ネットワーカーに贈るエスペラント語入門講座 第18課

第18課(1):期間・回数の対格

18−0.はじめに

☆第17課 移動の方向を表わす対格<−n>を学びました。第18課では数量や度数、日付などを表わす対格について勉強します。

☆この課はつぎの3つに分れています。

第18課(1):期間・回数の対格
第18課(2):数量・日付の対格
第18課(3):融通前置詞・挨拶

18−1.数量や度数を表わす場合

☆対格語尾<−n>を用いて、次のような事柄を表わすことができます。

18-1-1. 時間や期間の長さ
18-1-2. 回数
18-1-3. 数量
18-1-4. 日付
18-1-5. 相応しい前置詞がみつからない場合

18−1−1.時間や期間の長さ

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(1) Mi lernas Esperanton jam 3 monatojn.

(2) Meznombre homoj vivas 75 jarojn.

<単語>
mi(私は)lerni(学ぶ) jam(もう) 3(tri) monato(月)dum〜(〜の間) mez-nombre(平均して) homo(人間)75(sepdek kvin) vivi(生きる) jaro(年)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆<jarcento, jaro, monato, tago, horo, minuto, sekundo>(世紀、年、月、日、時間、分、秒)などの名詞に対格語尾<−n>をつけて期間を表現することができます。

○ 3 monatoj ○ 3ヵ月(は)
○ 3 monatojn ○ 3ヵ月

○ 75 jaroj ○ 75年(は)
○ 75 jarojn ○ 75年

☆同じ事を、前置詞<dum〜>(〜の間)を用いても表現できます。前置詞<dum〜>を使う場合は、対格語尾<−n>がつかない点に注意して下さい。

○ dum 3 monatoj ○ 3ヵ月間
× dum 3 monatojn × 3ヵ月間の間

○ dum 75 jaroj ○ 75年間
× dum 75 jarojn × 75年間の間

(1)' Mi lernas Esperanton jam dum 3 monatoj.

(2)' Meznombre homoj vivas dum 75 jaroj.

(1) 私はもう、3ヵ月もエスペラントをやっている。
(2) 平均すると、人生は75年だ。

☆次の例を考えると、期間を表わす対格語尾<−n>の必要性がわかります。

×(※1) Mi lernas Esperanton 3 monatoj.

上の(※1)の例文で、前置詞<dum>も対格語尾<−n>もつかない <3 monatoj>は、文の中で主格<〜は;〜が>として働きます。次の例文中の<3 monatoj>の役割に注意して下さい。

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

3 monatoj rapide pasis.

<単語>rapide(速く) pasi(過ぎる)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○ 3ヵ月が、またたく間に過ぎた。

 そこで、(※1)の例文を強いて訳すならば、次のような不合理な意味になることがわかります。

×(※1) 私は<3ヵ月が>エスペラントを学んだ。

対格語尾<−n>や前置詞<dum>が、<〜の間;〜にわたって>という意味で、<3 monatoj>の文の中での繋がり方を決めているのです。

☆主格(対格語尾<−n>がつかない元の形の名詞)が2つ繋がって意味を持つのは、<esti, farig^i>(〜が…である、〜が…になる)などのような動詞<A=B, A≦B, A→B>が使われている場合です。必要があれば、第2課、第3課を参照して下さい。

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○ Mi estas instruisto.
○ Mi farig^is instruisto.

<単語> mi(私は) instru-ist-o(教師)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○ 私は教師です。   (A=B; A<B)
○ 私は教師になった。 (A→B)

18−1−2.回数

☆対格語尾<−n>で、回数や度数を表わすことができます。

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(3) En tiu c^i jaro mi vizitis lin 3 fojojn.

(4) Mi vidis la filmon la unuan fojon.

<単語>
en〜(〜のうちに) tiu c^i(この) viziti(訪問する) 3(tri)fojo(回) filmo(映画) unua(最初の)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○ 3 fojoj ○ 3回(が)
○ 3 fojojn ○ 3回(にわたって

○ unua fojo  ○ 一度目(が)
○ unuan fojonはじめて

(3) 今年は、彼の所に3回行った。
(4) 僕は初めてその映画を観た。

☆時間や期間を表わす対格語尾<−n>の場合と同じように;

×(※2) Mi vizitis lin 3 fojoj.

