3日目(7月2日金曜日) |
起きたのは4時半頃。 イカン、ちょっと寝過ごした。 そんな訳で慌ててメシをかきこんで、荷造りして4:50頃登山開始。 かつて二回も、しかも2日連続で登った山なので道はもはや熟知。 (まぁ、ぶっちゃけ一本道だから熟知もなにもないんだけど(笑)) 「そうそう、ここはこうなってるんだよなぁ」とか「この次はあぁなるんだよ」 とか「そういや、あん時ここで……」なんて思い出しながら登る。 余裕かましてるように見えるかも知れないけど、でも実際はスッゲー きつかったんだよ。 去年は登山をしてないせいでか、とにかくキツイ。 (普段の運動不足が原因だろって声は無視する方向で) っていうかヤバイ。 以前はろくに見れなかった景色は今回とてつもなく美しく見え、(写真1・2) 力にはなるんだけどとにかく、ヤバイ。 地獄の九合目(命名D-RJ(笑))からはいよいよカラータイマー点滅。 体力は休憩を取ればなんとかなるんだけど、筋力はそうはいかない。 つーか、ぶっちゃけ踏ん張れねーでやんの、アハハ(涙) おまけになんだか足首から下だけ感覚も鈍ってやがる(涙) 利尻山の九合目以降ってのはちょっとした……どころではなくほぼ崖レベル。 見上げるような斜面が続く。 ストックを使うか、備えてあるロープを使わないと進むのは不可能。 しかも地面はレキ場。 火山特有の赤茶けた小石が地面を覆っていて、かなり滑る。 なのに踏ん張りが効かない。 こらアカン。 さっきは無視したけど、今は認めよう。 日頃の運動不足をね(涙) 正直諦めようと思った。 疲れたとかじゃなくて、マジでヤバイんだものよ。 でも、諦められるモンじゃねー。 また同じ事を繰り返すのはノーサンキューだだだだ!!! そんな訳で今までほぼ1合ごとに一回で取っていた休憩を九合目からは ヘタすりゃ10回近くとって、なんとか頑張る。 そして……09:20頃。 3度目にして無事に「晴れた」利尻富士に初登頂成功! やぁってやったぜ、コノヤロー…… いやぁ、もう感無量。 空と海が青い。 他の登山者も話していたんだけど、その「青」がなんか違う。 色が深い。 これが「蒼」なんだよな。 そして島の独立峰であるが故に景色は抜群。 礼文もサロベツ原野の辺りもサハリンだって見える。 ざまーみろってんだ、こんのヤローが、Yeaaahhh!! (無駄にテンションが高いのは苦労した末なので、見逃してください(笑)) いま、まさに。 オレは利尻で一番空に近い場所にいるんだ!! 見上げた目を西に向ければポルノグラフティの詩のように空と海が交じる 場所が見える。 頑張った甲斐があったってものさ。 とはいえ実は山頂はかなり寒く、また疲労の度合いもハンパじゃなくて へたり込んでいたんだけどね、この時(笑) 八合目辺りから吹いていた、よろけてしまう位の風はナリを潜めていたけど とにかく寒い。 そんな訳でちょっと縮こまるようにしておむすび食べたんだけど、これが またなんとも美味。 いや、普通のコンビニで買ったおむすびだよ? ただのミネラルウォーターもとにかく美味い。 この景色、この空と海の色、そしてこの味。 ここに来れなきゃ味わえないもの。 ホントに無事に、しかも晴れた日に登れて良かったなぁ…… なんせ前回は八合目辺りから雲の中で視界が10m以下位でさ。 最後の最後に危険な場所があって、そこを越えるとぽこっと山頂が あるんだけど、そこまで来ても山頂が見えなかったもんなぁ…… などと感慨にふけりつつも、山頂からの景色を満喫し下山開始は 10時過ぎ。 順調に下っていった……訳ではなく、実は丁度道が細くなるところで かなり人数の多いグループが登ってくるのにかち合ってしまい、 どうしようもなくただひたすら待つ時間を過ごしていた。 正直こういう時間って結構イヤ。 もー、早く登れよとかも思ってたんだけど、思わぬ副産物も。 集団にはたいていガイドが複数ついているんだけど、そのガイドが ここにしか咲いていない花がすぐ側にあると説明していてね。 丁度居合わせた他のソロ登山者の一人と 「そんな話を聞いたら写真を撮らない訳にはいかないよね」 なんて話しながらその花の写真撮影をした事がきっかけでともに 下山することになったんだよ、これが。 (ちなみにその花とはこのボタンキンバエ) で、そのソロ登山者。 実はまぁ、30代半ばの女性だったんだけど、すっげーんだ、これが。 山に登りまくり。 キリマンジャロだって登ってる。 で、5000m級のキリマンジャロに登る準備として4000m級の山に 登ってみたりね。 シーズン中は月に10回位、確実に3回以上は登山してるって言ってたな、 確か。 ワタクシのようなアルピニストの端っこの切れっ端の出涸らしの絞りかす とは大違い。 だからといってへりくだって接した訳じゃないけどね。 ともあれそういう人なんで登山について色々話をしながら下山が出来て 楽しかったなぁ。 ほら、今回の旅に出て初めて長く言葉を交わした訳だしね。 降りるペースは私の方が速かったんで合わせるのに気を遣ったけど、 それ以上にこうやって会話出来るのが嬉しかったから問題なし。 13:30頃に下山完了して別れるまでとても楽しい時間を過ごせた。 ちなみに別れ際はもちろん「またどこかで」 彼女もこの後礼文に渡ると言ってたし、ひょっとしたら礼文ですぐに逢う かもね、なんて事を笑いながら話して別れた。 