「・・・もぅ・・・悠志郎ったら」

乱れた着衣を直して、美月が言う。

よろよろという様子からすると、疲れきっているようだ。

  (なにせ、これまでにないくらい激しかったですからね)

  「はははは・・・。久しぶりでしたから・・・」

  「う〜〜〜」

  「すいません」

  「まぁ・・・いいけどさ・・・」

  「そうですか?じゃあ、帰ったらまた・・・」

  「駄目!絶対駄目!・・・壊れちゃうよぅ・・・」

  「ははは・・・」

  「ぶぅ・・・」

  「怒った所も可愛いですよ。美月」

  「う〜〜〜〜」

  「ははははは・・・・」

  「ふか〜〜〜っ。馬鹿にして〜〜」

  「いやいやいやいや。決してそんなことは」

  「・・・・・・。じゃあ・・・」

そう言うと、美月は体を預けてきた。

  「美月?」

  「もうしばらく、こうしていて?」

  「ええ。良いですよ」

  「・・・・・・」

  「・・・・・・」

  「・・・・・・」

  「・・・・・・」

  「ねぇ・・・悠志郎」

  「はい」

沈黙を破ったのは、美月。

遠く、月を見上げている。

  「私ね、思ったことがあるの」

  「なんですか?」

  「・・・・・・堕ち神の呪い」

  「・・・・・・」

  「きっと、これもそうなんじゃないかって」

  「これ・・・とは?」

  「うん・・・。子供が欲しくなること」

  「美月・・・」

  「あの時、子供はいらないっていった時ね、本当にそう思ったの。思ってたの」

  「だけどこの頃、どうしても欲しくなってきて・・・。どうしようもないぐらい」

美月の声に、再び涙が混じり始める。

  「神様って・・・酷いよね・・・」

  「違いますよ」

即答する。

  「え?」

  「美月にとって、私に抱かれることは幸せですか?」

  「もちろん!」

  「だったら違いますよ。神様は美月が幸せになることを許してくれているじゃないですか」

  「でも・・・」

  「生まれてくる子供にだって、きっと、幸せな時はありますよ。こういう風に」

再び美月の言うことの先に回って、軽く唇を重ねる。

  「でも・・・、でも、悠志郎が・・・」

  「いいえ。それも違います」

またも即答する。

これだけは、絶対に違うと言い切れる。

私のことだから。

  「だって・・・」

  「美月。それ以上言うと、怒りますよ」

美月の言葉を遮って、少し厳しい口調で言う。

  「悠志郎?」

  「私だって、美月の幸せを願っているのですから」

そしてもう一度。

  「美月に幸せになって欲しいと思っているのですから」

  「・・・・・・」

  「実は、あの日の前日、一哉さんから伺ったことがあるのです」

  「父様から?」

  「はい」

  「なんて?」

  「幸せだと」

  「しあ・・わせ・・・」

  「葉桐さんと一緒で、幸せだと。美月がいて、幸せだと」

  「ぅ・・」

  「わかっていたんですね、一哉さんには。だから、葉桐さんに申し訳ないとも言ってました」

  「ぅあっ・・・」

  「もう少し、丈夫な体だったらと。そうだったら、もう少し精をあげられるのにと」

  「とお・・さま・・・」

  「美月と葉桐さんと。二人のためなら、二人の幸せのためなら、どうなってもよいと」

  「ぅわぁぁぁぁぅ」

  「私も、そう思いますから。美月の、美月と子供のためなら、と」

  「ゆうしろうっ。ゆうしろうっ。ぅぐぅ・・・っ」

私を掴む美月の指に力が篭る。

その心地よい痛みを感じて、言葉を続ける。

  「それが、私にとっても幸せなのですから」

  「ありがと、ありがとっ。ゆうしろぅぅっ」

  「いえいえ。だから、神様は酷くなんてありませんよ。幸せになれる機会を残してくれたんですから」

  「うん。うん・・・」


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