ネットワーカーに贈るエスペラント語入門講座 第12課

第12課(1):接尾辞

12−0.はじめに

☆第11課では、接頭辞を学習しました。第12課では、接尾辞を学びます。

☆この課は、次の2つの部分に分れています。

第12課(1):接尾辞
第12課(2):注意が必要な接頭辞

12−1.接尾辞

☆接尾辞は、語根のしっぽに付けて、単語意味を変化させる単語です。

frat-(兄弟−) + in + o = fratino(姉妹)

kuir-(料理−) + ej + o = kuirejo(台所)

mont-(山−)  + et + o = monteto(丘)

☆接尾辞<−in−>は女性を、<−ej−>は場所を表わします。上の例では、さらに名詞語尾<−o>をつけて、それぞれ<姉妹><台所>の意味を作っています。

☆<monteto>が<小さな山>という意味ではなく<丘>という新しい概念に変化している点に注意して下さい。
<小さな山>は<malgranda monto>と表わします。

☆語根+接尾辞+品詞語尾の形に注意して下さい。

☆接尾辞には次のものがあります。比較的わかりやすいものと、注意が必要なものに分けて、全部を挙げますが、一度に憶える必要はありません。多くの文に接するうちに自然に憶えられます。

12−1−1.わかりやすい接尾辞
 
-in- 女性 patro →patrino (父親→母親)
-eg- 程度が著しい granda→grandega (大きい→巨大な)
-et- 程度が弱い ridi →rideti (笑う→微笑む)
小さい knabo →knabeto (男の子→幼児)
-ist-  従事者 esperanto→esperantisto (エスペラント→エスペランティスト)
-ej- 場所 lerni →lernejo (学ぶ→学校)
-on- 分数 tri →triono  (3→3分の1)
-obl- 倍数 tri →trioblo (3→3倍)
-op- 集り kvar →kvaropo (4→カルテット・4人組
-aj^- 物件 mang^i→mang^aj^o (食べる→食べ物)
-ad-  (1) 行為 lerni →lernado (学ぶ→学習)
(2) 動作の継続 lerni →lernadi (学ぶ→学び続ける)
-ec-  性質 amiko →amikeco (友→友情)
-ar- 集団 vorto →vortaro (単語→辞書)
-er- 物質の1個体 pluvo →pluvero (雨→雨粒)
-il- 道具 tranc^i→tranc^ilo (切る→ナイフ)
-ing- 挿入使用具 glavo →glavingo (刀→鞘)
-uj- 容れ物 mono →monujo (金→財布)
-ul- ある性質の人 juna →junulo (若い→若者)
-an- 一員 grupo →grupano (グループ→メンバー)
-id- 子供、子孫 reg^o →reg^ido (王→王子)
-em- 傾向、性向 babili→babilema (喋る→冗舌な)
-ebl- 可能(〜しうる) mang^i→mang^ebla (食べる→食べられる)
-ind- 〜に値する ac^eti→ac^etinda (買う→買うに値する)
-end- 〜ねばならぬ lerni →lernenda (学ぶ→学ぶべき)
-ac^- 劣悪 knabo →knabac^o (男の子→悪ガキ)
-ism- 主義 Markso→marksismo (マルクス→マルクス主義)
                                              

☆接頭辞の場合と同じように、接尾辞もあらゆる語根と結び付くわけではありません。組合せによっては、常識に反するものができてしまうので、注意して下さい。

? knab + eg + a knabega 巨大少年の?
? tabl + id + o tablido テーブルの子供?
? pluv + il + o pluvilo 雨降らし器?
? amik + uj + o amikujo 友達容れ?
? jun + ad + i junadi 若続ける?

<問題26>********************************************************

 ヒントを参考に、次の語句を日本語にして下さい。(ふさわしい訳語が思いつかなければ説明でもかまいません:辞書を引いても結構です)

1. amikino, amikeco (amiko 友人)
2. larg^ega      (larg^a 広い)
3. lageto       (lago 湖)
4. laboristo     (labori 働く)
5. laborejo
6. laborema
7. kvarono      (kvar 4)
8. duoble       (du 2)
9. triopo       (tri 3)
10. legaj^o      (legi 読む)
11. instruado     (instrui 教える)
12. registaro     (registo 支配者)
13. pluvero      (pluvo 雨)
14. skribilo     (skribi 書く)
15. inkujo      (inko インク)
16. junulo, junulino (juna 若い)
17. familiano     (familio 家庭)
18. kokido      (koko にわとり)
19. mang^ebla fungo (mang^i 食べる; fungo きのこ)
20. portebla komputilo (porti 持運ぶ; komputilo コンピューター)
21. kuirebla vegetaj^o (kuiri 調理する; vegetaj^o 野菜)
22. lerninda lingvo (lerni 学ぶ; lingvo 言語)
23. lernenda leciono (leciono 授業)
24. mas^inac^o    (mas^ino 機械)
25. anarkiismo    (anarkio 無支配)

