第7課(1):冠詞・前置詞
7−0.はじめに
☆第6課では、副詞と品詞転換を学びました。単語の語尾を<−a><−o><−e><−i>に付替えることで、合理的な範囲で一つの語根から形容詞・名詞・副詞・動詞を作ることができました。
☆第7課では、冠詞と前置詞について勉強します。つぎの2つに分れています。
第7課(1):冠詞・前置詞
第7課(2):前置詞(続き)
7−1.冠詞
☆冠詞は、英語の<the,a,an>にあたる単語です。
例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(1) Hierau~ mi ac^etis libron. La libro estas tre interesa.
(2) Mi havas hundon. La hundo kuras tre rapide.
(3) La suno brilas.
<単語>
hierau~(昨日) mi(私は) ac^eti(買う) libro(本)la (その〜)esti(〜だ)
tre(とても) interesa(おもしろい)havi(飼う) hundo(犬) kuri(走る)
rapide(速く) suno(太陽)brili(輝く)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆エスペラントには定冠詞<la>があります。これは、一度話に出たものなど、情報の与え手と受け手が、お互いに認知している名詞につけて、<その〜>という意味を表わします。
○ libro 本
○ la libro (その)本
○ hundo 犬
○ la hundo (その)犬
(1) 昨日、本を買った。その本は実におもしろい。
(2) 僕は犬を飼っている。その犬は走るのがとても速い。
☆また、太陽、月、海などのように、話に出てこなくともすでに良く知られているものを示す時にも定冠詞<la>を用います。
(3) 太陽は輝いている。
☆定冠詞<la>は、次に置かれる名詞が、話し手と聞き手の間で、特定な・既知のものである場合に使うことを、憶えておいて下さい。
☆エスペラントには、英語の不定冠詞<a>に当るものはありません。定冠詞をつける必要のない時は何もつけません。ですから:
△ Hierau~ mi ac^etis unu libron. (unu 1冊の)
本の冊数を強調する必要のある場合以外は、△のように言う必要はありません。
☆参考☆ エスペラントの定冠詞はドイツ語等の様な、格変化はしません。常にこの形のままです。また、名詞に<男性名詞・女性名詞・中性名詞>のような区別がないので、あらゆる場合にこの形のまま使うことができます。
7−2.前置詞
☆<al, antau~, en, sub, sur…>などの前置詞は、副詞句や形容詞句を作って、文の中での単語や句(単語の群れ)を、位置関係や時間の関係などでつなぎます。
7−2−1.副詞句になる場合
例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(4) Morgau~ mi iros al Mis^ima.
(5) Granda arbo staras antau~ mia domo.
(6) Multaj homoj log^as en nia urbo.
(7) Granda kato dormas sub la tablo.
(8) C^arma knabino sidas sur la seg^o.
<単語>
morgau~(明日)iri(行く) al〜(〜へ) Mis^ima(地名:三島)granda(大きな)
arbo(木) stari(立っている)antau~〜(〜の前に) mia(私の) domo(家)multa(たくさんの)homo(人)
log^i(住んでいる) en〜(〜の中に) nia(私たちの) urbo(町)kato(猫)
dormi(眠っている) sub〜(〜の下に) tablo(テーブル) c^arma(かわいい)
knabino(女の子)sidi(座っている) sur〜(〜の上に) seg^o(椅子)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆(4)〜(8)の例文のように、前置詞で始まる句(単語の群れ)は副詞句(場所や様子を示す単語の組)<〜に;〜へ;〜で>になります。
○ Mis^ima 三島
○ al Mis^ima 三島へ
○ mia domo 私の家
○ antau~ mia domo 私の家の前に
○ nia urbo 私たちの町
○ en nia urbo 私たちの町の中に
○ la seg^o (その)椅子
○ sub la seg^o (その)椅子の下に
○ la seg^o (その)椅子
○ sur la seg^o (その)椅子の上に
(4) 私は明日三島へ行くつもりだ。
(5) 家の前に大きな木がある。
(6) ぼくらの町(の中)には人がたくさん住んでいる。
(7) 椅子の下で、大きな猫がねている。
(8) 可愛い子が椅子(の上)に座っている。
7−2−2.形容詞句になる場合
例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(9) Mi havas foton (←) de mia amiko.
(10) La kato (←) sub la seg^o estas granda.