とすると、(※2)の例文中の、前置詞も対格語尾<−n>もつかない <3 fojoj>が、主格<〜が、〜は>になり、不合理な意味になってしまいます。

×(※2) 僕は<3回が>彼を訪れた。

 日本語訳では<3回>が、文の中で独立しているような印象を受けますが、これは<3回も><3回にわたって>という表現の省略形と考えれば、エスペラント文で対格語尾<−n>がつく理由がわかると思います。


第18課(2):数量・日付の対格

18−1−3.数量

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(5) La ponto estas 100 metrojn longa.

(6) La hundo estas 20 kilogramojn peza.

<単語>
ponto(橋) metro(メートル) 100(cent;百) longa(長い)hundo(犬)20(dudek;二十) kilogramo(キログラム)peza(重い)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆<metro, centimetro, kilogramo, gramo>(メートル、センチメートル、キログラム、グラム>などの単位を表わす名詞に対格語尾<−n>をつけて、長さや重さなどの数量を表わすことができます。

○ 100 metroj       ○ 100メートル(が)
○ 100 metrojn (longa)  ○ 100メートル(の長さ

○ 20 kilogramoj      ○ 20キログラム(が)
○ 20 kilogramojn (peza) ○ 20キログラム(の重さ

(5) その橋は百メートルの長さだ。
(6) その犬は20キログラムの重さだ。

☆次の例文の違いを較べて下さい。

○ La ponto estas        longa.
○ La ponto estas 100 metrojn longa.

×(※3) La ponto estas 100 metroj longa.

○ La hundo estas         peza.
○ La hundo estas 20 kilogramojn peza.

×(※4) La hundo estas 20 kilogramoj peza.

○ その橋は           長い。
○ その橋は100メートルにわたって長い。(直訳)

×(※3) その橋は<100メートルが>長い。

○ その犬は       重い。
○ その犬は20キログラムも重い。

×(※4) その犬は<20キログラムが>重い。 

(※3)(※4)の例文の訳が不合理になる理由は、期間や回数を表わす対格語尾<−n>の場合と同じです。(5)(6)の例では、対格語尾<−n>が<〜にわたって;〜も>という意味で、<100 metroj, 20 kilogramoj>の文の中での繋がり方を決めているのです。

18−1−4.日付

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(7) Mia frato naskig^is la okan (tagon) de decembro.

(8) Taro ekiros al Afriko la 22an (tagon) de januaro.

( )は省略可能

<単語>
mia(私の) frato(弟) nask-ig^-i(生れる) oka(8番目の)tago(日)…de〜(〜の…) decembro(12月)Taro(人名:太郎)ekiri(出発する) al〜(〜へ) Afriko(アフリカ)22a(22番目の) januaro(1月)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆序数詞(順番を表わす単語)に対格語尾<−n>をつけて、日付を表わすことができます。(序数詞については、あとの課で詳しく学習します)

○ la oka (tago) de decembro ○12月8日(が)
○ la okan (tagon) de decembro ○12月8日

○ la 22a (tago) de januaro  ○1月22日(が)
○ la 22an (tagon) de januaro  ○1月22日

(7) 私の弟は12月8日生れだ。
(8) 太郎は1月22日にアフリカに出発します。

☆序数詞につけた対格語尾<−n>は、日本語の助詞<〜に>に対応していることに注意して下さい。対格語尾が必要な理由は、期間、数量、回数を表わす対格語尾<−n>の場合と同様です。次の例を見て下さい。

×(※5) Taro ekiros al Afriko la 22a de januaro.

×(※5) 太郎は、<1月22日が>アフリカに出発する。

18−1−5.ふさわしい前置詞が見つからない場合

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(9) Lia verko meritas premion.

(10) Mi ridis lian malkurag^on.