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☆接尾辞も接頭辞同様、品詞語尾<−o><−a><−e>などを付けて、独立した単語として用いることができます:

ino (女性)  <名詞>  <in+o>
ina (女性の) <形容詞> <in+a>
ejo (場所)  <名詞>  <ej+o>

☆エスペラントでは、単語自身が変身するのではなく、細かい部品が組あわさることによって、新しい意味ができます。

☆接頭辞<mal−,ge−,ek−,…>、接尾辞<−in−,−et−,−ig−,−ig^−,…>、語根<vir−,tabl−,lern−,instru,…>などが、単語を構成する部品の最小単位です。また、これらの最小単位自身も、品詞語尾<−o,−a,−e>を添えることで、独立した単語になれます。

☆これらの単語を構成する最小単位に、必ず母音<a,i,u,e,o>が含まれていることに注目して下さい。エスペラントが聞取りやすく、また発音しやすいのはこのためです。

☆参考☆ 接頭辞や接尾辞の考え方は、エスペラント独自のものではありません。民族語にも使われています。例えば英語や日本語の:

abstract, abnormal, absent》

《teach−teacher,run−runner

《民族、根本、集中

人類、幹線、入生》

などは、接頭辞や接尾辞を用いた単語(日本語の場合は複合語)の例です。しかし、民族語の場合、これが、あまり合理的に使われていません。そこで、同じ<ab−>が使われていても、その意味は明確ではありません。エスペラントはこの接頭辞・接尾辞を合理的に使う事によって、実用するに当って必要な語根の数を大幅に減らす事ができました。


第12課(2):注意が必要な接頭辞

12−1−2.注意すべき接尾辞

☆次のような接尾辞は注意が必要です。特に他動詞・自動詞を作る<−ig−><−ig^−>は、便利であると同時に間違いやすい点があり ます。

(1) 国名を表わす接尾辞<−i−,−uj−>
(2) 愛称を表わす接尾辞<−c^j−,−nj−>
(3) 融通接尾辞<−um−>
(4) 他動詞や自動詞を作る接尾辞<−ig−,−ig^−>

(1)国名<−i−,−uj−>

-i- 国名 japano→Japanio  (日本人→日本)
     germano→Germanio (ドイツ人→ドイツ)

☆国名には<−i−>の他に、<容れ物>を表わす<−uj−>が用いられることがあります。

-uj-   japano→Japanujo (日本人→日本)
     germano→Germanujo (ドイツ人→ドイツ)

☆建国が比較的新しい複数民族国家の国名には<−i−><−uj−>を用いないものがあります。<一員>を表わす接尾辞<−an−>をつけて、そ の国の人(国民)を表わします。

     Usono→usonano  (合衆国→アメリカ人)
     Kanado→kanadano (カナダ→カナダ人)

☆注意☆ 国名には、いささか繁雑な点があります。迷うことがあれば、和エス辞書に当って下さい。

(2)愛称<−c^j−,−nj−>

-c^j- 男の愛称  patro→pac^jo   (父親→とうちゃん)
         Takasi→Takac^jo (隆志→たかちゃん)
-nj-  女の愛称  patrino→panjo  (母親→かあちゃん)
         Setuko→Senjo   (節子→せっちゃん)

☆愛称を表わす<−c^j−,−nj−>は、前の語根のどの部分につけるかは、発音のしやすさや、語呂のよさによります。

隆志   Tac^jo, あるいは Takac^jo

(3)融通接尾辞<−um−>

-um- 融通接尾辞 okulo→okulumi (目→ウインクする)
        gusto→gustumi (味→味わう)
        plena→plenumi (完全な→遂行する)

☆融通接尾辞は、ふさわしい接尾辞が見つからない場合に使うものでしたが、過去の実用を通じて、現在では<−um−>のついた単語の意味は決っています。融通接尾辞<−um−>のついた単語は、辞書で意味を確かめる必要があります。

(4)他動詞や自動詞を作る接尾辞<−ig−,−ig^−>

-ig- 他動詞化 fali → faligi  (落ちる→落とす)
       dau~ri→ dau~rigi (続く→続ける)
       c^esi → c^esigi (やむ→やめる)
       akra → akrigi  (鋭い→研ぐ)

-ig^- 自動詞化 fermi → fermig^i (閉める→閉まる)
        fari → farig^i (〜にする→〜になる)
        movi → movig^i (動かす→動く)
        akra → akrig^i (鋭い→鋭くなる)

☆動詞を他動詞化したり、自動詞化するこの接尾辞<−ig−,−ig^−>は役に立ちます。ただし、元の動詞が他動詞であるか自動詞であるかをしっかり憶えていなければなりません。字上符<^>に注意して下さい。

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(1) Lia prelego dau~ris.
(2) Li dau~rigis sian prelegon.

(3) Mi fermis la pordon.
(4) La pordo fermig^is.

(5) Ili staras.
(6) Ili starig^is.

(7) Oni lernigis al mi la anglan lingvon.
(8) Mi ne trinkigos al s^i multe da biero.

