図書館日記 > 一般 > ミステリー(アガサ・クリスティー)

◆◇◆ アガサ・クリスティー ◆◇◆
1960〜1970年代の長編作品(発表順に掲載)

蒼ざめた馬 THE PALE HORSE (1961)橋本福夫訳 早川書房
 ロンドンで撲殺された神父が靴の中に隠し持っていた紙切れには、9人の名前が書かれており、しかもそのうちの数人はすでに死亡していた。興味を感じた若い学者マークは独自の調査を始めるが、そんな矢先、古ぼけた館に住む3人の女が、魔法で人を呪い殺すという噂を耳にする。神父殺しに関係があるとにらんだマークは、自分を囮にその館に乗り込んでいく。最後のどんでん返し・・・予想もしない結末に驚いた〜。

鏡は横にひび割れて THE MIRROR CRACK'D FROM SIDE TO SIDE (1962)橋本福夫訳 早川書房
 「鏡は横にひび割れぬ『ああ、呪いがわが身に』、とシャロット姫は叫べり。−アルフレッド・テニスン」引っ越し祝いのパーティーにて、女優マリーナがミセス・パドコックと言葉を交わした時に見せた表情は、まさにこの凍りついた表情だった。そのミセス・パドコックの突然の死をきっかけに、ミス・マープルが事件解決に乗り出すが、謎の表情を解き明かすことが出来たのは、さらなる惨事が繰り返された後だった。変わっていくセント・メアリー・ミード村、年齢を重ねたミス・マープル。この年代の作品には、女史の想いも重ねずにはいられない。

複数の時計 THE CLOCKS (1963)橋本福夫訳 早川書房
 タイピストのシェイラは、派遣先の部屋で死体を発見した。そこは時計が無数に置いてある奇妙な部屋だった。偶然、現場近くを通りかかった秘密情報部員のコリンが謎を解く。この作品ではポアロの口を通して、クリスティーが推理小説論を展開し、推理作家としての自分を自己批判している部分がある。他のものとは一味ちがった作品。

カリブ海の秘密 A CARIBBEAN MYSTERY (1964)永井 淳訳 早川書房
 マープルが肺炎の転地療養のため西インド諸島に来てから、日々の単調な生活に少し退屈しはじめた頃。彼女を相手に、自分の懐古談をしていたパルグレイヴ少佐の表情が一瞬こわばった。少佐が持っていた殺人犯の写真を見せようとしたとき、右肩ごしに何かを見たようだ。翌朝、マープルの悪い予感どおりに、少佐の死体が発見される。いつも通りのおしゃべりと観察力で、古巣のセントメアリーミードを離れて事件解決。

バートラム・ホテルにて AT BERTRAM'S HOTEL (1965)乾 信一郎訳 早川書房
 姪から気分転換の旅行を勧められて、ロンドンのバートラム・ホテルにやってきたミスマープル。そこは、古き良きエドワード王朝の面影を今も残す格調高いホテル。あまりにも不変すぎるその場所で、徐々に露見する人間関係。そして、客の一人が突然の失踪。マープルが事件の解決に一役かう形での登場。今までのマープル作品とは、少し違った感じがした。

第三の女 THIRD GIRL (1966)小尾芙佐訳 早川書房
 ある朝『自分が殺人を犯したかもしれない』と若い娘がポアロを訪れるが、結局何も言わずに帰ってしまう。憤慨したポアロはその死体無き殺人の謎を追う。オリヴァ夫人の積極的な行動にハラハラする。ポアロが歳を重ねて行く作品に、少しだけ女史の老いを感じてしまう・・・。

終わりなき夜に生れつく ENDLESS NIGHT (1967)乾 信一郎訳 早川書房
 昔からの伝説によって、呪われの地と恐れられている“ジプシーが丘”。マイクはここで大金持ちの娘と出会う。二人は恋に落ち、周囲の反対を押しきり結婚。しかし、彼には妻の死という不幸が待ち受けていた。これはその地に伝わる呪いのせいなのか?最後の最後まで、普通小説のような展開だが…。クリスティー自身が選んだベストテンに入っている作品だそうです。

親指のうずき BY THE PRICKING OF MY THUMBS (1968)深町真理子訳 早川書房
 「秘密機関」で登場してから四十六年後、初老の夫婦となったトミーとタペンスが活躍する作品。エイダ叔母のいた養老院を訪ねた際、その遺留品の中にある風景画の場所にタペンスは見覚えがあった。そしてその絵を叔母にくれた、ランカスター夫人は失踪。養老院では何か良くないことが起きていたのか?タペンスは妙に親指がずきずきする感じをおぼえ、悪いことが起こりそうな予感に、夫人を探して単身その風景画の場所探しに出かけていく。女史の冒険物はやっぱり面白い。

ハロウィーン・パーティー HALLOWEEN PARTY(1969)中村能三訳 早川書房
 探偵作家のオリヴァ夫人を迎えた子供たちはハロウィーン・パーティーの飾りつけに余念がなかった。話題が探偵小説におよんだ時、13歳の少女ジョイスが突然、殺人の現場を目撃した事があると言いだした。ホラ吹きジョイスのいつもの話が・・・翌晩、ジョイスがリンゴ食い競争のバケツに首を突っ込み死んでいるのが発見された!童話的な世界で起こったおぞましい殺人を追い、現在から過去へと遡るポアロの透徹した推理とは?
久しぶりのポアロ、やっぱりクリスティーのミステリーは面白いです。話の流れ、すべてが一つの結末へと導かれていく。結末を知ってから、また読み直し、ああ、ここはこういう事だったんだなぁ、、と納得。私は最後まで犯人がわかりませんでした(^ ^;; この作品を発表したとき、クリスティーは79歳というのだから、また驚き。やっぱり頭は使っていないとダメなんですねぇ…。(08.09.09記述)

象は忘れない ELEPHANTS CAN REMEMBER (1972)中村能三訳 早川書房
 推理作家のミセズ・オリヴァは、自分が名付け親になった娘の両親の死亡事件の再調査を初対面の女性に持ちかけられた。未解決に終わったその事件を今更、と困ったオリヴァは友人のポアロに相談する。これはクリスティー82歳の作品で、書かれた順で言えばポアロの登場する最後の作品。「象は忘れない、でも人間は忘れることができる」女史の想いが込められているような言葉、とても感慨深い作品でした。


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