ネットワーカーに贈るエスペラント語入門講座 第17課

第17課(1):対格の用法(移動の方向)

17−0.はじめに

☆第16課では、単語と単語、文と文をつなぐ接続詞<kaj,au~,sed,nek,ke>を学習しました。

☆目的格を示す対格<−n>の用法は、第3課で学びましたが、対格には、文中の目的語を示すだけでなく、次のような役割があります。

(1)移動の方向を表わす
(2)数量や度数、日付を表わす

 この課では、移動の方法を表わす対格<−n>について学びます。この課はつぎの二つの部分に分れています。

第17課(1):移動の方向を表わす対格
第17課(2):移動を表わす対格のまとめ

17−1.移動の方向を表わす対格

17−1−0.復習:目的語をつくる場合

☆第3課で学んだように、対格語尾<-n>のついた単語は、動詞の目的語について、<〜を>という意味を持ちます。

☆対格語尾<−n>をとった名詞にかかる形容詞や、代名詞が、連動して対格語尾をとることに注意して下さい。なれるまで、形容詞や代名詞に対格語尾<−n>をつけるのを忘れることがあります。

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○ fama sciencisto   ○ lia amiko   (主格)
○ faman scienciston  ○ lian amikon  (対格)
○ famajn sciencistojn ○ liajn amikojn (対格:複数)

<単語>
fama(有名な) scienc-ist-o(科学者) lia(彼の) amiko(友達)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○有名な科学者(は)    ○彼の友人(は)  (主格)
○有名な科学者      ○彼の友人    (対格)
○有名な科学者たちを    ○彼の友人たちを  (対格:複数)

<問題38>********************************************************

 下線部に注意して、次の文を日本語にして下さい。

1. Mi havas libron. La libro trovig^as sur mia skribotablo.

2. Taro legas interesan libron.

3. Keiko donacis al mi siajn librojn.

<単語>
mi(私は) havi(持つ) libro(本) trov-ig^-i(ある)sur〜(〜の上に) mia(私の) skribo-tablo(机) Taro(人名:太郎)legi(読む) interesa(おもしろい) Keiko(人名:恵子)donaci(進呈する) al〜(〜に;〜へ) sia(自分の)

<問題39>********************************************************

 次のエスペラント文中の( )の中の単語の語尾を、必要があれば変えて下さい。

1. La kamparano havis 3 (filo) kaj 1 (filino).
2. Simono akiris (alta) (rango) kaj (bieno).
3. Tial Simono prenis (sia) (parto) el la havaj^o de la patro.

<単語>
la〜(冠詞:その〜) kamp-ar-an-o(農民) havi(持つ) 3(tri;三人の)filo(息子) …kaj〜(…と〜) 1(unu;一人の)fil-in-o(娘)Simono(人名:シモン) akiri(手に入れる)alta(高い) rango(地位) bieno(農場)tial(それで) preni(取る) sia(自分の)parto(分) el〜(〜から) hav-aj^-o(財産)…de〜(〜の…) patro(父親) ********************************************************************

17−1−1.移動の方向を表わす場合

☆対格語尾<−n>を伴った単語で、移動の方向を表わすことができます。

☆移動の方向を表わす対格の用法には、次の二つの場合があります。

[1] 7-1-1-1. <en, sur, sub>(〜の中、〜の上、〜の下)などの
       前置詞と共に用いる

[2] 7-1-1-2. 副詞(語尾が<-e>の単語)と共に用いる

17−1−1−1.前置詞と共に用いて

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(1) Mi kuris en la parko.
(2) Mi kuris en la parkon.

(3) Muso kuris sub la lito.
(4) Muso kuris sub la liton.

(5) Mi kuris al la parko.

(6) Muso kuris al la lito.

<単語>
kuri(走る) en〜(〜の中で) en 〜n(〜の中へ) al〜(〜へ)parko(公園)muso(ねずみ) sub〜(〜の下で)lito(ベッド) sub 〜n(〜の下へ)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆前置詞の後におかれる名詞に対格<−n>がつく形は、移動の方向<〜へ>を示しています。エスペラントの前置詞の後には、普通は主格(対格語尾<−n>がつかない形・そのまま主語<〜は>になれる)の形の単語を置くことを思いだして下さい。(第3課[3−1.]参照) ですから、上の(1)〜(4)の例文は<−n>がついているかどうかで、意味が変わるのです。

○ en la parko ○ 公園の中で
○ en la parkon ○ 公園の中へ

○ sub la lito ○ ベッドの下で
○ sub la liton ○ ベッドの下へ

(1) 私は、公園の 中で 走った。
(2) 私は、公園の(外から)中へ 走った。
(3) ねずみがベッドの 下で 走った。
(4) ねずみがベッドの 下へ 走り込んだ。

☆(5)(6)の例文には、<al>という前置詞が使われています。<al>はそれ自身移動の方向<〜へ;〜に>を示しているので、移動の方向を示す対格は必要ありません。

○ al la parko 公園へ    × al la parkon 公園へへ

○ al la lito ベッドへ    × al la liton ベッドへへ

(5) 私は、公園へ(向って)走った。
(6) ねずみがベッドへ(向って)走った。

17−1−1−2.副詞につけて

☆この移動を表わす対格は、副詞(<-e>の語尾を持つ単語;動詞や形容詞、副詞自身を修飾する)につけることもできます。

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(7) Li falis teren.

