ユリウスとイシュタル。二人の出逢いは新年の宴となった。
 宴と言っても、今は国自体が喪に服している。バーハラ城西にあるホールに、国の上に立つ人間が集うという、行ってみれば内輪の食事会だった。
  ヒルダは二人の出逢いのために盛大な宴を催したかった。だが、むこう半年は派手な催しは慎むよう、妻を失った皇帝の言葉があったがため諦めた。 とはいえ、贅沢慣れした人間が集う新年の食事会は、並ぶ食物はそれはそれは豪勢であり、乾杯とおめでとうの言葉がなく、例年のように城下で酒を振舞ったり、パレードをしたりしないだけで、通常の新年祭となんら変わるところはないかった。まあ、後の皇帝夫妻の出会いの場として不足というほどでもないだろうと、ヒルダは妥協することにした。

「ついに、ユリウスさまとお会いできるのですね」
「ああ。楽しみかい?」
「当然です。私の旦那様となられる方ですもの……」
「その意気だよ、イシュタル」

 その日のイシュタルはヒルダの用意した薄紅の衣装を纏っていた。ヒルダ指導により淡い化粧が施され、髪は高々と結い上げられている。髪と露出された左の足には大きな赤のリボンが巻きつけられている。愛らしさを前面に押し出した出で立ちだ。年甲斐もなく深紅のドレスを纏ったヒルダは隣を歩く娘の艶姿に満足し、目を細める。
 可愛いわ、美しいわ……ブルームの血も混じっているとはいえ、さすがはあたしの娘ね!
 やはり、グランベルプリンセスの称号はこの娘にこそ相応しい。
 プリンセス・イシュタル万歳という歓声が、今から聴こえるようではない?

 ヒルダの評価点には親の欲目というボーナスが加算されていた。だが過大評価のし過ぎ、というほどでもなかった。実際、イシュタルは美少女だった。近い将来、グランベル一の美姫と称されることは、まず間違いであろう。
 フリージ母娘が足を入れた瞬間、会場の空気が止まった。それから、抑えた空気の玉が破裂するように、一斉に湧いた。会場内の貴族の視線は、イシュタルに集中していた。ユリウスの耳に入れるための素晴らしきイシュタル公女の噂は、ユリウスだけが聴いていたわけではない。皆、本日が事実上の社交界デビューとなるフリージの姫に注目していたのだ。

「お、あれが評判の、フリージ公女か」
「美しい姫と聞いてはいたが公爵夫人が自分に似ているなどと吹聴しているものだから、どんな姫だ……と思っていた。……これは、かなり……」
「両親とは似ていないな。幸運なことだ……」
 値踏みの視線を一身に浴びても、イシュタルはなんらの動揺も見せなかった。十三歳という年齢にそぐわぬ落ち着き。初めて社交の場に出た姫には到底見えなかった。微笑みを浮かべ、簡単な自己紹介をし、天気や会場についてなど、当り障りのない話をしていく。同年代の男と話す時や賛辞の言葉には、微かに頬を染めて、困ったように対応する。容姿も仕草も声も。全てが、愛らしい。

「イシュタル公女。私めはエッダの代理公主の長男で、メリートと申します。お噂はかねがね……」
「公女殿下。私はルイズと申します。我が家はヴェルトマーの流れを汲む名門です!」
「私はドズル公家に仕える騎士です。もしよければ、一曲お相手願えないでしょうか」
 ヒルダとイシュタルが少し離れた隙に、六公家の血を引く貴族や前途有望な若い騎士が、イシュタルを取り囲んだ。我先にとイシュタルに話しかける。

「おやおや、砂糖に群がる蟻のようだねぇ。つまらない男にひっかかったりしなければよいのだけど」
 いつも壁の華であった……気高さ故に気安く話し掛けられないのだと理由づけしていた……己を若かりし日を思い起こしつつ、ヒルダは肩を竦めた。手持ち無沙汰だったヒルダは、テーブルに並べられたブルーチーズを口に入れ、シャンペンを体内に流し込む。体が熱を帯び目が潤み出した頃、知己の男二人がワインを片手にヒルダのもとに寄って来た。イシュタルを取り囲む輪に入りそびれたユングヴィのスコピオとドズルのダナンであった。

