松山バレエ団「ドン・キホーテ」 6/6

 演目的には観やすい喜劇だし、スペインを舞台とする装置や衣装、それに太陽が似合いそうな音楽が、とても好み。踊りの綺麗。しかし、どこがどういうテクニックなのかもわからなくて単純にすごいなーと思うだけ。それがとてもとても残念でした。どれもすごいことやってるように見えると真にすごいものがわからないんだよ。身体がかたーい私からしたらどれも人間技じゃないから。あ、でもクライマックスのグラン・フェッテ(…だと思う)は中でもすごかったかな。片足あげて、つま先で、くるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくる……。
 人間技と思えない技の数々を優雅に表現されているのを観ていると、現実を離れたような気分になれますね。そこがバレエの魅力かも。あとはお話をしっかり予習し、マイムを理解すれば、舞台の世界に入り込めると思うの! 技巧についての知識もあれば、もっと感嘆の息を吐けるはずだし……っ! ともあれ、バレエを楽しみなら、知識、知識よ! 次はもっと楽しんでやるんだ! と今回の鑑賞は次に繋がるものになった気がします。とりあえずドン・キホーテは多分私好みの話だと思うので今度文庫で読んでみようと思ってますv

 余談ですが、今回やったらおこちゃまが多かったです。上の階に行けば行くほど。多分、バレエ習っている子供さんなんでしょうね。幕間にフロアで「違うよ、左足をこうで〜」とうっ、と感じのことをやっている女の子さんたちがいてとても微笑ましかったです。あとカテコも微笑ましかった。多分予定にはなかった3つの花束贈呈。おそらくはキトリ(プリマドンナ)とバジルとドンキホーテ、の三人に花束を渡すつもりだったのでしょう。しかし、キトリとドンキホーテの間にはオーケストラの指揮者さんが! おたおたと迷った贈呈係さんは指揮者さんに花束を渡す。で、キトリが花束から一本のバラを抜き取って、ドンキホーテに渡すのでした。なんか可愛い〜。
 1回目のカテコの時、バジルの花束はオーケストラピットに投げ入れられ(両隣と手を繋がないといけないから邪魔だったんだろう)、2回目のカテコの時、指揮者さんの花束もオケピのステージに一番近い演奏者に渡……そうとしたけど、ステージに背中向けているのでなかなか気がつかない(笑)。慌てて他の人が受け取る……。気持ちは嬉しいけど邪魔な花束だったのだろう……。


劇団四季ソング&ダンスU 7/4 
 

 前回に引き続き「地元・低予算・休日」、しかも劇団四季とはいえ、題目がソング&ダンス。つまり歌と踊り。ストーリー性はないだろうから好みではないだろうなーとそれほど期待はしてなかったんですが、どうしてなかなか楽しかったです。ニューヨークジャズとディズニー音楽のメドレーにダンスを加えてお楽しみください、的な内容で、舞台で繰り広げられるのはまさにエンターテイメント! な世界でした。一幕のラストでは観客を舞台にひっぱりあげて(いい思い出だろうけど、わ、私は嫌だわ…)、戸惑う女の子たち一人一人に男性ダンサーがついて、恋のアプローチ的ダンスを繰り広げる。た、楽し〜。各ソングに添って服装も、ダンスも、舞台装置もぱぱっと切り替わり、役者さん大忙しな感じでした。すっごい体力使いそう〜。やや上演時間が短いのもあれじゃあと納得。歌もさすがに皆さん上手だし、ダンスなんて言うに及ばす。カッコいいんだって、いちいちもうー。個人的に好きなのは、チェスの場面。鳴り響く足音が印象的な人間チェスと栄光を勝ち取った人の孤独。短いながらに歌に合わせたストーリーはちゃんとあったんだよなぁ。カテコでちょっと驚いたのは、人数が思っていたよりずっと少なかったこと! 役者さん、ホントお疲れさま〜。誰もが聴いたことがあるナンバーを揃えてあるらしいけど、殆ど知らなかったのが何だか情けなかったです。あと印象的だったのが、光の表現。光の粒が集まって、拡散して、客先に広がっていって〜って表現が好きでした。あと、やや古臭いかもしれないいかにもスポットライト! って感じの使い方も板についててよかったな。行ってよかったです。
  四季は全国公演の時はまず地元に来てくれるし、公演回数も他の地方に較べてとってくれるから好き。私四季は、最後列と最前列でしか見たことがなくて、しかも最前列(かなり下手)が一番見難かった。ハムレットが死ぬ場面、兵士の背中で見えなかった、という(ぱた)。


