劇団四季「クレイジー・フォー・ユー」 静岡公演 8/11 マチネ
ボビー/加藤敬ニ  ポリー/樋口麻美 ランク/牧野公昭 アイリーン/八重沢真美 ベラ/広瀬明雄 ボビーの母/斉藤昭子 テス/増本藍 (敬称略)

 やっぱ一度は行かなくちゃね、な静岡ロングラン公演! 三度目になるのかな? な今回はクレイジー・フォー・ユーでした。オペラ座、CATSに較べると知名度低いなーと思っていたら、無理せず中ホールでした。オケないのに加えて席がよかった(3列目)ってのもあって、珍しくオペラグラス使わず鑑賞。視界が広かったので、演技と歌とタップダンスが織り成す世界との一体感を存分に味わうことができました。

 めちゃめちゃ楽しい作品でした。コメディ、久しぶりだけどやっぱいいなぁと思った。深く考えずに観られるっていい。タップダンスのあの音はなんか心浮き立つ。踊りと歌の舞台ってだけあって、全体的に華やかだったと思う。やや古臭いアメリカ的な衣装も皆さん似合ってた。一番衣装が似合ってたのは個人的にはアイリーン役の八重沢さん。ソロ「NAUGHTY BABY」は先日観たオペラサロメを思い出す系統の色っぽさ。この人好きだわ。唐突にランクを好きになってるところとか(笑)。唐突でも歌でいい感じに結ばれればOK。嫌い嫌いも好きなうちでくっつきそーと思ってたら、唐突にぶちゅとかやりだして、何だか面白かった。悩殺されちゃうランクの表情もあわあわ〜って感じで愉快でした。怯えている風でもちゃっかり亭主になっているあたりさすがです。カッコイイよ、この人好きだよ。
ボビー役の加藤さん、めちゃめちゃ出ずっぱりな役なんですが、普通のおじさんな感じが好みで特に笑顔が素敵。声も高めで柔らかくて聴いてて心地よかった。心地よかったといえばベラの広瀬さんも声が好みでしたー。バリトンっていうのかな(どうもこの区分けが今ひとつ…)、ボビーより低めの声で朗々と歌ってくれました。お髭なおじさんっぶりも似合ってたし。こちらもよかった。終盤の振られちゃった〜なお互い鏡を見ているみたいな掛け合い、演技の息はぴったりだった上に声の質はうまく割れてて、ハモりがいい感じでした。
 あとアンサンブルにも注目。特に男性アンサンブル。周りのおばちゃまたちが男の子たちカッコイイわね〜(おほほ)と言っていたんですが、すんごく同意。四季、若くて可愛い子いっぱいいるんじゃん!? とか思っちゃいました。要チェックなのは、哲学好きのメガネの終盤ルドルフみたいなカッコした男の子。ピートの中山大豪って人かな? 欲を言えば、アンサルブルの女の子たちの踊りがもうちょっとぴたっと揃ってくるともっとよくなりそー。

 テンポよくて明るくて、周りも笑いながら観てるから自分も遠慮なく笑って見える、そんな舞台だったと思います。。大人から子供まで、誰が見ても楽しめる作品。表情の作り方、腕や足の動き、ひとつひとつが笑いをとるように計算され、訓練されて作り上げられている感じがしました。銃の撃ち合いもどきとかアクションも沢山だし、ダンスシーンもいっぱい。話とか考えず観ているだけでも楽しくなれます。お話はシンプルで、結構適当というか唐突な感じもしたのだけど、だからこそテンポやダンスのシーンが生きていたのかもしれない。筋道立てて考えてもどうせ無駄なので、かえって頭使わずに楽しい動きを見ることに集中できたっ。家族で見るのによさそーだけど、随所に楽しくなる恋を歌う場面が出てくるしってことでカップルにもお勧め♪ 明るいラブコメディバンザイ!
  余談ですが、私が一番笑ったのは、椅子のバリケードに赤旗って舞台設定になってるとき、アンジョ〜vとかこっそり思っていたら、「例のフランス革命のミュージカルでもやる気がね」ってベラが突っ込んだところ。でもレミゼは何気にフランス革命とは違う、よ、よね? もしかしたらベルばらだったのかも。ま、いっか。