「イシュタル公女は噂に違わぬ、美しい姫ですな。今度、ゆっくりお話したいものです」
「ほほ。ありがたいお言葉。あの子が聞けば喜びましょう」
「あと一、二年もすれば、あの姫を巡って男どもが火花を散らすことでしょう……数多くの男の中に、私も加わっているかもしれません」
「まあ。おほほ……」
「どうでしょう、今度親子で我が領土に遊びにきませんか? ユンヴヴィは比較的気温が高く、寒い季節を過ごすには最適の土地だ」
「親子で……おほほ……では、イシュトーを連れていきましょうかね」
 ドズルやユンヴヴィの当主ですら、ヒルダの眼中にはない。イシュタルの伴侶候補は、皇太子ユリウス、ただ一人である。しかし肝心のユリウスの姿はまだ見えない。こういった集いでは皇族の登場は最後であるパターンが多い。頃合的に、もうそろそろ……と、ヒルダは入り口につねに気を配っていた。そうして、どうやってイシュタルを男の輪の中から連れ出すか、効果的にユリウスに紹介するかを算段していた。公式の場では自分から皇家の人間に話かけることはできないのだ。逢いたい言ったのだから、当然、むこうから話し掛けてくるだろう。しかし念には念を入れて、ユリウスが登場するまでにイシュタルを人の輪から連れ出し、目立つ場所に置いておくべきだろう、と算段する。

「スコピオ殿、ダナン殿、ちょっと失礼……」
 ヒルダはガウンを脱ぎ、手袋を外した。よし、と気合を入れると、娘を連れ出すべく人の輪に押し入……ろうとした。
「ちょっと、あたしはこの子の母親だよ……っ、通しな」
 だが肉と熱気による壁は厚く、ヒルダは通過することすら叶わなかった。
 五回、六回と、男どもに体当たりをしているうちに、待ち人が来てしまう。
「ユリウス殿下がご来場されました!」
「げっ、来ちまったよ……ぉ」  

「ユリウスさまが、ユリウスさまが見えられた……っ!!」
 当たり触りのない話題を愛想とともに振り撒いていたイシュタルはユリウスの来場を告げる声に弾かれた。 突然、背伸びをしたり屈んだりする。何度も何度も。
「イシュタル公女? あ、あの……?」
「ユリウスさま、ユリウスさまっ」
懸命な行動のおかげで、壁の隙間から、赤く小さな存在を……ほんの一瞬だけ、見ることが叶った。彼女は夢中で布で包まられた肉の壁を押した。

 どしーーーーんっ。
 細身ではあっても長身で、大人であるヒルダが体当たりしても崩れなかった壁が、華奢な子供であるイシュタルの一押しで脆くも崩れ去った。恋する乙女の一念なんとやら。ドミノのように、周囲の男たちが倒れていく。苦痛の声が鳴り響く。だがイシュタルは気にも止めない。
 彼女の頭の中は物心つく前から素晴らしき婚約者として刷り込まれた皇子さまのことでいっぱいだった。作法の基本中の基本すら、忘れ去られていた。
 顔をじっくり見てみたかった。早く話をしてみたかった。
 彼女は十年以上もこの日を待っていた。頭脳明晰な少女の理性は飛んでいた。

「ちょ、イシュタル! お待ちよっ」
 フリージ公女といえど、公式の場でグランベルの世継ぎの君に臣下たる身が話かけることはご法度である。十三歳……子供のしたこと、処罰を受けることはないだろうが、ユリウス皇子やアルヴィス皇帝の覚えが悪くなることは必至だった。 だから止めた。しかし無我夢中のイシュタルには普段は絶対のものとしているヒルダの声すら届かなかった。
 イシュタルはユリウスの前で貴婦人の礼をした。そうして気品ある微笑みを浮かべる。
 行動は突飛であったが、その姿そのものは大変美しく、ヒルダを満足させるものであった。来場者も皆、感嘆の息を漏らした。