(8) Vi rajtas iri hejmen.

(9) S^i iris sur la s^tuparo supren.

<単語>
li(彼は)fali(倒れる) tere(地面で) teren(地面へ)vi(あなたは)rajti〜(〜してよい) iri(行く) hejme(家で)hejmen(家へ) s^tup-ar-o(階段)sur(<接触して>上で) supre(<離れて>上で) supren(上へ)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆上の例のように、場所を表わす副詞に対格<−n>を付けて移動の方向の意味を持たすことができます。

○ tere ○地面で
○ teren ○地面

○ supre ○上で
○ supren ○上

☆(7)(8)(9)は、それぞれ前置詞<sur,al><〜の上に,〜へ>を用いて、次のように言っても意味は変りません。

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(7)’ Li falis sur la teron.

(8)’ Vi rajtas iri al la hejmo.

(9)’ S^i iris sur la s^tuparo al la supro.

<単語>
sur(〜の上で)tero(地面)sur 〜n(〜の上に) hejmo(家庭)supro(上)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆<副詞+n>は、<前置詞+(冠詞)+名詞+n>と同じ意味を持ちます。ただし、前置詞<al>は、それ自体方向を表わす意味を持っているので、名詞に対格語尾<−n>をつけないことは、すでに述べた通りです。

○ teren = sur la teron 地面へ

○ hejmen = al la hejmo 家へ

○ supren = al la supro 上へ

(7) 彼は地面に(向って)倒れた。
(8) 君は家へ帰ってよい。
(9) 彼女は階段を(上に)登った。


第17課(2):移動を表わす対格のまとめ

☆★☆ 移動の方向を表わす対格のまとめ ☆★☆

tero (地面)      名詞 sur tero (地面<の上>で) 前置詞+名詞 sur teron (地面<の上>へ) 前置詞+名詞+対格語尾 tere (地面で)     副詞 teren (地面へ)     副詞+対格語尾

<問題40>********************************************************

 下線部の違いに注意して次のエスペラント文を日本語にして下さい。

1. Birdo flugis en la domo.
  Birdo flugis en la domon.
  Bildo flugis al la domo.

2. Ili nag^is en la maro.
  Ili plong^is en la maron.

3. Vi vidas grandan konstruaj^on dekstre.
  Ni devas iri dekstren.

4. Esperanto-movado ne estis vigla antau~e.
  Sed nun g^i rapide progresas antau~en.

<単語>
birdo(鳥) flugi(飛ぶ) en〜(〜の中で) domo(家)nag^i(泳ぐ) maro(海) plong^i(飛込む) vidi(みる)granda(大きな) konstru-aj^-o(建物) dekstre(右に)devi〜(〜ねばならぬ) iri(行く) Esperanto-movado(エスペラント運動)vigla(活発な) antau~e(以前は) sed(しかし) nun(今や) rapide(急速に) progresi(発展する) antau~en(前方へ)

<問題41>********************************************************

 エスペラント作文

1.私は、(libro)を 私のポケット(pos^o)(の中に)に入れ(meti)た。

2.私は、私のポケットの中に 本を持ってい(havi)る。

3.私は (hejme)へ 帰り(iri)たい(voli)。

4.子供(infano)たちが 家で 遊んで(ludi)いた。

********************************************************************

第17課:正答例

         ☆★☆ 正答例 第17課 ☆★☆

<問題38>********************************************************

1. 私は本を持っています。 その本は私の机の上にあります。
2. タロウは面白い本を読んでいます。
3. ケイコは自分の本を私にくれました。

<問題39>********************************************************

1. La kamparano havis 3 (filojn) kaj 1 (filinon).
2. Simono akiris (altan) (rangon) kaj (bienon).
3. Tial Simono prenis (sian) (parton) el la havaj^o de la patro.

<問題40>********************************************************

1. 鳥は家の中で飛んでいた。
  鳥は家の中へ飛んでいった。
  鳥は家の方へ飛んでいった。

2. 彼らは海で泳いだ。
  彼らは海へ飛び込んだ。

3. 右手に大きな建物があります。(あなたは右手に大きな建物を見ます)
  私達は右の方に行かねばならない。

4. エスペラント運動は以前は活発ではありませんでした。
  しかし今やそれは急速に前へ発展しています。

<問題41>********************************************************

1. Mi metis libron en mian pos^on.
2. Mi havas libron en mia pos^o.
3. Mi volas iri hejmen.
  Mi volas iri al la hejmo.

4. Infanoj ludis en la hejmo.
  Infanoj ludis hejme.

********************************************************************


目次へ戻る 次の課へ