劇団四季「ライオン・キング」 5/6 ソワレ 四季劇場春

 キャスト(敬称略)
 シンバ宇都宮直高  ヤングシンバ高田翔  ムファサ田村推一 スカー渋谷智也 ナラ熊本亜記 ヤングナラ加藤茜 ラフィキ原田真理

 えーと、空き時間と予算と空席と交通の便の関係で、「ライオン・キング」を当日券で見に行ってまいりました。やる気なさげな前振りですが、一度見てみたいと思い続けていたんですよー。因みにライオン・キングはアニメも見たことない。話理解できなかったらどーしよと思ってたんですが、さすが子供も観る作品、杞憂でした。高い角度から眺める形になる3階バルコニー席はなかなかに圧巻で、話、世界観を含め全体を見通すのによかった。アフリカンな音楽とともに舞台狭しと飛び交い、群れ、動く生き物たち見ていると、楽しくなれます。鮮やかな色が沢山だっ。鳥が飛び交うところなんて、三階近くまで鳥が飛んでくるんですよー。客席でも演技してくれるってのもあって、1階で見てたら舞台の中に入り込んだような錯覚に陥れたかも! あと演出が好き! スクリーンに影映してストーリー演出するところとか、子供ライオンの人形とかが印象に残りました。一番印象に残った演出はメス・ライオンの涙ですが。なぜそこで瀧のような涙の布がだーっと落ちるか! 哀しい場面なのに、客席から笑い声が聴こえてくるんですけどっ。そして笑う気持ちもわかるっ。ラストで涙を拭った演出が好きなので、まあ、これもありか……と観終わったあとでは思えるなー。あと妙に笑ってしまうのが、子供シンバがあーあーあーって外に出て、大人シンバが戻ってくるところ。ごめんなさい……なんでだろ。
  美術とか衣装(?)も好きだな。砂漠の岩山のごつごつした感じやジャングルの植物が緑の楽園らしい雰囲気出てて、動物とか一部植物とかにもまあ、人が入ってるんですが、そして本物に見える! ってわけでもないのですが、作り物めいたというかアニメ的というか、まあそういう感じがね、近代の芸術とエンターテイメントのあいのこって感じでよかったんですよねぇ。映像って巧く使うと、舞台に溶け込むんだねぇ。

 見切れがあるのかな? と思ってたら、役者の顔がある意味見切れでした。完全に見えないとまでは言わないのですが、上から見てるとクオリティの高い人形劇に見えてしまうのは仕方ないかも。役者さんの表情も演技はしてるんですが、化粧で塗りつぶしてるし、着ぐるみ? のほうが大きいからやっぱ目立つんだ。 だけど、話は知らなかったので(いや、次の展開は予測付くんですけどね…)、生死をかけた争いをみてるとどきどきできました。ナレとシンバとかの、じゃれあい的なアクションはとーっても微笑ましいんですけども〜。どっちも真剣にアクションしてることに変わりないのに、伝わってくる雰囲気が違うって不思議だなぁ。
 にしても、やっぱ四季だけあって、トータルでいい! 全体のバランスがいいんですよねぇ。特にアンサンブルのまとまりがいいなーと思った。どの歌も安心して聴ける。子役二人は危なっかしさが全くないわけじゃないんですが、そこがまたかわいかったんですよねぇ。特にシンバ。子シンバがかわいくて、かわいくて、かわいくて〜v きゃーバクテン、きゃーそっちいっちゃ駄目! って感じで、パパの気持ちになってみていた気がします。あと、パパがよかったなぁ! 偉大な王にしてパパって雰囲気がばっちりでした。そのくせ冗談とか言って見せたりして、なんてお茶目。ザズに冗談だ、っていうときまで「うむっ」って感じで、その真面目さがおかしくて笑えました。後々まで皆に慕われているのも、スカーが後で引き摺るのも納得いくキャラに仕上がっていたと思います。あとはナレが好みでした。気が強くて、しっかりもの。私をあげるから貴方は王になるのよ!! いいわね!!!!感じで、ぽやーとした王子さまになってしまったシンバが思いっきり尻に敷かれてましたん。
 私ミュージカルでは歌が入るのが唐突でないかいなかってのがかなり重要ポイントなんですが(理想はオール歌です、はい)、何故歌うのーーーって感じではなかったので、私的合格ポイントです。歌で好きなのは、パクナ・マタータってジャングルで歌うところかな。パクナ・マタータ♪ 明るくて、リズムも好きだ。
 ティモンがご当地の言葉でしゃべってくれるってことで、今回は江戸っ子でした。だぎゃーとかいうティモンにもちょっと興味。名古屋も東京も随分長いことやってるし、そろそろ移動するかな〜と思っているんですが、んでもって新しく出来る静岡の専門劇場に来るんじゃないのーとも思ってるんですが、静岡弁なんてマイナーな言葉しゃべるティモンは想像できないからやっぱ違うかもしれん。近すぎるけど、「美女と野獣」の大阪・京都の例もあるし。因みに8月までの四季観劇予定とは、オンディーヌ(静岡)、クレイジー・フォー・ユー(静岡)、オペラ座の怪人(東京)です。他に興味があるのはアイーダと夢から醒めた夢、あともう一回キャッツが観たい〜。因みに四季の役者についてはもともとあまり知らないんですが、今回のキャストは見事に知らない名前ばかりだったわ。ライオン・キングくらいの大きな舞台、それもロング・ランになるとそればっかりになりそうって気もするけど、四季ってどーいうシステムになってるんだろ。素朴な疑問。


