トレンド編 映画に見るスキートレンド史


1987年公開の「私をスキーに連れてって」という映画は公開当初爆発的なヒットをした映画ではありませんでした。
事実私も始めてみたのは映画館での公開が終わりレンタルビデオで見たのが始まりでした。88年3月のことです。
しかしこの映画が当時の若者に与えたインパクトは大きく今のスノボブームに匹敵するいやそれ以上の一大スキーブームを巻き起こしました。
当時私がこの映画に影響を受けうかつにも買ったり走ったりしたトレンドを紹介しましょう。この映画を一度も見たことのない方、あるいは見たけどほとんど記憶のない方にはあまりにカルト的ですので最後まで読むことはお勧めしません。それにしてもミーハーだったんだなと自己嫌悪してます。

ROSSIGNOL(ろしにょーる)の板
映画では
主人公矢野文夫(三上博史)の勤務先(安宅物産)が企画する統一カラーコーディネートスキー用品「SALLOT」の中でスキー板がロシニョール社製です。
当時私は
(1989年冬)なけなしのバイト代でスラローム系のロシニョールヴィラージュISという板を買いました。ビンディングを付けてたしか8万円ぐらいだったと記憶しています。ソール面だけは大切にメンテナンスしてきたので今でも現役です。もっとも塗装面は傷だらけでトレードマークの三色ニワトリ(どなたかこのマークの名前知りませんか?)はすでに昇天されています。

アマチュア無線(ハム)
映画では
当時携帯電話は都市部や幹線道路に限られ自動車電話として、もしくはショルダーホンと呼ばれアウトドアで持ち運びのできるシロモノではありませんでした。NTT DoCoMoの初代ムーバが出たのは1992年頃です。
また加入に関する費用や通話料などべらぼうに高く、とても学生や若い社会人の手に出来るものではありませんでした。もっぱら会社重役や報道関係などの一部の人間のものでした。
そこで映画の中では車とロッジ、またはスキーヤー同士の連絡にトランシーバが活躍します。お互いを呼び出すのにJから始まるコールサインを話しているのでこのトランシーバはおもちゃではなくれっきとした免許の必要なアマチュア無線(ハム)でおそらく144MHz帯もしくは430MHz帯を使っていたと思われます。
当時私は
大学のサークルの先輩達や学科の友人の何人かがハムの免許を持っていました。私も東京晴海まで試験を受けに行き免許を手にしました。すぐさまハンディタイプの無線機を購入し開局しました。
小型ハンディの電源はバッテリーですので出力は極小さなものです。でも遮るものが無ければ20キロは楽勝で電波は飛びます。過去、甲府盆地の東端(勝沼インター付近)と西端(双葉サ−ビスエリア)や富士山7合目と東名を走る車(清水市)との間で交信したことがあります。
ハムは交信をする人間と電波を出す無線局の両方に免許が必要です。人の方は一度免許を取れば一生更新などの手続きなしで持ち続けることが出来ます。しかし無線局の方は5年毎の更新が必要です。作者も以前は局免許(コールサイン)を持っていましたが更新を忘れとっくの昔に失効しています。
携帯電話がこれほど普及し長野オリンピックのおかげで長野の山間部でもかなりの部分がサ−ビスエリアとなった今、スキーにおけるハムはすでに過去の遺物となってしまったのでしょうか。