<単語>
lia(彼の)verko(作品) meriti(〜に値する)premio(賞) mi(私は) ridi(笑う) mal-kurag^o(臆病)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆対格語尾<−n>は、ふさわしい前置詞が見つからない場合や、思いだせない場合に、必要な前置詞の代りに用いることができます。

☆(9)の例文では、<meriti>と<premio>を結ぶためのふさわしい前置詞が思い当らないので、<premio>に対格語尾<−n>をつけて<meriti>kと意味を繋いでいます。

○ meriti premio  ○ 値する   賞
○ meriti premion  ○ 賞  値する

○ ridi malkurag^o ○ 笑う   臆病
○ ridi malkurag^on ○ 臆病  笑う

(9) 彼の作品は賞に値する。
(10) 私は彼の臆病を笑った。

☆ただし、この前置詞の代用をする対格語尾は、最小限にとどめないと文の意味が解りづらくなります。

☆(9)(10)の例文に、対格語尾<−n>がついていないとしたら;

× Lia verko meritas premio.
× Mi ridis lia malkurag^o.

× 彼の作品は<賞は>値する。
× 私は彼の<臆病が>笑った。

 という不合理な意味になってしまいます。<premio>や<malkurag^o>が文の他の単語と正しく繋がらなくなってしまうのです。

☆★☆ 対格語尾<-n>のまとめ ☆★☆
 
○ 動詞の目的語 Mi havas libron. 本を
○ 移動の方向 en la parkon
hejmen
公園の中へ
家へ
○ 期間・数量・度数 lerni 3 monatojn
viziti 3 fojojn
100 metrojn longa
3ヵ月間
3度
100メートルも
○ 適する前置詞がない場合 meriti premion 賞に値する
<問題42>********************************************************

 下線部に注意して次のエスペラント文を日本語にして下さい。

1. Mi kondukis au~ton tutan nokton.

2. Vi devas voc^olegi la tekston almenau~ 1 fojon c^iutage.

3. Li estas 170 centimetrojn alta.

4. Ivan svingis la falc^ilon 1 au~ 2 fojojn.

5. Mi devos pasigi 1 semajnon c^i tie.

<単語>
konduki(運転する) au~to(自動車) tuta(全部の) nokto(夜)devi〜(〜しなければならぬ) voc^o-legi(音読する) teksto(文章)almenau~(少なくとも)1(unu) fojo(回) c^iu-tage(毎日)170(cent sepdek) centimetro(センチメートル) alta(<背が>高い)Ivan(イワン) svingi(振る)falc^-il-o(鎌)au~(あるいは)2(du) fojo(回)devi〜(〜ねばならぬ)pas-ig-i(過す) semajno(週)c^i tie(ここで)

<問題43>********************************************************

 エスペラント作文

1.私は 毎日(c^iutage) 8時間(8 horoj) 働く(labori)。

2.私は その(la) 映画(filmo)を 3回(3 fojoj) (spekti)た。

3.私の体重は 50キログラムです。(私は50キログラムの重さです)
  ((6)の例文を参考にして)

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第18課(3):融通前置詞・挨拶

18−2.融通前置詞<je>

☆第18課(1)(2)で挙げた(3)〜(10)の例文は融通前置詞(どの前置詞を使うべきかわからないときに使う、トランプのジョーカーのようなもの)<je>を用いて表現することもできます。

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(4)' Mi vidis la filmon je la unua fojo.

(5)' La ponto estas longa je 100 metroj.

(8)' Taro ekiros al Afriko je la 22a (tago) de januaro.

(9)' Lia verko meritas je premio.

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆いずれも、対格語尾<−n>がつかない点に注意して下さい。

× je la unuan fojon        × 1度めにに

× je 100 metrojn         × 100メートルもも

× je la 22an (tagon) de januraro × 1月22日にに

× je premion            × 賞にに

☆融通前置詞<je>は、ふさわしい前置詞が見つからない場合に用いるものですが、次の例文のように、時刻を表現する前置詞としての用法が定着しています。

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(11) Hierau~ mi ekdormis je la 11a (horo).

