ネットワーカーに贈るエスペラント語入門講座 第3課

第3課(1):一般動詞・対格

3−0.はじめに

☆第2課では<esti>を用いた文を学習しました。<esti>は英語のbe動詞にあたる単語でした。しかし、英語のbe動詞と違って、人称によって変化させる必要がありませんでした。

☆第3課では、対格(目的格)をとる動詞を使った文と、名詞と形容詞の複数形を学びます。例文は必ず音読して下さい。

☆この課はつぎの2つに分れています。

第3課(1):一般動詞・対格
第3課(2):複数形

☆文法事項を、<例文>→<単語の意味>→<解説>→<訳例>の順に説明しています。単語の意味や解説を読んだ後で、ご自分でも例文の意味を考えてみて下さい。

3−1.<estas>以外の動詞を使った文

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(1) Mi estas esperantisto.
(2) Esperanto s^ajnas interesa.
(3) Vi farig^as esperantisto.
(4) Bela birdo kantas.
(5) Hundo kuras.
(6) Rivero fluas.
(7) Vi lernas Esperanton.
(8) Mi havas interesan libron.

<単語> mi(私は)esperantisto (エスペランティスト:エスペラントを実用する人) s^ajnas(思われる:見える) interesa(面白い) vi(あなたは)farig^as〜(〜 になる)bela(美しい) birdo(鳥)kantas(歌う)hundo(犬) kuras(走る) rivero(川) fluas(流れる)lernas(学ぶ) Esperanton(エスペラントを)havas(持っている) interesan libron(面白い本を)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆上の例文の中の<estas, s^ajnas, farig^as, kantas, kuras, fluas, lernas, havas>は動詞(動作や状態を表わす言葉;どうする・どうである)です。

☆動詞は文の「心臓」です。主語(動作や状態の主体;誰が・何が)は文の「頭」に当ります。ほとんどの場合、文には「頭」と「心臓」、つまり主語と動詞が一つずつ必要です。

☆これらの動詞の語尾が<−as>で終っているのは、この動詞が現在形(今の動作や状態、事実を表わす形)として用いられていることを示しています。

☆辞書に出ている形はそれぞれ<esti, s^ajni, farig^i, kanti, kuri, flui, lerni, havi>と、語尾の<−as>を<−i>に変えた形です。この形を動詞の不定形と言います。
 
不定形 現在形
kanti   歌う
kuri   走る
flui   流れる
kantas   歌う(事実)、歌っている
kuras    走る(事実)、走っている
fluas    流れる(事実)、流れている
☆事実や、現在の動作・状態を表現する時は、動詞の現在形を用います。

☆(1)の例文は第1課で学習しました。<esti>を使って、2つの単語をつないでいます。<esti>は、数学の等号(=)や包含関係を表す記号と似た働きをしています。(Mi=esperantisto;Mi≦esperantisto)A=BのBに当る語句を補語といいます。

(1) 私はエスペランティストだ。

☆この文のパターン(A=B;A≦B)をとる動詞は、他に<s^ajnas>(〜のように見える、思われる)や<farig^as>(〜になる)などがあります。

(2) エスペラントはおもしろそうだ。(Esperanto := interesa)

(3) 君はエスペランティストになる。(Vi → esperantisto)

☆(4)の例文は、主語<誰が:bela birdo>と動詞<どうする:kantas>だけで意味が完結しています。この他に何も単語がついていなくとも、意味が通ります。(5)(6)も同様です。

(4) 美しい鳥が鳴く。
(5) 犬が走る。
(6) 川は流れる。

☆(7)の例文中の<lernas>(<〜を>学ぶ)は、<estas>とは働きが異なっています。<lernas>は、前後の2つの単語に対して、(=)や(<)の意味を持っていません。(Mi≠Esperanto)<Mi>は、<lernas>という動作の主体(主語)、<Esperanto>はその動作の及ぶもの(目的語)です。目的語には<−n>をつけます。エスペラントでは<−n>のついた単語を「対格になっている」といいます。また、<−n>を対格語尾と呼びます。対格で、文中での単語の役割を明確にしています。

○ Mi estas esperantisto. (Mi = esperantisto) ○ Mi lernas Esperanton. (Mi ≠ Esperanto)

☆(7)の例文では、<vi>(あなたは)<lernas>(<〜を>学ぶ)という2つの情報(主語と動詞)だけでなく、<何を>勉強しているのかと云う情報が必要です。<Esperanton>と、対格語尾<−n>が付いた単語が加わって、初めてこの文の意味が完結するのです。

○ lernas 学ぶ。 誰が? 何を?
○ Vi lernas Esperanton. あなたが エスペラントを 学ぶ。

☆全ての場合にあてはまるわけではありませんが、当面、対格は日本語の助詞<〜を>にあたると考えて結構です。たとえば:

