釣行2日目 ハミルトン・バーンその2

 

 今日はピーターがガイド。よく知っている方によると、ピーターはマタウラ側の支流の支流まで入り込んでよく
知っており、ウェーダーをボロボロにしながら「良い釣りできたよ。」と笑う猛者だそうで。彼はオーストラリア
人。半年をオーストラリアで暮らして、半年をここマタウラで過ごしているうらやましい人。マタウラに家を持ち、
その家は外壁が白から黄色へ、黄色から白へ常に塗り替えられているため、実は何色に仕上げられるのか誰にもわ
からないそうだ。年齢不詳の独身トラウトバム。

 ハミルトン・バーンの昨日より少し下流のポイントに入ったのは11時30分。9時には出発していたが、あち
こちの支流の状態をチェックしながらだったのでこんな時間になってしまった。道路から牧場を下って川に着いた
が、しばらく川を眺めながら歩き下った。15分ほどあるいただろうか、ブッシュのかぶったポイントでスタート
フィッシングとなった。昨日の水の色と違い、濁り気味に見えた。昨夜の雨の影響だろうか。

 今日は風が強いので、相方からTLJ-7’11”#4を借りた。久しぶりのグラファイト。少し慎重になっているか
も。普段ならこの程度の風でグラファイトはないのだけれど。ボウズを避けたかったのだろう、と今ではそう思え
る。フライはとりあえずブラウンビートル。風の強い日は木の上から落ちるだろうと考えてである。

 「このあたりから上流へブラインドでフライを流して。ティペットは4X。ちょっと上流を見てくるから。」
 ピーターは藪こきして行ってしまった。

 「4X?昨日は5Xだったよ。」「木の下に潜られると簡単に切れちゃうよ。」ピーターが消える前にアドバイ
スを受けたのだが、せっかくティペットチェックし終わってフライまで付けちゃったからそのままにしてしまった。
このことが後にどんな結果として表れるか・・・・

 ブラインドキャストはなんかおもしろくなく感じてきた。流れの脇から出てきたのが30センチほどの小さな鱒
だったから、ということもあったかもしれない。しばらく魚の気配がなく、だららんと歩いて鱒を探した。風で水
面に波が立つと鱒は全然見えない。ライズも見あたらない。

 

 「ふぇっくしょんっ!」

 どうやら花粉症が始まったみたいだ。数年前の12月、初めて釣りにNZの北島を訪れたとき、眼はかゆいは、
鼻水は出るは、くしゃみは止まらないはで苦労したことを思い出した。

 

 風がとぎれても、くしゃみは止まらない。こんな所にブラウンはいるときあるんだよね、と浅い流れのほとんど
ない場所を見ていたら、なんとなく鱒に見える影が。

 じっと見ていると、5センチほど動きました。ブラウンだ。頭を下げて、しっぽの方が上がっているけどまあ起
きているようなのでフライをキャストした。

 

 風の切れ間を待って、鱒の横30センチにフライを落とした。その音に気が付いた鱒はゆっくりと頭を上げてフ
ライ近づいてくる。目前で止まった。あとは白い口を開けてくわえるのを待つばかり・・・1秒、2秒、3秒・・
フライを凝視していたブラウンはまたゆっくりと元の位置に戻っていった。

 

 見切られた。リアルなパターンが良いのかとタシロカディスを近くに落としたが、鱒は反応せず、10秒後には
ゆっくりと移動していった。スプーク。大きな鱒は自分が狙われたことに感ずくと、別になんともないんだけどさぁ、
とでも言いながらのようにあわてず移動していってしまう。今回もそんな感じだった。あ〜あ。

 

 上流に移動したらピーターがバンクの上でじっとしている。相方がライズを狙っているのだ。ウィローツリーの
ぎりぎりでライズをし、木の下へ潜り、しばらくするとまた出てきてはライズをしているやっかいなヤツだ。ウィ
ローグラブを偏食していると手が出ないが、昨日の魚のように何でも食べていれば可能性はある。

 タイミングを計ってなかなかいいところを流すのだが、ほんの少しのタイミングが合わず、ウィローツリーを
釣ったところでその鱒はあきらめることとなった。

 上流へ移動中、ピーターがライズを見つけてくれた。

「でかっ。」

 裕に60センチはある長さだ。その鱒が流心の向こう側のトロ場でクルージングしながらライズを繰り返してい
る。

 

 河原に滑り込むようにして降り、腰をかがめながらキャスト。

 一発でいただきと思っていたのだが、ドラグが掛かってしまう。フライが落ちて、それに気づいてゆっくり近づ
いて、おもむろに口を開けてから閉じるまで、フライが動いたら駄目なのだ。その間5秒以上は必要なのではない
かと思われた。

 

 未熟。3秒が限界。

 鱒が近づいたところでドラッグが掛かってしまうと、だんだん神経質になってくるのだろう。スプークしてライ
ズが始まるのを待つこと3回。デカ鱒は2度と現れなかった。

 がっくりと肩を落としながらランチタイム。今日はまだノーフィッシュ。「ここはライズがあるんだ。」という
ブッシュに覆われたところでサンドウィッチを頬張った。昨日のでっかいターキーのサンドウィッチだ。ドリンク
は水だけど。

 

 「チュパッ」

 ピーターのいっていたようにライズがあった。まあ小魚だろう。

 

「チュポッ」

 奥の方でなかなか良さそうな音がした。そんなこんなで時々ライズをみながらサンドウィッチを食べ終わった頃、
目の前でミディアムサイズのブラウンがライズを始めた。

 

「ほら、やって。」「まじ?」ピーターは笑っていたが、眼は真剣だった。

 岸に座ったまま、ロッドを持って、ショートキャスト。フライは鱒の後方50センチに落ちたが、向きを変えて
追いかけてきた。

 んっ、フックセット。大笑いした。座ったままのイージーフィッシングである。

「座ったまま釣った魚は、ランディングまで座っていなければならないんだ。それがここのルールだ。」ほんとか
どうか知らないが、ピーターがそんなこと言ったので、ずっと座ったままやりとりして、ピーターの長い柄のネッ
トに収まった鱒はなかなかいい鱒だった。苦労してもつれないのに、こんなお気楽フィッシングもあるもんだ、と
笑いが止まらなかった。

 この後、ピーターと相方が先に行って、なんと木の下のでかい鱒を釣り上げた。見ていなかったが、写真がある
ので、釣ったのでしょう。話によるとピーターは鱒を釣らせるために、周囲の枝にどいてもらった(強制的に)そ
うだ。

 くしゃみが止まらず、はながつまり、眼もかゆくのどもいがいがしてたまらなかった2日目の釣りはなんとかそ
の後も鱒の姿をみることができた。

 

 花粉症のことをこちらではハイフィーバーというらしい。こちらにはホースラディッシュのサプリメントがあり、
それが効くと教えてもらったので、なんとか手に入れたいものだと思った。

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