劇団四季「オペラ座の怪人」四季劇場海 8/13 マチネ

ファントム 村 俊英さん   クリスティーヌ 高木美果さん  ラウル 佐野正幸さん

 わー、劇場が、世界を醸し出してる〜っ、とまず舞台装置に目を奪われました。あと演出も素晴らしい! 一番びっくりした演出は、幕の上(なんていうんだろ…)にファントムが出現したこと。声はすれでも姿は??? で、上(というか正面…)を見たら、ファントムが! あれ、下のほうからじゃ見れないよねぇ。シャンデリアも客席から舞台に向かって落ちてくし。まさに劇場全体を使っての芝居。すごーいっ。

 あと、特にいいなーと思った演出は、地下室にボートで下りてくるとこ。おお、長い距離移動して地下に来ているってのがばっちりわかる〜。距離感の出し方とかボートが動くスピードがほどよくて、それらしかった。ラスト、遠くでささやくように愛の歌を歌い(綺麗に静に歌うからより残酷さが増すんだーっ)、去っていくクリスとラウルを観た時、そしてそれを見て姿を消すファントムの切ないことったら。ああああああ〜、とこの時はじめてファントムってすごーくかわいそうと思いました。立ち姿、動作から、哀しさが溢れてた。私どちらかというとラウル派なんですけども、ラストの印象が強くて、ファントム贔屓になりそー。村さんファントム渋い。素顔はそれなりに醜いおじさんで、仮面つけてるとそれなりにカッコよかった。さいごは、静かに、しかしずっしりと来ましたとも。このまま仮面見つけたメグと恋に落ちればいいのに、とかふざけたことを思ってました。 映画版観ても思ってたんだけどファントム、若い子狙いすぎだよなー。美男子か否か、以前の問題な気がする。マダム・ジリーのほうが歳合いそうなのに。これだけ思われてるんだからクリスも振り向いてあげればいいのにーとは思うんだけど、大抵の女性は親子ほどの歳の差ある相手って、恋愛、結婚相手としては倦厭する気がする。財産も才能も愛も溢れるほどあっても、日が当たらない生活になるしさ。つか、もークリスティーヌって、そういう女の醜い面、露骨に現れすぎなキャラだよね。それまで乗り気だったのに、顔みた途端露骨に態度変わるし。でもファントムも男の女性に対する希望現れすぎー。綺麗で若くて才能、それも自分が育てた=自分の下における才能がある子がいいんでしょう……。かなりお互いさまよね。うーん、オペラ座ってつくづく男女の真実をついた作品。汚い部分と綺麗な部分両方ねー。

 クリスティーヌの高木さんは声が甘すぎず、やや低めだけど低すぎず、で渋い(女性に褒める言葉ですか、これ…)感じにいいお声だったと思う。最初、どこにいるかわからないくらい地味だった気がするんだけど、スィンク・オブ・ミーが盛り上るあたりから急速に光り出し、中盤以降は見失うことなかったです。劇中劇の男装シーンが可愛いかった。可愛かったといえばメグ。私は何故かメグが好きでございます。そんなワケで序盤からクリスの隣にいて、ずっと心配している彼女を見て何となく嬉しくなっておりました。手を握って励ましたりね、クリスが行方不明になったら自ら地下に入ろうとしたりね。最後にも印象的なカットがあるし、嬉しいなー。
 佐野さんラウルはやんちゃなぼんぼん路線? 高木さんだとクリスティーヌに主導権あるイメージ。年下の幼馴染みって設定でも可愛いかもしれん。ところでラウルさん。ところどころでマダム・ジリーと心の交流していた気がするのは気のせいですか。ところどころでアイコンタクトとってるし。冒頭か、終盤にファントムのことを問い詰める伏線?