 だが……しかし後が続かなかった。先ほど男たちを軽くあしらったさまはどこへやら。胸の前に持ってきた両の手を何度なく組み替え、背を丸くなり、自信なげにユリウスを見つめる。
「あの……、ユリウスさま……」
「うん……?」
「イシュタルは、そのぅ……ああ、何からは話をしたらいいのかしら……っ」
「ああ、お前がイシュタルか。やっぱ、知らんな……」
 ロプトウスはユリウスの記憶を弄るが、目の前の少女の顔にも、声にも、覚えがなかった。
「し、し……知らない!?」
 イシュタルは眉を寄せた。大きな瞳を細め、吊り上げ、口を捻じ曲げた。そうするとヒルダそっくりの顔になる。先までの愛らしさはどこへ……の顔をユリウスを近づける。ユリウスの体は反射的に二歩後退した。イシュタルは三歩、前に進んだ。
「私を知らないというのですか!? ユリウスさまは私を妻としてくださるのでしょう……っ!?」
「へ……? そうだったのか……?」
「そうだったのか……って、そうですよ!」
 勿論、そのような予定はどこにもない。イシュタルとヒルダの中にしか。だが、この世界、この時代に現れたばかりのロプトウスは、これほど真剣に言うのだから、そうなのだろう……と素直に納得してしまった。この娘がユリウスの婚約者だったというのならしばらくそのままにしておいても害はないだろう、と判断した。

「すまない。まだ少し、記憶におかしいところがあってね。母と妹を同時に失ったんだ、仕方ないだろう……?」
「あ……そ、そうですね。すみません、取り乱しました」
「……私が君とのことを本気で忘れるはずはないだろう?」
「そうですよね。もしや、貴方はユリウスさまではないのかも……と思ってしまいました。赤い髪も、華奢な体付きも、身から溢れる魔力も、私の知るユリウスさまそのものなのに。別人かも、なんて。そんな考え、おかしいですよね」
「何故それを……」
「え……?」
 知っているといっても、聞いていた通り、というだけの話。ユリウスの体に別の人格が入っているなど、イシュタルは想像だしにしていない。 しかしロプトウスはその言葉に焦った。この勘のよい少女を取り込んでしまわねばと思う。殺したほうが手っ取り早し、何より確実……と常の彼なら考えるところだったが、何せ当然の告発だったために気が動転していた。
「わ、私はユリウスだよ。何を言っているんだい、君は……」
 取り繕うと、イシュタルを抱き寄せた。といっても、イシュタルのほうが身長が高く、発育もよいため、どちらかというとユリウスがイシュタルに抱きついたような感じになる。
「君とのことを一瞬でも忘れてしまったことを、怒っているのかい?」
「そんな……怒ってなど。ただ、驚いてしまっただけです」
「ごめんよ。君を愛しているよ」
「私も愛しています……愛せると信じています。運命の人ですから……」

 イシュタルは幼い頃からされた暗示により、ユリウスを愛し、妻となるものだと、思い込んでいた。ユリウスもそのつもりであると、信じて疑わなかった。ロプトウスは『ユリウス』の大抵を己が物としたが、それには綻びがあった。記憶もだが、少年の十一年間の感情を彼は取り入れていなかった。そのため、強く『好き合っていた、結婚の約束をしてあった』と言われれば、そうだったのか、と納得する他なかった。  