<単語>
mi(私は)havi(持っている) foto(写真) …de〜(〜の…)mia(私の)
amiko(友人) kato(猫)sub〜(〜の下の)seg^o(椅子) esti〜(〜である)
granda(大きい)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆(9)(10)は、前にある単語にかかって、これを詳しく説明しています。このように、前置詞で始まる句(単語の群れ)は、形容詞句(前にある名詞を詳しく説明する単語の群れ)<〜の…;〜にいる…>になります。
☆エスペラントの形容詞句(様子を詳しく説明する単語の群れ)が、日本語と反対に、後から前の単語を詳しく言うことに注意して下さい。
○ foto mia amiko 写真 私の友人
○ foto(←)de mia amiko 私の友人の(→)写真
○ kato la seg^o 猫 椅子
○ kato(←)sub la seg^o 椅子の下の(→)猫
(9) 私は友達の 写真を持っている。
(10) 椅子の下の 猫は大きい。
☆前置詞で始まる単語の組が形容詞句の働きをしているか、あるいは副詞句の働きをしているかは、文の前後関係や意味で決ります。
第7課(2):前置詞(続き)
7−2−3.時間の関係を表わす場合
例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(11) Mi lernis Esperanton g^is malfrua nokto.
(12) Mia patro lernas Esperanton dum longa tempo.
(13) Mi prenas vespermang^on inter la sepa kaj la oka horo.
<単語>
mi(私は) lerni(学ぶ) g^is〜(〜まで) malfrua(おそい)nokto(夜)mia(私の)
patro(父) dum〜(〜の間) longa(長い) tempo(時間)preni(とる) vespermang^o(夕食)
inter…kaj〜(…と〜の間)la sepa (horo)(7時) la oka horo (8時)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆前置詞は、位置の関係を表すだけでなく、時間の関係もあらわします。
○ malfrua nokto 深夜
○ g^is malfrua nokto 深夜まで
○ longa tempo 長い時
○ dum longa tempo 長い(時の)間
○ la sepa kaj la oka horo 7時と8時
○ inter la sepa kaj la oka horo 7時と8時の間に
(11) 僕はエスペラントを夜更けまで勉強した。
(12) 私の父は長いことエスペラントをやっている。
(13) 私は7時から8時の間に夕食をとります。
☆ここまでに、位置や時間の関係を示す役割について説明しましたが、前置詞には、受身の行為者や所有などの関係で単語を繋ぐ働きもあるます。
☆前置詞には次のようなものがありますが、ここで全部を憶える必要はありません。実際の例文の中で用法を身につけてください。エスペラントの場合、英語などに較べて、1つ1つの前置詞の意味が、比較的に限定されています。
[1]複数の働きを持つもの
de〜 (1)〜から<出発点>
(2)〜から<時の起点>
(3)〜によって<受身の行為者>
(4)〜の<所有>
el〜 (1)〜の中から
(2)〜の中では
por〜 (1)〜のために<目的>・の
(2)〜にとって
[2]比較的意味が限られているもの
al〜 (〜に、〜へ)
anstatau~ 〜 (〜の代りに)
antau~〜 (〜の前に・の)
malantau~ 〜 (〜の後に・の)
apud〜 (〜の傍らに・の)
c^e 〜 (〜の所で・の)
c^irkau~〜 (〜のまわりに・の)
…da〜 (…の〜<数量>)
dum 〜 (〜の間)
en〜 (〜の中で)
ekster〜 (〜の外に・の)
g^is〜 (〜まで)
inter 〜 (〜の間に)
je (融通前置詞)**
kontrau~〜 (〜に対して)
krom〜 (〜の他に)
kun 〜 (〜と共に)
lau~〜 (〜によれば)
malgrau~〜 (〜にもかかわらず)
per 〜 (〜で<手段>)
po〜 (〜ずつ)
post〜 (〜のあとで)
preter〜 (〜のそばを通って)
pri 〜 (〜について)
pro 〜 (〜のために<原因>)
sen 〜 (〜なしで)
sub 〜 (〜の下に)
super 〜 (〜の上に)
sur 〜 (〜<接触して>上に)
tra 〜 (〜を通過して)
trans 〜 (〜を越えて)