(12) Morgau~ mi venos c^i tien je la 7a (horo).
                 ( )は省略可能

<単語>
hierau~(昨日) mi(私は) ek-dormi(寝つく) je〜(〜時に) la 11a(la dekunua;11番目の)horo(時間)morgau~(明日) veni(来る) c^i tien(ここへ)la 7a(la sepa;7番目の)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○   la 11a (horo)   ○ 11時
je la 11a (horo)   ○ 11時
○   la 7a (horo)    ○  7時
je la 7a (horo)    ○  7時

(11) 昨日は11時に寝ました。
(12) 明日は7時にここへまいります。

18−3.挨拶の言葉

☆エスペラントの挨拶の言葉には、次のようなものがあります。

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(13) Saluton.
(14) Bonan matenon.
(15) Bonan tagon.
(16) Bonan vesperon.
(17) Bonan nokton.
(18) Dankon.
(19) G^is (la) revido. ( )は省略可能

<単語>
saluto(あいさつ) bona(よい) mateno(朝、午前中) tago(日、日中) vespero(夕方、晩) nokto(夜) danko(感謝)g^is〜(〜まで) re-vido(再会)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(13) やあ。
(14) おはよう。
(15) こんにちは。
(16) こんばんは。
(17) おやすみなさい。
(18) ありがとう。
(19) それではまた:さようなら。

☆(13)から、(18)まですべてに、対格語尾がついていることに注目して下さい。これは、そもそもの意味が:

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○ (Mi deziras al vi) bonan matenon.

<単語>mi(私は) deziri(望む) al〜(〜に) vi(あなた)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 上の例文の、( )の部分が省略されたものと考えることができます。

○ あなたがよい朝をむかえますように

<問題44>********************************************************

 次のエスペラント文の手紙を日本語にして下さい。

Numazu, la 8an de februaro, 1989  
Kara amiko,
mi tre g^ojas, ke vi eklernis Esperanton. Esperanto jam vivas pli ol 100 jarojn. G^i nun estas uzata vaste en la mondo. G^i estas neu~trala lingvo, kaj per g^i ni povas kreskigi amikecon inter popolanoj sur la tuta terglobo. Mi esperas, ke vi baldau~ farig^os lerta esperantisto, kaj utiligos la lingvon por korespondado au~ por vojag^o tra la mondo.
Sincere via,  
Taro   
<単語> Numazu(地名:沼津) februaro(2月) kara(親愛な) amiko(友達)tre(とても) g^oji(うれしい) ke〜(〜ということが) vi(あなたが)ek-lerni(学び始める) jam(すでに) vivi(存在する) pli ol〜(〜以上)jaro(年) g^i(それは) nun(今や) esti uzata(使われている) vaste(広く)en〜(〜のなかで) mondo(世界) neu~trala(中立の) lingvo(言語)kaj(そして) per〜(〜で) ni(私たちは) povi〜(〜できる) kresk-ig-i(育てる) amik-ec-o(友情) inter〜(〜の間で) popol-an-oj(人々) sur〜(〜のうえ) tuta(全) ter-globo(地球)esperi〜(〜を望む) baldau~(間もなく) far-ig^-i〜(〜になる)lerta(熟達した) util-ig-i(役立てる) por〜(〜のために)korespond-ad-o(文通) au~(あるいは) vojag^o(旅行) tra〜(〜を通って) sincere via(親愛なあなたの;敬具) Taro(人名:太郎)
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第18課:正答例

         ☆★☆ 正答例 第18課 ☆★☆

<問題42>********************************************************

1. 私は自動車を夜通し運転しました。
2. あなたは毎日少なくとも1回は文章を音読しなければなりません。
3. 彼は背の高さが 170 センチあります。
4. イワンは1、2回鎌を振りました。
5. 私はここで1週間過ごさなければならないでしょう。
                             など。
<問題43>********************************************************

1.Mi laboras 8 horojn c^iutage.
 Mi laboras dum 8 horoj c^iutage.
2.Mi spektis la filmon 3 fojojn.
3.Mi estas 50 kilogramojn peza.

<問題44>********************************************************
(訳例)
                                        沼津にて 1989年2月8日  
 親愛なる友よ、
 私は君がエスペラントを学び始めたのでとても喜んでいます。エスペラントはもう百年も存在しています。それは今や世界中で広く使われています。それは中立的な言語で、それを使って私たちは全地球上の人々の間に友情を育てることができるのです。私は、君がまもなく熟達したエスペランチストになられて、この言語を文通のために、あるいは世界周遊のために、役立てられることを望みます。
                                                敬具                                                        太郎
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