前回に引き続き、オリンピック予選を総括したいと思います。 2人目のキーパーソンとして、FW平瀬を挙げたい。
1次予選、最終予選を通じてMVPを選べと言われたら、私は彼を推したい。中村俊輔、宮本あたりも候補に挙がってくるだろうが、予選前と現在を比べ飛躍的に成長したのは平瀬だと思う。何せ平瀬は予選前はFW候補の一人にすぎず、柳沢、山下あたりが主力になるだろうと思われていた。同じ”シンデレラボーイ”として1次予選で活躍した吉原宏太もそうだが、上の世界でもまれた経験を持つ方が強いため、チームの主力である選手が代表でも主力となりがちである。しかし、素材が早く見つかったか埋もれていたかの違いでしかないということを、今回平瀬が示してくれたと思う。そう考えると、第2の平瀬、第3の平瀬がオリンピック本戦前にでてくる可能性も十分にある。今からそれを探すのが、この1年間の楽しみになりそうである。
その平瀬だが、具体的に何がよかったかと言うと、「ずば抜けた何か」というものがないような気がする。かといってオールラウンドプレーヤーでもない。もちろんヘディングは彼の武器である。でもそれが他より抜けているかといえば・・・まだまだのような気がする。では、何がすごいのか。この予選で一番良かったのは『挑戦者としての心』ではなかったかと思う。”シンデレラボーイ”吉原が活躍しても焦ることなく(内心相当焦っていただろうが)、最終予選では柳沢もぬけ完全な「エース」となったが気負うことなく、そつなく仕事をこなした感があった。これは彼の『ひたむきさ、挑戦する心(=挑戦者)』というものがもたらした成果だと思う。こういった心構えは見習わなくてはならないと思う。 【あくまで想像ですが・・・】
平瀬はまだまだ成長する。これは断言していいと思う。(彼のことが今回かなり気に入りました)
最後に挙げたいのは、”世界の”と言う形容詞に違和感がなくなりつつある、『NAKATA』である。
小野の負傷というトラブルにより、急遽召集となったわけだが、まさに「格」が違った。素人が見ても凄かった。何もかもが違った。中学生のサッカーに、大人が混じっているかのようだった。(少々言い過ぎ?)
そして、これが相手に予想以上の恐怖を与えていた。彼はまさにトランプでいう「ジョーカー」だが、ジョーカーを持たなくても勝てることを相手に忘れさせていた。必要以上に意識すると、サッカーという組織のゲームは破綻するといういい例だったと思う。”オリンピック代表”の”カザフスタン代表”だったからではあるが、日本がこれから格下チームと対戦する時、このカードは想像以上に使えることを証明してくれたように思う。当然のことながら”シドニー”ではここまで通用しないだろう。『NAKATA』の本当の力は、シドニーの本大会でじっくり観たいと思う。そして『NAKATA』を生かすことの出来るチームに成長できるかを今後のポイントとして見守っていきたい。
(1999.11.18)
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