 見所沢山で一度で見切れなーい。また観たい! と見終わった後力いっぱい思った。他の役者さんでも観たいし、何より舞台の近くで観てみたい。オペラ座のお客になったような一体感がありそう。でも席とるのめちゃ難しそうね。つか、しばらく吸血鬼のために観劇控えめにします。ってことで、リピートはいつになるかなぁ。でもいつか、きっと。


心を洗うミュージカル「赤毛のアン」 05/8/18 名古屋市民会館
アン/華原朋美さん  ギルバート/泉見洋平さん

若作り三十路コンビが贈る15歳の二人の物語(笑)。
目当て、露骨すぎ。ええ、泉見さんギルバートでしたとも。隠しませんとも!
こんなに出ずっぱりな役で観るの、初めてだよ。踊る泉見さんも初めてだよ。あ、あと、歌じゃない台詞聞くのも初めてだ! 最初の台詞にちょっぴし違和感覚えたってのは内緒。ラジオやトークのしゃべりに近い感じだったな。個人的には歌で感情を表現している時のほうがだんっぜんいいなー。どの場面とっても表情はめちゃいいよ、ばっちり。もうアンに一目惚れするところはなんて、ぽやーとしちゃって、おれどうしちゃったんだろって感じが伝わってきました。それはもうコゼットに一目惚れするマリウスさながらでございましたとも。ノッケから本読んでるしなー。周囲の女の子たちの視線に首傾げるとことか、とても30代には……(げふげふ)。マリウスよりはギルバートのほうがガキっぽくて、空気が明るかったな。素に近い役なのかなって気もした。とにかく、報われなくて切ない表情多くても、根が明るいって役なんだと思う。演技は流用というか応用っぽい気もしたのですが、根っこの部分で違いがあるって、すごいことだよねぇ。

 まあ、そんなこんなで、可愛い役な泉見さんをたっぷり堪能できました。いきなり「ないすとぅーみゅーとぅゆー」は思わず笑った。アン曰く「初対面の女の子にウインクしてくるなんて……」え、ウインクしてた!? ちくしょー、見逃した。っと気をとり直して。話かける切欠欲しくてつい意地悪いっちゃうところ、ここも可愛く、そして笑った。「にんじんーーーっ」って、ああ、もっとも貴方おいくつーーーっと叫びたくてたまりませんでしたよ。前半はずーっと切ない顔してました。不器用ぶりが可愛い。あと、アンと手を握り合って恥ずかしくなってぱっと離れてるところとか、観てるこっちがこそばゆいですっ。あと、じりじりと距離詰めてくところとかも、歌いながらの演技だったのもあって、めちゃめちゃ泉見さん堪能できた。誤解が解けていって幸せかみ締める表情とか、横目でアンの反応覗うとことか、すんごい可愛いんだ。
  全体的に、手が、まっすぐ腰横が手の定位置になってるのがちょっと気になったけど、役柄ゆえ……だよね。手がお留守ってワケじゃないと信じます(贔屓目)。ダンスは結構かなり踊れてたよ。club seven(結局行く…) が楽しみになってきたー。もちろん、歌もよかったよ。1幕の片想い歌く歌うソロと(汗だくだくで、涙なのか汗なのか判断に困ったよ。多分汗だけど…)、終盤のアンとの恋のはじまり的デュエットが優しい感じでよかった。トモちゃんとは声の系統、歌い方あってると思うな。ていうか、トモちゃん、歌い方歌謡系だなぁ。仕方ないけど。泉見さんもミュージカルの時とそんなに違うワケじゃないけど(特にソロは、いつも通り)、トモちゃんと歌うと、割と歌謡系な可愛いデュエットに聴こえたな。周りがミュージカル畑ばっかりだったから、余計にトモちゃんの歌謡系な歌声が目立つんだよなー。泉見さんももともとは歌謡系だもんな。歌のせいだと思うけど、トモちゃん全体的に浮いてて、泉見さんも軽ーく浮いてたと思うわ。