下山完了後は下山届けを出してから、しばしキャンプ場で休憩した後で すぐ近くにある温泉へゴー。 情けないことに「うぉ、膝が笑ってやがる(汗)」てな状況だったんで、温泉に 使ってゆっくりしないとこにはナニもできん。 普段カラスの行水ですます私にしては珍しくかなりゆっくり温泉につかって ました。 しかし、アレだね。 ここの温泉って露天から利尻が見えるんだけど、つい数時間前まであの 山頂にいたかと思うと笑えるね(笑) と、同時に「どうだ!!」という気分も込めて露天から利尻を眺めていたよ。 温泉から上がった後は併設されてるコインランドリーに着ていた服を 叩き込んで、ビールで祝杯。 自販機もあるけど、あえてレストラン(というレベルじゃないけど)で。 グラスごと少し凍ってる位キンキンに冷やしてあるのがお気に入り。 (態度はちっとむかついたけど(笑)) 無事登頂成功した後でこうして呑むビールがまた格別。 くぅ〜〜、しみるぜ!!(おっさんかよ まぁ、飲酒運転になるけど見逃してください(笑) どっちみち服が乾くまで2時間近く動けないし、生中一杯じゃすぐに 抜けるから。 そう、一杯だけ。 でも一杯だけで2時間近くもレストランには居座れない。 後の時間は休憩所でごろごろして乾燥まで終わるのを待つ。 そして乾燥したら急いでキャンプ場に戻る。 ナニをそんなに慌てているかというと、実はキャンプ場を移るため。 昨日分にも書いたけど、ここ利尻北麓キャンプ場は本当に登山道の 入り口にある。 だから他のキャンプ場に比べても、朝も夜も早い。 朝5時には集団客が登山を開始するので、結構騒がしくなる。 明日は休養日に充てたい私にはちょっと不向き。 そしてもう一つの大きな理由。 それは夕日が見たかったから。 今日は晴天で夕日が綺麗に見えそうなのに、ここは林の中。 明日から曇りがちになる事もあって、是非見たかったからね。 ちなみに時刻はもうじき17時。 いくら日の入りが19時過ぎでも昨日に引き続きまたしても焦ってます(笑) まぁ、実はこの時点で曇りがちになってきてたんだけど、動き出すと 自分でも止められないんだよ(笑) とにかくちゃっちゃとテントをまとめて向かった先は、利尻島の西に位置する 沓形(くつがた) そこにある岬台公園キャンプ場。 実はこのキャンプ場。 初めて利尻に渡ったときに泊まったキャンプ場なので、非常に感慨深い 場所。 (もっともその時は夕方の最終便で島に入って、朝一便で島を離れたから なにもしてないんだけど) 先客に挨拶しつつテントを素早く張ってから、歩いて一分の所にある 展望台に行って夕日を見に行ったんだけど。 や〜〜っぱり雲が多くてあまり綺麗じゃない。 あ〜あ。 ま、それなりに綺麗な夕日が見れてヨシとするか。 なんぞと思ってキャンプサイトに戻ると、なんかさっきより夕日が綺麗に なってるぞ? こりゃ戻って見ないと……と、再び戻りしばし堪能する。 うん、やっぱり移動して正解だったなぁ。 でももうこれ以上はないな。 今度こそ晩飯にかかろう。 そう見切ってキャンプサイトに戻るとまたさらに綺麗な夕日になってる。 で、またまた展望台に戻る。 ということを実は3.4回も繰り返した(笑) なんかね、どんどん綺麗になってくんだよ。 夕日愛好会会員(なんだ、それ)だから結構な数の夕日を見てるけど、 その経験に基づく判断が何回も外れてね(笑) 「山に登って疲れまくってるのにナニをしてるかなぁ、オレ」 と、自分でもおかしくなったけど、夕日大好きだからさ(笑) そして 「さすがにこれ以上はないな。なんせもう暗くなってきてるし」 最後にそう見切って夕日に背を向けて僅か一分足らず。 テントに戻り振り返ったとき、もの凄い夕焼けを目の当たりにした。 ……な、なんだよ、これ? こんなの見たことねーよ…… さっきも言ったように今は曇りがちの空。 その空が、紅く染まっている。 夕焼けは紅い……そうは言っても実際にはオレンジ系の色なのは みんな知ってる以前に常識として分かってるだろうけど。 文字通り「紅い」 半ば呆然として眺め、ふと我に返り展望台へ向かった。 島の西にある岬の先端に位置する展望台。 すなわち目の前には大海原のみ。 そこに広がる滅多に見れない紅い夕焼け。 2.30分ただひたすらに眺めていた。 キャンプ場に戻った後も紅い空を眺めながら、軽く一杯。 日本海側で夕焼けを見たことがある人は知ってるだろうけど、海に沈む 夕日は沈んでからも随分と長い間空を明るく照らす。 この日は実に21時過ぎまで明るかった。 今日は晴れた利尻に登頂でき、夕方以降は珍しい夕焼けが見れた。 途中バタバタしたり、ちょっとショックな事もあったけどいい一日だったなぁ… 本日までの総走行距離 約950q 追記 「ショックな事」というのは、キャンプ場を移動してる最中に、気づいた 相棒の異変。 なんとフロントサスの左側からオイルが漏れていた。 すぐにどうこうなるもんじゃないので、そのままにして旅を続けたけど やっぱショックだったよ。 ちなみに以降はフロントの手応えがふにゃふにゃになって、80qを越えると ハンドルがぶれ出したけど、「基本的に」もうこのことには触れないので 頭尾片隅に置いておいてください。 走るのが結構怖かったよ。 |