図書館日記 > 一般 > ミステリー(アガサ・クリスティー)

◆◇◆ アガサ・クリスティー ◆◇◆
1940〜1950年代の長編作品(発表順に掲載)

杉の柩 SAD CYPRESS (1940)恩地三保子訳 早川書房
 物語は裁判の一幕から始まり、ポアロが真相究明にのりだす。被告人エリノアは、婚約者を惑わした美しい女性を毒殺し、さらに金持ちの叔母まで手にかけた罪に問われる。サンドイッチ用のフィッシュペーストかぁ〜、美味しいのかなぁ?(食べ物ばかり興味あり)

愛国殺人 THE PATRIOTIC MURDERS (1940,1941)加島祥造訳 早川書房
 その日、ポアロは年二回の定期検診を受けに歯医者を訪れた。診察を終えて自宅に戻ると、その歯科医が自分の頭を撃って死んだとジャップ警部から電話が入る。ポアロには歯科医が自殺をするとはどうしても思えないが、殺人としても動機が全く見当たらない。その朝の患者を一人ずつ訪ねはじめるが、三人目の患者は死体で発見され、そして別の患者は行方不明に。“マザーグース”の数え唄が章のかわりをし、唄に従って物語が展開していきます。ポアロでも歯医者は怖いのね...。

白昼の悪魔 EVIL UNDER THE SUN (1941)鳴海四郎訳 早川書房
 夏の避暑地、海に浮かぶ小島で美女の絞殺死体が発見された。容疑者は多く、しかも全員にアリバイがある。外部からの侵入者の犯罪か?それとも麻薬がらみの事件なのか??偶然にも避暑で島に滞在していたポアロが謎解きを始める。タイトルにはマザーグースの歌の一節が使われ、さらにこの語句は聖書から取られたものだそうです。(この作品は「地中海殺人事件」として映画化されました)

NかMか N OR M? (1941)深町真理子訳 早川書房
 1922年「秘密機関」で初登場したトミーとタペンスの幼なじみ素人探偵が、歳を重ね、中年夫婦となって活躍する。情報部からナチスの大物スパイ<NかM>の正体をつきとめるよう依頼されたトミーは、タペンスには内緒で現地へと赴いた。しかし、そこには先回りしたタペンスの姿が。そして二人はスパイ網の真っ只中に飛び込んでいく。女史の冒険スリラーが充分に楽しめる作品です。

書斎の死体 THE BODY IN THE LIBRARY (1942)高橋豊訳 早川書房
 ミス・マープル・シリーズの長編作品。ある日、身も知らぬ美女の死体がミス・マープルの友人邸の書斎に…。探偵ずきな独身の老婦人が友人の依頼で調査に乗り出す。意外な結末とそのトリックは、とにかく傑作です!

五匹の子豚 FIVE LITTLE PIGS (1942)桑原千恵子訳 早川書房
 16年前夫殺しの罪で死刑を宣告された母の無実が立証されない限り、娘には永久に幸せが訪れない。マザーグースの数え唄をタイトルに、5人の容疑者の手記を通して、娘の訴えに動かされたポアロが過去の事件の真実を解き明かす。

動く指 THE MOVING FINGER (1943)高橋豊訳 早川書房
 傷痍軍人のジェリーは退院後の転地療養のため、妹とともに静かな小村に居を構えた。そこでのんびりと暮らすつもりでいた二人は、村で起こった事件に巻き込まれる。悪意と中傷に満ちた匿名の手紙が村の住民に無差別に届けられ、ついにその手紙を受け取った夫人が自殺をしてしまった。ミスマープルが真犯人をつきとめる。

ゼロ時間へ TOWARDS ZERO (1944)田村隆一訳 早川書房
 ある夜、一人の人間が静寂に包まれた部屋の中で文章を綴っていた。そこに書かれたのは綿密な殺人計画。そして数ヶ月後、平穏な漁村で起こった残忍な殺人。殺されたのは金持ちの未亡人で、その時屋敷に滞在していた親戚や友人達そして使用人の中に犯人が?殺人の企てられる瞬間から、殺人の瞬間“ゼロ時間”へと遡っていく。この作品ではバトル警視が大活躍、これもポアロに鍛えられたせいか?