**融通前置詞<je>については、課をあらためて説明します。
<問題16>********************************************************
次の前置詞句が使われた文を日本語にしてください。
1. Leteroj estas sur la tablo.(副詞句)<〜に>
2. La leteroj(←)sur la tablo estas miaj.(形容詞句)<〜の>
3. Miaj gepatroj estas en la c^ambro.(副詞句)
4. Miaj gepatroj(←)en Tokio estas maljunaj.(形容詞句)
5. Granda arbo staras antau~ la domo.(副詞句)
6. La arbo(←)antau~ mia domo estas granda. (形容詞句)
7. Mi venis de Tokio.(de:〜から)
8. Mi kolektas fotojn de kato.(de:〜の)
9. Mi vojag^is tra Eu~ropo kun miaj geamikoj.
10. S^i skribis leteron per globkrajono.
11. Mi dankas por via afabla respondo.
12. En venonta letero, mi skribos pri nia urbo.
13. Li ridis pro la novaj^o.
14. Ili ekiris al Pollando sen mono.
<単語>
letero(手紙) esti(〜がある) sur〜(〜の上) tablo(テーブル)mia(私の)
gepatroj(両親) en〜(〜の中) c^ambro(部屋)pTokio(地名:東京) maljuna(年老いた)
granda(大きな) arbo(木) stari(立っている) antau~〜(〜のまえ) domo(家)
mi(私は)veni(来る) de〜(〜から) kolekti(集める)foto(写真)…de〜(〜の…)
kato(猫)vojag^i(旅行する)tra〜(〜を通って) Eu~ropo(ヨーロッパ)kun〜(〜と共に)geamikoj(友達)
s^i(彼女は)skribi(書く)letero(手紙) per〜(〜で<手段>)globkrajono(ボールペン)
danki(感謝する)por〜(〜に対して) via(あなたの)afabla(あいそのよい)respondo(返事)
venonta(次の)pri〜(〜について)nia(私たちの) urbo(町)li(彼は)ridi(笑う)
pro〜(〜のために<原因>)novajo(ニュース)ili(彼らは) ekiri(出発する)al〜(〜へ)Pollando(ポーランド)
sen〜(〜なしで)mono(お金)
<問題17>********************************************************
エスペラント作文。( )はヒント。日本文に出てくる順に単語が書いてあります。エスペラント文にする時の配列に注意して下さい。
1.私は(mi) 彼を(li) よく(bone) 知ってい(koni)ます。
2.あなたは(vi) 頻繁に(ofte) ピアノ(piano)を 弾きま(ludi)すか。
3.あなたの(via) 父上(patro)は 北海道へ いらっしゃ(iri)ったのですか。
4.熊(urso)が 私の(miaj) 目(okuloj)の前に 現れ(aperi)た。
5.私の 記憶(memoro)(の中)に、あなたの 印象(impreso)が くっきりと(klare) 残ってい(resti)ます。
6.私達は(ni) あの木(la arbo)の下で 休憩する(ripozi)つもりです。
7.その壁(la muro)(の上)に 時計(horlog^o)が 掛っている(pendi)。
8.私の 妻(edzino)の父親(patro)は エスペランティスト(esperantisto)です。
9.あなたの 影響(influo)(の下)で、 私は エスペラントを 学習し始めま(eklerni)した。
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第7課:正答例
☆★☆ 正答例 第7課 ☆★☆
<問題16>********************************************************
<訳例>
1.テーブルの上に手紙があります。
2.テーブルの上の手紙は私のものです。
3.私の両親は部屋の中にいます。
4.東京にいる私の両親は年老いています。
5.大きな木が家の前にあります。
6.私の家の前にある木は大きい。
7.私は東京から来ました。
8.私は猫の写真を集めています。
9.私は友達とヨーロッパ旅行をしました。
10.彼女はボールペンで手紙を書きました。
11.ご丁寧なお返事、ありがとうございます。
12.次の手紙で、私は私達の町について書くつもりです。
13.彼はそのニュースのせいで笑った。
14.彼らはお金を持たずポーランドへ出発した。 など
<問題17>********************************************************
<訳例>
1.Mi bone konas lin.
2.C^u vi ofte ludas pianon?
3.C^u via patro iris al Hokkaido?
4.Urso aperis antau~ miaj okuloj.
5.En mia memoro, via impreso restas klare.
5.Via impreso klare restas en mia memoro.
6.Ni ripozos sub la arbo.
7.Horlog^o pendas sur la muro.
8.La patro de mia edzino estas esperantisto.
9.Sub via influo, mi eklernis Esperanton.
9.Mi eklernis Esperanton sub via influo. など
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<注>冠詞について
例文−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(1) Leteroj estas sur la tablo.
(2) La leteroj estas sur la tablo.
(3) Urso aperis antau~ miaj okuloj.
(4) La urso aperis antau~ miaj okuloj.
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆それぞれ、冠詞がつくか付かないかで、意味が変ります。
(1) テーブルの上に手紙がある。
(2) 手紙はテーブルの上にある。
(3) 熊が目の前に出てきた。
(4) 熊は目の前に出てきた。
☆(1)(3)が、不特定の手紙や熊を表わすのに対して、(2)(4)は、お互いに既知の手紙や熊を表わしています。
☆冠詞は便利な道具ですが、日本語にはないものなので、解りづらい点があります。付けるべきかどうか迷う場合には、付けない方が無難とされています。多くの文章に接するにつれて、しだいに用法が体得できます。