○ あなた   エスペラント   学ぶ

(7) あなた  エスペラント  学ぶ。

 と、助詞<〜は、〜を>をつけて、始めて単語と単語の関係が明らかになって文とよべるのです。エスペラントでは、対格語尾<-n>のつかない単語(名詞や代名詞)は、そのまま主語<〜は;〜が>になれます。対格語尾のついた名詞や代名詞は、目的格<〜を>になります。

☆(8)の例文では、<libron>という対格(目的格)の名詞にかかる形容詞(様子を表わす言葉)<interesan>が、連動して対格語尾<−n>をとっています。エスペラントでは、名詞だけでなく、その名詞を修飾する(詳しく説明する)形容詞も連動して対格になります。これは、形容詞がどの名詞を修飾するか明らかにするためです。
 
libro    本(は)
libron    本 を 
○ interesa libro 面白い本(は)
○ interesan libron 面白い本 
(8) 私は面白い本を持っている。

☆例えば(8)の例文では、

○ Mi havas libron interesan.

 と形容詞と名詞の位置を交換しても意味は変りません。ただし、特に必要のある場合(強調したり口調をととのえる場合)以外、形容詞は名詞の前に置くのが普通です。

☆目的語に対格語尾<−n>をつけるので、エスペラントの文の単語の配置は、日本語に似て比較的自由です。例えば:

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(9) Kato mang^as raton.
(10) Raton mang^as kato.
(11) Mang^as kato raton.

<単語>
kato(猫) mang^as(食べる) rato(ねずみ)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆上の(9)(10)(11)の例文は、多少ニュアンスが違いますが(強調される単語が変る)、意味の本質は同じです。(9)の形が普通ですが、必要に応じて、それ以外の形も使うことができます。

(9) 猫はねずみを食べる。
(10) ねずみは(=ねずみを)猫が食べる。
(11) 食べるんだ、猫がねずみを。

☆参考☆ もし英語で語順を変えると;
○ Cats eat rats.
○ Rats eat cats. (ねずみが猫を食べる?!)

☆もっとも普通の文の形が次の形であることを憶えておいて下さい。また、日本語との違いに注意して下さい。

○エスペラントの場合
主語(〜は、が) +動詞(〜する) +目的語(〜を)
<Kato>       <mang^as>     <raton>.
○日本語の場合
主語(〜は、が) +目的語(〜を) +動詞(〜する)
<猫が>      <ねずみを>   <食べる>。

<問題4>**********************************************************

 次の単語を使って、上で説明した(7)(8)のように、目的語をもつパターンの文を5つ以上作って下さい。
mi(私は) vi(あなたは) elefanto(象) leono(ライオン)mang^as(食べる) trinkas(飲む) studas(研究する)biero(ビール)viando(肉) herbo(草)c^okolado(チョコレート) Esperanto ********************************************************************


第3課(2):複数形

3−2.複数形

☆エスペラントでは、英語などと同様に、ものが1つであるか2つ以上であるかを単語の形で区別します。

例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(12) Taro kaj Ken estas amikoj.
(13) Taro kaj Ken estas intimaj amikoj.
(14) Elefanto kaj hipopotamo estas grandaj.
(15) Mi havas librojn.
(16) Mi havas interesajn librojn.

<単語>
Taro(人名:太郎)〜kaj…(〜と…)Ken(人名:健) amiko(友達)intima(親しい)elefanto(象) hipopotamo(カバ)granda(大きい)mi(私は) havas(持っている)libro(本)interesa(おもしろい)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

☆エスペラントの複数形は名詞に複数語尾<−j>をつけます。例外はありません。ただし、物質名詞<akvo(水)sukero(砂糖)oro(金)...>、抽象名詞<amo(愛)beleco(美)...>などのように、切れ目や境目の明らかでない名詞には複数語尾<−j>をつける必要はありません。

○ amiko 友達(は)      〔一人の場合〕
○ amikoj 友達たち(は)    〔二人以上の場合〕

○ akvo 水
× akvoj 水たち?