死が最後にやってくる DEATH COMES AS THE END (1945)加島祥造訳 早川書房
 時は紀元前二千年、所はエジプト古代都市。そこでおこった大家族の連続殺人。次々に起こる不幸は死んだ妾の呪いなのか、彼女は本当は誰かに殺されたのか?長男の嫁、そして次男が死に、一家の中に殺人犯がいると話した祖母も冷たくなって発見される。大人しくて従順な人の根底には恐ろしいものがあるって...少し怖いカモ。

忘られぬ死 SPARKLING CYANIDE (1945)中村能三訳 早川書房
 誰からも愛されたローズマリーが、自分の誕生パーティーの席上で突如毒をあおり世を去ってから、一年が過ぎようとしていた。しかし、夫のジョージは疑惑をぬぐいきれず、万霊節の夜同じ場所で同じメンバーによるパーティーを催したが、そこでまた悲劇が起こってしまう。『発泡青酸カリ』ってタイトルもいいですねぇ。

ホロー荘の殺人 THE HOLLOW (1946)中村能三訳 早川書房
 ホロー荘に招かれたポアロが目にしたのは、殺人現場だった。殺されたのは同じく招かれていた医師で、傍らにはピストルを手にした妻が。この作品でのポアロは探偵として活躍せず、真相を見通していながらむしろ陰の人物として描かれています。登場人物の心理、性格を手がかりとして推理をすすめる小説として、訳者は女史の作品群中でも五指にはいる傑作だと賞しています。

満潮に乗って TAKEN AT THE FLOOD (1948)恩地三保子訳 早川書房
 空襲下、あるクラブでポアロは百万長者の爆撃死を知った。残された若い未亡人。それから2年後、金に詰まった故人の親戚達が、彼の残した莫大な遺産をめぐって動き出した。そしてついに殺人事件が起こる。推理も、ロマンスも楽しめる作品です。「“人の動きにも潮時というものがある。満潮に乗りさえすれば運は展けるのだ…”たしかに潮は満ちるが、それはいつか引く時もあるのです」というポアロの言葉が印象的。

ねじれた家 CROOKED HOUSE (1948,1949)田村隆一訳 早川書房
 ねじれた家で、巨額の財産を残した老人が殺された。状況から見て、同居している家族の犯行らしい。その家の孫娘の恋人で警視庁副総監の息子チャールズが、地元警察と共に事件の解決に挑む。この結末には驚いた、最後まで『ねじれて』いる!ラストまで気の抜けない読みごたえのある作品です。

予告殺人 A MURDER IS ANNOUNCED (1950)田村隆一訳 早川書房
 “殺人お知らせ申し上げます…”という新聞広告から始まる事件。思いもよらない真相をミス・マープルが解き明かす、オススメの作品です。あぁ私も「甘美なる死(デリシャス・デス)」というチョコケーキ、食べてみたいかも(死ぬほど甘い、って)。

バグダッドの秘密 THEY CAME TO BAGHDAD (1951)中村妙子訳 早川書房
 ヴィクトリアは、偶然知りあった青年エドワードを追って、バグダッドへ。やっとのことで、彼の勤め先を探し当て、首尾よくタイピストとして雇われる。しかし、とたんに不可解な事件が彼女の身辺に起こり始め、ついには彼女が捕らわれの身に。女史得意のスパイスリラー、ロマンスつき。

マギンティ夫人は死んだ MRS McGINTY'S DEAD (1952)田村隆一訳 早川書房
 旧友スペンス警視の依頼で、ポアロはすでに死刑が確定している男の再調査を始めた。そこで未発見の凶器と手がかりを見つけるが、事件の真相は過去の忌まわしい殺人に隠されていた。色んな事件が絡み合っていて、なぜか複雑に感じたのは登場人物の多さが原因?

魔術の殺人 THEY DO IT WITH MIRRORS (1952)田村隆一訳 早川書房
 とても心配だから、確かめて欲しいの−旧友の願いで、女学生時代の友人宅を訪れたマープル。そこは、非行少年ばかりを集めた少年院で、一種異様な雰囲気が漂っていた。そして友人の夫が、妄想癖の少年に一室に閉じこめられ、命を狙われる事件が。しかも、それと同時に別室で不可解な殺人事件が発生していた。魔術師のネタから、ミスマープルが解き明かした真相は?ロマンスあり、そして少しだけ歳を重ねたクリスティの女心?が垣間見れるような気がした作品でした。

