十代詩篇 1
「大好きなもの」
昼下がり
喫茶店
コーヒーの湯気の向こうで
あなたが笑ってる
私はチョコレートパフェと
悪戦苦闘
細いビスケットを折らないように
サクランボの種はどうしよう
気になる
あなたの笑顔の理由
私もコーヒーを飲んでたら
湯気にまぎれて
見えなかったのに
「もどれない道」
とんでもない夢物語をしていたあの頃から
ずい分と大人になったと思う
だけど今 夢物語をしていた頃の自分を
懐かしく思う
今の自分の殻から
抜け出したいと思う
遠すぎる目的のために
辛すぎる道を歩いている自分を
透明な迷路の向こうにいる人達と
毎日比べて
挫折より手前で止まる自分を
夢物語をしていた頃の自分と
時々比べて
本当の自分はこんなじゃないと
強がってから
前進より少し後ろから
歩き出す
「うたたね」
今眠ったら
きっとあなたの夢を見る
小さい筈のラジオの音が
耳につく
何もいらない
必要ない
天気も温度も水も
あなたの夢の中では
もしだれかが私のことを
嫌な奴だ
卑怯な奴だ
と思うなら
それは正しいと思う
もしだれかが私のことを
優しい人だ
正直な人だ
と思うなら
それも正しいと思う
だけど
自分のことを棚に上げて
人のことを評価する奴の言うことなんざ
私はこれっぽっちも
信用しないよ
「椅子」
それは
細長くて
頼りなくて
とても とても
綺麗で
私の持ってる
最高の褒め言葉さえ
汚れてしまうような
気品がある
もう少し
ここにいていいですか
その横を
あなたが通り過ぎるまで
「嫉妬」
花を見て
あなたが笑ってるけど
私はこっちだよ
「私全部で」
私全部であなたを好きになったら
私は綺麗になれますか
私全部であなたを好きになったら
私は強くなれますか
私全部であなたを好きになったら
私はあなたに逢えますか
私全部であなたを好きになったら
あなたは私を
好きになってくれますか
「目標」
美しい女よりも
美しく抱かれる女に
なりたい
私は
あなたの腕の中だけの
女でありたい
「Sleep」
布団に入って
目を閉じて
音もなく
闇に溶ける
憧れるのは
そういう眠り
今夜も私は
音もなく静かに
ただ
闇になる
「風船」
ただふくらませただけの風船に
あなたの名前を書いたら
空に浮かぶような気がして
それは
何でかなぁと思ったのだけれど
やっぱり
二酸化炭素の中身では
ぽわぽわと床をころがるだけで
その不規則さも
何でかなぁと思ったのは
たぶん
風船があなたの好きな色をしていたからでは
と思う
今日この頃
あなたは
元気ですか?
「Magic」
指一本で
不思議なことを
起こせそうな
あなた
教えて欲しい
ことがあります
あなたと私の
存在の理由と
その違い
あなたが何故
歌うのか
あなたが何故
笑うのか
あなたが何故
私を救うのか
永久不滅の
疑問です
指一本で
不思議なことを
起こせそうな
あなた
今度は私に
触れて欲しい