 っていってると、トモちゃん全然駄目だったみたいだけど、そんなことなかったですよ。アンは一人、周りとは違う娘。浮いているのは決して悪いことではないし。ギルバートも目立っていい役だしね。立ち居地(のっけから中央キープ♪)や服のせい(緑の靴下が忘れられん…)もあって目立ってたよ。トモちゃん、喜怒哀楽、特に喜、楽はかなり自然にいい感じに魅せてくれました。感情爆発ぶりがよかったし、ぶりぶりドレスやエプロンドレスも不思議なほど似合うし、天然な発言やわざとらしさも似合ってる。きゃはー、とか連発するところは、やりすぎかも〜と思わないでもなかったけど、地というか、普段TVとかでのキャラに近い華原アンとして仕上げたんだと思う。歌も、声は可愛いし、上手いといえば上手かった。華もあるし。びっくりしたのは、台詞いっぱいな上、早口な台詞多いのに、噛まずに(ひやっとはしたけど、大きな失敗はなかった)言えていたこと。やるんじゃん、トモちゃんっ! それはともかく、赤毛に染めたのはいいけど、プリンになってるのがめちゃ気になったよ……っ。かつらじゃ駄目だったんでしょうかー。

 他の役者さんでは宮内良さんが特によかった。メガネが似合う先生キャラって何か弱いんだよー。てか、演技も歌も巧いよね、この人。役にぴったり、舞台全体にも馴染んでた。何よりダンスが、とってもよかった。手足が長いこともあって、ひとつひとつのポーズが決まるんだ。さすが元歌のお兄さんだっ! お医者さん役も似合ってました。あとはマリラ役の山下清美さんとダイアナの中村友里子さんの元四季コンビも雰囲気から演技、歌まで、よかった。一人一人は、いい役者さんばかりだったと思います。全体的に、不揃いというか急ごしらえカンパニーな感じはしたのですが、そんなところも微笑ましくてよいと思える不思議な作品でした。プロじゃない子供が一生懸命何かやってるって、やっぱ可愛いし応援したくなります。何より子供と微笑んで歌い踊る泉見さんが可愛かったのでOK。少ない人数でよく舞台を成立させたなと思います。泉見さんがひっぱってってるような気がしました。……わかってます、それは踊るときの立ち居地(大抵中央v)による錯覚です。

 個人的に惜しいと感じたのは舞台装置がちゃちかったこと。背面にどーんと置かれた遠めには油絵っぽくて見える風景画はよかったけどね。でも、手作りっぽさがあるのはいい。アンサンブルが背景や小道具をせこせこ片付けたりしている様子が学芸会っぽくて、微笑ましかった。あと、マイクの不調とか(歌お上手でない人のマイクがぷつぷつと切れたのがいたたまれなかった、演技はよかったんだけどなー)、ライトの不調を舞台上で調整していたのもひっくるめて、舞台の作りは今一歩かな。
 そうそう。パンフレットに泉見さんの以外にも代表作に、レミゼ&サイゴンが書いてある人いてびっくり。そーいえば見覚えがある気がしないでもない顔。作曲・音楽監督さんがレミゼやサイゴンの人だった。鑑賞前にその情報をインプットしてしまったせいか、1部かなりレミゼ(つかブリュメ街)やサイゴン(火がついたサイゴン、17歳ではじめて〜のあたり)に旋律に似てる! と思ってしまった。全体的に旋律が優しくて、いい音楽だったな。

 カテコは大サービス。泉見さん壇上に下りてきて、近くのお客さん見てにっこり会釈。ぎゃあ、半径10mm以内に泉見さん! ああ、もうちょっとだけ近くなら……にっこりを……でも私を認識して欲しくはない。殆ど二次元の感覚で観ていたいんだろーな私は。
 そんなこんなで、ミーハー感覚で見ていましたが、全体的にしんみり&ほかほかになる素敵なミュージカルだったと思います。かなり不順な動機の鑑賞だったのですが、作品としてもとてもよかったです。家族愛って大好きなテーマだしっ! にしても、「赤毛のアン」って面白いね。近いうちに読んでみようと思います。ギルとアンのその後が気になるしー。いや結婚するのは知ってるけども、経過をね……っ。脳内で勝手に泉見ギルバートにして読んでみます(結局ミーハー)。

 

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