葬儀を終えて AFTER THE FUNERAL (1953)加島祥造訳 早川書房
 大富豪の一家当主リチャードの葬儀を終えて、一族は遺言執行人のエントウイッスル氏から遺産分配方法を聞いていた。その席上で、リチャードの妹コーラが無邪気な顔で「彼は殺されたんじゃなかったの?」と口走る。翌日、コーラが惨死体で発見された。容疑は相続人全員におよぶが、コーラの言葉に疑問を感じたエントウイッスル氏は、ポアロに救いを求める。

ポケットにライ麦を A POCKET FULL OF RYE (1953)宇野利泰訳 早川書房
 投資信託会社社長が毒殺された。彼のポケットの中には、なぜかライ麦が。状況から警察は、容疑者を家庭内の人間に絞る。そして、第二、第三の殺人が…。殺された女性の復讐に、ミスマープルがセント・メアリ・ミードを離れ水松荘にやってきた。彼女が口ずさんだ唄は「ポケットに ライ麦を 詰めて歌うは 街の唄…」マザー・グースの童謡に添った奇妙な殺人事件をミスマープルが解き明かす。

死への旅 DESTINATION UNKNOWN (1954)高橋豊訳 早川書房
 東西の冷戦下の西側陣営において核分裂研究の重要人物が次々と失踪していった。そして、ZE核分裂という新しい原子力にめざましい成果をおさめた科学者ベタートンが行方を絶った。どこへ消えたのか。イギリス情報部は必死の捜索を開始し、やがてベタートン夫人に瓜二つの自殺志願の女性が、身代わりスパイとなって極秘裡に謎の目的地へと潜入した。スパイスリラー冒険小説だが、ミステリーも味わえてさらにロマンスも…。女史の描く、強くたくましく、賢い女性が魅力的。

ヒッコリー・ロードの殺人 HICKORY DICKORY DOCK (1955)高橋豊訳 早川書房
 ヒッコリー・ロードの学生寮で、不思議な盗難が次々と起こった。盗まれたものは、夜会靴の片方やコンパクト、電球などいずれも他愛ないものばかり。その寮にはポアロの秘書の姉が住み込みで勤め、秘書から話しを聞いたポアロが寮におもむき即刻警察を呼ぶべきだと皆の前で主張した。盗まれたものは次々とみつかり、直後、今度は寮生の一人が怪死するという事件が…一見何の関連もなさそうな二つの事件。しかしその二つには大胆な犯罪絵巻が隠されていた。一度犯罪を犯したら、二度三度と繰り返す、って事実かなぁ。怖い怖い。

死者のあやまち DEAD MAN'S FOLLY (1956)田村隆一訳 早川書房
 田舎屋敷の園遊会で犯人探しゲームの賞品を渡す役として、オリヴァ夫人に呼ばれたポアロ。当日、死体役の少女を見舞いに出かけると、少女は本当に絞殺されていた。その後、屋敷の夫人も失踪してしまう。一見平穏な屋敷には、とてつもない謎が隠されていた。

パディントン発4時50分 4:50 FROM PADDINGTON (1957)大門一男訳 早川書房
 パディントン発4時50分の列車に乗り込んだマクギリカディ夫人は、並走する同じ下り列車の車窓に殺人の瞬間を見る。誰もその話を信じるものがなく、数日たっても死体すら発見されない。そこで、彼女の話を信じた友人のミス・マープルが、死体探しに乗り出した。マープルの依頼で事件解決に一役かう、家政婦のルーシー。女史の描く、強くたくましく、賢い女性の一人です。

無実はさいなむ ORDEAL BY INNOCENCE (1958)小笠原豊樹訳 早川書房
 莫大な資産を持つ母親を殺した罪で逮捕された養子ジャックは、無罪を主張し続けるが獄中で病死。その二年後、彼のえん罪を証明する男が現れ、かりそめの平和は寸断される。果たして真犯人は?家族の無実を証明され喜ぶかと思われた一家は、新たな真犯人が一族の中にいることを知り、それぞれを疑いだす。

鳩のなかの猫 CAT AMONG THE PIGEONS (1959)橋本福夫訳 早川書房
 中東の国王が革命の起きた自国から脱出しようとして墜落死、同時に所持していたと思われていた莫大な財宝が消え去ってしまった。そして、2ヶ月後に英国でも有数の女子校で教師が何者かに射殺される。犯人は学内に潜んでいるに違いない、鳩を狙う猫のように・・・。続く殺人、そして誘拐。名探偵ポアロがこの二つの事件を結ぶ謎に挑みます。


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Last modified 2003.9.4