが20〜24のキャビンに対応。大きくドアを開いて呼び起こす。
喫煙室でブリッジをしていたステッファンソン中尉ら一等船客は、事実を突然現れた高級船員に事故の事実を知らされる。
Aデッキ特別室のワシントン・ドッジ夫妻は事故をしり、デッキに上がる準備をする。
ベンジャミン・グッゲンハイム氏、ヘンリー・サミュエル・エッチェススチュワードに手伝ってもらい救命帯をつける。
0:15〜2:17 この時刻の間に約500海里離れた地点にいた姉妹船オリンピック号を含む多数の船が遭難呼び出しを傍受。フランクフルト号(153海里)、バーマ号(70海里)、バルティック号(243海里)、バージニア号(170海里)、カルパチア号(58海里)など数隻が随時救助に向かう。
0:15 楽士団が軽快な曲を演奏しはじめる。最初はA甲板の1等ラウンジで演奏していたが、のちに大階段の入り口付近のボート甲板に移動。
1等無線技師ジョン・ジャック・フィリップスと2等無線技師ハロルド・ブライドは最初の無線救難信号(CQD)を発する。
マウント・テンプル号(49海里)、避難信号に対し「救助に向かう」と応答する。
0:18 「フランクフルト号」、カナダ太平洋汽船「テンプル号」、アラン汽船「ヴァージニア号」、ロシア貨物船「ビルマ号」から救難信号の返信が次々と返ってくる。
ニューファンドランド島のケープレース無電局はニュースを国内に中継する。
0:20 船首の下4mまで沈み、キールから15m上のE甲板船員室に浸水。
0:25 スミス船長、「女性と子供を救命ボートに乗せるように」と指示を出す。
ライトラー、甲板に駆けつける。ボートに乗せることを航海士長ワイルドに待ったをかけられる。

キューナード汽船「カルパチア号」の無線士ハロルド・トーマス・コタムは0:15発信のタイタニックのCQDを聞き逃す。パリジャン号からの返事を待っていたが、漠然とチャンネルをまわしケープコッドからタイタニックへの通信をキャッチし、沈没の事実を認識する。コタムは一等航海士H・V・ディーンへ報告。そのまま船長室に向かい、アーサー・ヘンリー・ロストロン船長に知らせる。船長は素早く海図室に向かい、タイタニック号を救うべく船員に指示を出す。
カナダのレース岬、CQDを傍受。
0:26 イピランガ号、CQDを傍受。
0:30 アーチーボルト・グレーシー大佐、テニスコート係のフレッド・ライトに対し、「テニスコートの予約を取り消さない方が良かった」と冗談を言う。
アスター夫妻がアスレチックルーム内の動かない機械木馬に座り、アスター大佐が余分の救命帯を切り裂いて夫人に中身を見せる。

カルパチア号からの吉報、92キロ離れた地点から全速力で救助に向かっている知らせを受ける。
0:34 フランクフルト号からの再度の連絡。フィリップス無線士救助を請う。
無線の状況判断のためスミス船長、無線室に入ってくる。

800キロ離れたオリンピック号から連絡が入る。
0:40 船底6区画に2万5000トンの水が流れ込み、喫水線まで沈没。
0:45 スミス船長の指示でCQDをやめ、歴史上はじめてSOSでの避難信号を発する。
最初の救難ロケットがブリッジの右舷側から発射される。