「お気に召すまま」8/15 彩の国さいたま芸術劇場
演出      蜷川幸雄
メインキャスト ロザリンド-成宮寛貴 オーランド-小栗 旬 シーリア-月川勇気
上演時間   3時間30分くらい

男オンリーの恋愛喜劇です。全体的印象として、瑞々しい!
成宮君ロザリンド、立ち姿はまずまず。ややごついものの、顔はちゃーんと可愛らしく、オペラグラスなしなら女の子で通ります。美人です。声はさすがに男の子が無理して出している女の子って感じでしたが、十分です。ていうかね、最初のほうに公爵令嬢している姿はそれなりに違和感あったんですが、森に入って男の子の姿になった頃にはとってもとっても可愛いく感じた。印象に残っているのはオーランドの想いを知って、やった♪ って喜ぶところ。シーリアに誰がこの恋文を? って詰め寄るところも確信犯めいててよかった。女の子風に「あっ」とか倒れるところの微妙にわざとらしさもツボ。ほんと、どこもここも恋する女の子でしたよー。それも、結構自分に自信のある子。それは綺麗な子の傲慢だよーって彼を女の子としてとらえてむむむっとしたところすらありました。男装を経て、ラストのウエディングドレスを見ると、今度はきちんと女の子として可愛いと思えました。不思議だー。シーリアともオーランドとも息が合っていました。小栗オーランドとは真面目にお似合いだったと思いました。

小栗君オーランド! 彼もめちゃ可愛かったです。女の子役二人より可愛いんじゃないかと思ってしまいました。森に入って、ロザリンド思ってお馬鹿やるところが可愛い。ぴょんぴょん跳ねるし、木に乗るし、レスター投げ飛ばすし(衣装はちょっと恥ずかしかった…)、重い荷物+アダムを背負って歩くし、すごい身体能力だなぁと関心しました。アクションシーンはさまになってましたし、表情も感情豊かな善良で素直な青年って感じでした。ギャニミードの想いや正体にはどこまで気がついていたのでしょうか。何にも気がついていなかったって言われても、実は気がついていたって言われても、なんとなく納得がいく天然入ったキャラに仕上がっていたと思います。ラストでロザリンドが来るか木に登って、やきもきしているところが特によかった。ほんと、ロザリンド好き好きぶりがよく出てましたよー。つーか、彼普段のインタビューから成宮君好き好きだよね。好きっていうのも女の子だと恥ずかしいけどナリなら平気って、あなたの台詞のほうがよっぽど恥ずかしいです。つーかパンフに書いてあったんだけどハムレットで最後のキスシーン提案したの彼なんですか! ネタだよね、ネタでナチュラルホモなんだよね(汗)。
  台詞間違えて露骨に言い直したりもしたけど、そんなところも若さだなぁ、うんうんと感じました。成宮君もね。主役二人のささやかな失敗は、若いからこそ許せてしまう感じ。脇を固める俳優がまた上手だから、安心して見ていられたかな。

その他では、忘れちゃいけないのが月川君シーリア。可愛いです。オペラグラスありでも女の子に見えます。声を聞いてすら、風邪をひいている女の子と言われれば信じてしまいそうです。シーリアずっと無表情でした。勝気な子って設定らしいし、台詞自体は確かに勝気なんですが、月川君シーリアは無表情かつ抑揚なく突っ込みが鋭い。台詞がきっつーってタイプ。一目で恋に落ちたらしい場面ですら無表情。それなのに何故か、恋に落ちた、一目惚れされてあっさり承諾したっていうのには妙に納得がいった。木陰でぼんやり座っているだけでもさまになってました。何となくカードキャプターさくらのともよちゃんを思い出しました。

