夕影
カリン・・・カタタン・・・。
乾いた音を立てて、硬貨が賽銭箱に吸い込まれる。
「・・・んしょっ。もう一つっと」
夕日を鈍く反射して、放物線を描きながらもう一つ。
カリン・・・カタタン・・・。
同じ音を立てて、賽銭箱へ。
ガラン・・・ガララン・・・。
ガラン・・・ガララン・・・。
鈴も二回。
パンパンッ。
パンパンッ。
柏手も、二人分。
私と、そして柚鈴の。
幼い頃、二人でしたように。
お賽銭を入れたり、鈴を鳴らしたり、柏手を打ったり。
私の中にいる柚鈴にはできないから。
「・・・・・・」
目を閉じて、頭を下げて。
願を掛ける。
願いごとは一つだけ。
私の分だけ。
きっと・・・柚鈴は柚鈴でお願いをしたいだろうから。
そうであって欲しいから。
「ねぇ、美月は何をお願いしたの?」
そんな声が、聞こえてくる気がする。
だから私も。
「柚鈴こそ、何をお願いしたの?」
そう、私の中に問いかける。
夕日に写る影は一つだけど、ここには二人いるはずだから。
「あははっ。内緒だよっ」
「ふふふっ。内緒だよっ」
そうやって、笑いあえるはずだから。
夕暮れ時の風。
赤銅色の空。
照らされて映る影。
一人ぼっちが一つだけ。