 さまざまな要因が重なり、顔合わせ程度の予定であった宴において、十一歳と十三歳のロイヤルカップルは出来上がってしまった。
 居合わせた人間は繰り広げられるラブシーンを、子供にしては熱いとは思ったが、なぜそうなったのかを疑問に思ったりはしなかった。適当に理由をつけて、適当に納得をした。
「そうか、ユリウス皇子とイシュタル公女は何度となく会っていたのだな。今より幼い頃から遊び相手にでもなっていたのだろう」
「身分的にも釣り合うし、このまま二人の仲が進展しても、特に問題は起こらんな」
「フリージ公爵夫人はさすがにやり手ですね。こうなることを見越していたのでしょう……」

 そう、ただ一人。二人が結ばれることを切実に願い、下準備をし、さあ、これからがプリンセスイシュタル計画の本番よ! と、さまざまな作戦を練っていたヒルダを除いては。
「え、え。こんなにあっさり行っちゃっていいの……?」
 二人の間に面識がないことを知るヒルダは、内心で激しく首を捻っていた。

「おや、ティニー。こんな問題も解けないのかい」
「解けません。方程式だって見たことがありません……」
「はあ。やっぱブルームの姪、何より、あのティルテュの娘だけあるねぇ。オツムからっぽな感じだよ」
「酷い。わたしはともかく、叔父様もともかく、お母さまのことまで悪く言うなんて……っ」
「何だい、その反抗的な目は」

 アルスター城は最西の部屋。他の部屋に較べ日当たりが悪く、調度品も極端に少ない。それがティニーの部屋だった。ヒルダは姪ティニーの辛気臭い部屋に日参していた。何をしているのかと言えば、ティニーの教育だ。ティニーを名門の貴婦人に仕立てあげ、六公家の公爵夫人にでもしてやろうと思っていたのだ。それが一つの目標を失ったヒルダが新たに見つけた目標だった。目標というより新たな趣味と言ったほうが正しいか。
 二年前。告白と交際宣言を兼ねたユリウスとの出逢いの日から、イシュタルは頻繁にバーハラに遊びに行くようになった。一度遊びに行けば、二日、三日と戻らない日もある。勿論ヒルダは止めなかったし、ブルームも内心複雑ではあるものの、晴れて公認の仲となった二人を引き離そうとはしなかった。
  今、イシュタルはフリージに滞在している。
  以前は、ヒルダがアルスターに行けばアルスターに、ミレトスに行けば、ミレトスに、フリージにいれば、フリージに……と、ヒルダについて離れなかった。それが今では、ユリウスが寂しがる、ユリウスの傍を離れるわけにはいかない……と、バーハラに近いフリージから離れることを拒むようになっている。
 このままいけば遠からず、ヒルダの夢は叶えられる。

 嬉しいことのはず。それなのに今ひとつ心が浮き立たない。一人になると溜息が漏れてしまう。
 物足りないのだ、何かが。夜会に顔を出したり、刺繍をしたり、と普通の貴婦人らしい活動をしてみても、今ひとつ楽しくない。以前は暇などなかった。余裕があればイシュタルに知識を詰め込んだり、魔法を教えたり、あるいはユリウスと結ばせるための作戦を考えたりしていたから。
 もうイシュタルはヒルダの助けを必要としない。全てを完璧にこなすフリージの公女は、母親の手を離れた。
 失って初めて気づく。娘がどれだけ大切な存在であったのか。娘をプリンセスにするという夢が、どれほど心の支えになっていたのか。夢見ることが、どれだけ楽しいことだったのかを……。
  娘を自分のかわりに皇太子妃にすることより、グランベル皇帝の祖母となることより、イシュタルを自分の手で完璧に育て上げ、女性として最高の地位につけることがヒルダの夢であり楽しみとなっていたのだ。いつのまにか。