<単語>
lia(彼の) prelego(講演) dau~ri(続く:自動詞) sia(自分の)mi(私は) fermi(閉める:他動詞) pordo(戸)ili(彼らは)stari(立っている<状態>) star-ig^-i(立上がる<動作>)oni(人は)lernigi(学ばせる) al mi(私に)la angla lingvo(英語)mi(私は) ne〜(〜しない)trinkigi(飲ませる) al s^i(彼女に) multe da(たくさんの)biero(ビール)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆<dau~ri>は、<続く>という意味の自動詞です。従って、<dau~rigi>は、<続ける>という他動詞になります。

(1) 彼の講演は続いた。
(2) 彼は講演を続けた。

☆<fermi>は、<閉める>という意味の他動詞です。そこで、<fermig^i>は、<閉る>という意味の自動詞になるのです。

(3) 私は戸を閉めた。
(4) 戸は閉った。

☆<ig^>には、状態を表わす動詞を動作を表わす動詞に変える働きもあります。

○ stari(立っている)<状態> starig^i(立つ)<動作>
○ sidi (座っている)<状態> sidig^i (座る)<動作>

☆接頭辞<ek−>にも状態動詞を動作動詞にかえる働きがあります。

○ stari(立っている)<状態> ekstari(立つ)<動作>
○ sidi (座っている)<状態> eksidi (座る)<動作>

(5) 彼らは立っている。
(6) 彼らは立上がった。

☆他動詞に<−ig−>をつけることで、<〜させる>という強制の意味をもたせることができます。

○ lerni〜 (〜を学ぶ) lernigi (〜を学ばせる)
○ trinki〜(〜を飲む) trinkigi(〜を飲ませる)

(7) 私は英語を学ばねばならなかった。
 (↑ 人は私に英語を学ばせた:直訳)
(8) 私は彼女にビールをたくさん飲ませるつもりはない。

☆★☆ <−ig−>と<−ig^−>のまとめ ☆★☆

☆自動詞の語根+<−ig−>+<−i>=他動詞

dau~ri(続く) dau~rigi(〜を続ける)

☆他動詞の語根+<ig^> +<−i>=自動詞

fermi(〜を閉める) fermig^i(閉まる)

☆名詞;形容詞の語根+<−ig−>+<−i>=他動詞

amiko(友達) amikigi(〜を友達にする)
alta(高い) altigi(〜を高くする)

☆名詞;形容詞の語根+<ig^> +<−i>=自動詞

amiko(友達) amikig^i(友達になる)
alta(高い) altig^i(高くなる)

☆状態を表わす動詞の語根+<ig^> +<−i>=動作を表わす自動詞

stari(立っている)starig^i(立上がる)

☆他動詞+<−ig−>+<−i>=強制、使役

lerni(〜を学ぶ) lernigi(〜を学ばせる)

☆参考☆ 英語では、動詞の多くが自動詞と他動詞の意味を合せもちます。例えば<open>には、他動詞<開ける>と自動詞<開く>という2つの意味があります。日本語は、自動詞と他動詞を区別します。日本語とエスペラントの類似点に注目して下さい。

○ I opened the door.  Mi malfermis la pordon. 私はドアを開けた。

○ The door opened.   La pordo malfermig^is.  ドアが開いた。

<問題27>********************************************************

 ヒントを参考に次の単語の意味を考えて下さい。(辞書を引いてもかまいません)

1. pasigi   (pasi 過ぎる<自動詞>)
2. haltigi   (halti 止る<自動詞>)
3. perdig^i  (perdi 〜を失う;なくす<他動詞>)
4. s^ang^ig^i (s^ang^i 変える<他動詞>)
5. acidig^i  (acida すっぱい)
6. acidigi
7. varmig^i  (varma あたたかい)
8. varmigi
9. komprenigi (kompreni 〜を理解する<他動詞>)

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第12課:正答例

         ☆★☆ 正答例 第12課 ☆★☆

<問題26>********************************************************

1. amikino, 友達(女性)、ガールフレンド
  amikeco 友情
2. larg^ega 広大な、広漠たる
3. lageto 池
4. laboristo 労働者
5. laborejo  職場、仕事場
6. laborema  働き者の、勤勉な、仕事好きな
7. kvarono 4分の1
8. duoble 2倍に
9. triopo トリオ、3人組
10. legaj^o 読み物
11. instruado 教育
12. registaro 政府
13. pluvero 雨粒
14. skribilo 筆記具
15. inkujo インク容れ、インク壷
16. junulo 青年
  junulino 若い女性、ギャル
17. familiano 家族の一員
18. kokido ひよこ
19. mang^ebla fungo 食用茸
20. portebla komputilo ポータブル(ラップトップ)・コンピューター
21. kuirebla vegetaj^o 料理できる野菜
22. lerninda lingvo 学ぶ価値がある言語
23. lernenda leciono 必須科目、受けるに値する授業
24. mas^inac^o ぽんこつマシン
25. anarkiismo 無政府主義、アナーキズム

<問題27>********************************************************

1. pasigi 過ごす、通す
2. haltigi 止める
3. perdig^i なくなる
4. s^ang^ig^i 変化する、変る
5. acidig^i すっぱくなる、酸味がつく
6. acidigi   すっぱくする、酸味をつける
7. varmig^i あたたかくなる、あたたまる
8. varmigi   あたたかくする、あたためる
9. komprenigi 理解させる、わからせる

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