林が開けた所。

  「わたし・・・わたし・・・やっぱり・・・」

澄んだ空に浮かぶ月の下。

  「・・・どうして・・・?」

穏やかな真っ白の光の中。

  「これも・・・なの?」

小さく盛られた三つの土の山と。

  「ねぇ・・・母様ぁ・・・」

三つの簡素な、簡素すぎるほどの石の標。

  「やっぱり・・・わたし・・・あぐっぅ」

その一番左にしがみついて。

  「ゆうしろぅ・・・わたし・・・やっぱり・・・こども・・・欲しいよぅ・・・」

泣きじゃくる美月がいた。

  「ゆう・・・しろうぅ・・・」

  (そう・・・だったんですね・・・美月・・・)

余程思い詰めているのであろう、まだ気が付かない美月の後ろで目を閉じる。

思い出すのは、あの時のこと。

美月の決意を聞いた日のこと。

  (「そんな思い、子供にさせたくないから」)

その時の美月の寂しい瞳。

それと、もう一つ。

違う日のこと。

一哉さんと最後に話した日のこと。

一哉さんの想いを聞いた日のこと。

  (「とはいえ、それでも良いと思えたのだよ」)

その時の一哉さんの幸福な目。

だから。

  「美月」

言葉と共に美月を抱きしめる。

  「え??あ・・・」

我に返って言葉を失う美月の身体は冷たかった。

  「ここに居たのですね。探しましたよ?」

  「ゆうし・・・ろう・・・。どうして?」

  「いつまでも戻って来ないものですから・・・。探しに来たんですよ」

  「そう・・・」

  「ええ。鈴香さんも心配してますよ」

  「姉様も?」

  「もちろん。家族なのですから」

  「ん・・・」

  「美月・・・・・・」

名前だけ呼んで、美月の言葉を待つ。

しばらくして。

  「あはは・・・。やっぱり聞いてたよね」

  「・・・はい」

  「そっか・・・」

  「・・・・・・」

もう一度、言葉を待つ。

  「ごめんね・・・。変なこと」

  「いいえ・・・。嬉しかったですよ」

  「ありがと・・・。でも・・・」

  「嫌です」

先回りをする。

  「え?」

  「私だって・・・、そうですから。それに・・・」

  「・・・・・・」

  「それに、美月が悲しいままでいるのは嫌ですから」

  「ゆうしろ・・・」

言葉に詰まる美月を一度腕から放す。

  「だから・・・こうします!」

そして、もう一度。

今度は正面から。

抱き寄せて。

唇に触れて。

舌に触れて。

  「む・・んむぐぅ・・・」

なにか言いたそうな美月を。

そっと地面に横たえて。

着物に手を入れて。

帯を緩めて。

そして、

  「嫌だとは、言わせませんから」

そう言って、また、口を塞ぐ。


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