スタッドレスタイヤ
映画では
矢野のマイカーとしてトヨタカローラU(赤)の他、セリカGT−FOUR(赤と白の2台)が出てきます。3台ともスタッドレスタイヤを履いていました。カロUはFF、セリカは4WDです。さすがに圧雪路の上に新雪が降り積もる夜の場面(バレンタインデースキーで志賀横手山に向かっていた)ではFFのカロUは用心の為、チェーンをはめましたがセリカは志賀草津道路の急坂をかっとんで登っていきました。
志賀草津道路については別編「トラフィック編」で詳しくご紹介。
当時は
寒冷積雪地ではスパイクタイヤが普及していたのですが粉塵公害が取りざたされスパイクのないスノータイヤつまりスタッドレスタイヤへの過渡期でした。しかし首都圏からスキー場へ向かう車はほとんどがノーマルタイヤで高速のチェーン規制がかかるとサ−ビスエリアなどで雪の降りしきる中チェーンをはめたものでした。またスタッドレスを履いていてもチェーン規制の渋滞にはまります。悪名高きは関越自動車道関越トンネルです。
関越トンネルについては別編「トラフィック編」にて詳しくご紹介。
私はスキーを始めた学生時代、自動車用品量販店でバイトをしていた友人がおり特値でスタッドレスとホイルを売ってもらえたので幸いスキーへ行くのにチェーンを巻いたことがほとんどありません。
スタッドレスの性能は年々向上し、4WDとの組み合わせならば登れない雪道坂はまずないと言っていいでしょう。しかし下り坂は侮ってはいけません。アイスバーンでは止まらない、曲がれないという覚悟は絶対必要です。
しかし自宅からスキー場までチェーン装着なしでたどり着けるメリットは最高だわな。

プリンス系ゲレンデ
正確には西武グループの親玉「コクド」が経営し、プリンスホテルのスキーパックがあるスキー場というのが定義でしょうか。
映画では
池上優(原田知代)と??恭世(鳥越マリ)の2人が西武鉄道のツアーバスで志賀高原焼額山へ行き出来たばかりの志賀高原プリンスホテルで女だけのクリスマスイブを過ごす設定になっています。但し全編通して他の出演者はプリンスには泊まってはいないはずです。
またクライマックスのシーンでは万座温泉スキー場(万座プリンスホテル)が出てきます。
もっともパーティ会場はセットで撮影したようですが。
志賀高原の横手山から万座へSALLOTを届けるためにただひたすら山中を下っていますが実際にはこのツアーコースは300mほどしか標高差はないはず。横手山から渋峠まで滑り降りたら後はほとんど平坦な尾根道だからちょっと無理がある。それとも矢野と優ちゃん、泉(布施博)、小杉(沖田浩之)の4人は映画本編以外ではスキーを担いで、すたこらと歩いていたのだろうか。
いっそ草津温泉へ抜けたことにすれば雰囲気的にはつじつまは合うのだが、途中火山ガス攻撃でやられる心配もあるぞ。
当時私は
プリンスホテルに泊まってスキーというまったく!バブリーなスキーがシーズン中のお楽しみでした。
バブルの最中、苗場・万座・志賀高原は3大人気プリンスで、9月1日の冬季予約開始日に予約しないとシーズン中のほとんどの週末は埋まってしまう有様でした。予約センターへ電話してもまずつながらず大変な苦労をしました。今は11ヶ月前から予約を受付しますので以前のような予約ラッシュは無くなったようですしインターネットでプリンスホテルの予約も出来ますから電話ラッシュとも無縁になりました。
プリンスホテルのホームページ
http://www.princehotels.co.jp/

でもね、住宅ローンを背負った今はプリンスdeスキーは夢のまた夢さ。


その他トレンドになったもの
ユーミンのゲレンデBGM
レディスのスキーウエア
 白のウエア(原田知代)
 スレンダーパンツ(高橋ひとみ ら)
フロントバックルのスキーブーツ
むかで滑り
スキー板をX字にしてイスにする
コードレス電話機
防水型コンパクトカメラ

どっこい、トレンドにならなかったもの
背負い式のサーチライト 何か悲しゅうてこんなもの背負って夜滑る必要がある?
雪山の花火         高温多湿の日本、夏に買った花火は冬には湿けっとるわ
ツアースキー        中高年の登山ブームで今後冬のトレンドになるかも
統一カラーコーディネートスキー用品 SALLOT  映画本編でも言っているように初心者か相当のミーハー
スキーブーツを板に装着しキャリアにつんだまま運搬  一度見てみたいルーフで滑るスキーヤー
セリカGT-FOUR      いい車なんですけど高すぎました。


最後に沖田浩之さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます