1998/6/27
お茶の植木つい最近、お茶の木の植木鉢を見る機会がありました。 鉢は30センチぐらいの高さだったでしょうか、その鉢の中にお茶の木が1本ふっ くらと植えられ、全体では1mぐらいの高さのものでした。 「えっ、これがお茶の植木?」−−私は一瞬目をみはりました。 お茶の木といえば今まではずうっと続く段々畑に緑のかまぼこ状のものが何本 も並び、その中に茶娘がかすり姿で立つ風景しか連想できなかったからです。 「あの茶畑の中の1本がこれなんですか?」 私は、茶畑は何十本、何百本のお茶の木がきれいに背丈を揃えられているだけ のこととは知っていましたが、それが実際こうして1本だけ取り出されたのを見る とその大きさに驚きつつ何か違和感をおぼえて店先の人にそう尋ねたのでした。 「えぇ、これが今とても人気があるんですよ」−−店先の人はそう言って幸せそう にほほえまれました。と同時に「これもガーデニングブームの一端なんでしょうか ねぇ」とつぶやかれました。一見、この人からガーデニングという言葉が出てくる のが不思議なくらいの年齢のおばさんでした。 「この新芽を摘まんで天ぷらにするととっても美味しいんですよ」−−そのおばさ んはまたもや独り言のようにそう付け加えられました。 私が「確かお茶の葉にはカテキンが含まれ、それは制ガン効果がある筈だ」− そう思って、じっとお茶の木を見つめていた時のことです。 ですから、「えっ、天ぷら、これはいい!」と思わず声を出しました。 今の世の中、「不景気だ」「物あまり現象だ」−−などと今更言ってもしょうがない ことを口癖のようにつぶやいている人が多いのですが、このおばさんの発言はと ても前向きで新鮮なアイデアのように思えたからです。 それもそうでしょう、お茶の産地静岡といえども製茶されたお茶の販売は見たこと はあっても、お茶の木をそのまま木で売るという発想は今までに聞いたことも見た こともなかったからです。 ましてや、そんな商売があるということは想像だにできませんでした。 それがどうでしょう、ガーデニングとカテキン、この2つの時流に乗った言葉が加わ ると途端にたんなるお茶の木が急に新しく見えてきたのです。 そして、時流とは時の情報と情報をうまくつなぎ合わせ、それを生かす時期のこと だと感じたのです。 それから数年後のことです。私はO‘CHA‘S TREE COMPANYを設立し、もう 笑いころげるほども大儲けを果たしました。 −−というのはもちろんウソで、ただ、ここでそんなことがあったらいいなと思いつ つ、ゴクリと普通のお茶を飲んだだけのことでした。なんだそんなことか、もうバカ バカしい、ヘソで茶を沸かすとはそういうつまんねぇことをいうヤツだ。 そんな声が聞こえて来そうなので、本日は耳をふさいでおしまいとします。 |