 それに気がついたヒルダは、イシュタルにしたのと同じ要領で息子にいい嫁を娶らせようかなどと思ってみた。だがイシュトーには自分があてがったヴェルトマー出身の娘がいる。二人の関係は良好で、離れる気は全くないらしい。
 そこで白羽の矢が立ったのが、義理の姪ティニーだった。十二歳。嫁入りを考え、準備するにはいい歳である。女性としての大陸最高の地位はイシュタルのものだが、その次の地位くらいは与えてやってもいいかと思った。母を早くに亡くした可哀相な姪が優しい叔母に保護され、不相応なほどいい家にお嫁にいく。それはなかなか楽しい物語のような気がした。
「そんなことじゃ、六公家の公爵夫人の座を射止めるなんて、到底無理だよ」
「わたしはそんなところに嫁ぎたいなんて思っていな……」
「あー? なんか言ったかい!?」
「何も言っていません……だから、鞭で打つのはやめて……っ」

 ティニーの教育は、ヒルダの娯楽。ティニーのために、とは言いがたかったが、ティニーを苦しめようとしての行動でもなかった。愛情も期待も少ない分、イシュタルに施した教育よりも、ヒルダが少女時代に受けた教育よりも、ずっと甘いものであった。 ただティニーは二人ほど忍耐強くはできていなかった。
「もう嫌、こんなところ出て行きたいっ。兄さま、助けて」
  課題の山を前に、ティニーは呟く。生存すら明らかでない兄に助けを求める。
「こんな少ない食事じゃあ飢え死にしてしまう。叔母さまばかり美味しいものを食べてずるい。わたし、ヒルダだけは許さないわ……っ!」
 野菜中心の食卓で涙を流しつつ、復讐を誓う。
「ちょいとあんた、フリージの血筋のくせにトローンすら扱えないのかい。ティルテュですら使えたのに……」
「……わたし、攻撃魔法より、杖が習いたいです……」
 他人を、下手をすれば自分をも深く傷つけてしまう魔法の訓練を嫌がる。
「杖なんて使えたって、自分の身は守れやしないよ。あんたは一度戦場に出てみるべきだね。そうすりゃ、攻撃魔法の有り難味がわかるから」
「そんな!? わたし、戦いは嫌です……っ」
「ああ、なんでこんな甘ちゃんに育っちゃったんだろうね。とにかく、ブルームに言っとくよ。一度戦場に立たせてくれって」
「ああ、そんなっ」

  花嫁修業の一環として、精神修行の一環として、ティニーは戦場に立つことになった。一回きりという約束だったその戦場で、彼女は兄と再会し、そのままフリージから逃げ出した。兄の所属する解放軍に身を置くことにしたのだ。身を置いているといっても、後方で怪我人の治療をするとか、その程度だろうとヒルダは推測していた。実際に、その通りであった。闘技場で少し修行を積んだティニーはその後杖使いに転向し、前線に出ることは滅多になかった。
  ヒルダはただ戦場にいることすらできない姪の弱さを嘆いていた。どうせすぐに泣き帰ってくるだろうと、連れ戻そうともしなかった。彼女の帰るところはフリージしかなく、これまで母親代わりに面倒を見てきたのはヒルダなのである。ティニーには自分が必要なのだと思っていた。彼女が解放軍の片隅で自分への恨みごとを吹聴しているなど、想像だにしていなかった。
「あの人だけは、許せない……できることなら、わたしの手でと思っていた……」

 光の皇子の軍は、レンスターを解放し、トラキアを滅ぼし、ついにグランベル王国にまで進んだ。そして、闇は光に破れた。
 聖なる戦いの中で、イシュタルは行方知れずになり、ユリウスの形をしたロプトウスは滅んだ。ヒルダは戦場の露と消えた。
 戦争が終わると、ヒルダよりもイシュタルよりもひ弱で根性のない娘ティニーは、戦場で出逢った恋人……光の皇子セリスの妻となった。グランベル皇妃となったのだ。繊細な風情の優しき皇妃は、国民の愛情を一身に受けた。
 幼い頃よりグランベルプリンセスの座に執着し努力を惜しまなかったヒルダが、聖王セリスの隣でただ儚げに微笑むティニーの姿を見ることがなかったのは、幸いであったといえなくもない。


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