劇団四季「オンディーヌ」 6/22 マチネ 静岡市民文化会館中ホール

オンディーヌ/野村玲子 騎士ハンス/石丸幹二  水界の王/日下武史 ベルタ/大平敦子

かつてハムレットのオフィーリアに超感動した野村玲子さんが主演! ってことでとっても楽しみにしていた公演でした。内容については公式のあらすじ見て、人魚姫みたいな話なんだねーくらいにしか思っていませんでした。実際は、結構喜劇的要素が多い、でもめちゃ悲劇……。かーなーり好き嫌いの分かれる作品だと思いました。
 主演お二人の演技はよかったんですよ、とっても。野村オンディーヌは可憐に狂ってて、これぞあやかしの水の精って感じで! 怖かった!! 石丸ハンスも平凡にいい男な騎士って感じでぐっど。でもね……いや、だからなのか。今まで観た作品の中でトップクラスに後味悪かったんだけど! 特に2幕は見るのが苦しいくらいだったんですけど!! 

 オンディーヌの思い込みの激しさや突飛な行動に、周囲のおばちゃん方笑いまくりでした。で、私はといえばオンディーヌの行動に、胸をキリキリと締め付けられておりました。完全に第三者として観れば笑えるんだろうけど、私はどうにも中途半端に舞台に飲み込まれてしまったみたいです。とにかく、無邪気という名で身勝手に振る舞いすぎなんだ! オンディーヌ!! ラスト、オンディーヌを裏切ったためにハンスは死ぬんですが、それだって、オンディーヌが彼が裏切るはずないとか、疑るのは侮辱になるからとか、そんな理由で約束をしてしまったから。無作法ぶりとか、礼儀という名の嘘がつけないところとか、悲劇EDなのは知ってたけどそれでもオンディーヌに幸せになって欲しいと思っていたから、あああ、見ていられないよーって感じになってしまったのだと思う。私が感情移入していたのはハンス、もしくは詩人あたりの身近な第三者だった気がする。

オンディーヌが瞳をくわっと見開いて、愛を語るさまはほんとに怖かったなー。声がめちゃ幼さ爆発だったから、余計に怖い。問いかけっぽい語尾上がる口調や喜び以外の感情が見えない表情は、大根? と思われかねない絶妙な芝居がかりっぷりでした。いや、勿論、大根には見えませんでしたよ。序盤は水の精霊として、終盤は女として、舞台の上に「オンディーヌ」が存在してました。
  石丸ハンスは雰囲気とかよかったのですが、どのタイミングでオンディーヌに惹かれたのか、最後まで心変わりせず惹かれてたのか、いまいちわかりにくかったかなぁ。結局、ラストで表現されるように、平凡だったんだよねぇ。運命に逆らおうとも怨もうともせず、愛に死んだ最後だけはいい男に見えましたよー。キスするか言葉を交わすか選べって名台詞だ〜。やはり舞台に「ハンス」は存在していたのだと思う。終盤、ある種超越したというかオンディーヌの愛を信じきっているところもよかったのですが、印象的なのは序盤のふらふらっぷり! 誘惑しに来ている水の精見て楽しそうに目じり下がってるし! 明らかに駄目だこりゃって感じだからこそ、オンディーヌの愛がいかに純粋で、そんでもって相手を見ていないかわかるってもんでしょう。ハンスは最終的にはオンディーヌを愛していたんだと思うよ。自分を深く愛してくれた女としてね。なんか、騙されてないですか。それでもいいって思ったのかな。思ったんだろうなぁ。
  はじめて会った男性がハンスだったから、当然彼を愛した、オンディーヌにとってそれは動かしようがないことだった。 それは、ほんとに純粋な愛なのかな。私には激しい自己愛としか思えなかったんだけど。恋したかったから、恋した。そして、全てを忘れて生きていく。幸せだよねぇ、オンディーヌは。最後の最後、ハンスの死体を前に「綺麗な人〜、生き返らないの? 残念、生きていたらきっと彼に恋していたわ」というような台詞を無邪気に言うさまには呆然とさせられました。最後の最後まで、オンディーヌから感じられた愛は自己愛だったのです。ハンスは、皿洗いの女(=王妃なの? それとも配役の都合??)がいうように変わった女=純粋に自分を愛する女、を愛したつもりでも、結局他の女性と変わらず自己愛の塊だったってことでいいのかな。かつてハンスの許婚、ベルタの猟師の両親をいらないというシーンに象徴される自己愛の強さは、純粋なオンディーヌとの比較のためにあるのでしょう。ハンスは、名誉のため自分のために死地に赴かせたベルタの自己愛の強さに辟易していた気がする。でも、結局は同じ女だったんだなー。ベルタとオンディーヌは表裏一体って位置づけっぽいなー。