☆(12)の例では、<Taro kaj Ken>(二人)が文の主語になっています。そこで、<amikoj>と複数形が使われているのです。

(12) 太郎と健は友達だ。

☆(13)の例の<intimaj amikoj>のように、複数名詞にかかる形容詞も連動して複数語尾<−j>をつけます。これは、文の中で形容詞がかかる単語を明らかにするためです。

○ intima amiko 親しい友達(は)    〔一人の場合〕
○ intimaj amikoj 親しい友達たち(は)  〔二人以上の場合〕

(13) 太郎と健は親しい友達だ。

☆(14)の例では、主語<Elefanto kaj hipopotamo>(複数:2頭いる)に連動して、述語の形容詞<grandaj>も複数形となっています。慣れるまで複数語尾<−j>をつけ忘れる事が多いので注意してください。

(14) 象とカバは大きい。

☆(15)の例では、<libro>が、複数語尾<−j>と対格語尾<−n>をともなっています。

○ libro 本(は)     (一冊)
○ libron 本 を      (一冊)
○ libroj 本(は)     (二冊以上)
○ librojn 本 を      (二冊以上)

☆(16)では<libro>と<interesa>が連動して、複数語尾<−j>と対格語尾<−n>をとっています。

○ interesa libro    おもしろい本(は)  (一冊)
○ interesan libron    おもしろい本 を   (一冊)
○ interesaj libroj    おもしろい本(は)  (二冊以上)
○ interesajn librojn   おもしろい本 を   (二冊以上)

(15) 私は本を持っている。
(16) 私はおもしろい本を持っている。

☆名詞の複数形は日本語にはありません。エスペラントとの違いに注意して下さい。

☆★☆ 対格と複数のまとめ ☆★☆
 
Bela knabino kantas. (単数)
Knabinoj  amas c^okoladon. (複数)
Belaj knabinoj kantas. (形容詞+複数)
Ni amas belajn knabinojn. (形容詞+複数の対格) 
            
<単語>
bela(美しい) knabino(少女) kantas(歌っている) amas(好きだ)c^okolado(チョコレート) ni(私達は)

<意味>
○ (一人の)美しい少女が歌っている。
○ 女の子(たち)はチョコレートが好きだ。
○ 美しい少女(たち)が歌っている。
○ 僕らは美しい少女(たち)が好きだ。

<問題5>**********************************************************

 <対格と複数のまとめ>にならって、次の語句をそれぞれ、(1)複数形に、(2)対格(目的格)に、(3)複数形の対格にして下さい。

1. longa krajono
2. sag^a infano
3. talenta esperantisto

<単語>
longa(長い)krajono(鉛筆)sag^a(賢い) infano(子供)talenta(才能ある)esperantisto(エスペランティスト)

<問題6 >*********************************************************

 複数形と対格(目的格)に注意して、つぎのエスペラント文の( )の中の単語をふさわしい形にしてください。また、訂正した文を日本語にして下さい。

1. Ni estas (esperantisto).
2. Papero kaj sukero estas (blanka).
3. Taro kaj Ken estas (bona knabo).
4. Mi parolas (Esperanto).
5. Vi havas 1 (bela floro).
6. Taro havas 2 (sag^a hundo).

<単語>
ni(私達は<複数>) esperantisto(エスペランティスト) papero(紙) 〜kaj…(〜と…)sukero(砂糖) blanka(白い) Taro(人名:太郎)Ken(人名:健) bona(良い) knabo(少年) mi(私は) parolas(話す)vi(あなたは) havas(持っている;飼っている)1(unu;1本の)bela(美しい) floro(花)2(du;2匹の) sag^a(賢い) hundo(犬) ********************************************************************


第3課:正答例

         ☆★☆ 正答例 第3課 ☆★☆

<問題4>**********************************************************

(1) Mi mang^as c^okoladon.
(2) Leono mang^as viandon.
(3) Elefanto mang^as herbon.
(4) Vi trinkas bieron.
(5) Mi studas Esperanton.
(6) Vi studas Esperanton.
(7) Leono mang^as elefanton.
(8) Esperanton mi studas. など。

<問題5>**********************************************************
 
1.  longa krajono 
(1)複数形 longaj krajonoj 
(2)対格(目的格) longan krajonon 
(3)複数形の対格 longajn krajonojn 
2. sag^a infano
(1)複数形 sag^aj infanoj
(2)対格(目的格) sag^an infanon
(3)複数形の対格 sag^ajn infanojn
3. talenta  esperantisto
(1)複数形 talentaj esperantistoj
(2)対格(目的格) talentan  esperantiston
(3)複数形の対格 talentajn  esperantistojn
<問題6 >*********************************************************

1. Ni estas (esperantistoj).
2. Papero kaj sukero estas (blankaj).
3. Taro kaj Ken estas (bonaj knaboj).
4. Mi parolas (Esperanton).
5. Vi havas 1 (belan floron).
6. Taro havas 2 (sag^ajn hundojn).

<訳例>

1.私たちはエスペランティストです。
2.紙と砂糖は白い色をしています。
3.太郎と健はいい子たちです。
4.私はエスペラントを話します。
5.あなたは美しい花を1本持っています。
6.太郎は賢い犬を2頭飼っています。


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