18キロ離れたカリフォルニアン号の見習い船員ジェームズ・ギブソンが救難ロケットを認める。しかし、マストの灯火の揺らめきと判断してしまう。同じく2等航海士のハーバート・ストーンも不思議としか思わなかった。カリフォルニアン号のロード船長はブリッジを離れ、海図室のソファに寝転がる。
最初の救命ボート右舷7号ボートが海上に降ろされる。定員65人のところ、実際に乗ったのは28人だった。
第5ボイラー室で機関士シェファードが片足を折る。
電気をギリギリまで送るため奮闘する電気技師たち。タービンエンジンルームにてアルフレッド・ホワイト技師コーヒーを沸かす。
船員ジョン・ポアンデスター、Eデッキ水夫室から出るとき、木造の壁を破る鉄砲水に襲われるが逃れる。
0:55 左舷側の最初のボートである6号ボートがモーリー・ブラウンを含む僅か28人を乗せて海上へ。
右舷側5号ボートが降ろされる。
担当は三等航海士ピットマン。ピューチェン少佐はボートを操作することを申し出る。
ロウ航海士の指示に従おうとしなかったイズメイが激しく叱責される。
1:00 右舷側3号ボートが降ろされる。32人しか乗っておらず、うち11人は乗組員。
ボートに乗る人が増えてくる。
1:10 右舷側1号ボートが降ろされる。コズモ卿、ゴードン夫人と乗組員7人を含む僅か12人。
左舷側8号ボートが39人を乗せ降ろされる。左舷では2番目に降ろされる。
ストラウス夫人、夫と分かれて乗船することを拒絶する。ロテス伯爵夫人がボートの舵をとる。
カリフォルニアン号では2等航海士ストーンが6発目のロケットが上がるのを認めると、ロード船長にこのことを告げる。
1:15 海水は船首に表示された「タイタニック号」という文字のところまで達する。船は左舷に大きく傾き、甲板の傾斜も急角度になる。ボートに乗る人はますます増えてくる。
火夫フレッド・スコット、電気エンジン室の隔壁で同僚を救出する。
1:20 右舷側9号ボートが56人を乗せて降ろされる。船は今度は右舷に傾き、船首が海中に没しはじめる。
第4ボイラー室に海水がどっと進入する。
一等船客休憩室にグッゲンハイム伯爵が夜会服で正装して現れる。
左舷側10号ボートが55人を乗せて降ろされる。
1:25 右舷側12号ボートが女性と子供40人を乗せて海上に降ろされる。船員2名が操舵のために乗り込む。
オリンピック号からの無電が入る。沈没を理解できない返答が入る。
右舷側11号ボートが70人を乗せて降ろされる。
1:30 右舷側14号ボートが50人以上を乗せて船を離れる。
船上に残った船客の間にパニックが広がりはじめる。すでに定員一杯になったボートに数人の乗客が飛び込もうとする。
ロウ航海士は銃を空に向けて2発発砲して警告。
パン焼き主任チャールズ・ジョーヒンはEデッキの自分のキャビンでウイスキーをあおる。
1:35 左舷側16号ボートが56人を乗せて船を離れる。
右舷側15号ボートへの殺到をマードック一等航海士防ぐ。
右舷側13号ボートが64人を乗せて海上に降ろされる。その大部分が二等と三等の女性と子供の乗客。
30秒後に右舷側15号ボートが13号ボートの上に降ろされ、危うく衝突しそうになったが、着水した13号が間一髪で船から離れ、難を逃れる。
1:40 左舷側15号ボートが定員一杯の65人を乗せて船を離れる。ボートの指揮は火夫ダイモンド。
船首にあったボートはほとんど海に出てしまい、残った乗客は船尾の方に移動をはじめる。
右舷最後のボート折り畳み式C号が39人を乗せて船を去る。
イズメイもこれに同乗する。ボートの指揮は操舵手ジョージ・ロウ。
最後の救難ロケットが発射される。
航海士長ワイルド、船の傾きを直すため乗員乗客に右舷への移動を命じる。これによりタイタニックは水平を取り戻す。
前部ウエル甲板が冠水し出す。
1:45 救助に向かうカルパチア号が聞いた最後の通信「全速力で来られたし、機関室のボイラーに海水進入」
左舷2号ボートが定員40人のところ25人のみで降ろされる。
パン焼き主任ジョーヒン、医師オローリン避難用食糧の物色を食品庫でおこなう。
1:55 4号ボートが40人の女性と子供の他、数人の船員が乗り込む。このボートにアスター大佐が乗ろうとしたがライトラー航海士に拒否される。彼は妻の乗った4号ボートが無事海上に出るのを見送る。
2:00 海水はプロムナード・デッキの下3mのところに迫る。
2:05 沈没寸前の船にはまだ1500人が残っている。
折り畳み式ボートD号が出発。定員47名のところ44名が乗船。
乗務員たちは腕を組んで円陣を作り、女性と子供しか乗せないようにする。ライトラーはピストルを振り回す(発砲したかも知れない)
エディス・エバンズは子連れの夫人をD号ボートに乗せるために自分のチャンスをすてる。
パン焼き主任ジョーヒン、Bデッキの囲われたプロムナード・デッキからデッキ・チェアー50個ほどを海上に放り投げる。
スミス船長が無線士のブライドとフィリップスを任務から解放しようと2度説得するが、交信を止めない。
カリフォルニアン号の見習い水夫ギブソンが再度救難ロケットを認める。ロード船長に報告しようとするが、船長が「どうした」と聞くも返事が無く、船長は寝てしまう。
2:10 無線士のブライドとフィリップス電力が落ち始め、いらいらするが、回復する。フィリップスがVの信号を2度打ちヴァージニアン号にキャッチされる。
突然、火夫が無線室に入り込み置いてあった救命帯を盗もうとするが、ブライドとフィリップスが挌闘して守る。火夫は動かなくなる。
2:15 ブリッジが海水をかぶる。海水はボートデッキに沿って船尾に巻き上がる。
折り畳み式ボートA・Bは高級船員室の屋根の上にある。この非常識な設置場所からの脱出は困難を極める。A号は皮肉にもタイタニックが沈んでいくおかげで脱出できる。16名が乗り込む。
B号は屋根とデッキを渡したオールを滑らせてデッキに降ろそうとするが、逆さまに落ちてしまう。
楽士団がデッキ上で最後の演奏をする。曲目はエピスコパル派の賛美歌「秋」とも、「主よみもとに近づかん」とも言われる。
2:17 スミス船長、乗務員達に「みんな、自分のために行動せよ」と告げ、ブリッジに戻って最後を待ったといわれる。
ブリッジが水をかぶったという声に無線士のブライドとフィリップスは打電を止め無線室を飛び出す。ブライドは大波にさらわれ転覆したB号ボートの下へ、フィリップスは船尾へと別れ別れになる。
設計士トーマス・アンドリュースは一等喫煙室で空を見つめるように立っている姿を最後に目撃される。
トーマス・バイルズ神父がボート甲板の船尾の端で、集まった二等および三等船客100人の告白を聞き、罪の許しを与える。
楽士団のバンド演奏が止む。
多くの乗客・乗員が海の中に飛び込むか船尾に向かう。
ライトラーは船体がかすかにゆれる異常を感じた。(裂ける前兆か?)また、船尾に行っても助からないと判断、海に飛び込む。ライトラーは海からタイタニックを見つめる。
船首が急速に沈み船尾が持ち上がる。船首側の煙突が倒れ、海上にいた数人の上に倒れる。ライトラーの掴まるA号ボートの脇をかすめる。煙突の倒壊により発生した大波で2隻の折り畳みボートは遠く押し流される。
2:18 船内の固定されていない物が船尾に突進していく音が聞こえた。灯火が消える。
多くの生存者が船が二つに裂けるのを目撃。船首は半分まで沈没。
パン焼き主任ジョーギン、水面から45mも突き出た円形の船尾の先端に立つ。
2:20 ちぎれた船尾側船体が垂直に立ったまま数分間過ぎた後・・・沈没。
5号艇の上で3等航海士ピットマンが時計を見て「今2時20分だ」と言った。