 個人的に構成はもう一声欲しかったかな。1幕から2幕はいいけど、2幕から3幕はちょっと飛びすぎかなぁと思いました。あと、3部構成なのも微妙。まあ主役二人が出ずっぱりなことより、舞台装置の関係って気がしたけども。地方公演の、いつもよりちびっちゃい舞台にしては奥行きもあったし、舞台装置も凝っててよかったなー。あと、オンディーヌの行動だけで笑いがとれるから、他のアドリブ的笑いはいらない、と個人的に思った。「狂った振りをして尼寺へ行けーーーって言うとか」「それは作品が違う」とかね。私は見てないけど、ダブルキャストで石丸さんもハムレットやっていたっけか、そーいえば。
  脇役では、水界の王の日下さんがよかった。超越した位置づけで、何を考えているのかよくわからないけど、オンディーヌの味方ではあるの? って感じ。存在感がよかった。
  この作品では女は自己愛が強く、男にとって怖い生き物である。女にとって男はわからない生き物である。ってことが結局言いたかったのかなー。劇場からの帰り道、作品の意味をあれこれ考えました。後味悪い……とか言いましたが、今はもう一度観たいと思ってる。マゾ? オンディーヌがあほばっかりやってハンスの心が離れてしまうニ幕以外を観たいなり。三幕終盤の主役二人の応酬は好きなんだよなぁ。あの長い台詞をすらすらと……さすがだぁ。あと、ハンスがオンディーヌに惹かれるところを、もう一度見たいな。最初はオンディーヌが魔法の力で心変わりさせてしまったと推測して観ていたからね、強く愛されたから惹かれたんだー、と考えながら、見直したいな。
 静かに観たいんだーって叫びたいくらい笑ってたおばちゃま方も最後には、現実的な話よね……と呟いておりました。突飛なファンタジーに見えて、現実的。んでもって、感情を舞台の世界へと引きずり込んでくれる。すごい作品だなぁと思いました。


ハンガリー国立歌劇場オペラ「サロメ」 6/23 アクトシティ浜松 R・シュトラウス作曲

おおおっ、アクトシティの1階席、はじめてだ……っ! とのっけからズレた感動を抱きつつのオペラ鑑賞。
舞台との距離は、帝劇1階A席くらいか。も、もっと前でなくてよかった気がした。オペラは2階の前のほうがいいかも。何故なら、字幕観るのが難しいんだよー。でもまあ、話自体は私でも知ってるし、いっか。世紀末的頽廃を表現した過激な歌劇(笑)。
時間的には休憩なし、1時間半程度で、短めなのかーと思っていました。が、ながーく感じた。主役三人の独断場がめちゃめちゃ長いので、どうにも間延びした印象。唄を聞かせるための作品なのだから、こういうものかもしれない。舞台の設備は最後まで変わらないんですが、赤色がベースの現代アート風味で、なかなかカッコよかった。古典「サロメ」のイメージとは違うかなーと思っていたけど、今回の「サロメ」や役者のイメージにはあってた。
サロメ役のケリー嬢はめちゃめちゃ官能的。ソプラノにしては声質が高くないんだけど、高音も楽々。聴きやすかったん。演技もすごーくいい。目が離せなかった。7枚の衣装を脱ぎ捨てていく踊りはいろっぽすぎて、堂々としていて、ほんとどきどきしました。あと、ヨハナーンに興味津々って覗き見るよーにしているところは、なんか可愛いかった。首がほしーの……と強請るところは普通におねだりしているように見え、念願叶って首を手に入れて、首と戯れるところは思いの他、正気があるように見えてしまった。前日観たオンディーヌのほうが魂はいっちゃってたな。ただ、正気に見えるから狂気の王女じゃなーーーいっ、ってワケではなく、一見自分を保っている女性に見えるからこそ、より怖いというのもある。普通に生活する女がごく当たり前に人の首を要求するのと、狂った女が髪を振り乱して人の首を要求するのと、どっちが怖いかというと前者のほうが怖かろう。そんなワケで普通に生き、考えているように見えるからこそ、怖いサロメだったのですー。ヨハナーン役の方もすごーくよかった。声も淡白っぽくて綺麗な男性〜って感じだし、サロメを見ない、見ない、負けないって無関心貫くところとか、ああ、そんな演技したら余計にプライド高いサロメは関心持っちゃうよーって感じしました。
 全体的に声のご馳走を堪能したって印象です。でも演技やダンスもすごーくよかったです。見た目にも華やかでした。サロメの独壇場! 脇もよかったけどね、お母さんとか、お父さんとかも、それらしかったしー。あと金髪の小姓の子がすごーく可愛かった。友だち思いだしさ。重い作品の、一服の清涼剤のような存在でした。
 それにしても、苦しくなるくらいどきどきする作品だった。2日連続な……。ちょっと、かなり、バランス悪かった気がする。 因みにこの日、同じ浜松市内のハマホールでは、↑のオンディーヌが公演していたはず。どちらにいっても浜松の観劇好きは重ーい気分に浸ったことでしょう。どっちも作品としてはすごいんだけどね。

 

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