あと印象に残ったのは、山下禎哲さんフィービーと高橋洋さんのジェイクイズ。フィービーのあの熱演は、なんつーか、かんつーか。最前列でなくてよかったと思いました。太ももぴらぴら見せて、パンチラどころかパンマルで股間あけっぴろげ(冷や汗)。不美人の役柄なんですが、身持ちが固いという設定なのになぜあそこまでぴらぴらくねくねさせる必要があったのか。奥が深いシェイクスピア劇なのだから、深い意味があるのか……? うーん、うーん。今回のインパクト大将でした。ジェイクイズは、声も通っていたし、客席と舞台の橋渡し的役をきっちり果たしていたと思いました。出番の割りに、印象に残ったなぁ。おっと、もうひとつインパクトがあったキャラがいた。それはメー子(本物の羊)。無条件に可愛いぜ、あそこで本物羊が出てくるとは思わなかったよー。羊飼いにだっこされて、いやいやってするのがまたv

 役者さんもよかったけど、舞台装置もよかったな。シンプルなんだけど、細かいところまで手が入っていてリアル、しかも品があった。特に森がよかった。全部グレーなの。あえて本物っぽくしないためなんだって、なるほど。ラスト、結婚式のバックに変なマルコメ人形みたいな絵が吊り下げられたのも、本物っぽくしないためか? おめでたい雰囲気はあったけど、ナンだったんだ、あれは。謎でした。
 「お気に召すまま」は随所に客席に語りかける場面があるお芝居でした。「偽者の世界」である舞台観ているんだって感覚を忘れさせちゃいけないってことなんでしょうか。すんなり夢の世界に入らせてくれない……意地悪っ。女役を男がやるっていうところだけでなく、演出にも随所に現実を忘れさせない演出がされていたと思います。
 舞台が始まりますよってロック系の音楽とともに役者さんが舞台に掛け上がってお辞儀して始まるところとか、ロザリンドが優雅にどうでした、お気に召しましたこのお芝居? って終わるところとか。あと、本物の火を使った焚き火の匂いが漂ってきたりね。食べ物も本物使ってたね。あと羊も本物。しかし馬はかなりよく出来ていたけど人が入ってた。女の子は偽者、男は本物が入り混じってるし。はっ! フィービーの股見せもその夢を見させない演出の一環なのか!?  夢を見にきている演劇オタだけでなく、アイドルオタに対してきっつい部分がありましたわ。不細工女は誰かから愛された奇跡を喜べ謙虚になれ、現実に存在しないアイドル(綺麗な想い人は本当は女の子だからね、存在するけど結ばれる可能性のある男性としてはいないワケです)に高望みするなってか。人気若手男優に言わせるあたりがえぐい、えぐすぎ。可愛い女の子女優が言えば軽い反感とともに受け流されることだけど、幻の王子さま当本人に言わせるあたりなぁ。んでもって現実を受け入れたら、身近な男性とすんなり幸せになれるんですね。うーむ。

 花道というよりは単なる通路を思いっきり使って演技するところも凄かったな。やはり裏から表、表から裏に走り回っていたのでしょうか。どこから人が出てくるかわからなくてどきどきでしたよ。間近で演技してもらえたら、高い金払っていい席とった甲斐があるってもんでしょう。S席から売れていくのも納得だね。私は二階席の円形部分だったけど。舞台との距離は近かったけど見切れも結構ある安席……でもどこから人が出てきてもすぐに気づけるのはよかったかも。どこから見ても面白いお芝居でしたし、そうなるように意識して作ったんじゃなかしら。

カーテンコールで主役二人が見詰め合って微笑んだり、手を繋いで舞台の奥に走ったり(メー子と羊飼いだけはのそのそと下手へ…かわいいっ)、投げキッスしたりと最後までサービス精神旺盛な舞台でした。ネタもののアイドル舞台だなんて決して言わせないわっ。いいお芝居でしたよー。


NEXT

STAGETOP